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原曲・サイモン ガーファンクル 作詞作曲・イギリス民謡 原題「Scarborough Fair」。 イギリスの伝統的バラード。 サイモン ガーファンクルによる歌で有名になった。。 【登録タグ 1967年の楽曲 アメリカ イギリス サイモン ガーファンクル 洋楽】 カバーした声優 吉田小南美
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Scarborough Fair 自作 アルバムのタイトルである『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』は この曲で何度も繰り返されるキーワードになっている、 サイモン&ガーファンクルの3rdアルバムに収録されて世界中に有名となったイギリスで伝統的に伝わるバラードで、 そのタイトルはヨークシャー地方で1ヶ月半行われる市場の名前からつけられているのは何? (2012年8月22日 クイズチャンプルー ) タグ:音楽 Quizwiki 索引 さ~と
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 《このすべての出来事は、主が預言者イザヤを通して言われた事が成就するためであった。 「見よ、乙女が身篭って男の子を産む。その名はインマヌエル(神が我らと共にいます)と呼ばれるであろう」と》 (新約聖書『マタイによる福音書』第一章より) 始祖ブリミル降臨暦6243年、ヤラの月。降臨祭が終わる頃。 アルビオン大陸に攻め込んだトリステイン軍は、謎の反乱とゲルマニア軍の離反により、壊滅寸前であった。 松下率いる『千年王国』軍団は、敗走するトリステイン軍を羊飼いのように導き、スカボロー港へ向かう。 以前に上陸地としたロサイス港には敵の艦隊が待ち構えているのだ。 しかし三万足らずとは言え、これだけの人数を本国へ輸送できるだけのフネの余裕はあるまい。 アルビオンからの脱出は早い者勝ちだ。敵に捕まればどうなるか分からないが、ぼろぼろと投降する者もいる。 そこへゲルマニア・アルビオンの連合艦隊が現れ、空中からぶわっと降伏を促すビラを撒く。 捕虜の生命と身分は保証する、との文面だ。それを見て、投降するものの数はどんどん増えていく。 「ははは、脆いものだな! しかし伯爵、捕虜が何万もおっては負担ではないかね?」 「捕虜諸君の生命と身分は、確かに保証しますよ。有能ならゲルマニアの軍人や官僚にもなれるでしょう。 ただし、身分と能力の低い奴は武器工場で死ぬまで働かせます。合法的な奴隷としてね」 ゲルマニア艦隊の旗艦では、総司令官ハルデンベルグ侯爵と黒幕ブラウナウ伯爵が笑っていた。 ここまでは作戦通りだ。ゲルマニアとガリアの本国では、何も知らないトリステイン本国を奇襲する手筈になっている。 小国が気張ってあれだけの兵力を動員したところで、両大国はそれぞれが、あの国の十倍以上の国力だ。 マザリーニ枢機卿がいかに有能であっても、資本の蓄積が根本的に違う。日本とアメリカほども違う。 「さあて、アルビオン大戦の仕上げだ。イスカリオテのギーシュくんは、ちゃんと松下を裏切ってくれるかな? メシアの持つ強力な『命運』を覆し、死に到らせるには、悲劇的受難というシナリオを作るしか方法がないからなぁ。 これぞ秘策『シナリオ縛り』の術さ。ははははははは……」 『松下一郎』は一万年前から出現すると預言(予言)されていたメシアであるがゆえに、『預言』の通りの運命をたどる。 だがカエサルもキリストもナポレオンもヒトラーも、飛びぬけた英雄は必ず悲劇的な最期を遂げるものだ。 その筋書きを作ってそちらへと導けば、メシアである彼はそのシナリオに縛られ、遂には『預言通り』死に到るだろう。 風が吹けば木の枝が揺れるように、その呪術的な力は世界という劇場に自動的に働き、役者の運命を動かす。 これこそがブラウナウ伯爵、ダニエル・ヒトラーの秘策なのだ。 「もしあいつが本当にメシアなら、死んだところでいずれ生き返るだろう。 だが人間である以上、復活には時間がかかる。それまでに僕は僕の『千年王国』の地盤固めをしておくさ。 そして松下を偽メシア、反キリストとして貶め、僕が『聖地』に先に到達して真のメシアとなってやる!」 敗走が始まって、二日目。トリステイン軍の残りは、もうほとんど降伏するか逃げ散ってしまった。 それでもスカボローへ向かう松下たちのもとに、ギーシュがホウキで舞い戻ってきた。 顔は蒼白で、脂汗たらたら。震える手には、総司令官となったウィンプフェンからの命令書が握り締められている。 それを見たルイズは、いやな予感がした。命令書を受け取り読み終えた松下は、眉根を寄せてふんと鼻息を吹く。 「ぼくとルイズに命令だ。スカボローからの総司令部と非戦闘員の脱出を援護するため、殿軍を務めろ、だとさ」 「し、しんがり……私とあんた、で?」 「まあ『千年王国』軍団も使えということだろう。まったく、無能で臆病な連中だ。 スカボローから50リーグ手前の隘路に敵を引きつけ、食い止めろ、だと。 ロサイスも他の軍港も奪い返されているから、スカボローも外側から封鎖されかねん。事態は急を要するな」 「い、幾らなんでも、さすがにヤバイんじゃないかい? こっちは千人ちょっとだけど、敵は七万、いやさ十万はいるかも知れないんだぜ」 ギーシュは、がたがたがたがたと震え続けている。松下はそれを聞き流し、ルイズの方を向く。 「ルイズ。護衛をつけるから、きみは命令を聞かなかったことにして、急ぎ脱出したまえ。 きみに万一のことがあれば、ヴァリエール公爵が怒る。ギーシュは残れ」 こりゃもうダメだと悟り、ギーシュは精神的ショックでぶっ倒れた。しかしルイズは首を横に振る。 「いやよ! 殲滅しろっていうんじゃなく、食い止めればいいんでしょ、食い止めれば! 私とあんたと、この狂信者たちがいれば、十万の大軍なんかどおってことないわ! 一騎当千の勇者が千人いれば、計算上は百万の軍集団じゃないの!」 「……もう一度言う。この場は逃げろ、帰国するんだ。きみまで捨石になる必要はない」 「いや。何回言っても聞かないわ、逃げ隠れるのはもうごめんよ。 貴族は後ろを見せずに戦い、名誉を勝ち取るもんなの。それに……司令部はともかく、非戦闘員は逃がさなきゃ。 弱い味方を逃がすため、強大な敵に立ち向かう戦いよ。これってとても名誉なことじゃない?」 ルイズの鳶色の瞳は、狂人のそれではない。迷いを振り切り、澄み切った強い意志を感じさせる、凛とした目だ。 彼女はただ、狂おしいほどに『認められたい』のだ。ゼロではない、無能ではない、できそこないではない、と。 両親や家族に、貴族や平民に、学院のみんなに、王軍に、女王や枢機卿に、国家に、世界に認められたい。 そして自分の使い魔、マツシタにも。おお、それにしてもなんという勇気であろう! 「ぼぼぼぼ、僕は、僕は死にたくない! 帰る!」 「ギーシュ。グラモン家家訓、『命を惜しむな、名を惜しめ』、でしょ! 元帥閣下の家に生まれたあんたが、真っ先に逃げ出すなんて恥を知りなさい!」 ルイズの決心は固いようだ。ギーシュ以外の全員も、松下に従って戦いたいと言う。 松下は、彼らの多くの顔に死相が出ているのを見てぎょっと驚き、深く溜息をついた。 どうやら敵の『シナリオ縛り』の術中に嵌ってしまったようだ。そうすると、ぼくは再び死ぬ可能性が高い。 敵は降伏した兵士や民間人を『人間の盾』に使うかも知れないが、それらをいちいち助けるだけの余裕もない。 総員死に物狂いで戦って、一日だけ進撃を食い止める。それが精一杯だろう。 「しかしルイズ、自信たっぷりのようだが、いい『虚無』の魔法は見つかったのか?」 「ええ、時が来たようね。この『始祖の祈祷書』に使える呪文が出てきたわ。 一緒に出て来た解説によれば、虚無にもおぼろげながら『系統』みたいなものがあるらしいの」 「ほう。まあ、虚無も四つあるらしいからな」 「私の虚無の系統は『移動』。時空間に『穴』を開き、自分や他者を移動させる系統よ。 あんたの『ヴィンダールヴ』も、《あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空》と歌われているものね。 それでね……(ひそひそ)………どう? 使えそうでしょ!」 ルイズは嬉しそうに、松下に自分が見つけた呪文の事を話す。 それを聞いた松下も、くくっと笑った。 「分かった、ならば戦おう。勝機はある。 では第七使徒マルトー、きみにはこの『白い粉』の入った壷と、信仰心の特に篤い信徒十二名を授ける。 万一のときに備え、『千年王国』教団再興のためアルビオンに隠れ潜んでいるのだ。 絶対に死ぬな、ぼくの帰還を待て。ぼくは必ず帰ってくる」 「承知いたしました、『我らのメシア』」 マルトーと十二人がホウキで飛び去ると、松下は近くの丘の上に一同を集め、両手を振り上げて大声で叫んだ。 「さあルイズ、シエスタ、ギーシュ、そして『千年王国』の諸君!! これより我々は、味方の脱出を助けるため、推定兵力十万のアルビオン・ゲルマニア連合軍に立ち向かう! 戦艦も竜騎士も幻獣も亜人兵もいるし、メイジや火器の質・量とも圧倒的に向こうが上だ。 だが、我々にあって彼らにないものがある! それは伝説の『虚無』の魔法と正しい信仰、そして鉄の結束だ!」 「「AMEN(そうだ)!!」」 「世界をひとつにし、貧乏も戦争も病気もない『千年王国』を築き上げるには、 この戦いはどうしても乗り越えなくてはならない試練なのだ!! 全力で立ち向かわなくてはならない! 人は我々を狂人の集団と呼ぶかもしれない! しかし彼らは、真の教えを悟らないのだ! 諸君、この戦いで肉体が滅びても、それは霊となって生き、永遠不滅の生命に与かることだ! 死に到るまで雄雄しくあれ! そうすれば諸君は、輝かしい至福千年王国に入ることができるであろう!!」 「「「「AMEN!! AMEN!! AMEN!!」」」」 かくして一同は指定された隘路に潜み、敵の進軍を食い止めることになった。 その近くには打ち捨てられた砦があり、二つの丘の上からスカボローへの街道を見下ろすような地形になっている。 兵力差は数十倍、正面からぶつかるのは無理だ。指揮官たちを潰すか、ゲリラ戦で足止めするしかない。 敵の移動速度から、推定到着時刻は今夜遅くか、明朝になろう。それまでに迎撃準備をしておく。 「土メイジは塹壕と陥穽、それにゴーレムを作っておけ。風メイジは偵察・斥候だ。 水メイジは衛生兵として後ろに控え、火メイジは敵の『目』を攻撃すること。 順次、風メイジ・土メイジも攻撃に加える。単に殺すより、恐怖を煽れ! 地形と暗闇を活用せよ!」 松下はメイジたちに指示を与え、平民兵には銃器の点検と食事、交代での休息を命ずる。 「では、この魔道書に封印しておいた『地獄の番犬ケルベロス』を呼び出し、戦列に加える。 金属の壷に封じてあるデカラビアとブエルも、サポート程度には使えるだろう。 確か、触れただけで傷を癒す力があったはずだ。使い魔も沢山呼ばせて、盾にしてやるか。 ルイズは切り札の呪文が完成するまで、この奥でトランス状態に入っているのだ」 「分かったわ。でも強力な分、詠唱が完成するまでにはかなり時間がかかりそうよ」 ルイズの答えに頷くと、松下は地面に魔道書を広げ、壷を置く。その周りに魔力の強い信者たちが集まる。 「さあ諸君、呪文を唱えよう。エロイムエッサイム、我は求め訴えたり……」 《朽ち果てし大気の精霊よ 永遠なる呪いの深淵に転落せる精霊よ 地獄の犬よ 永遠なる呪いの深淵に転落せる精霊よ 悪魔の怨霊の大群のただ中に 雄々しく立てる我を見よ エロイムエッサイム エロイムエッサイム イン ゲ トゥ イ ゲ シ サン ミム タ チュ 天地万物を混乱に陥れている地獄の魔物よ 陰気なる住みかを立ち去りて 三途の川の此方へ来たれ エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり》 (18世紀末の魔道書『黒い雌鳥』より) 呪文によって魔道書から巨大なケルベロスが、壷から悪魔デカラビアとブエルが解放され、戦列に加わる。 戦乱の浮遊大陸アルビオンで、人知を超える戦いが始まろうとしていた。 さて、時刻は真夜中。アルビオン軍四万を率いて南下するのは、ダータルネスで不覚を取ったホーキンス将軍。 歩兵、騎兵、砲兵、竜騎士、亜人兵などを纏め上げ、進行方向にいる敗残兵の掃討と投降してきた捕虜の収容に努める。 サウスゴータの反乱兵も加わり、兵力は七万にも膨れ上がる。ロサイスはすでに奪取し、残る逃げ道はスカボロー港のみ。 これだけ脱落者が出れば、トリステイン軍はもはや崩壊、雲散霧消したといってもよかろう。 「この戦は、どうやらこちらの勝利に終わりますかな。『蜘蛛仙人』殿」 「さあてのう、将軍。まだ抵抗する連中が残っているようじゃわい」 200リーグほどを数日で走破する強行軍で、兵にも疲れが見える。 そこで陣営を築いて各地の軍勢を集結させつつ、ホーキンスは天幕の中で軍議を開いている。 蜘蛛仙人と呼ばれた禿頭白髯の小柄な老人は、片手に持った近辺の地図の一点を、とんと指で突いた。 40リーグほど先にある丘陵地の中の、街道の関所でもある隘路だ。 「ここじゃ。この隘路に、千人ばかりの敵が潜んでおる気配がある」 「それだけですか。七万の大軍でかかれば、一揉みではありませんか。放っておいてもいいのでは?」 「いやいや、地形もよく選ばれておるし、どうせスカボローへはこの道を通らねばならん。 まずはわしが軍団を率いて探りを入れてみようぞ。揉み潰せたらお主はゆるりと通ればよろしい」 そう言うと、彼は手勢数千を率いて空中を飛び、隘路に近付く。彼も『悪魔』のようだ。 「メシア、敵襲です! 空中を飛んで来ます!」 「うむ、この妖気は『悪魔』だな。ではケルベロスよ、敵を充分引き付けてから、火炎と煙を吐き出せ!」 蜘蛛仙人の軍勢が隘路の手前に迫り来ると、物凄い炎と黒煙が彼らを包んだ! ケルベロスが三つの口から吐き出した、地獄の業火である。煙にはトリカブトが持つような猛毒が含まれている。 「おおっ!? こいつは驚きじゃ、ケルベロスか! ならばそこに潜んでおるのは、『東方の神童』マツシタじゃな! 大物が残っておったわい!」 数十の悪鬼が一度に焼き殺されるが、蜘蛛仙人は炎を浴びても平気な顔だ。 彼はしわがれ声で呪文を唱え、巨大で恐ろしく醜悪な悪魔の姿を現す。 体は大蜘蛛、頭は三つ。大きな禿頭には王冠を戴き、その左右にヒキガエルと猫の首が生えている。 地獄における最も有力な魔神、ソロモンの七十二の霊の筆頭、『東方の王』バエルだ。 「「ははは……タルブの戦いでは、よくもわしを『地獄の門』から召喚してくれおったな! この『東方の王』にして主(バアル)なる神であるバエル様を、なめるでないぞ小童めが!!」」 「おおっ、バエルか! よりにもよって厄介な奴が来たもんだ!」 バエルはウワッハハハと高笑いし、松下たちに呼びかける。 「「たったの千人で、七万を超える軍勢を防ごうとはのう! 愚かな、そして無駄なことよ! トリステイン軍はすでに壊滅し、スカボローにもロサイスから、ゲルマニアのフネが回り込もう! それにな、帰還できても本国にはガリアとゲルマニアが攻め込んで来るぞ! 今のうちに、大人しく降伏せい!!」」 「もうあとには引けん、ぼくらはここで戦う! ……EXARP、EHEIEH、ORO IBAH AOZPI、YHVH! 《東の大いなる王》BATAIVAH の御名に於いて、《空気の霊》たちよ、汝の創造主を崇めよ!」 松下が東方に向かって『風の召喚五芒星』を描くと、猛烈な嵐と稲妻が迸ってバエルの軍勢を打ちのめす。 ヘブライの神が偶像神バアルから奪い取った、大いなる天の雷である。 「「ぬう、小癪な小童め! わしに嵐と稲妻で対抗するとは!」」 「堕ちた神よ、今から地獄へ送り返してやる! ぼくに代わって七年の間、不毛な冥土の底で眠りにつけ! 《アナテマ・マラナ・タ(呪われよ、主よ来たれ)》!!」 「「わしもきさまも、死んで甦る神ということか! しかし、その呪いの言葉にはかからぬぞ! 死ぬのはきさまじゃ、『東方の神童』マツシタめ!!」」 かーーーっとバエルが三つの口から大量の蜘蛛の糸を吐き出す。 松下は『占い杖』を回転させて『炎の杖』に変え、蜘蛛の糸を焼き払う。 バエルの率いる66軍団の地獄の悪霊どもと、松下率いる『千年王国』軍団の決戦が始まった! ホーキンス将軍は夜明けを待って進軍を再開することにしたが、凶暴な亜人兵は興奮して騒ぎ立て、先へ先へと暴走する。 その勢いに引きずられるように、やがて七万の軍勢もぞろぞろと、黒い闇の中を地響き立てて進み出した……。 《汚れた霊に憑かれた人が墓場から出て来て、イエスに出会った。 …彼はたびたび足枷や鎖で縛られたが、鎖を引きちぎり足枷を砕くので、誰も彼を押さえつけることはできなかった。 そして昼も夜も墓場や山で叫び続け、石で自分の体を傷つけていた。 …イエスが「何という名前か」と尋ねられると、「レギオン(軍団)といいます、大勢なのですから」と言った》 (『マルコによる福音書』第五章より) 迫り来るその時を前に、ルイズは暗闇の奥で『虚無の呪文』を呟き続けている……。 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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楽曲紹介 動画WiiMusic クリップ三本詰め合わせ その③ ←全3曲 【Wii Music】テトラと演奏「スカボロ・フェア」【WiiMusic】 WiiMusic スカボロ・フェア _コメント 〜楽曲一覧〜 ●スタンダード 〜 Standard 〜 ├ スカボロ・フェア ←いまここ ├ 思い出 ├ ちょうちょ ├ もみの木 ├ サントゥルセからビルバオへ ├ さくらさくら ├ トロイカ ├ ラ・バンバ ├ 波濤(はとう)を越えて ├ ラ・クカラチャ └ ぶんぶんぶん 楽曲紹介 前の楽曲:いとしのクレメンタイン 次の楽曲:思い出 スカボロ・フェアは、中世末期の英国で重要な交易 場スカボロで開かれていた、スカボロの市(いち) のことです。吟遊詩人たちによって詩の内容はさま ざまに変わりながら口伝えされていきました。 動画 WiiMusic クリップ三本詰め合わせ その③ ←全3曲 http //www.nicovideo.jp/watch/sm5000450 【Wii Music】テトラと演奏「スカボロ・フェア」【WiiMusic】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm4997482 WiiMusic スカボロ・フェア http //www.nicovideo.jp/watch/sm4941494 目次へ戻る _コメント 名前 コメント Wii Music 攻略まとめ @ ウィキ へ戻る マリオカートWii攻略まとめ @ ウィキ どうぶつの森Wii攻略まとめ @ ウィキ
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アルビオンの首都ロンディニウムにほど近い、工廠の街ロサイス。 数時間前に、神聖アルビオン帝国空軍の旗艦である『レキシントン』の艤装作業が完了し、食料などの搬入作業も終わろうとしている。 町はずれには、作業員達が憩いの場にしている酒場があったが、今は閑古鳥なのか客は誰もいない。 太陽がそろそろ傾き始める頃、店主がため息をついた。 「こりゃあ、困ったなあ…大赤字だ」 木製のカウンターの裏には、大きな酒樽がいくつも並んでいる。 『レキシントン』をはじめとする戦艦の艤装が始まり、街が活気づくと予想した店主が大枚を叩いてかき集めた酒だ。 ところが、ロサイスで働く技師や商人の足がぱったりと途絶えてしまった。 一仕事を終えて、懐の暖まった連中を相手に酒を振る舞おうと思っていたが、夜になっても客足はまばらだった。 なじみの客もなぜか来なくなり、店主は買い付けた酒の買掛金をどう工面しようとか途方に暮れていた。 「あの…」 店主はカウンターに肘を突いていたが、突然聞こえてきた声に驚き、バッと顔を上げた。 お客が来たかと思い声の主を捜し、店内を見渡す。 「あの、こっち」 店主が声のした方を見ると、そこにはカウンターとに頭が隠れてしまう程小さい少女が立っていた。 赤茶色の頭髪を紐で纏め、右肩から前に垂らしており、顔立ちはその年頃の少女とは思えないほど整っている。 身体には茶色のローブを纏っており、決して裕福には見えない。 「なんだい嬢ちゃん、ここは子供の来る所じゃないぞ」 「ひとをさがしてるの」 「なんだ、人捜しか…」 「おとうさんが、なにかあったら、ロサイスではたらいてるおじをたずねろって」 店主は少女の話から、戦災孤児か何かだと判断した。 「ロサイスで働いてる叔父ねえ…悪いけどなあ、この店にゃ今、ロサイスで働いてる奴らは来ないのさ」 赤毛の少女が首をかしげる。 「どうして?ここはさかばじゃないの?」 「そりゃあ、そうなんだが……何の仕事をしてるのか聞いてないのかい」 「うーんと……くんせいのお肉とか、やさいとかを、ふねにはこぶんだって」 「くんせい?すると、保存食か。ロサイス北通りに、赤い煉瓦のデカイ建物がある、そこが船に食肉を卸してるはずさ、そこを訪ねな」 店主はそう言いながら、カウンターの裏から小さな乾し肉の包みを渡した。 「これ、なあに?」 「干し肉さ、一切れだけやるよ。探し人が見つかったら、包み紙に書いてある酒場をよく宣伝しておけよ」 「ありがとう、おじさん。これお礼ね!」 少女がカウンターの上に小さな巾着袋を置くと、走って酒場を出て行ってしまった。 「戦災孤児かねえ、ああ畜生、人のこと心配してる場合じゃねえってのに……」 ふぅ、とため息をつきながら、カウンターの上に置かれた巾着袋を持ち上げる。 思ったよりもずっしりと思いそれは、ジャラリと、魅力的な音を響かせた。 「……金か?どうせはした金…いや、それにしちゃ重すぎる」 恐る恐る袋を開けると、そこには金色に輝く新金貨が五枚も入っていた。 「ちょ、え、なんだ、こんな大金!?」 袋を握りしめて外に出る、キョロキョロと辺りを見回したが、既に少女の姿は見つからなかった。 試しに自分の頬をつねってみたが、当たり前のように痛かった。 「夢じゃねえかなあ」 それでもなお、掌の仲にある重さには、現実味を感じられなかった。 ふと、近くの路地から少女と同じ色のローブを着た人物を見つけた。 だが、背中に大剣を背負っていたので、関係はなさそうだと思い、店主は酒場の中へと戻っていってしまった。 『いやー、それにしても子供のフリがうまいね』 「褒めてるの?けなしてるの?」 路地から出てきた女性は、背中に負った大剣と喋りながら、裏通りをてくてくと歩いていた。 「ここで働いてるのは、サウスゴータから連れてこられた人間と、操られている技師が主でしょうね」 『どいつもこいつも陰気な面してやがるのはそのせいか』 「酒場は閑古鳥よ、操られていたら酒を飲む気も起こらないんでしょうね」 『武器屋の店主がよ、仕事が終わった後の酒ってのは格別だと言ってたな』 「そうねえ……私も酒じゃ酔えないけど、時々飲みたくなるわ」 『へえ、吸血鬼に酒の味がわかるのかい?』 「クセって奴よ、そう、人間の時のクセね」 ゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世と、トリステイン王女、アンリエッタの結婚式まであと九日。 結婚式はゲルマニアの首府、ヴィンドボナで行われる予定ではあるが、それに先んじてアルビオンからトリステインへの親善訪問が行われる。 当初、トリステイン側は親善訪問を結婚式の三日前にしようとしていた。 だが、アルビオン側からの強い要請により、予定を一週間近く繰り上げるハメになってしまった。 ラ・ロシェールまでルイズに随行したアニエスが、宮殿に戻り早々そのことを知らされ、顔を青くしたらしい。 マザリーニ枢機卿も、これが罠であることを重々承知していた。 そもそも神聖アルビオン帝国などという大仰な名前を付けれる連中だ、頂点に立つのは元司祭のクロムウェル。 枢機卿という立場上、マザリーニは信仰の力の恐ろしさも、その利用法も熟知している。 いや、知りすぎているがために、不可侵条約を結んだアルビオン帝国の訪問を止められなかったのだ。 トリステインは決して強い国ではない、メイジの数で競うならば、はるかに国土の広いガリアに匹敵するほどの数が居るが、国力は非常に弱いのだ。 アルビオンには強大なが空軍がある。 ガリアにはガーゴイル生産技術がある。 ゲルマニアには優れた工業技術がある。 トリステインには、とりたてて何か優れた物があるわけではない。 メイジとして優れた者が多くとも、それらが政治力、統治力を兼ね備えているとは言い難いのだ。 あるとすれば貴族の過剰なプライドであろうか。 増長したプライドが、他人を見下させ、想像力を欠如させる。 神聖アルビオン帝国が、卑怯な手段を用いて大義名分を作り出すことは想像に難くない。 しかしそれを、危機感として感じている貴族が、トリステインにどれだけ居ることだろうか。 トリステインの政治家達は、自身を奮い起こす大義名分がなければ動けないほど、保身に凝り固まっているのだ。 マザリーニは一人、執務室の窓から空を見上げ、ルイズの身を案じた。 夜のうちに、ロサイスの街を見ておこうとしたルイズだったが、日没後に現れた沢山の警備兵達を見て、それを取りやめた。 この街で働いている人間のほとんどは、アンドバリの指輪によって操られた人間達らしく、異常なほど規則正しい生活をしている。 女子供の例外もなく、日没と同時に休息を取り、日の出と同時に働き始めているのだ。 夜の街を歩いているのは警備兵だけ、ルイズの姿を見られたら間違いなく怪しまれるだろう。 ルイズは、人通りが多くなる時間まで休息を取ろうとして、適当な家屋に侵入した。 侵入した家屋には、一組の夫婦と、10才ほどの男の子が住んでいたが、ルイズのことを気にした様子もなく、機械的に日常を送っていた。 機械的に食事を取り、機械的に身体を洗い、機械的に床に就く。 ルイズはふと、吸血鬼ではなく透明人間になっていたら、こんな気分なのだろうかと考えた。 翌朝、盛大に朝寝坊したルイズは、昼近くなってやっと行動を開始した。 昨日酒場で聞いた「赤煉瓦の建物」を探そうと、操られた人間達に混じって街道を歩く。 ルイズは赤煉瓦の建物を発見したが、そそくさとその前を通り過ぎた。 中と外、両方に番兵が立っているのが見えたのだ。 視線だけ動かして周囲を観察しつつ、街を歩く。 ほとんどの人は目がうつろで、無言。 正気を保っている人間はほとんど見かけられない。 おそらく、洗脳した人間をかき集めて、仕事をさせていたのだろう。 普段なら噂話にでも興じるような、ランプ油を売る店にも人はいない。 多少、荒っぽい手段に出ようかと思ったところで、通りの先から馬車が走ってくるのが見えた。 道の脇に寄って馬車を見送る、黒く塗られた箱形の馬車は、よく見ると馬車アルビオン空軍の紋章が描かれている。 眼で馬車を追うと、先ほど通り過ぎた赤い煉瓦の建物の前で馬車が止まるのが見えた。 同時に、赤煉瓦の建物の中から髪の毛をカールさせた恰幅の良い男が出てきた。 その男は上質な絹の服を着ており、年齢は四十代ほどに見える。 それを見たルイズは笑みをこぼした。 「…あいつから話を聞きましょ」 『どうやってさ』 「”忘却”と、私の髪の毛を使って記憶を操作するわ、少しぐらいなら質問に答えてくれるでしょ」 『先住魔法で操られてる相手に”忘却”は効かないぜ』 「それは大丈夫よ、あいつ、笑ってたわ。賄賂でも貰ってきたんじゃない?」 『よく見てるなあ』 「まあね。 裏路地から先回りするわよ、竜騎兵が飛んでたら教えて」 『あいよ』 ルイズは裏路地を駆けながら、ティファニアの詠唱していたルーンを思い出す。 一度聞いただけなのに、まるで脳にこびりついたかのように、ルーンが記憶されていた。 腕の中に仕込んだ杖を右手に持ち、馬車の先へと回り込む。 周囲に、操られている人間しかいないのが幸いした。 ザザ、と足を滑らせながら、馬車の前に突如現れたルイズは、馬車を引く御者と馬車全体に向けて”忘却”の魔法をぶつけたのだ。 ぐにゃりと空間が歪み、馬車を包む。 馬車を引く馬がキョトンとして足を止め、御者もまたきょろきょろと辺りを見回した。 それを見て、ルイズは御者の膝を軽く叩き、注意を自分に向けさせる。 「あなたは街の外周をゆっくり回れと命令された、いいわね?」 「え?ああ、そうだったかなあ……」 ぼうっとした様子だが、御者は馬の扱いまでは忘れていないのか、手綱を軽く揺らして馬を歩かせる。 ローブを脱ぎ、馬車の扉を開けて中を見ると、そこには先ほど見かけた恰幅のよい男が座っていた。 ルイズはその男にローブをかぶせて視界を塞ぎつつ、自身の髪の毛を引き抜いた。 髪の毛はしゅるしゅると、まるで触手のように蠢き、太い針のようなものを作り上げる。 一見すると植物の種子にも見えるそれを、男の額にずぶりと突き刺す。 すると、もこもこと音を立てて触手が頭に張り付き、大脳へと侵入していった。 髪の毛を打ち込まれ、男は身体をがたがたと震わせていたが、しばらくすると動きを止めた。 「さあ、質問に答えて頂戴。あなたの所属は?」 「わ、わたしは、わたしは、神聖アルビオン帝国空軍の兵站支援部門……」 兵站(補給・整備・輸送・衛生)を担当する部署の者だと知り、ルイズは、してやったりと思った。 この男は、革命戦争前から戦艦に積み込む食料の運搬や検査を任されていたそうだ。 だが、多額の賄賂を受け取っていた上、軍備予算の着服がバレそうになり、レコン・キスタに鞍替えしたらしい。 「質問よ、トリステインへの『親善訪問』について」 「し、親善訪問は、親善訪問だ、としか、聞かされてない」 「上層部からの命令で腑に落ちないことはなかった?」 「あった」 「それを答えなさい」 「しょ、食料を積み込まなかったのが、2隻ある、食料の代わりに火薬と脱出廷を多く積んだ」 火薬と聞いて、ルイズの表情から笑みが消えた。 「……デルフ、当たりよ。こいつら、トリステイン側から攻撃されたという名目で船を自沈させるつもりだわ」 『だろうね』 「クロムウェルが虚無を使うというのは本当?」 「クロムウエル様は、死者を蘇らせるが、それが虚無なのか解らない。蘇らせるところを見たわけではないのだ」 「最期の質問よ、レキシントンの出航はいつ?」 「今朝、日の出と同時に、既に出航した…」 「!」 ルイズの眼が驚愕に見開かれた。 『こりゃヤバいんでねーの』 「…やられたわ、デルフ、すぐ出発しましょう」 ルイズは男を荒縄で縛り上げ、猿ぐつわを噛ませると、額に打ち込んだ自身の髪の毛を引き抜いた。 ローブを身に纏いつつ、馬車の扉を開け外に飛び出す。 ルイズは街の外で待機させている吸血馬の元へと急いだ。 「……もご、むご!?む…」 猿ぐつわを噛まされ、喋ることのできなくなった男は、翌日の朝になって御者が正気に戻るまで、馬車の中に閉じこめられていたという。 街道に出たルイズは、スカボローの港へと急いでいた。 吸血馬で堂々と街道を走ると、その姿を見た度との何人かはルイズを指さして驚愕の視線を向ける。 おそらく、石仮面……いや、鉄仮面の名がそれなりに広まっているのだろう。 ルイズはフードを深く被りなおし、デルフリンガーの重さを確かめた。 『嬢ちゃん、どうする気だい、港から出る船じゃあの戦艦には追いつかねえと思うぜ』 「スカボローの港には警備用の竜騎兵かグリフォンがいるはずよ、それを奪うわ」 吸血馬が走る。 ド ド ド ド ド ド ド ド ドと、地響きのような足音を響かせ、土煙を上げながら走る。 「止まれ!止まれーっ!」 途中、騎馬兵がルイズを止めようとするが、吸血馬はそれを無視して走る。 スカボローの港が遠目で見えてきた頃、直径1メイルはある火の玉が吸血馬の進行方向に落ちた。 ボンッ、と音を立てて火球が地面に衝突し、炎が飛び散る。 吸血馬はそれを難なく飛び越えると、その強靱な足で地面を踏みしめ急停止した。 ルイズが上空を見ると、竜騎兵が二騎、ルイズに向けて杖を構えているのが見えた。 一つは上空20メイルほどの高さに、もう一つは50メイルほどの高さに浮いている。 ルイズの口元に、笑みが浮かんだ。 低空を飛ぶ竜騎兵の杖から、『フレイム・ボール』と思わしき火球が生まれ、ルイズめがけて放たれ。 高い位置にいる竜騎兵からは魔力の尾を引いた『マジック・ミサイル』が放たれた。 「飛べ!」 ルイズが叫ぶ。 「GOAAAAAAAAAAAAAAA!!!」 吸血馬がそれに呼応し、竜のような咆吼を上げた。 ドォン、と音を立て、吸血馬とルイズが炎に包まれる。 それを見て、二人の竜騎兵は笑っていた。 『フレイム・ボール』と『マジック・ミサイル』を食らい、跡形もなく吹き飛んだだろうと思ったのだ。 この二人は、ニューカッスル城から脱出したという『鉄仮面』の噂を知っていたが、ただの噂だろうとタカをくくっていた。 だからこそ笑っていられたのだ。 だが、炎を突き破り、高さ60メイル以上にまで飛翔した吸血馬とルイズを見て、二人は笑うのを止めた。 http //www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0412.jpg 竜騎兵は、我が目を疑った。 馬が、竜を『見下して』いたのだ。 その馬はまるでワイバーンのように、頬が裂けるほど口を開いて、竜騎兵を飲み込んだ。 吸血馬は空中で竜を踏みつぶし、たてがみを伸ばして、竜と同化していった。 もう一人の、低空を飛ぶ竜騎兵は、その異常な光景に目を奪われていた。 馬が竜を食らい、地面へと落ちる。 あまりにも常軌を逸しているその光景に、身が震えた。 「ぐっ」 不意に、竜騎兵の身体を、熱い何かが貫いた。 吸血馬から飛び降りたルイズが、デルフリンガーを使い、上空から竜騎兵を貫いたのだ。 竜騎兵はそのまま落下し、地面へと縫いつけられた。 「BUGOAAAAAA……」 竜と同化した吸血馬が、ぐちゃぐちゃになった足を引きずりながら、ルイズへと近寄る。 「これも食べなさい」 仕留めた竜をルイズが指さす、すると吸血馬は竜に跨り、その肉体を吸収し始めた。 ルイズは辺りを見回す。 よく見ると街道の向こうでは、何人かの旅人らしき人がルイズを見て腰を抜かしていた。 ルイズは杖を取り出し、詠唱を開始した。 「ナウシド・イサ・エイワーズ……」 可能な限り広い範囲をイメージする。 二匹の竜と一体化し、巨大になった吸血馬は、翼を器用に動かしてルイズを掴み、背中に乗せた。 ぶわさっ、と、ひときわ盛大に羽を打って、吸血馬が空へと舞い上がる。 「ベルカナ・マン・ラグー…………」 ルイズは吸血馬の背から、地面に向けて忘却の魔法を放った。 ぐにゃりと景色が歪み、街道を歩く人、ルイズと竜騎兵の姿を見て腰を抜かしている人達を包み込む。 ルイズは『吸血馬』『ルイズ』『竜騎兵』の記憶を奪ったのだ。 「………あ、う…」 『おい、大丈夫かよ』 吸血馬の背に膝を付いたルイズを見て、デルフリンガーが心配そうに声をかけた。 吸血馬もまた、背に乗るルイズを心配して、羽の動きを弱める。 「だ、だいじょうぶ、よ。少し休めば…大丈夫…」 『そんな大規模の”忘却”を使ったんだ、疲れもピークに来てるはずだ』 「悔しいけど…その通りよ……」 ルイズは自身の肩を抱き、ハァハァと苦しそうに呼吸していた。 すると、竜の鱗の隙間から、吸血馬のたてがみがしゅるしゅると伸びて、ルイズの身体を包み込んでいった。 「何?」 『寝てろ、って言いたいんだろ』 「そっか……デルフ、アルビオンの戦艦が見えたら起こして」 『俺が起こすまでもねえ、こいつは、おめえの意志をよく汲み取ってるさ』 ルイズが周囲を見渡す。 いつの間にかスカボローの港を通り越し、吸血竜は雲海へと突入しようとしていた。 ルイズのまぶたが閉じられる。 戦争は決して避けられない。 せめて戦争までの残り数時間、願わくば、魔法学院でのひとときを夢に見たい。 そうだ、私は笑顔が見たいのだ。 魔法が使えないと言われ、ゼロといわれバカにされ続けた私が本当に欲しかったのは、皆の賞賛を浴びることでも魔法が使えるようになることでもない。 ただ、笑い合いたかった。 雲海の中を飛翔する吸血竜は、ルイズの瞳から涙が溢れたのを感じた。 たてがみを伸ばして、そっと涙をぬぐう。 四枚の翼を持った異形の竜が、おおおおんと鳴いて、翼をはためかせた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
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すばる2004年10月号に掲載された、篠原一氏の小説『スカロボフェア』と、峰倉かずや氏の漫画『スティグマ』(新書館 2000/12)の比較検証ページです。 検証1 検証2 補足 刺青の補足 検証1 『スカボロフェア』 P75L13-P76L32 『スティグマ』 P56-P61 市場の雑踏に直面して、かすかな眩暈を覚える。夏の日射しだ。そして、私はそれを見つけてしまう。――蜥蜴を。蜥蜴はその人の鎖骨の上に気怠く横たわっていた。それから、頭を持ち上げると、私を振り向いた。蜥蜴は紅玉のような赤い瞳をしていた。市場の喧騒は何故か私の耳に届かず、「スカボロフェア」のあの唄だけがゆっくりとつま弾かれていた。Are you going to Scarborough Fair?Parsley, sage, rosemary and thymeRemember me to one who lives thereFor once she was a true love of mine.男がゆっくりと嗤うのがわかった。私の首を真綿で締めつけるようにゆっくりと嗤うのがわかった。私は負けたくないと思った。ここで倒れてはいけないと思った。雑踏が、非道く緩慢な波の動きのように感じられた。早く、時間よ、たて。早く、波よ、ひけ。早く、私の目の前から立ち去れ。赤い瞳をした蜥蜴は二つの眼で私をじっと見ている。くるりと男の首のまわりを這ってまわる。男は嗤う。我慢しきれず、私は吐血し、胸を押さえながら前のめりに倒れた。 ゆっくりと扇風機がまわっている。手を伸ばしたら届きそうな気がした。私は手を伸ばす。しかし、扇風機に手は届かない。私は身体を起こす。宿屋のベッドの上だった。「新月……」何処に行ってしまったのだろう。部屋の中に新月はいなかった。しかし、彼女のベッドの上にはトランクが相変わらずおいてあったので、一度は一緒にか、別々にか、この部屋に戻ったことはわかった。――何処に行ってしまったのだろう。窓は開け放たれて、真白いカーテンが風にそよいでいる。ギィ……と部屋のドアが開いた。新月だった。琺瑯の洗面器と手ぬぐいを彼女は持っていた。目を覚ました私を見て彼女は笑った。大輪の花のようだった。カサブランカ。そんな印象を私は持った。「俺は倒れたのかな」イエス。「ここに運んでくれたのは新月?」ノー。「誰かに手伝って貰った?」イエス。「何故倒れたか聞かないの?」ノー。「抱きしめてもいい?」イエス。琺瑯の洗面器をベッドサイドテーブルに置き、彼女は身を任せてきた。軽い、人形のような、現実感のない重み。夢の重さ。羽根の重さ。碧色の瞳がされるがままに虚空を見つめている。私はやわらかいその身体を逃がさないようにきつくきつく抱きしめた。軽くて、重い、罪の意識。二年間、自由にされていただけだったという事実の重み。アイツは私を取り戻しに来た。自分から逃げられないのだと言いに来た。蜥蜴。「ありがとう、新月。俺はもう大丈夫」でも、訣別だ。 検証2 『スカボロフェア』 P69 下段(部分) 『スティグマ』 P77, P15, P75 私は男と暮らした。いわれるままになんでもやった。クスリをさばいたり、女をさばいたり、金満家に子供を売りつけたりした。そして、言われるままに、私は野兎を撃ったS W M5906で人を撃った。金品を奪えるだけ奪って、屍体は路地裏に捨ててきた。 撃鉄を起こす感触と硝煙のにおいはうまく私の心のやわらかいところに届いた。 男はそんな私を気に入った。「まるで殺戮のための機械だな。見境なくやってくれて嬉しいよ」 補足 刺青の補足 『スカボロフェア』 P69 下段(部分) 『スティグマ』 P30 右上のコマ 男は咽喉元と鎖骨の間に蜥蜴の刺青を入れていた
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足 スカボロウ フェア 足(4丁ハンドガン) オニキスローゼス 足(2丁ショットガン)
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 始祖降臨祭の期間中の、ある真夜中。 シェフィールドは地元出身のフーケ(マチルダ)と、ついでにベアード(ワルド)を連れて、 雪深いサウスゴータの山中に入っていった。シティからは30リーグほど離れている。 土メイジのフーケにとって、自分の故郷の土地は庭にも等しい。暗闇の中でも大地の様子は手に取るように分かる。 ベアードも『魔眼』を用いて足元を照らし、地下の水脈を見つけ出し、遡っていく。 やがて、滾々と清水が湧き出ている、開けた岩場に出た。 「……ここが、サウスゴータで一番の水源地さ。市内の三分の一ほどの井戸は、ここから水を引いているはず。 にしても、毒を流すといっても水量が膨大だから、相当薄まってしまうんじゃないかい?」 「毒じゃないわ。むしろクスリよ、クスリ。くっくくくく」 シェフィールドは、ポケットから指輪を一つ取り出した。 「それは、クロムウェルのしていた指輪じゃないの」 「いいえ、これは私のもの。盗んできたのはべリアルのじじいだけどね。 もともとはトリステインのラグドリアン湖にあった、『水の精霊』の秘宝。 その名も『アンドバリの指輪』よ。聞いたことはない?」 「宝石から放つ魔力で生物の心身を乗っ取り、意のままに操るという恐るべき指輪だな。 透明な液状の体をもつ先住の存在、『水の精霊』の力を凝縮したものだとか」 「そう。心身の変性が『水』の系統の本質であるならば、これはいわば、水の秘薬の結晶。 その力を解放すれば、何万という人間を一人で操ることも可能なのさ。 あれが神聖皇帝なんて名乗っていられるのは、この指輪あってのことよ。 もちろん、我がガリア王国が強力にサポートしたからでもあるけどね」 シェフィールドは二人に羊皮紙を手渡すと、水源に指輪をかざした。 額のルーンが輝きを放つ。『虚無の使い魔』のひとつ、魔法具を自在に操る『ミョズニトニルン』の印だ。 「これから、この水源地に『アンドバリの指輪』の力を解放するわ。 さあ二人とも、その紙に書いてある呪文を唱えて。 《きれいはきたない、きたないはきれい。闇と汚れの中を飛ぼう》……」 あまり聞いたことのない呪文である。指輪の魔力を解放するための、先住の魔法のようだ。 「ねぇ、セリフのパート分けや振り付けまで指示してあるんだけど。何これ、劇の脚本?」 「ふん、『マクベス』か。まぁあの劇にも、いろいろ秘術が記されているらしいがな」 「ほら、早く呪文を唱えなよ! 魔女の先住魔法には、こういうのも必要なんだから!」 《「三度鳴いたぞ、ブチ猫が」「三度と一度は、ハリネズミ」「『いまだ、いまだ』と化けもの鳥」 「釜の周りを回ろうよ、腐った臓物放り込め! まずは冷たい石の下、三十一夜を眠りつつ、毒の汗かくヒキガエル。ぐらぐら煮えろ、釜の中」 「「「苦労も苦悩も火にくべろ、燃えろよ燃えろ、煮えたぎれ!!」」」 「お次は蛇のブツ切りだ、ぐらぐら煮えろ、釜の中。 カエルの指先、イモリの目、コウモリの羽根、犬のべろ、マムシの舌先、蛇の牙、フクロウの羽根、トカゲの手。 苦労と苦悩のまじないに、地獄の雑炊煮えたぎれ!」 「「「苦労も苦悩も火にくべろ、燃えろよ燃えろ、煮えたぎれ!!」」」 「狼の歯に龍の皮、鮫の胃袋煮えたぎれ。闇夜に抜いた毒ニンジン、ユダヤ人から腐れ肝、 山羊の胆汁、月食の、夜に手折ったイチイの木。トルコ人から鷲っ鼻、タタール人から厚唇、 売女がドブに生み落とし、すぐ首絞めた赤子の指。トロリトロリと煮えたぎれ! おまけに虎のはらわたを、入れて薬味をきかせよう」 「「「苦労も苦悩も火にくべろ、燃えろよ燃えろ、煮えたぎれ!!」」」 「ヒヒの血注ぎ冷ましたら、これでまじないおしまいだ」》 (シェークスピア『マクベス』第四幕・第一場、三人の魔女) 呪文の詠唱が終わるや、指輪の宝石はとろりと溶けて、水源に滴り落ちた。 「ははははは、さあこれで世の中、もっと面白くなるよ!」 始祖降臨祭の最終日の朝。シティ・オブ・サウスゴータは一面の銀世界だ。 駐屯している連合軍の司令部は、市内最高級の宿屋の二階大ホールにあった。 トリステインの軍首脳部は、明日以降の侵攻作戦について話し合いをしている。 集まっているのはド・ポワチエ将軍、ウィンプフェン参謀総長、ラ・ラメー空軍司令官など。 「明日で休戦期間も終了、また戦争が始まりますな。補給物資の搬入は今夜までに全て終わります」 「間に合ったな、やれやれ。アルビオンの騙し討ちもなかったし、奴らも余裕はなかろう。 一気にロンディニウムを包囲するか、外堀を埋めて孤立させ、内応を図るかというところだ」 ははは、と笑いが出る。休戦期間が長かったため、やや気分が弛緩しているのだ。 「ところで、ハルデンベルグ侯爵やゲルマニアの将軍たちは?」 「ロサイスや周辺都市に、抑えのため分散させた軍の一部に、不穏な動きがあるとかでな。 調査中につき、軍議には遅れてくるそうだ。ふん、まあトリステイン軍だけでも進軍してしまうか」 「そういうわけにも行きませんなあ。彼らの新兵器は、この戦争になくてはならないものですし」 と、ドアがノックされる。 「誰だ、何用だ? 軍議中だぞ」 「王室よりお届け物です。今朝の便で届きました」 届いた荷物は、王室の紋章が彫られた豪華な木箱だ。デムリ財務卿からの手紙も付いている。 読めば『先日、ド・ポワチエ将軍の元帥昇進が決定。この杖で残りの連勝街道を指揮されよ』とある。 いそいそと箱を開けると、黒檀に金で王家の紋章が彫り込まれた見事な杖が入っていた。 「おお、これは元帥杖ではないか! 財務卿も粋な計らいをなさる!」 「おめでとうございます、元帥閣下!」 「いやっははは、これで気を引き締めろということだろう。ゲルマニア軍が戻り次第、首都に向けて……」 新元帥がいい気になっているところを、ドーーーーンという爆発音が遮る。 「むっ、何事だ?」 急いで窓の外を見ると、どうやら近くの宿舎で火薬の暴発があったらしい。 通りを沢山の兵士が駆け回っているが、消火しているのではなさそうだ。 「あの旗印は、西側に駐屯しているラ・シェーヌ連隊のものだぞ。どうしたのだ、武装して?」 「あっちには、ロッシャ連隊もうろついていますな。この長い休みで指揮系統を忘れておるのでは?」 「いや、なにやら市民たちも、勝手に銃や剣を持っていますが……」 一同が首を傾げるうちに、外の兵士たちは無表情のまま、銃口を上に向けた。 窓の傍にいた新元帥閣下は、元帥杖とともに一斉射撃を受け、蜂の巣になって倒れた。 「「「……は、反乱だーーっ!!」」」 将軍たちは一斉に叫ぶ。その直後、司令部の部屋に士官が飛び込んでくる。 「反乱です! 街の西区に駐屯していた連隊が、一斉に反乱を起こしました! 現在、街の各地で我が軍と交戦中! ここも危険です、退避してください!!」 「なんじゃとぉ!? アルビオンからカネでも貰ったのか?」 「げ、ゲルマニア軍はどうした!? まさか奴らがトリステインを裏切りおったのか!?」 「詳細は分かりません! 次から次へと反乱兵は増えていきます!」 「……ということは、どういうことかね」 「西区以外の兵士や市民も、次々と暴動を起こしているのです! 反撃しようにも、武器弾薬はあらかた向こうに奪われておりまして」 「では奴らの暴れるままにしておくのか」 「今のところ、それ以外どうすることもできません」 「じゃあ、この街を取られてしまうじゃないか! どうして何のために反乱したのかね?」 「それが全く分かりません! は、早くお逃げください!」 士官の報告は全く要領を得ない。反乱の理由が分からないなら、敵の魔法か何かかもしれない。 トリステインの将軍や士官たちは、元帥が殉職したため、ぐるっと一人の男の方を振り向いた。 「「「ご、ご命令を! ウィンプフェン総司令官閣下!」」」 「え、わ、私が? ……た、退避だ! 総員退却せよ!!」 連合軍の崩壊は早かった。 原因の全く分からない兵士たちの反乱、総司令官の殉職、総司令部のいち早い脱出による指揮系統の混乱。 無表情に戦友へ銃口を向ける反乱兵の様子から、何らかの魔法によるものとは考えられるが、どうしようもない。 なにしろシティ・オブ・サウスゴータの市民さえ、武器を持って一糸乱れぬ動きで襲い掛かってくるのだ。 しかもゲルマニア軍は、いつの間にか綺麗に姿を消している。残っているのはトリステイン軍だけだった。 「畜生! ゲルマニア軍め、俺たちをアルビオンに売り渡したのか!? 司令官まで逃げやがって!」 「う、撃てねえ! あいつらはこないだまで、一緒に飲み明かしていた連中じゃねえか!」 「それどころか、市民のガキどもまで銃を持っているんだぞ! 撃ち殺すか、退却するか? 降伏しちまうか?」 「おい、俺の兄弟が西側にいたんだ、撃たないでくれ!」 「兵隊さん、わしの家族を知りませんか!? まさかあの反乱軍の中に?」 「ええーい、どけ! こっちの命も危ないだろうが、まとわりつくな!」 「おいっ、大砲の中に身を隠すやつがあるかっ」「ぎゃっ、火薬がしけっているぞ!」「うわぁあ、ものすごいことしはる」 混乱に次ぐ混乱。昼前には、市内の防衛線は崩壊し、いたるところで王軍は潰走を始めた。 生き残ったウィンプフェンらは、街の南東部の外れに臨時司令部を置き、事態の収拾に努めようとする。 市民を含めた反乱兵は、トリステイン軍全体のおよそ三分の一から半分。残る正常な軍は三万にも満たない。 偵察の竜騎士から『アルビオン軍主力の四万がこちらに進撃中』との急報が入り、さらなる混乱が広がる。 「こ、ここはもうダメだ! ひとまずロサイスまで退却しろ!! そこから伝令を出して、トリステイン政府に直接指示を仰ぐ!」 だが、ロサイスには敵艦隊が多数停泊しており、近付けば砲撃してくる。伝令さえも撃ち落される。 今やアルビオンとゲルマニアが手を結んだ事は、明らかだった。敵軍は総勢七万を超える勢いだ。 トリステイン軍三万足らずは、いつの間にかアルビオン大陸の只中に、完全に孤立していた。 臨時司令部には絶望感が漂い、正常な兵士たちも続々と投降を始める始末だった。 やがて総司令部は、敵軍の手薄なスカボロー港へ向かって逃げ出した。商用のフネを奪って国へ帰る気だ。 それを追って、残った軍勢もぞろぞろと敗走する。 一方、松下たちは一部市民や『妖怪亭』の一同と共に、ホウキに乗って市外へ脱出していた。 周りでは騎士も歩兵も武器を打ち捨て、右往左往している。 「ふーっ、マツシタ! これはいったい、どういうこと!?」 「アルビオンの魔法兵器による強制反乱だな。まさか、ここまでやるとは! 恐らく例の『アンドバリの指輪』を水源地で発動させ、市内の水を飲んだ人間を片っ端から操っているのだろう。 こうなればもう、ぼくの手にも負えない。血路を開いてアルビオンから逃げるとしよう」 「そ、そんなあっさり! あんたなら何とかなると思ったのに」 ルイズは興奮するが、松下は至極冷静だ。 「ゲルマニアまで敵側に回ったんだぞ、そのうちガリア艦隊だって来るかもしれん。 不吉な事を言うようだが、恐らくトリステイン本国も、今頃は両国から総攻撃を受けているだろう……」 「じょ、冗談じゃないわ! 何でゲルマニアまで!? クロムウェルを打倒して、共和制を封じ込め、アルビオンの王政復古を成し遂げるんじゃなかったの?」 「とにかく、生き残ることが先決だ。きみがよければアルビオン共和国に降伏しようか? そしてクロムウェル政府の内側から、真の『千年王国』の教えを説いて回ってもいいが」 「いやよ、降伏なんて絶対にいや! 命より富より『名誉』が大事よ、本当の、精神的な貴族は!」 貴族とは『敵に背を向けずに戦う者』だと、ルイズは家族から教育されたし、常々そう思ってきた。 その貴族である上級将校たちが兵士や市民を置いていち早く脱出し、味方も次々と逃げ惑い、敵に降伏する。 誇り高い貴族を必要以上に自認するルイズにとって、耐え難い屈辱的な事態であった。 人間を超えた知能と視野を持ち、ある意味で柔軟な思考をする松下には、これも人間のひとつの姿でしかなかったが。 「融通の利かない奴だなぁ、相変わらず。我ら『千年王国』の教えは、そんなことにとらわれず、 人間全ての平等と幸福の、あるべき道を説いているのだが……」 「そんなこととは何よ、この精神的奇形児! 天災児! あんたが降伏したけりゃ、勝手にしなさい! 私は死ぬまで戦うわ!」 金切り声を上げるルイズ。ふぅ、と松下は溜息をつく。 「こんなところで『ご主人様』に死なれても、こっちが困る。 きみは『虚無の担い手』だぞ? メシアに匹敵する強い『命運』を持って生まれた、選ばれし人間なのだ。 まだきみの顔に死相は出ていない、今は死ぬべき時ではないのだよ。 降伏がいやならスカボローへ向かおう。トリステインもタルブも心配だ」 ルイズは少し落ち着いた。まぁ、むやみやたらと死にたくはない。 「……そうね、女王陛下だって本国で苦戦しておられるかも。国家存亡の危機を救わなきゃ! あ、そうよ、私の『虚無』の力でこの場を何とかできないかしら? ほら、タルブの時みたいに、あんたと協力して……!」 「そうそう都合よくいくもんかなあ。まあ、『祈祷書』を読んで、いい呪文を探しておいてくれ」 さて、深夜を過ぎて鶏鳴の頃、全力で逃走していた総司令部は、どうにかスカボローへたどり着いた。 そこへホウキに乗って、金髪の若者もやってくる。松下たちとは別行動をしているギーシュだった。 顔は蒼褪め目は血走り、胸には先日貰った勲章を沢山くっつけている。 「おお、きみはギーシュ・ド・グラモンくん! 無事だったかね!」 「ええ、お蔭さまで! ご無事で何よりですウィンプフェン参謀総長、いや総司令官閣下!」 ギーシュはほっとした。スカボロー港のフネは残り少ないようだ、さっさと逃げて来てよかった。生存への切符は先着順だ。 これでアルビオンから逃げられる、命が助かる。名誉も富も大事だが、それは命があってこそだ。 『命を惜しむな、名を惜しめ』というグラモン家の家訓は、美酒に酔っ払ってどこかへ置き忘れてしまった。 しかし、将校たちからは、ギーシュへの疑いの眼差しもあった。 「そうだ、きみは確かマツシタ伯爵と一緒にいたのでは? そのホウキは彼が作ったのだろう?」 「し、知りませんよ、ぼかぁ知りません、知りませんったら!」 「いや、反乱の首謀者として彼らが怪しいと言っているわけではないが、その可能性もあるな……」 「ふうむ、でギーシュくん、何かよい策はないかね? 少しでも敵の襲来を足止めせねば、我々の脱出も困難となる」 ……いかん、怪しまれている。この場を何とか言い逃れなくては。 ゲルマニア軍が裏切るとは予想外だったが、恐らく反乱兵と同じような、何かの魔法のせいだろう。 ブラウナウ伯爵やジュリオくんは、きっと僕を見捨てたりしないはず。きっと。 そうだ、今こそ千載一遇のチャンスじゃないか。あの『悪魔くん』を死地へ向かわせ、暗殺させるのだ。 さすれば僕には3万エキューというカネと名誉が転がり込み、栄光ある自由とゲルマニアの武器工場の経営権が舞い込んできて、 モンモランシーを娶り美女を侍らせて、左ウチワで遊んで暮らせるんじゃないか。おお、チャンスは今しかない。 「そ、そうです! マツシタたち『千年王国』教団を、反乱兵やアルビオン軍とぶつけては!?」 ジュリオに飲まされた『魔酒』でアタマが少し変になっているギーシュは、苦し紛れに松下を裏切る言葉を口にした。 これも、黒幕の一人ダニエル・ヒトラーの策略のうちだったのだが。 「おお、それだ! それがよろしい!」 「あやつらは王軍でもないのに目立ちすぎますし、何だか熱狂的で気持ち悪い集団ですし」 「毒を以って毒を制す、だ!」 「悪魔には悪魔を、ということですな! 分かります!」 恐慌と混乱の極みにあった総司令部は、ギーシュの策に飛びついた。 ギーシュは再び、心からほっとする。しかし……。 「で、勿論きみも戦ってくれるんだよね? 我らの英雄ギーシュくん。彼らに連絡もせねばならんし」 「………………………………え?」 《今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、私を知らないと言うだろう》 (新約聖書『マタイによる福音書』第二十六章より) (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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