約 3,024,031 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2626.html
「さぁ!おたべなさい!」 「たべてくれないと」 「「ふえちゃうぞ!!」」 悪夢である。 突如里に現れたゆっくりれいむはそれまでのゆっくりとは違っていた。 前触れもなく”お食べなさい”をしたかと思うと分かれた傍から増殖してしまうのだ。 潰してもその破片からまたゆっくりれいむが生えてくる。 そうして分裂を延々と繰り返し、あれよという間に膨大な数となってしまった。 このままでは里がれいむで埋まってしまう。 里長は里の人間を集め対策を練ることにした。 「密閉した空間に閉じ込めれば増えるための空間がなくなり、増殖を止めることができるのでは?」 ある若者の発言を受け、長は早速加工所から巨大な透明な箱を取り寄せ、 片っぱしかられいむを詰め込んだ。 「「「「「ゆゆ!せまいよ!ゆっくりさせてよー!」」」」」 箱に詰められ非難轟々のゆっくりれいむたち。 「はっ、その中じゃもう増えられまい。大人しくしているこったな」 そう長が言うとゆっくりれいむたちは不敵な笑みを浮かべた。 「「「「「ゆっふっふっふ、にんげんさんはあまいね!とってもあまあまだね!」」」」」 「なんじゃと?」 「「「「「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」」」」」 「「「ゆえええええええん!たべないでね!やめてね!」」」 なんと箱の中のれいむたちがおもむろに共食いを始めてしまったではないか。 これには長も仰天した。 「いかん!空間ができてしまう!」 「「「「「ゆっふっふっふ、さぁ!おたべなさい!たべてくれなきゃ」」」」」 「「「「「「「「「「ふえちゃうぞ!!!!」」」」」」」」」 またもや満杯となる箱。 「「「「「ゆゆ!またきつきつだよ!ゆっくりへらすね!むーしゃむーしゃ、しあわせー!」」」」」 「「「「「ゆっくりやめてね!れいむがゆっくりできなくなるよ!」」」」」 「「「「「またふえるよ!さぁ!おたべなさい!食べてくれなきゃ――」」」」」 「長、これは……!」 「……うむ」 「「無限ループ!!!」」 透明な箱は地中深く埋められ、人々の脳裏から永遠に忘れ去られたという。 ___________________________________ 過去に書いたもの きれいなゆっくり ゆっくり城 スィー このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2661.html
「さぁ!おたべなさい!」 「たべてくれないと」 「「ふえちゃうぞ!!」」 悪夢である。 突如里に現れたゆっくりれいむはそれまでのゆっくりとは違っていた。 前触れもなく”お食べなさい”をしたかと思うと分かれた傍から増殖してしまうのだ。 潰してもその破片からまたゆっくりれいむが生えてくる。 そうして分裂を延々と繰り返し、あれよという間に膨大な数となってしまった。 このままでは里がれいむで埋まってしまう。 里長は里の人間を集め対策を練ることにした。 「密閉した空間に閉じ込めれば増えるための空間がなくなり、増殖を止めることができるのでは?」 ある若者の発言を受け、長は早速加工所から巨大な透明な箱を取り寄せ、 片っぱしかられいむを詰め込んだ。 「「「「「ゆゆ!せまいよ!ゆっくりさせてよー!」」」」」 箱に詰められ非難轟々のゆっくりれいむたち。 「はっ、その中じゃもう増えられまい。大人しくしているこったな」 そう長が言うとゆっくりれいむたちは不敵な笑みを浮かべた。 「「「「「ゆっふっふっふ、にんげんさんはあまいね!とってもあまあまだね!」」」」」 「なんじゃと?」 「「「「「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」」」」」 「「「ゆえええええええん!たべないでね!やめてね!」」」 なんと箱の中のれいむたちがおもむろに共食いを始めてしまったではないか。 これには長も仰天した。 「いかん!空間ができてしまう!」 「「「「「ゆっふっふっふ、さぁ!おたべなさい!たべてくれなきゃ」」」」」 「「「「「「「「「「ふえちゃうぞ!!!!」」」」」」」」」 またもや満杯となる箱。 「「「「「ゆゆ!またきつきつだよ!ゆっくりへらすね!むーしゃむーしゃ、しあわせー!」」」」」 「「「「「ゆっくりやめてね!れいむがゆっくりできなくなるよ!」」」」」 「「「「「またふえるよ!さぁ!おたべなさい!食べてくれなきゃ――」」」」」 「長、これは……!」 「……うむ」 「「無限ループ!!!」」 透明な箱は地中深く埋められ、人々の脳裏から永遠に忘れ去られたという。 ___________________________________ 過去に書いたもの きれいなゆっくり ゆっくり城 スィー
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4244.html
『おたべなさいをしたれいむ』 17KB 虐待 家族崩壊 共食い 赤ゆ 現代 人間なし 独自設定 ゆっくりが勝手に自滅する話です 「さあ、おたべなさい!」 一匹のゆっくりれいむが、娘たちの前でおたべなさいをした。 野良生活の末、飢えに苦しんでの決断だった。 (おちびちゃんたちのために、おたべなさいをするなんて……れいむはぼせいたっぷりのゆっくりしたおかあさんだよおお!) おたべなさいをした瞬間、れいむはこれ以上ないくらいしあわせーを感じていた。 子供たちには尊敬され、自分はお空のゆっくりぷれいすでゆっくりできる。 まさに理想の最期だと思っていた。 「おきゃあしゃんが、えいっえんにゆっくちしちゃったのじぇ……」 「ゆえええん! おきゃーしゃあああん! ゆっくちいいいいい! ゆっくちいいいいいい!」 その二匹の赤ゆっくりは、れいむの餡を分けた娘だった。 姉まりさは割れた母を見上げて呆然としている。 妹れいむはもみあげをぴこぴこ振り回し、泣きながら左右にじたばた暴れている。 (ゆ……ゆ? れいむ……おきてる?) れいむは不思議と意識がハッキリしていた。 てっきりゆんごくのゆっくりぷれいすに行けるんだとばかり思っていたのに、いくら待っても何も起こらない。 よく考えてみれば、れいむはおたべなさいをした後、永遠にゆっくりしたゆっくりがどうなるのかを知らなかった。 夜のように真っ暗で、何も見えない。 可愛いおちびちゃんの声も、近所の他ゆんの声も、人間さんのすいーの音も、風の音も、何も聞こえない。 土の匂いも、水の匂いも、人間さんのごはんさんの匂いも、何も感じられない。 しゃべろうとしても口が動かせず、声を出せているのかも分からない。 「……おきゃあしゃんをたべりゅんだじぇ」 「ゆ!? おにぇーちゃん、おきゃあしゃんをたべちゃうにょ!?」 「おきゃあしゃんは、まりちゃとれいみゅのちゃめに、おちゃべにゃしゃいをしちゃんだじぇ。 まりちゃたちがたべにゃかっちゃら、おきゃあしゃんがむだじにになっちゃうのじぇ」 「ゆうぅ、おきゃーしゃん……」 姉まりさと妹れいむは、覚悟を決めて母の前に並んだ。 母はいつもの優しい笑顔のまま、真っ二つに割れて転がっている。 人間から見れば、さぞかし間抜けな表情に思える事だろう。 「ゆっくち、いちゃぢゃきましゅ……」 (ゆぐぐうう……なにごれえ、ぎぼぢわるいよ) れいむはお腹の中の餡子をぐちゃぐちゃとかき混ぜられるような不快感に襲われた。 何か硬いものが皮を破り、もぞもぞとれいむの体内に入っていく。 「おきゃあしゃん、ありがちょうにぇ」 姉まりさは涙をこらえ、母の餡子を喰らった。 本当は母とずっと一緒にいたいし、食べてしまいたくなんかない。 しかし自分が泣いたり嫌がったりしたら妹にも影響が出ると思い、何度も歯を噛み締めて悲しみに耐えた。 「うっみぇ! こりぇ、めっちゃうっみぇ!」 「れ、れいみゅうう!?」 それまで泣いていた妹れいむは一転し、大喜びで母の餡子に喰らいついた。 妹れいむのあまりの興奮ぶりに、姉まりさはちょっと引いてしまった。 姉妹がこんなにおいしいものを食べたのは、生まれた時に父から口移ししてもらった茎以来だ。 今までにも生ゴミや虫など、野良にしては豊かな食事を与えてもらっていたが、やはり餡子に勝る甘味はない。 (ゆっびゃあああ! でいむがだべられでるうううう!? やべでええええ!) 自分でおたべなさいをしたにも関わらず、れいむは心の中で抵抗した。 すっかりパニックに陥ってしまい、自分の体を喰らっているのが我が子だと気づいていない。 本ゆんは大声でやめろと訴えたつもりだったが、それは言葉にならなかった。 しゃべるための口も声帯も真ん中から半分に割れ、すでに使い物にならなくなっている。 「おきゃーしゃん、しゅっごくおいちいよお! しあわしぇー!」 (やべろおおおおおお! でいむをだべるなあああああああ!) 「おめめのぷるぷるしゃんは、とっちぇもゆっくちできりゅにぇえええ! むーしゃむーしゃむーしゃむーしゃ!」 (うごいでえええええ! でいむのずでぎなびぎゃぐざん、ゆっぐぢじでないでうごいでえええええ! うごげえええええええええ!) れいむは必死に逃げ出そうとしたが、体は一ミリも動かなかった。 泣きたいほどつらいのに、涙が流れる事もない。 子供たちから見える母の表情は、まるで食べられる事を望んでいるかのように穏やかに微笑んでいる。 「ゆっぷう! れいみゅ、ぽんぽんいっぴゃいだよぉ」 「……ゆ、ゆう。のきょりはあちょでたべようにぇ」 母の両頬を深くえぐったところで、子供たちはその日の食事を終えた。 食い破られた穴から餡子が漏れ出し、ぐずぐずに崩れたまんじゅうの塊と化している。 子供たちは母から離れ、段ボール箱のすみっこに移動した。 目玉をほじくられ、ぺしゃんこに潰れても笑ったままの母が、少し不気味に思えたからだ。 姉まりさは母を喰らっている罪悪感から目を背けたい気持ちが強かった。 「おにぇーちゃん、れいみゅにしゅーりしゅーりちてにぇ」 「ゆん、いいのじぇ……しゅーりしゅーり……しゅーりしゅーり……」 「ゆっふうぅん、しあわしぇー」 お腹いっぱいでご満悦の妹れいむは、いつもより格段にゆっくりしていた。 姉まりさは口にこそ出さないものの、大好きなお母さんを平気でむーしゃむーしゃできる妹れいむが怖いと思い始めていた。 (でいむはいまどうなっでるのおおお!? だれがだずげでえええええ! ばりざあああああ! おどうざあああああん! おがあざああああああん!) いくら心の中で叫んでも、誰も助けてくれない。 目も見えず、声も出せず、もみあげもあんよも動かせない。 れいむは意思伝達の方法を完全に失っていた。 (どぼぢでぎゃわいいでいむがごんなべにい!? でいむは、でいむはああ、えらばれだゆっぐぢでじょおおおおおお!?) れいむは公園で生まれた野良ゆっくりだった。 汚らしい段ボール箱のお家で、家族と一緒に暮らしていた。 その公園には他ゆんの家族も住んでいたが、群れを作っているわけではなかった。 段ボール箱のお家は数が限られていて、お家宣言をされないよう互いに牽制しあっているような場所だった。 一度目の冬に父まりさがおたべなさいをし、れいむは子ゆっくりに成長した。 二度目の冬に母れいむがおたべなさいをし、れいむは成体ゆっくりに成長した。 その間、姉妹が次々と命を落とし、生き残ったのはれいむだけだった。 両親を食べ尽くしたれいむは、同じ公園に住む幼なじみの野良まりさとつがいになった。 そして娘の姉まりさと妹れいむを産んだ。 つがいのまりさは優秀なゆっくりで、餌を狩ってくる能力に長けていた。 そのためれいむの一家は安定した生活を送り、再び冬を迎える事ができた。 しかし長い冬が終わり、ようやく暖かな春がやってきたところで事態は急変した。 つがいのまりさが狩りに行ったきり帰ってこなくなってしまったのだ。 不慮の事故にあったのか、人間に捕まったのか、その後の消息は不明だ。 ただ事実として、つがいのまりさは二度と戻ってくる事はなかった。 つがいのまりさを失い、れいむたちの生活は一気に困窮した。 今まで狩りなどした事もなかったれいむは、子供たちを養う術を持たなかった。 れいむが母から教わったのは子育ての仕方だけだ。 それも子供たちと歌ったり踊ったりするだけで、実用的な能力は何一つ培われていない。 お腹が空いてたまらないれいむは、両親と同じようにおたべなさいをした。 本当ならそこで、れいむのゆん生は華麗に幕を閉じるはずだった。 (でいむはおだべなざいじだのに、どぼぢでおぎでるのお…… まざが、ごのぐらぐでゆっぐぢでぎないどごろが、ゆんごぐだの!? いやだあああああ! やっばりおだべなざいやべるうううう! でいむおうぢがえるううううううう!) 「ゆぅ、まぶちい……あしゃになっちゃんだじぇ」 「きょうも、おきゃーしゃんをゆっくちたべりゅよ!」キリッ! (ゆぎ!? ぎ、ぎぼぢ、わるい……まだげずがでいむをだべでるうぅ……) 眠りから目を覚ました子供たちが、また母の餡子を喰らい出した。 時間の感覚がなくなっているれいむは、翌日の朝になった事も分からなかった。 (ぞうだよ、でいむはおだべなざいじだんだよ…… じゃあでいむをだべでるのは、でいむのおぢびじゃだのおおおお!? やべでねええええ! おがあざんを、むーじゃむーじゃじないでねええええええ!) 子供たちのために食べられようなんて気持ちは、すっかりなくなっていた。 ゆんごくがこんなに恐ろしい場所だなんて思わなかったからだ。 (むりいいいいい! だべられるのむりいいいいい! でいむがゆっぐぢでぎないいいいいい!) 「むーちゃむーちゃ、しあわしぇー」 「まりちゃも、しあわしぇだじぇ…… おきゃあしゃんのおきゃげで、ぽんぽんいっぴゃいごはんしゃんたべりゃりぇりゅのじぇ……」 妹れいむは心の底から嬉しそうに、姉まりさは無理に笑顔を作って、母の体を貪った。 食欲旺盛な二匹の赤ゆに餡子を喰われ、れいむの体はどんどん小さくなっていく。 (がらだがだいのに、がらだがぐるじいよ……ぐらいのはごわいよ…… おうだがうだいだいよ……むーじゃむーじゃじだいよ……だれがどおばなじじだいよ……) おたべなさいをしたゆっくりの中枢餡には、保護膜のようなものが作られる。 最後の一欠けらでさえ残さず他者の糧となれるよう、体が変化するためだ。 こんな状況下にあってもなお、れいむが非ゆっくり症にかかる事なく自我を保っていられるのも、この保護膜のおかげだった。 保護膜に守られた中枢餡は、周囲の餡子を失っても損傷しない。 結果、そのゆっくりは完全に死ぬ事はなく、意識だけが鮮明に取り残されてしまう。 真っ二つに割れた体は黒ずんだりせず、思いこみの死臭も放たない。 それこそ瀕死の状態で生きながらえている何よりの証拠だ。 そして餡子が甘くおいしくなるのは、生きたまま体を貪られ、ゆっくりできない状態に陥るからだ。 どんなゆっくりでも、自分の体がかじられていくのを感じて恐怖心を抱かないわけがない。 まさしく他者に食べられるためだけに生かされている存在と言える。 (でいむはもう、だにもがんがえだくだいよ…… おぢびじゃん、はやぐでいむをだべでね。だべでね。だべでね。だべでね…… だべろおおおおおおおおお! もういやだあああああああ!) 「まりちゃたちのおきゃあしゃんが、あんこだましゃんになっちゃっちゃのじぇ……」 もはやれいむの体は、中枢餡しか残っていない。 それでも思考する意識があり、れいむはまだ生きていた。 顔も目も耳も鼻も口も足も何一つ残ってはいないただの餡子玉が、 果たしてナマモノとすら呼べるかどうかは分からない。 「ごくっじょうのあみゃあみゃ、れいみゅにちゃべりゃりぇちぇにぇええええ!」 「ゆううぅ……おぎゃあじゃあああああん!」 大口を開けて喰らいつこうとする妹れいむを押しのけ、姉まりさは母の中枢餡にすがりついた。 自分のお腹の下に母の中枢餡を包み、ぼろぼろと涙をこぼして震えている。 「ゆ!? おにぇーちゃん! おいちいあんこだましゃん、ひちょりじめしゅりゅき!?」 「ぢゃべだぐだいよおおおおお! おぎゃあじゃんまでいだぐだっぢゃううううう!」 「にゃにいっちぇりゅにょ? おきゃーしゃんは、れいみゅにちゃべりゃれりゅちゃめに、おちゃべにゃしゃいちたんだよ? だきゃらしょにょあんこだましゃんは、れいみゅのあみゃあみゃだよ!」 「ちぎゃうぅ! ごのあんごだまじゃんは、ばりじゃだぢのおぎゃあじゃんだよおおおおお!」 父の真似をして強がっていた姉まりさの口調が素に戻っている。 今まで姉妹でケンカした事なんて一度もなく、姉まりさはいつでも妹れいむを優しく守ってくれるゆっくりだった。 こんなに取り乱してわんわん泣いている姉まりさを見たのは生まれて初めてだ。 家族を悲しませているのが自分だという事実に、妹れいむはゆっくりできない気持ちにさせられた。 まるで自分だけが母を愛していないゲスゆっくりだと言われているようで不愉快だった。 悲劇のヒロイン役は、泣いている姉まりさではなく、末っ子の妹れいむにこそふさわしいものだ。 「ゆん! きめちゃよ、おにぇーちゃん。 おきゃーしゃんのあんこだましゃん、のこしゅこちょにしゅりゅよ!」 「ゆ? い、いいにょ?」 「つちしゃんにうみぇちぇ、おはかしゃんをちゅくりょうにぇ。 きっちょゆんごくにいりゅおきゃーしゃんも、しょのほうがよりょこんでくれりゅよ」 「れ、れいみゅぅ、ありがちょう……やっぴゃりれいみゅは、やしゃちいこだったんだにぇ……」 姉まりさは起き上がり、おさげで涙を拭った。 こんなに優しい妹なのに、一時でも薄情で怖いと思っていた自分を恥じた。 もちろん妹れいむには打算があった。 今は姉まりさに付き合って埋めておいて、後でこっそり掘り返すつもりでいた。 妹れいむは母のためにお墓を作ってあげた優しいゆっくりとしての立場を確立し、 なおかつおいしい餡子玉も独り占めできる。 その素晴らしい計画を立てた思考回路が、母のれいむとまったく同じであるのは親子ゆえだろうか。 「おきゃあしゃんのあんこだましゃん、ゆっきゅりこーりょこーりょしゅりゅのじぇ!」キリッ! (ひぎいいいい! いだあああああ! れいむのあんござんが、ごーろごーろじでるううう!? おぢ、おぢびじゃんが、げっでるのおおおおお!? おがあざんをお!? おばえらをうんでやっだおがあざんを、げっでるのがああああああああ!?) 剥き出しの中枢餡を転がされ、れいむは激しい苦痛に襲われた。 あまりの衝撃に、かなり強い力で蹴り飛ばされているものと思いこんだ。 実際には姉まりさがゆっくり押しているだけなのだが、 まさかれいむ自身、自分が中枢餡だけの存在に成り果てているとは想像すらしていなかった。 気が狂いそうなほどの苦痛を味わわされた挙句、れいむの中枢餡は段ボール箱から外に出された。 「しゅこっぷしゃんで、おきゃあしゃんのおはかしゃんをほりゅのじぇ」 姉まりさはお家から小さな赤いスプーンをくわえて持ち出した。 それは父のまりさがゴミ箱から拾ってきたプラスチックのスプーンだった。 土を掘るのに便利なため、この家ではスコップさんと呼んで大事に使っていた。 「ゆんしょ! ゆんしょ!」 「おにぇーちゃん、ぎゃんばっちぇにぇー」 姉まりさが地面に穴を掘っている間、妹れいむは暇そうに母の中枢餡を転がして遊んでいた。 本当はそのまま食べてしまいたかったが、そうすると自分が悪者になってしまうので嫌だった。 間違っても姉まりさを、母のために穴掘りしていたのに妹にその想いを打ち砕かれた悲劇のヒロインにはしたくなかった。 (ぐべえええ! でいむのあんござんであぞぶなああああ! あだまがごわれるううううう! あがぎががあああああ! おがあざんをぐるじべるぐぞげずぢびはじねええええええ! いまずぐじねえええええええええええええええ!) 「こんなもにょかにゃ……れいみゅ、おきゃあしゃんをゆっくちうみぇりゅのじぇ」 「ゆっくちりょうきゃいしちゃよ!」 (ゆぎょばがぶぇばああああああああ!) 妹れいむは母の中枢餡をあんよで蹴り飛ばした。 中枢餡はゴルフのパターのように転がっていき、姉まりさの掘った穴にころんと落ちた。 姉まりさは赤いスコップさんを使い、丁寧に土をかぶせていく。 「ゆわーい! おきゃあしゃんのおはかしゃんが、かんっせいしちゃのじぇ!」 お墓といっても土を盛っているわけではなく、何か目印があるわけでもない。 ただ湿った土の色が他の場所と違うため、掘り返したことが分かる程度だった。 それでも赤ゆの姉まりさにしてみれば、かなりの大仕事をやってのけたと言えた。 大喜びしている姉まりさとは対照的に、妹れいむはどこか冷ややかな気持ちでいた。 何の面影も残っていないただの餡子玉を母と呼んで慕っている姉まりさが、 だいぶ頭のかわいそうなゆっくりに思えたからだ。 「おきゃあしゃん。まりちゃはりっぴゃに、いもうちょとふちゃりでいきちぇいくよ。 おしょりゃのゆんごくかりゃ、じゅっとみまもっちぇいちぇにぇ」 姉まりさは母のお墓の前でお祈りをした。 その姿を見た妹れいむは、心の中で姉を侮蔑した。 あんな餡子玉が生きているとでも思っているのか、そうせせら笑っていた。 実はそれが見事に的中しているわけだが、その真実に気づける者は誰もいない。 (だんだのごごはあああああ!? でいむはどうなっだのおおおおお!? げずぢびどもはだにやっでるんだああああああ! はやぐでいむをぐいごろぜえええええ! ぞれがでぎないだらじねえええええ! でいむをゆっぐぢざぜないやづはみんなじねええええええええええええええ!) れいむは心の中で憎しみをぶつけまくった。 それしかできる事がなかったからだ。 もし今れいむの中枢餡を食べたなら、最高に美味な甘さになっていた事だろう。 一日、二日……数日。 どれだけの時間が過ぎようとも、れいむの意識だけは生きていた。 何度も朝日が昇って夕日が沈んだが、れいむには分からない。 それはまるで数分の出来事のようにも思えたし、永遠の地獄のようにも思えた。 暗闇と無音。 それだけがれいむに残されたすべてだった。 (ゆんごくはすてきなところなんだよ。 あかるくて、きらきらしてて、おはなさんがいっぱいで、ちょうちょさんがひーらひーらしてて、 あったかくて、とってもゆっくりできるんだよ) (おとうさんとおかあさんが、れいむをみてるよ。すっごくおこって、れいむをにらんでるよ。 れいむがおとうさんとおかあさんをむーしゃむーしゃしたから、うらんでるんだね。 ちがうんだよ。れいむはしらなかったんだよ。おたべなさいがゆっくりできないことだって、しらなかったんだよ。 やめてね。そんなめでみないでね。おこらないでね。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……) (ゆんごくには、おとうさんも、おかあさんも、おねえちゃんも、いもうとも、みーんないるよ。 だーりんのまりさが、たくっさんのあまあまをよういして、れいむがくるのをまっててくれてるよ) (れいむはおちびちゃんたちのために、がんばっておたべなさいしたんだよ。 それなのに、なんでこんなひどいめにあうの? こんなことなら、げすちびどもをむーしゃむーしゃしてやればよかったよ。 もしこのからだがじゆうになるなら、げすちびどもをせいっさいしてやるのに…… くやしいよ。くやしいよおおぉ……) (れいむのゆんごくはどこにあるの? みんなのいるゆんごくはどこ? れいむもつれてってね。おねがいだよ。おねがいだから、れいむをたすけてね) れいむの意識が夢を見ているのか、それともただの願望なのか。 いくつもの思考が脳裏をよぎり、そして霧散していった。 「にがにがのくさしゃん、はえちぇきちぇにぇ……」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 母の体というご馳走を食べてしまった後、子供たちは泥まみれの雑草をかじって飢えをしのいでいた。 しかし狩りの仕方を知っているわけでもないので、お家の近くに生えているわずかな雑草を食い尽くしてしまえばもう後がない。 赤ゆだけで残されても、まともに生活などできるわけがなかった。 おまけに餡子脳が災いし、姉妹は母のお墓がどこにあるか分からなくなった。 湿っていた土が乾けば、周りの地面と同化してしまうのは当たり前だ。 姉まりさが必死に集めた苦い草には目もくれず、妹れいむは埋めた餡子玉に固執した。 あまあまが食べたい一心で必死にあちこちを掘り返したが、とうとう見つけられなかった。 妹れいむは掘って出てきた小石を口に入れ、あまあまだと言い張ってかじっていた。 その内に非ゆっくり症を患い、言葉を話す事もできなくなった。 食料探しに尽力していた姉まりさも時間の問題だろう。 「ごんにゃどごりょで、じぬわげにはいがにゃいのじぇ…… ばりじゃだちのだべにおぢゃべにゃじゃいじでぐれだ、おぎゃあじゃんのだべにも、じあわぜーにならだいどいげだいんだじぇ……」 ほとんど母恋しさで心を保っている状態だ。 土の下にいる餡子玉の母が娘たちに呪詛を吐き、その死を願っていると知ったらどんな気持ちになるだろうか。 (ごろじで……ごろじで……だれがでいむをごろじで……) 中枢餡が無事である以上、れいむの意識は保たれたままだ。 土に埋められた中枢餡が完全に朽ちるまで、れいむの苦痛は終わらない。 「おぎゃあじゃ……ゆんごくで、いっじょに……ゆっぐぢ…… ゆっぐっ、ゆゆっぐぢっ……ゆっ、ゆっぐ、ゆっ、ゆっ、ゆっ…… ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 (ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい…… ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい…… ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……ゆっぐぢじだい……) 終 ────────────────────────────── おたべなさいをして逃げ得みたいな流れを見かける事が多かったので、 さらに苦しめられないかと考えた結果がこれでした。 それから前作で挿絵を描いてくださった方、ありがとうございます! れいみゅのぶっさいくな潰れ顔が実に愉快でQNQNしました! 【過去SS】 anko4116 放置飼い~赤れいむ編~ anko4152 ゆっくりのびねじってね 挿絵:
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3652.html
※虐待描写ほとんどありません。 ハードゆ虐を求めている方が読むと、嫌な気分になるかもしれません。 ゆっくりれいむは、とある青年に飼われていた。 飼い主の彼は、少し古い言い方で表すなら、社会の落ちこぼれだった。 何とか定職に就けているとはいえ、感情表現が下手でコミュニケーションに貧しい彼は、 上司や同僚からもそれとなく疎外され、孤独な日々を過ごしていた。 彼自身も元々馴れ合いは苦手だと思っていたし、そんな状況もまた良しと考えていた。 しかし、自分でも気付かないような心のスキマは存在したのだろう。 誰彼構わず「ゆっくりしていってね!!」と声をかける奇怪な饅頭、ゆっくりと出会って、 彼は胸を打たれた。心の中の乾ききって感覚を失っていた部分に、温かな潤いが染み渡るのを感じた。 みんなに好かれることのない俺だが、無条件で「ゆっくりしていってね!!」と声をかけてくれる存在がいる。 たとえそれが本能に起因する何の意味もない言動だったとしても、彼にはそれで充分だった。 彼はペットショップに赴き、一個のゆっくりれいむを購入した。彼が初めて手を出した流行だった。 人間に媚びることを訓練付けられた一流のゆっくりではない、安物の粗野なものを購入した。 感情表現の苦手な彼であるから、いくら相手に可愛く振舞われても、猫かわいがりのような対応は出来ない。 一流のゆっくりというのはプライドも高く、自分の仕事に対して相応のリアクションが返って来なかった時、 露骨に白けてしまったり、機嫌を悪くしたりする。扱う側にもスキルが要求されるのだ。 そんなゆっくりを彼が飼ったなら、その間に必ず温度差が生じ、気まずい生活を送ることになるだろう。 だから経済的事情を抜きにしても、彼にはこの粗野なゆっくりれいむの方が性に合っていると言えた。 彼がれいむを購入した時、狭い檻から解放されたのが嬉しかったのか、れいむはしきりに 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」と彼に呼びかけた。彼は良い買い物をした、と感じた。 「ただいまー……」 「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!!」 そして現在。れいむはお兄さんの家にもすっかり慣れていた。 お兄さんが仕事に行っている時は与えられたおもちゃで遊んだり、子供向けの古い動物図鑑を眺めたりしてゆっくりし、 夜になってお兄さんが帰宅すれば玄関で出迎え、お兄さんの近くでゆっくりする。そんな日々を送っていた。 「ふぅ、今日も疲れた……」 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!ごはんちょうだいね!!」 「あぁん? じゃあホラよ、安いゆっくりフードだが」 「ゆゆ!むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 れいむに対する彼の無骨な接し方を見て、客観的に可愛がっているとは判断しにくい。 必要以上の触れ合いは無かったし、一緒に遊ぶなんてことは勿論、会話すらあまりしなかった。 端的に言えば、彼はれいむを観葉植物のように扱っていた。 「ゆっ、おにいさん!れいむおなかいっぱいになったよ!!」 「そっかー。元気で生きろよ」 「ゆっくりわかったよ!!」 それでもれいむからすれば、ゆっくり好きにありがちな過度のスキンシップを求められることもなく、 人間好みの性格になるように厳しく躾けられることもない。毎日の食事と安全な寝床、 見ているだけで好奇心を満たされる人間さんのおうちの風景、 お空の見える窓を与えられている今の暮らしは、とてもとてもゆっくり出来ると思っていた。 互いのマイペースさが上手く作用し、付きすぎず離れすぎず、良い関係を築けていた。 だがそこには、一つの失敗があったのだ。 「おにいさん、きょうもれいむとゆっくりしていってね!!」 「おー。お前もゆっくりしろよ」 「れいむはすごくゆっくりしてるよ!おにいさんのおかげだよ!!」 「そうかそうか」 お兄さんがPCに向かってお気に入りのブログを巡回している後ろで、れいむは嬉しそうに跳ねていた。 (おにいさんはすごくゆっくりしたひとだよ。れいむはすごくゆっくりできてるよ。 れいむはゆっくりにうまれてよかったよ。おにいさんにかわれてしあわせだよ) 一つの失敗。それは生じるはずの無かった、両者の温度差だ。 より正確に言うなら、『上限温度の違い』と言える。 ゆっくりとは大袈裟で感情的な生き物だ。その少ない語彙で必死に感情を誇張したり、 「ゆっくりしたい」という感情に任せて向う見ずな言動を取るシュールさは、世間によく知られている。 ペットショップで生まれ育ち、ロクに他の人間とも接したことがないれいむは、 生まれて初めてのゆっくりした暮らしをくれたお兄さんに対して、限りない好意と信頼を寄せていた。 だがお兄さんは、このままれいむが死ぬまで程々に良好でヌルい関係を続けていけると思っており、それが幸せだった。 言うなれば感情の器が、れいむの方がやや過剰に大きかったのだ。 その器に溜まり切ったお兄さんへの思い。それを彼が受け止められるかどうかは、別の問題だった。 ある日曜日。仕事がお休みのお兄さんは、れいむよりもゆっくりお昼頃に起きてきた。 「おう、おはよう」 「ゆゆ!おにいさん、れいむよりもゆっくりだね!!」 「たまの日曜ぐらいゆっくりしても良いだろ。お前が早起き過ぎんだよ」 「れいむははやおきしてゆっくりしてたよ!!」 「そうかそうか」 今日はやることもないから、家でゴロゴロ漫画でも読むか、それとも映画を見に行くか…… 腹を掻きながらのんびり思案している彼の横で、れいむはいつものマヌケ面に、少しだけ緊張の色を浮かべていた。 「れいむははやおきしておなかすいたよ!ゆっくりごはんちょうだいね!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 そう言いながら彼は、比較的状態の良い食品廃棄物をペースト状にして小分けにしたもの、 通称ゆっくりフードを、サボテンに水をやるような慈しみを以て、れいむ用の皿にボロボロと振り落とした。 「むーしゃ、むーしゃ・・・」 ゆっくりが物を咀嚼する時に垣間見せる、どこか一心不乱の必死な表情。 そんなれいむの表情に、今日はどこか悩みの色が加わっていた。 悩みのあまり朝早くに目が覚めて、お兄さんが起きて来るまでずっとそのことについて考えていた。 もしかしたら、これが最期の食事になるかもしれない。 そう思ってれいむは、いつも以上にゆっくりとよく噛み、お兄さんのくれるごはんを味わった。 「しあわせーーー♪」 「はいはい、お粗末お粗末」 「ゆゆゆ・・・おにいさん・・・」 「ん……? どうしたゆっくり?」 れいむはお兄さんに正面から向き直り、何かを言い辛そうにもじもじとしている。 彼はそんなれいむの姿を見るのは初めてだったので、何か特別なことでもあるのかと耳を傾けた。 お嫁さん欲しいとか言い出さないだろうな……と彼があれこれ心配を巡らせ始めると、ようやくれいむが口を開いた。 「ゆゆ・・・おにいさん・・・れいむをゆっくりたべてね!!」 「はっ?」 れいむは生まれて初めて見せる、比較的真剣に見える表情でそう叫んだ。 お兄さんはまさかそんな申し出をされるとは思っておらず、完全に面食らい、唖然としていた。 「えーと……食べるってのはその……食べるってこと?」 「そうだよ!!れいむはおにいさんがゆっくりさせてくれたから、とっっっってもおいしいんだよ!!」 「うーん……だとしてもちょっとなぁ……」 目を輝かせ、そう力強く饅頭としての自らをアピールするれいむ。 しかしお兄さんは、れいむを食べようなどという気は微塵も起きなかった。 理由はいくつかある。 一般的にゆっくりの至上の味は、一流の職人の適切な虐待によって生まれると言われる。 ただ素人の自分の下でゆっくりしていたこのれいむが、それ程美味しいとは思えない。 それに、彼は少し前に人に誘われてゆっくり料理の店に入ったのだが、 虐め殺されたゆっくりを味わう事がれいむへの不義理になるような気がして、絶品らしい料理がロクに喉を通らなかった。 (もっともそれは、花を育てながら野菜を食べる事に罪悪感を持つようなもので、全く非合理な感情なのだが) 更に自分がれいむを食べてしまえば、もうれいむに「ゆっくりしていってね!!」と言われることがなくなる。 新しいゆっくりを買えば済むかも知れないが、彼とてれいむに少しは愛着が湧いており、それは面倒なことだった。 そして何よりも、彼は甘いものが反吐が出るほど嫌いだった。 「やっぱりダメだな。俺にれいむは食べられないよ」 「ゆゆ!?そんなこといわないでね!!えんりょをしないでね!!」 「いや遠慮とかじゃなくマジで」 「そんなこといっちゃだめだよ!!れいむをゆっくりたべてね!!おいしいれいむをたべるとゆっくりできるよ!!」 『おいしい自分を食べさせる』ことは、饅頭であるゆっくりにとって相手に出来る最高の持て成しだ。 逆に言えば、それ以上に相手をゆっくりさせられる手段をゆっくりは知らない。 だかられいむがお兄さんへの感謝を表現するには、もはや自分を食べてもらうしか無くなっていたのだ。 だがお兄さんは、れいむを食べたくないという。この世で最上のゆっくりを味わいたくないという。 何故だろう? ゆっくりしたくてれいむを飼っていたのではないのだろうか? (ゆゆ、わかったよ。れいむとおなじように、おにいさんもれいむがだいすきなんだよ。 れいむがいなくなるとかなしいから、ほんとうはたべたいのにたべたくないっていってるんだよ。 でもおいしいれいむをたべることが、おにいさんにとっていちばんゆっくりできることなんだよ。ゆっくりりかいしてね!) れいむの餡子脳は、一分ほどでその結論に至った。 そして真のゆっくりについてお兄さんに言って聞かせることを諦め、やはり自らが先んじて決断を下すことにした。 れいむはゆっくりにとって禁断の呪文を口にしたのだ。 「さあ、おたべなさい!!」 「え!?」 お兄さんはまたも驚愕させられることとなった。 「おたべなさい!」の発声と同時に、れいむの身体がパカリと縦に割れたのだ。 その断面には、温かそうな新鮮な餡子がきらめいている。 (ゆっ・・・ゆっくりうまくいったよ!あんまりいたくなかったよ! ちょっとすーすーするけど、とってもゆっくりできてるよ!!) 相手への親愛の情が極限まで高まった時、初めて成功すると言われる「おたべなさい」。 それ以外の時にやってしまうと、身体が割れるまでの僅かな時間が無限大にゆっくりに感じられ、 身を裂かれる極限の痛みを心が朽ち果てるまで味わい続けるという。ゆっくりはそのリスクを本能で理解している。 そんな危険な技であるから、ゆっくりの覚悟を試す上でも、余程の親愛が無ければこれを使うことは出来ない。 それが痛みを伴わず、上手くいった。それはれいむのゆっくりした生涯を証明する結果であった。 このままお兄さんに食べてもらえれば、身を齧られる時に痛みではなく幸福感が押し寄せるという。 れいむはもはや、それによってゆっくりすることを待つのみとなった。 お兄さんも、れいむのこれほどの決意と覚悟を持った行動を目の当たりにすれば、 もはや涙を流してれいむを食べ、そのあまりの美味しさにもう一度涙するしかあるまい。 自らの生涯に、限りないしあわせとゆっくりの内に幕を下ろす感動。れいむのゆん生は、ここに完成するのだ。 一方お兄さんは、完全に白けきっていた。 ゆっくりに伝わるそんな風習、全く知ったことではなかったからだ。 「いや、だからいらねーから。さっさと戻りなさい」 「ゆゆっ!?」 そう言ってお兄さんは面倒くさそうに、れいむの分かれた半身をそれぞれ手に持ち、 ぐりぐりとくっつけて元の形に戻そうとした。 「あれ、何かズレるな……」 「ゆうううううぅぅ!!ゆ゛うううううううぅぅぅ!!」 しかし何度やっても、まるで磁石の同極を合わせるかのごとく、どちらか半身がするりと逸れてしまう。 どうしても食べてもらいたいれいむが、くっつくことを必死に拒んでいるのだ。 これはそういうものなのだ、と彼が納得して諦めるまで、れいむは呻き声を上げ続けた。 力みすぎて涙目になっていたれいむの両半身を、お兄さんは床にそっと並べて置いた。 「はぁ、しょうがねーな。じゃあ俺は映画見に行って来るわ。帰って来るまでに直しとけよ……」 「ゆ゛ううううぅぅぅぅ!!ゆ゛うううぅぅぅぅぅ!おにいさんまってねぇぇぇ!!」 今回のも、またゆっくり特有の良く解らない言動の一つに過ぎないと解釈したお兄さんは、 れいむの叫びを構う必要無しと判断し、さばさばと外に出かけていった。 お兄さんの欠点、それは自分と同じ感情の尺度を相手にも求めることだ。 感情の沸点が高い彼にとって、れいむが自分なんかにそこまで思い詰めるなどという発想は浮かばないのだ。 こういう人が女を泣かしたりするんですねー。 「おにいさん!!まってね!!どうしてれいむをたべてくれないの!! とってもゆっくりできるんだよ!!れいむはおにいさんにゆっくりしてほしいんだよ!!」 お兄さんが出て行った玄関のドアに向かって、涙ながらに叫び続けるれいむ。 しかしその声がお兄さんに届くことは決してなく、天井や壁に虚しく反響し続けるだけだ。 「なんでもどってきてぐれないの!!おにいざぁぁぁぁん!! れいむはおにいさんがだいすきなんだよ!!おにいさんもれいむのことがだいすきでしょ!! それなられいむをゆっくりたべてね!!そしたられいむもおにいさんもすっごくゆっくりできるんだよ!! れいむがんばっておたべなさいしたからはやくたべてね!!たべないと・・・たべないと・・・・・・・・・!!」 れいむの両半身が、それぞれぷるぷると震え始める。 とうとう来てしまったのだ。「おたべなさい」のタイムリミットが。 断面にきらめいていた餡子は乾き始め、徐々に変質していく。そして…… 「「ふえちゃうぞ!!」」 泣き顔が一転、不敵な笑みに変わった次の瞬間、れいむは二個になった。 ヒトデのように、二つに分かれた身体がそれぞれ欠けた部分を補完し、完全な一個の身体を作り出したのだ。 「ふえちゃうぞ!」という悪戯っぽい言い回しではあるが、別に悪戯や意地悪で増えているわけではない。 これは「おたべなさい!」をしくじった者に、強制的に訪れる結末だったのだ。 「ゆゆ!れいむがふえちゃったよ!!」 「ゆうぅぅぅぅぅ!!どうすればいいのぉぉ!!」 不敵に笑ったのも一瞬の事。次に口を開く時にはもう二人の表情は悔しさと悲しみに塗れていた。 この増えたれいむはそれぞれ過去や記憶を共有しているが、自我は共有していない。 完全に別々のれいむなのだ。自分と全く同じものが突如隣に現れることは、れいむにとって絶大な恐怖だった。 その上、付けているリボンまで同じ。 髪飾りで個体識別をするゆっくりは、自分の飾りを付けている他ゆっくりに対して、本能的に敵意や不快感を抱く。 今回ような特殊なケースを除外すれば、それは自分の飾りを奪った略奪者に他ならないからである。 二個のれいむは、お互いに「ゆっくりできなさ」を感じ取っていた。 その居心地の悪さは、不安の増大に繋がっていく。 「ゆゆ・・・おにいさんどうしてかえってきてくれないの・・・」 「おにいさん・・・どうしてれいむをたべてゆっくりしてくれなかったの・・・」 「・・・ゆゆ!れいむがゆっくりしてなかったからだよ! ゆっくりしてないれいむをたべてもゆっくりできないっておもったんだよ!ゆっくりはんせいしてね!」 「ゆゆゆ!?なにいってるの?れいむはれいむなんだよ?」 「そうだよ!だからゆっくりはんせいしてね!」 「ちがうでしょ!はんせいするのはれいむのほうだよ!!」 「ゆ!わかってるならはんせいしてね!ゆっくりしなきゃだめだよ!!」 「ちがうのおぉぉぉ!!れいむがいってるれいむはれいむのことでれいむのことじゃないの!!!」 「でもれいむはれいむでれいむなんだからけっきょくはれいむのことだよ!!」 れいむがドッペルゲンガーと邂逅して、まず始めたことは罵りあいであった。 実際に増えてみると、自分の嫌なところばかりが目に付いた。れいむは自分が全然ゆっくりしていない気がした。 それから30分ほど、れいむたちはお互いがいかにゆっくりしていないかを指摘しあったが、虚しくなってやめた。 「ゆぅ・・・・れいむ、もっとゆっくりしなきゃだめだよ・・・・・」 「そうだね・・・・もっといっぱいゆっくりして、それでこんどこそおたべなさいしようね・・・・・」 二個のれいむはヘナリとつぶれ、全身で落ち込みを表した。 それからお兄さんが帰って来るまで、前向きに、二人で存分にゆっくり過ごすことにした。 同じ髪飾りをつけたれいむ同士で過ごす時間は、違和感に満ち満ちていた。 二人ですりすりもしてみたが、ちっともゆっくり出来なかった。 それでもれいむ達は耐えて待ち続けた。お兄さんの下で存分にゆっくりすることを思って。 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2391.html
※虐待描写ほとんどありません。 ハードゆ虐を求めている方が読むと、嫌な気分になるかもしれません。 ゆっくりれいむは、とある青年に飼われていた。 飼い主の彼は、少し古い言い方で表すなら、社会の落ちこぼれだった。 何とか定職に就けているとはいえ、感情表現が下手でコミュニケーションに貧しい彼は、 上司や同僚からもそれとなく疎外され、孤独な日々を過ごしていた。 彼自身も元々馴れ合いは苦手だと思っていたし、そんな状況もまた良しと考えていた。 しかし、自分でも気付かないような心のスキマは存在したのだろう。 誰彼構わず「ゆっくりしていってね!!」と声をかける奇怪な饅頭、ゆっくりと出会って、 彼は胸を打たれた。心の中の乾ききって感覚を失っていた部分に、温かな潤いが染み渡るのを感じた。 みんなに好かれることのない俺だが、無条件で「ゆっくりしていってね!!」と声をかけてくれる存在がいる。 たとえそれが本能に起因する何の意味もない言動だったとしても、彼にはそれで充分だった。 彼はペットショップに赴き、一個のゆっくりれいむを購入した。彼が初めて手を出した流行だった。 人間に媚びることを訓練付けられた一流のゆっくりではない、安物の粗野なものを購入した。 感情表現の苦手な彼であるから、いくら相手に可愛く振舞われても、猫かわいがりのような対応は出来ない。 一流のゆっくりというのはプライドも高く、自分の仕事に対して相応のリアクションが返って来なかった時、 露骨に白けてしまったり、機嫌を悪くしたりする。扱う側にもスキルが要求されるのだ。 そんなゆっくりを彼が飼ったなら、その間に必ず温度差が生じ、気まずい生活を送ることになるだろう。 だから経済的事情を抜きにしても、彼にはこの粗野なゆっくりれいむの方が性に合っていると言えた。 彼がれいむを購入した時、狭い檻から解放されたのが嬉しかったのか、れいむはしきりに 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」と彼に呼びかけた。彼は良い買い物をした、と感じた。 「ただいまー……」 「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!!」 そして現在。れいむはお兄さんの家にもすっかり慣れていた。 お兄さんが仕事に行っている時は与えられたおもちゃで遊んだり、子供向けの古い動物図鑑を眺めたりしてゆっくりし、 夜になってお兄さんが帰宅すれば玄関で出迎え、お兄さんの近くでゆっくりする。そんな日々を送っていた。 「ふぅ、今日も疲れた……」 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!ごはんちょうだいね!!」 「あぁん? じゃあホラよ、安いゆっくりフードだが」 「ゆゆ!むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 れいむに対する彼の無骨な接し方を見て、客観的に可愛がっているとは判断しにくい。 必要以上の触れ合いは無かったし、一緒に遊ぶなんてことは勿論、会話すらあまりしなかった。 端的に言えば、彼はれいむを観葉植物のように扱っていた。 「ゆっ、おにいさん!れいむおなかいっぱいになったよ!!」 「そっかー。元気で生きろよ」 「ゆっくりわかったよ!!」 それでもれいむからすれば、ゆっくり好きにありがちな過度のスキンシップを求められることもなく、 人間好みの性格になるように厳しく躾けられることもない。毎日の食事と安全な寝床、 見ているだけで好奇心を満たされる人間さんのおうちの風景、 お空の見える窓を与えられている今の暮らしは、とてもとてもゆっくり出来ると思っていた。 互いのマイペースさが上手く作用し、付きすぎず離れすぎず、良い関係を築けていた。 だがそこには、一つの失敗があったのだ。 「おにいさん、きょうもれいむとゆっくりしていってね!!」 「おー。お前もゆっくりしろよ」 「れいむはすごくゆっくりしてるよ!おにいさんのおかげだよ!!」 「そうかそうか」 お兄さんがPCに向かってお気に入りのブログを巡回している後ろで、れいむは嬉しそうに跳ねていた。 (おにいさんはすごくゆっくりしたひとだよ。れいむはすごくゆっくりできてるよ。 れいむはゆっくりにうまれてよかったよ。おにいさんにかわれてしあわせだよ) 一つの失敗。それは生じるはずの無かった、両者の温度差だ。 より正確に言うなら、『上限温度の違い』と言える。 ゆっくりとは大袈裟で感情的な生き物だ。その少ない語彙で必死に感情を誇張したり、 「ゆっくりしたい」という感情に任せて向う見ずな言動を取るシュールさは、世間によく知られている。 ペットショップで生まれ育ち、ロクに他の人間とも接したことがないれいむは、 生まれて初めてのゆっくりした暮らしをくれたお兄さんに対して、限りない好意と信頼を寄せていた。 だがお兄さんは、このままれいむが死ぬまで程々に良好でヌルい関係を続けていけると思っており、それが幸せだった。 言うなれば感情の器が、れいむの方がやや過剰に大きかったのだ。 その器に溜まり切ったお兄さんへの思い。それを彼が受け止められるかどうかは、別の問題だった。 ある日曜日。仕事がお休みのお兄さんは、れいむよりもゆっくりお昼頃に起きてきた。 「おう、おはよう」 「ゆゆ!おにいさん、れいむよりもゆっくりだね!!」 「たまの日曜ぐらいゆっくりしても良いだろ。お前が早起き過ぎんだよ」 「れいむははやおきしてゆっくりしてたよ!!」 「そうかそうか」 今日はやることもないから、家でゴロゴロ漫画でも読むか、それとも映画を見に行くか…… 腹を掻きながらのんびり思案している彼の横で、れいむはいつものマヌケ面に、少しだけ緊張の色を浮かべていた。 「れいむははやおきしておなかすいたよ!ゆっくりごはんちょうだいね!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 そう言いながら彼は、比較的状態の良い食品廃棄物をペースト状にして小分けにしたもの、 通称ゆっくりフードを、サボテンに水をやるような慈しみを以て、れいむ用の皿にボロボロと振り落とした。 「むーしゃ、むーしゃ・・・」 ゆっくりが物を咀嚼する時に垣間見せる、どこか一心不乱の必死な表情。 そんなれいむの表情に、今日はどこか悩みの色が加わっていた。 悩みのあまり朝早くに目が覚めて、お兄さんが起きて来るまでずっとそのことについて考えていた。 もしかしたら、これが最期の食事になるかもしれない。 そう思ってれいむは、いつも以上にゆっくりとよく噛み、お兄さんのくれるごはんを味わった。 「しあわせーーー♪」 「はいはい、お粗末お粗末」 「ゆゆゆ・・・おにいさん・・・」 「ん……? どうしたゆっくり?」 れいむはお兄さんに正面から向き直り、何かを言い辛そうにもじもじとしている。 彼はそんなれいむの姿を見るのは初めてだったので、何か特別なことでもあるのかと耳を傾けた。 お嫁さん欲しいとか言い出さないだろうな……と彼があれこれ心配を巡らせ始めると、ようやくれいむが口を開いた。 「ゆゆ・・・おにいさん・・・れいむをゆっくりたべてね!!」 「はっ?」 れいむは生まれて初めて見せる、比較的真剣に見える表情でそう叫んだ。 お兄さんはまさかそんな申し出をされるとは思っておらず、完全に面食らい、唖然としていた。 「えーと……食べるってのはその……食べるってこと?」 「そうだよ!!れいむはおにいさんがゆっくりさせてくれたから、とっっっってもおいしいんだよ!!」 「うーん……だとしてもちょっとなぁ……」 目を輝かせ、そう力強く饅頭としての自らをアピールするれいむ。 しかしお兄さんは、れいむを食べようなどという気は微塵も起きなかった。 理由はいくつかある。 一般的にゆっくりの至上の味は、一流の職人の適切な虐待によって生まれると言われる。 ただ素人の自分の下でゆっくりしていたこのれいむが、それ程美味しいとは思えない。 それに、彼は少し前に人に誘われてゆっくり料理の店に入ったのだが、 虐め殺されたゆっくりを味わう事がれいむへの不義理になるような気がして、絶品らしい料理がロクに喉を通らなかった。 (もっともそれは、花を育てながら野菜を食べる事に罪悪感を持つようなもので、全く非合理な感情なのだが) 更に自分がれいむを食べてしまえば、もうれいむに「ゆっくりしていってね!!」と言われることがなくなる。 新しいゆっくりを買えば済むかも知れないが、彼とてれいむに少しは愛着が湧いており、それは面倒なことだった。 そして何よりも、彼は甘いものが反吐が出るほど嫌いだった。 「やっぱりダメだな。俺にれいむは食べられないよ」 「ゆゆ!?そんなこといわないでね!!えんりょをしないでね!!」 「いや遠慮とかじゃなくマジで」 「そんなこといっちゃだめだよ!!れいむをゆっくりたべてね!!おいしいれいむをたべるとゆっくりできるよ!!」 『おいしい自分を食べさせる』ことは、饅頭であるゆっくりにとって相手に出来る最高の持て成しだ。 逆に言えば、それ以上に相手をゆっくりさせられる手段をゆっくりは知らない。 だかられいむがお兄さんへの感謝を表現するには、もはや自分を食べてもらうしか無くなっていたのだ。 だがお兄さんは、れいむを食べたくないという。この世で最上のゆっくりを味わいたくないという。 何故だろう? ゆっくりしたくてれいむを飼っていたのではないのだろうか? (ゆゆ、わかったよ。れいむとおなじように、おにいさんもれいむがだいすきなんだよ。 れいむがいなくなるとかなしいから、ほんとうはたべたいのにたべたくないっていってるんだよ。 でもおいしいれいむをたべることが、おにいさんにとっていちばんゆっくりできることなんだよ。ゆっくりりかいしてね!) れいむの餡子脳は、一分ほどでその結論に至った。 そして真のゆっくりについてお兄さんに言って聞かせることを諦め、やはり自らが先んじて決断を下すことにした。 れいむはゆっくりにとって禁断の呪文を口にしたのだ。 「さあ、おたべなさい!!」 「え!?」 お兄さんはまたも驚愕させられることとなった。 「おたべなさい!」の発声と同時に、れいむの身体がパカリと縦に割れたのだ。 その断面には、温かそうな新鮮な餡子がきらめいている。 (ゆっ・・・ゆっくりうまくいったよ!あんまりいたくなかったよ! ちょっとすーすーするけど、とってもゆっくりできてるよ!!) 相手への親愛の情が極限まで高まった時、初めて成功すると言われる「おたべなさい」。 それ以外の時にやってしまうと、身体が割れるまでの僅かな時間が無限大にゆっくりに感じられ、 身を裂かれる極限の痛みを心が朽ち果てるまで味わい続けるという。ゆっくりはそのリスクを本能で理解している。 そんな危険な技であるから、ゆっくりの覚悟を試す上でも、余程の親愛が無ければこれを使うことは出来ない。 それが痛みを伴わず、上手くいった。それはれいむのゆっくりした生涯を証明する結果であった。 このままお兄さんに食べてもらえれば、身を齧られる時に痛みではなく幸福感が押し寄せるという。 れいむはもはや、それによってゆっくりすることを待つのみとなった。 お兄さんも、れいむのこれほどの決意と覚悟を持った行動を目の当たりにすれば、 もはや涙を流してれいむを食べ、そのあまりの美味しさにもう一度涙するしかあるまい。 自らの生涯に、限りないしあわせとゆっくりの内に幕を下ろす感動。れいむのゆん生は、ここに完成するのだ。 一方お兄さんは、完全に白けきっていた。 ゆっくりに伝わるそんな風習、全く知ったことではなかったからだ。 「いや、だからいらねーから。さっさと戻りなさい」 「ゆゆっ!?」 そう言ってお兄さんは面倒くさそうに、れいむの分かれた半身をそれぞれ手に持ち、 ぐりぐりとくっつけて元の形に戻そうとした。 「あれ、何かズレるな……」 「ゆうううううぅぅ!!ゆ゛うううううううぅぅぅ!!」 しかし何度やっても、まるで磁石の同極を合わせるかのごとく、どちらか半身がするりと逸れてしまう。 どうしても食べてもらいたいれいむが、くっつくことを必死に拒んでいるのだ。 これはそういうものなのだ、と彼が納得して諦めるまで、れいむは呻き声を上げ続けた。 力みすぎて涙目になっていたれいむの両半身を、お兄さんは床にそっと並べて置いた。 「はぁ、しょうがねーな。じゃあ俺は映画見に行って来るわ。帰って来るまでに直しとけよ……」 「ゆ゛ううううぅぅぅぅ!!ゆ゛うううぅぅぅぅぅ!おにいさんまってねぇぇぇ!!」 今回のも、またゆっくり特有の良く解らない言動の一つに過ぎないと解釈したお兄さんは、 れいむの叫びを構う必要無しと判断し、さばさばと外に出かけていった。 お兄さんの欠点、それは自分と同じ感情の尺度を相手にも求めることだ。 感情の沸点が高い彼にとって、れいむが自分なんかにそこまで思い詰めるなどという発想は浮かばないのだ。 こういう人が女を泣かしたりするんですねー。 「おにいさん!!まってね!!どうしてれいむをたべてくれないの!! とってもゆっくりできるんだよ!!れいむはおにいさんにゆっくりしてほしいんだよ!!」 お兄さんが出て行った玄関のドアに向かって、涙ながらに叫び続けるれいむ。 しかしその声がお兄さんに届くことは決してなく、天井や壁に虚しく反響し続けるだけだ。 「なんでもどってきてぐれないの!!おにいざぁぁぁぁん!! れいむはおにいさんがだいすきなんだよ!!おにいさんもれいむのことがだいすきでしょ!! それなられいむをゆっくりたべてね!!そしたられいむもおにいさんもすっごくゆっくりできるんだよ!! れいむがんばっておたべなさいしたからはやくたべてね!!たべないと・・・たべないと・・・・・・・・・!!」 れいむの両半身が、それぞれぷるぷると震え始める。 とうとう来てしまったのだ。「おたべなさい」のタイムリミットが。 断面にきらめいていた餡子は乾き始め、徐々に変質していく。そして…… 「「ふえちゃうぞ!!」」 泣き顔が一転、不敵な笑みに変わった次の瞬間、れいむは二個になった。 ヒトデのように、二つに分かれた身体がそれぞれ欠けた部分を補完し、完全な一個の身体を作り出したのだ。 「ふえちゃうぞ!」という悪戯っぽい言い回しではあるが、別に悪戯や意地悪で増えているわけではない。 これは「おたべなさい!」をしくじった者に、強制的に訪れる結末だったのだ。 「ゆゆ!れいむがふえちゃったよ!!」 「ゆうぅぅぅぅぅ!!どうすればいいのぉぉ!!」 不敵に笑ったのも一瞬の事。次に口を開く時にはもう二人の表情は悔しさと悲しみに塗れていた。 この増えたれいむはそれぞれ過去や記憶を共有しているが、自我は共有していない。 完全に別々のれいむなのだ。自分と全く同じものが突如隣に現れることは、れいむにとって絶大な恐怖だった。 その上、付けているリボンまで同じ。 髪飾りで個体識別をするゆっくりは、自分の飾りを付けている他ゆっくりに対して、本能的に敵意や不快感を抱く。 今回ような特殊なケースを除外すれば、それは自分の飾りを奪った略奪者に他ならないからである。 二個のれいむは、お互いに「ゆっくりできなさ」を感じ取っていた。 その居心地の悪さは、不安の増大に繋がっていく。 「ゆゆ・・・おにいさんどうしてかえってきてくれないの・・・」 「おにいさん・・・どうしてれいむをたべてゆっくりしてくれなかったの・・・」 「・・・ゆゆ!れいむがゆっくりしてなかったからだよ! ゆっくりしてないれいむをたべてもゆっくりできないっておもったんだよ!ゆっくりはんせいしてね!」 「ゆゆゆ!?なにいってるの?れいむはれいむなんだよ?」 「そうだよ!だからゆっくりはんせいしてね!」 「ちがうでしょ!はんせいするのはれいむのほうだよ!!」 「ゆ!わかってるならはんせいしてね!ゆっくりしなきゃだめだよ!!」 「ちがうのおぉぉぉ!!れいむがいってるれいむはれいむのことでれいむのことじゃないの!!!」 「でもれいむはれいむでれいむなんだからけっきょくはれいむのことだよ!!」 れいむがドッペルゲンガーと邂逅して、まず始めたことは罵りあいであった。 実際に増えてみると、自分の嫌なところばかりが目に付いた。れいむは自分が全然ゆっくりしていない気がした。 それから30分ほど、れいむたちはお互いがいかにゆっくりしていないかを指摘しあったが、虚しくなってやめた。 「ゆぅ・・・・れいむ、もっとゆっくりしなきゃだめだよ・・・・・」 「そうだね・・・・もっといっぱいゆっくりして、それでこんどこそおたべなさいしようね・・・・・」 二個のれいむはヘナリとつぶれ、全身で落ち込みを表した。 それからお兄さんが帰って来るまで、前向きに、二人で存分にゆっくり過ごすことにした。 同じ髪飾りをつけたれいむ同士で過ごす時間は、違和感に満ち満ちていた。 二人ですりすりもしてみたが、ちっともゆっくり出来なかった。 それでもれいむ達は耐えて待ち続けた。お兄さんの下で存分にゆっくりすることを思って。 続く?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2264.html
※虐待描写ほとんどありません。 ハードゆ虐を求めている方が読むと、嫌な気分になるかもしれません。 ゆっくりれいむは、とある青年に飼われていた。 飼い主の彼は、少し古い言い方で表すなら、社会の落ちこぼれだった。 何とか定職に就けているとはいえ、感情表現が下手でコミュニケーションに貧しい彼は、 上司や同僚からもそれとなく疎外され、孤独な日々を過ごしていた。 彼自身も元々馴れ合いは苦手だと思っていたし、そんな状況もまた良しと考えていた。 しかし、自分でも気付かないような心のスキマは存在したのだろう。 誰彼構わず「ゆっくりしていってね!!」と声をかける奇怪な饅頭、ゆっくりと出会って、 彼は胸を打たれた。心の中の乾ききって感覚を失っていた部分に、温かな潤いが染み渡るのを感じた。 みんなに好かれることのない俺だが、無条件で「ゆっくりしていってね!!」と声をかけてくれる存在がいる。 たとえそれが本能に起因する何の意味もない言動だったとしても、彼にはそれで充分だった。 彼はペットショップに赴き、一個のゆっくりれいむを購入した。彼が初めて手を出した流行だった。 人間に媚びることを訓練付けられた一流のゆっくりではない、安物の粗野なものを購入した。 感情表現の苦手な彼であるから、いくら相手に可愛く振舞われても、猫かわいがりのような対応は出来ない。 一流のゆっくりというのはプライドも高く、自分の仕事に対して相応のリアクションが返って来なかった時、 露骨に白けてしまったり、機嫌を悪くしたりする。扱う側にもスキルが要求されるのだ。 そんなゆっくりを彼が飼ったなら、その間に必ず温度差が生じ、気まずい生活を送ることになるだろう。 だから経済的事情を抜きにしても、彼にはこの粗野なゆっくりれいむの方が性に合っていると言えた。 彼がれいむを購入した時、狭い檻から解放されたのが嬉しかったのか、れいむはしきりに 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」と彼に呼びかけた。彼は良い買い物をした、と感じた。 「ただいまー……」 「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!!」 そして現在。れいむはお兄さんの家にもすっかり慣れていた。 お兄さんが仕事に行っている時は与えられたおもちゃで遊んだり、子供向けの古い動物図鑑を眺めたりしてゆっくりし、 夜になってお兄さんが帰宅すれば玄関で出迎え、お兄さんの近くでゆっくりする。そんな日々を送っていた。 「ふぅ、今日も疲れた……」 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!ごはんちょうだいね!!」 「あぁん? じゃあホラよ、安いゆっくりフードだが」 「ゆゆ!むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 れいむに対する彼の無骨な接し方を見て、客観的に可愛がっているとは判断しにくい。 必要以上の触れ合いは無かったし、一緒に遊ぶなんてことは勿論、会話すらあまりしなかった。 端的に言えば、彼はれいむを観葉植物のように扱っていた。 「ゆっ、おにいさん!れいむおなかいっぱいになったよ!!」 「そっかー。元気で生きろよ」 「ゆっくりわかったよ!!」 それでもれいむからすれば、ゆっくり好きにありがちな過度のスキンシップを求められることもなく、 人間好みの性格になるように厳しく躾けられることもない。毎日の食事と安全な寝床、 見ているだけで好奇心を満たされる人間さんのおうちの風景、 お空の見える窓を与えられている今の暮らしは、とてもとてもゆっくり出来ると思っていた。 互いのマイペースさが上手く作用し、付きすぎず離れすぎず、良い関係を築けていた。 だがそこには、一つの失敗があったのだ。 「おにいさん、きょうもれいむとゆっくりしていってね!!」 「おー。お前もゆっくりしろよ」 「れいむはすごくゆっくりしてるよ!おにいさんのおかげだよ!!」 「そうかそうか」 お兄さんがPCに向かってお気に入りのブログを巡回している後ろで、れいむは嬉しそうに跳ねていた。 (おにいさんはすごくゆっくりしたひとだよ。れいむはすごくゆっくりできてるよ。 れいむはゆっくりにうまれてよかったよ。おにいさんにかわれてしあわせだよ) 一つの失敗。それは生じるはずの無かった、両者の温度差だ。 より正確に言うなら、『上限温度の違い』と言える。 ゆっくりとは大袈裟で感情的な生き物だ。その少ない語彙で必死に感情を誇張したり、 「ゆっくりしたい」という感情に任せて向う見ずな言動を取るシュールさは、世間によく知られている。 ペットショップで生まれ育ち、ロクに他の人間とも接したことがないれいむは、 生まれて初めてのゆっくりした暮らしをくれたお兄さんに対して、限りない好意と信頼を寄せていた。 だがお兄さんは、このままれいむが死ぬまで程々に良好でヌルい関係を続けていけると思っており、それが幸せだった。 言うなれば感情の器が、れいむの方がやや過剰に大きかったのだ。 その器に溜まり切ったお兄さんへの思い。それを彼が受け止められるかどうかは、別の問題だった。 ある日曜日。仕事がお休みのお兄さんは、れいむよりもゆっくりお昼頃に起きてきた。 「おう、おはよう」 「ゆゆ!おにいさん、れいむよりもゆっくりだね!!」 「たまの日曜ぐらいゆっくりしても良いだろ。お前が早起き過ぎんだよ」 「れいむははやおきしてゆっくりしてたよ!!」 「そうかそうか」 今日はやることもないから、家でゴロゴロ漫画でも読むか、それとも映画を見に行くか…… 腹を掻きながらのんびり思案している彼の横で、れいむはいつものマヌケ面に、少しだけ緊張の色を浮かべていた。 「れいむははやおきしておなかすいたよ!ゆっくりごはんちょうだいね!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 そう言いながら彼は、比較的状態の良い食品廃棄物をペースト状にして小分けにしたもの、 通称ゆっくりフードを、サボテンに水をやるような慈しみを以て、れいむ用の皿にボロボロと振り落とした。 「むーしゃ、むーしゃ・・・」 ゆっくりが物を咀嚼する時に垣間見せる、どこか一心不乱の必死な表情。 そんなれいむの表情に、今日はどこか悩みの色が加わっていた。 悩みのあまり朝早くに目が覚めて、お兄さんが起きて来るまでずっとそのことについて考えていた。 もしかしたら、これが最期の食事になるかもしれない。 そう思ってれいむは、いつも以上にゆっくりとよく噛み、お兄さんのくれるごはんを味わった。 「しあわせーーー♪」 「はいはい、お粗末お粗末」 「ゆゆゆ・・・おにいさん・・・」 「ん……? どうしたゆっくり?」 れいむはお兄さんに正面から向き直り、何かを言い辛そうにもじもじとしている。 彼はそんなれいむの姿を見るのは初めてだったので、何か特別なことでもあるのかと耳を傾けた。 お嫁さん欲しいとか言い出さないだろうな……と彼があれこれ心配を巡らせ始めると、ようやくれいむが口を開いた。 「ゆゆ・・・おにいさん・・・れいむをゆっくりたべてね!!」 「はっ?」 れいむは生まれて初めて見せる、比較的真剣に見える表情でそう叫んだ。 お兄さんはまさかそんな申し出をされるとは思っておらず、完全に面食らい、唖然としていた。 「えーと……食べるってのはその……食べるってこと?」 「そうだよ!!れいむはおにいさんがゆっくりさせてくれたから、とっっっってもおいしいんだよ!!」 「うーん……だとしてもちょっとなぁ……」 目を輝かせ、そう力強く饅頭としての自らをアピールするれいむ。 しかしお兄さんは、れいむを食べようなどという気は微塵も起きなかった。 理由はいくつかある。 一般的にゆっくりの至上の味は、一流の職人の適切な虐待によって生まれると言われる。 ただ素人の自分の下でゆっくりしていたこのれいむが、それ程美味しいとは思えない。 それに、彼は少し前に人に誘われてゆっくり料理の店に入ったのだが、 虐め殺されたゆっくりを味わう事がれいむへの不義理になるような気がして、絶品らしい料理がロクに喉を通らなかった。 (もっともそれは、花を育てながら野菜を食べる事に罪悪感を持つようなもので、全く非合理な感情なのだが) 更に自分がれいむを食べてしまえば、もうれいむに「ゆっくりしていってね!!」と言われることがなくなる。 新しいゆっくりを買えば済むかも知れないが、彼とてれいむに少しは愛着が湧いており、それは面倒なことだった。 そして何よりも、彼は甘いものが反吐が出るほど嫌いだった。 「やっぱりダメだな。俺にれいむは食べられないよ」 「ゆゆ!?そんなこといわないでね!!えんりょをしないでね!!」 「いや遠慮とかじゃなくマジで」 「そんなこといっちゃだめだよ!!れいむをゆっくりたべてね!!おいしいれいむをたべるとゆっくりできるよ!!」 『おいしい自分を食べさせる』ことは、饅頭であるゆっくりにとって相手に出来る最高の持て成しだ。 逆に言えば、それ以上に相手をゆっくりさせられる手段をゆっくりは知らない。 だかられいむがお兄さんへの感謝を表現するには、もはや自分を食べてもらうしか無くなっていたのだ。 だがお兄さんは、れいむを食べたくないという。この世で最上のゆっくりを味わいたくないという。 何故だろう? ゆっくりしたくてれいむを飼っていたのではないのだろうか? (ゆゆ、わかったよ。れいむとおなじように、おにいさんもれいむがだいすきなんだよ。 れいむがいなくなるとかなしいから、ほんとうはたべたいのにたべたくないっていってるんだよ。 でもおいしいれいむをたべることが、おにいさんにとっていちばんゆっくりできることなんだよ。ゆっくりりかいしてね!) れいむの餡子脳は、一分ほどでその結論に至った。 そして真のゆっくりについてお兄さんに言って聞かせることを諦め、やはり自らが先んじて決断を下すことにした。 れいむはゆっくりにとって禁断の呪文を口にしたのだ。 「さあ、おたべなさい!!」 「え!?」 お兄さんはまたも驚愕させられることとなった。 「おたべなさい!」の発声と同時に、れいむの身体がパカリと縦に割れたのだ。 その断面には、温かそうな新鮮な餡子がきらめいている。 (ゆっ・・・ゆっくりうまくいったよ!あんまりいたくなかったよ! ちょっとすーすーするけど、とってもゆっくりできてるよ!!) 相手への親愛の情が極限まで高まった時、初めて成功すると言われる「おたべなさい」。 それ以外の時にやってしまうと、身体が割れるまでの僅かな時間が無限大にゆっくりに感じられ、 身を裂かれる極限の痛みを心が朽ち果てるまで味わい続けるという。ゆっくりはそのリスクを本能で理解している。 そんな危険な技であるから、ゆっくりの覚悟を試す上でも、余程の親愛が無ければこれを使うことは出来ない。 それが痛みを伴わず、上手くいった。それはれいむのゆっくりした生涯を証明する結果であった。 このままお兄さんに食べてもらえれば、身を齧られる時に痛みではなく幸福感が押し寄せるという。 れいむはもはや、それによってゆっくりすることを待つのみとなった。 お兄さんも、れいむのこれほどの決意と覚悟を持った行動を目の当たりにすれば、 もはや涙を流してれいむを食べ、そのあまりの美味しさにもう一度涙するしかあるまい。 自らの生涯に、限りないしあわせとゆっくりの内に幕を下ろす感動。れいむのゆん生は、ここに完成するのだ。 一方お兄さんは、完全に白けきっていた。 ゆっくりに伝わるそんな風習、全く知ったことではなかったからだ。 「いや、だからいらねーから。さっさと戻りなさい」 「ゆゆっ!?」 そう言ってお兄さんは面倒くさそうに、れいむの分かれた半身をそれぞれ手に持ち、 ぐりぐりとくっつけて元の形に戻そうとした。 「あれ、何かズレるな……」 「ゆうううううぅぅ!!ゆ゛うううううううぅぅぅ!!」 しかし何度やっても、まるで磁石の同極を合わせるかのごとく、どちらか半身がするりと逸れてしまう。 どうしても食べてもらいたいれいむが、くっつくことを必死に拒んでいるのだ。 これはそういうものなのだ、と彼が納得して諦めるまで、れいむは呻き声を上げ続けた。 力みすぎて涙目になっていたれいむの両半身を、お兄さんは床にそっと並べて置いた。 「はぁ、しょうがねーな。じゃあ俺は映画見に行って来るわ。帰って来るまでに直しとけよ……」 「ゆ゛ううううぅぅぅぅ!!ゆ゛うううぅぅぅぅぅ!おにいさんまってねぇぇぇ!!」 今回のも、またゆっくり特有の良く解らない言動の一つに過ぎないと解釈したお兄さんは、 れいむの叫びを構う必要無しと判断し、さばさばと外に出かけていった。 お兄さんの欠点、それは自分と同じ感情の尺度を相手にも求めることだ。 感情の沸点が高い彼にとって、れいむが自分なんかにそこまで思い詰めるなどという発想は浮かばないのだ。 こういう人が女を泣かしたりするんですねー。 「おにいさん!!まってね!!どうしてれいむをたべてくれないの!! とってもゆっくりできるんだよ!!れいむはおにいさんにゆっくりしてほしいんだよ!!」 お兄さんが出て行った玄関のドアに向かって、涙ながらに叫び続けるれいむ。 しかしその声がお兄さんに届くことは決してなく、天井や壁に虚しく反響し続けるだけだ。 「なんでもどってきてぐれないの!!おにいざぁぁぁぁん!! れいむはおにいさんがだいすきなんだよ!!おにいさんもれいむのことがだいすきでしょ!! それなられいむをゆっくりたべてね!!そしたられいむもおにいさんもすっごくゆっくりできるんだよ!! れいむがんばっておたべなさいしたからはやくたべてね!!たべないと・・・たべないと・・・・・・・・・!!」 れいむの両半身が、それぞれぷるぷると震え始める。 とうとう来てしまったのだ。「おたべなさい」のタイムリミットが。 断面にきらめいていた餡子は乾き始め、徐々に変質していく。そして…… 「「ふえちゃうぞ!!」」 泣き顔が一転、不敵な笑みに変わった次の瞬間、れいむは二個になった。 ヒトデのように、二つに分かれた身体がそれぞれ欠けた部分を補完し、完全な一個の身体を作り出したのだ。 「ふえちゃうぞ!」という悪戯っぽい言い回しではあるが、別に悪戯や意地悪で増えているわけではない。 これは「おたべなさい!」をしくじった者に、強制的に訪れる結末だったのだ。 「ゆゆ!れいむがふえちゃったよ!!」 「ゆうぅぅぅぅぅ!!どうすればいいのぉぉ!!」 不敵に笑ったのも一瞬の事。次に口を開く時にはもう二人の表情は悔しさと悲しみに塗れていた。 この増えたれいむはそれぞれ過去や記憶を共有しているが、自我は共有していない。 完全に別々のれいむなのだ。自分と全く同じものが突如隣に現れることは、れいむにとって絶大な恐怖だった。 その上、付けているリボンまで同じ。 髪飾りで個体識別をするゆっくりは、自分の飾りを付けている他ゆっくりに対して、本能的に敵意や不快感を抱く。 今回ような特殊なケースを除外すれば、それは自分の飾りを奪った略奪者に他ならないからである。 二個のれいむは、お互いに「ゆっくりできなさ」を感じ取っていた。 その居心地の悪さは、不安の増大に繋がっていく。 「ゆゆ・・・おにいさんどうしてかえってきてくれないの・・・」 「おにいさん・・・どうしてれいむをたべてゆっくりしてくれなかったの・・・」 「・・・ゆゆ!れいむがゆっくりしてなかったからだよ! ゆっくりしてないれいむをたべてもゆっくりできないっておもったんだよ!ゆっくりはんせいしてね!」 「ゆゆゆ!?なにいってるの?れいむはれいむなんだよ?」 「そうだよ!だからゆっくりはんせいしてね!」 「ちがうでしょ!はんせいするのはれいむのほうだよ!!」 「ゆ!わかってるならはんせいしてね!ゆっくりしなきゃだめだよ!!」 「ちがうのおぉぉぉ!!れいむがいってるれいむはれいむのことでれいむのことじゃないの!!!」 「でもれいむはれいむでれいむなんだからけっきょくはれいむのことだよ!!」 れいむがドッペルゲンガーと邂逅して、まず始めたことは罵りあいであった。 実際に増えてみると、自分の嫌なところばかりが目に付いた。れいむは自分が全然ゆっくりしていない気がした。 それから30分ほど、れいむたちはお互いがいかにゆっくりしていないかを指摘しあったが、虚しくなってやめた。 「ゆぅ・・・・れいむ、もっとゆっくりしなきゃだめだよ・・・・・」 「そうだね・・・・もっといっぱいゆっくりして、それでこんどこそおたべなさいしようね・・・・・」 二個のれいむはヘナリとつぶれ、全身で落ち込みを表した。 それからお兄さんが帰って来るまで、前向きに、二人で存分にゆっくり過ごすことにした。 同じ髪飾りをつけたれいむ同士で過ごす時間は、違和感に満ち満ちていた。 二人ですりすりもしてみたが、ちっともゆっくり出来なかった。 それでもれいむ達は耐えて待ち続けた。お兄さんの下で存分にゆっくりすることを思って。 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3651.html
ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)から 「あー、金と時間損した……ただいまー」 「ゆゆっ!おにいさんがかえってきたよ!!」 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 玄関のドアが開く音に続いて飼い主の青年の声が聞こえるや、 二個のれいむは押し合いへし合い、お兄さんを出迎えようと玄関に走った。 そんな光景を目の当たりにしたお兄さんは、素っ頓狂な声を上げざるを得ない。 「へっ!? 何で二個!?」 「ゆゆ!おにいさんがたべてくれないからふえちゃったんだよ!!」 「ゆっくりできるれいむがふえて、にばいゆっくりできるよ!!」 れいむ達は、あくまで前向きだった。 お兄さんは「ああ、そういえばこいつ今朝割れたんだっけ」と、どうでも良過ぎて忘れていた事を今思い出した。 ゆっくりが適当な存在であることはお兄さんも承知していたつもりだった。しかしまさか分裂するとは…… 頭を掻きながら家に上がり、とりあえず腰を落ち着けるお兄さんに、れいむ達はぴょこぴょこついてくる。 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!!」 「れいむもだよ!!ゆっくりごはんをちょうだいね!!」 「これ食い扶持が増えたってことだよなあ……別にそのぐらい困らないけどよ」 お兄さんはブツブツ言いながら、台所にゆっくりフードを取りに行く。 しかしゆっくりフードは買い置きを切らしており、残っていたのはあと一食分ほどだった。 彼は「しまった」と言おうとしたが、よく考えたら勝手に増えたのはゆっくりの方であることを思い出し、やめた。 他に何か作るか……と思うも、ペットショップ店員の言葉が脳裏に蘇る。 「基本的にこれ以外は食べさせないで下さいね。人間の料理などを食べさせると、舌が肥えますから。 そうすると餌代がかさむようになりますし、ゆっくりも満足出来難くなりますから、どちらにとっても良くないんですよ。 このゆっくりフードがゆっくりにとって、美味し過ぎず不味くもなく、一番ゆっくり出来るバランス食品なんです」 一度彼もゆっくりフードをつまんでみたことがあるが、何とも言えぬ微妙な味だった。 あれなら自分で作った酒のツマミなどの方が、よほど食べ物として上等と言える。 そんなものを食べさせて食事の水準を上げてしまっては、お互いの不幸を招こうというものだ。 仕方なく彼はゆっくりフードの箱を手にし、わくわくと身体を揺する二個のれいむの元へと戻る。 「おい、悪いけど一人前しかないぞ」 「ゆゆっ!?そんなぁぁぁぁぁ!!」 「れいむおなかいっぱいたべたいよ!!」 当然、れいむたちからはブーイングが噴出。しかし彼にとってこれは初めてではない。 以前にもゆっくりフードを買い忘れてしまい、れいむの晩ご飯が抜きになったことがあった。 確かにその晩は機嫌が悪かったが、翌日買ってきた餌を与えると、ケロリと忘れて上機嫌に戻った。 極端な話、数日抜いたところで別に死ぬようなものでもない。そう彼は楽観視していた。 「まあ明日は少し多めに買ってくるから。今日はそれで我慢しとけ」 「れいむおたべなさいしてつかれたよ!!おなかぺこぺこだよ!!」 「れいむだっていっしょだよ!!」 「だったら仲良くはんぶんこしないとな。それがゆっくりってもんだろ」 「「ゆっ・・・」」 しかしこの問題の根は、空腹とはまた違うところに存在した。 れいむたちは「二倍ゆっくりできる」と前向きに考えていたが、事実はそうではない。 お兄さんが与えてくれる有限のゆっくりを、二人ではんぶんこしなくてはいけないのだ。 それでは充分にゆっくり出来ず、満足な「おたべなさい!」が出来るかどうか解らない。 この「ごはんが足りなかった」という一事は、れいむ達の心にそう印象付けるに至った。 しかし内心はそう感じていても、そこはゆっくり。出来る限り波風を立てず、お互いゆっくりする方向で動いた。 「ゆっ、れいむ、いっしょにたべようね。おにいさんをこまらせないでね」 「ゆゆ、わかってるよ!はんぶんこしようね!」 「れいむはゆっくりしてるね!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 二個のれいむは形ばかりのすりすりで一応の親愛を高めると、食事に取り掛かった。 とはいえ、ゆっくりの知能で綺麗に二等分など出来るはずもなく、自然と偏りが生じた。 多く餌を取れた方のれいむは、「むーしゃ、むーしゃ♪」と食事に集中している。 そうでない方のれいむは、まだ咀嚼をしているもう一個のれいむを羨ましそうに見つめている。 そんな手持ち無沙汰の状態だったから、お兄さんがぽつりと呟いた一言に気付けたのだろう。 「くだらねえな……」 (ゆっ!?) れいむたちを見下ろすお兄さんの瞳は、どこか冷ややかだった。 いつもはぶっきらぼうながら、どこか暖かみのある視線を送ってくれていたのに。 しかしそれも無理からぬ。青年は心のどこかが次第に冷えていくのを感じていた。 彼は「自分対れいむ」という限定的に完結した関係性の中に意味、救いを見出していたのだ。 それがもう一個ゆっくりが増えたことにより、「れいむ対れいむ」という異なる関係性が生まれた。 人間は人間同士、ゆっくりもゆっくり同士の方が接しやすいだろう。 となると、彼がそこに食い込んでいくのにはエネルギーを使わなければならない。 それが彼には面倒臭い。それは彼が日頃疎ましく感じていた、社会というものの構図だからだ。 実際にはれいむたちは、お互いを内心嫌っており、お兄さんにゆっくりしてもらうことしか考えていない。 だが客観的に事実を見れば、れいむたちはお互いにゆっくりしており、お兄さんは観察者に過ぎなかった。 彼にはゆっくり同士が仲良く過ごすのを眺めるような趣味は無かった。 (いや、これは自己中心的な考えか……) そう思いなおしたとて、一度感じてしまったことを撤回することなど出来はしない。 まあ、長く付き合っていれば色々ある。自分もその内、こういった観察の良さが解ってくるかもしれない。 そう自分を納得させながらも、お兄さんは表情を顰めたままれいむ達に背を向け、PCの前に腰掛けた。 (おにいさんがゆっくりできてないよ。きっとこのゆっくりできないれいむのせいだよ) そんな様を見ていた食いっぱぐれいむは、お兄さんの感情の機微を直感した。 お兄さんは、れいむたちが増えちゃったのを見て、明らかにゆっくり出来なくなっている。 「晩御飯を食いっぱぐれる」という、分裂のデメリットを味わった方のれいむだからこそ出来た発想かも知れない。 このままではお兄さんもゆっくり出来なくなり、れいむの享受出来るゆっくりも、以前の半分以下になってしまうだろう。 まさに負のスパイラル、ゆっくり無き世界。待っているのは絶望だけ。 早急に何とかしなければならない。 ようやく食事を終えたもう一人の自分を見ながら、れいむは決心を固めた。 とにもかくにも、まずはゆっくりしなければならない。 とは言え、れいむ同士では到底ゆっくり出来ない。同じ髪飾りをつけたゆっくりなど気持ちが悪くて仕方がない。 お兄さんが構ってくれなければ、ゆっくり出来ない子と過ごすしかなくなってしまう。そんなの嫌だった。 れいむはネットの巡回を楽しむお兄さんの足下へと縋り付いて行った。 「おにいさん!れいむとあそぼうね!れいむとゆっくりしてね!!」 「えっ? どうしたんだ急に」 「おにいさんとゆっくりしたいよ!れいむとおはなししてね!!」 れいむがこんな風に遊びをせがんで来ることなど、今までほとんど無かった。 珍しいことだとお兄さんが一瞬戸惑っている間に、沢山ごはんを食べた方のれいむが慌てて駆け寄って来た。 お兄さんの足に身体を擦りつけていたれいむを、身体を使って押しのける。 「ゆっ、れいむ!おにいさんのじゃましちゃだめだよ!!」 「ゆゆ、でも、でも・・・」 「おにいさんはゆっくりしてるんだよ!れいむはれいむとゆっくりしようね!!」 「ゆぅぅぅぅ・・・・・」 沢山ごはんを食べて幸せになった方のれいむは、少し心に余裕が出来ていたようで、 「ゆっくり出来ないれいむとでも何とかゆっくり過ごしてやろう」という気概を見せていた。 しかしもう一方のれいむにとって、そんな気遣いはありがた迷惑も良いところであった。 「まあ良いじゃないか、仲良くしてろよ。ゆっくりはゆっくり同士の方が良いだろ」 「ゆゆ・・・おにいさん・・・・・」 「おにいさんもそういってるよ!むこうにいってゆっくりしようね!!」 お兄さんにまで言われては仕方がない。ここでゴネてお兄さんにまで嫌われたらどうしようもない。 部屋の隅に置かれたれいむ用のゴムボールに向かって、意気揚々と跳ねていくれいむと、 後ろ髪を引かれる思いで渋々その後ろについていくれいむ。 お兄さんはその背中をどこか寂しげに見送ると、PCに向き直り、面白動画サイトを見てアハハと笑っていた。 れいむとれいむは交互にゴムボールに体当たりし、キャッチボールのような遊びをしていた。 何だかんだで身体を動かす遊びは楽しいし、遊び相手がいるというのも悪くない。 それでもやはり、相手が自分と全く同じものだと思うと、両者とも良い気持ちはしなかった。 これからお兄さんが仕事に行っている間、ずっとこんな思いをしなければならない…… 一方のれいむは「その内慣れるさ」と自分に言い聞かせていたが、ごはんを少ししか食べられなかった方のれいむは 空きっ腹を抱えながら、来るべき憂鬱な生活を想像して、そんなのは耐えられないと感じていた。 「ゆっ!れいむ、ゆっくりしてる?」 「ゆっ・・・?れいむはゆっくりできてるよ!!」 「いっぱいゆっくりして、おにいさんをゆっくりさせてあげようね!!」 そんなものは欺瞞だ。れいむが二人もいる限り、お兄さんはきっとゆっくり出来ない。 空きっ腹のれいむはボール遊びを中断し、もう一方のれいむの傍に駆け寄った。 「ゆ?どうしたの?れいむもっとあそびたいよ!!」 「れいむきいてね。あしたになったらまたおたべなさい!しようね」 「ゆゆ!?でもまたたべてもらえなかったらたいへんだよ!もっとゆっくりしてからじゃないとだめだよ!」 「だいじょうぶだよ。れいむにいいかんがえがあるよ」 「ゆゆ・・・ほんとう?さすがれいむだね!!」 自分の分身の考えた作戦なら、きっと素晴らしいものに違いない。 疑いもなくそう確信したれいむは二つ返事で承諾し、二人はゆっくりと明日の打ち合わせを始めた。 ヘッドホンを付けて動画を見ていたお兄さんがその密談に気付くことはなかった。 もしかするとそれは、れいむ達が楽しそうにしている声をむざむざ聞きたくないという、ある種の防衛行動であったのかもしれない。 それぞれがダラダラと時間を過ごし、夜は更け、やがて一人と二個は深い眠りについていった。 運命の朝。 お兄さんがいつも通りの時間に起きて来ると、居間のテーブルには二個の饅頭が行儀良く並んでいた。 「「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」」 「ああ……おはよう。そういえばお前増えたんだっけ……」 そこ邪魔だからどいとけよ、とれいむたちに言い、流しに顔を洗いに行こうとするお兄さん。 しかしそんなお兄さんを、れいむたちは「ちょっとまってね!!」呼び止める。 「ん……何だってんだよ?」 「おにいさん!きょうこそれいむをたべてもらうよ!!」 「ふたりになったからにばいゆっくりできるよ!!」 「またその話か。だから俺は要らないって」 「えんりょしないでね!いっぱいあるからたべていってね!!」 「あのなあ……」 「れいむ!あれをやろうね!」 「ゆゆっ、わかったよれいむ!!」 「おい、ちょっとは聞けよ」 れいむたちの打ち合わせ。それはお兄さんのおいしい朝ごはんになること。 いっせーの、で二人同時に「さあ、おたべなさい!」をする。 そのまま放っておいてしまえば、可愛そうなれいむは四人に増えてしまう。 れいむが増えるとお兄さんはゆっくり出来なくなるのだから、今度こそ食べるしかあるまい。 お兄さんを脅かすようで気が引けるやり方だが、食べてもらいさえ出来ればゆっくりしてもらえるのだ。 その結果を得るためには、仕方の無い妥協だった。 れいむたちは互いに頷きあい、お兄さんにの顔をきりりと見つめる。そして…… 「「いっせーの、」」 「「さあ!」おたべなさい!!ゆっ!?」 「ああ、また……あれ?」 「さあ!」までは二人同時に発声した。しかし肝心の「おたべなさい!」を行ったのは一方だけだ。 作戦立案をした空きっ腹のれいむの方は、割れたれいむの隣で平然と、丸々と構えている。 お兄さんへの親愛は衰えていなかったため、「おたべなさい!」は痛みもなく上手くいった。しかしこの状況は何だ? 「ゆゆ、れいむどうしたの!?ちゃんとおたべなさいしてね!!」 「・・・・・・」 何か失敗したのだろうかと、割れたれいむが必死に呼びかける。 だが残ったれいむは何も言わず、割れいむが予想もしていなかった行動に出た。 バクンッ 「むーしゃ、むーしゃ・・・しし、しししししあわせーーー♪」 「ゆあああぁぁぁぁぁ!?どうしてれいむがたべちゃうのおぉぉぉーー!!」 れいむが「おたべなさい!」をしたのは、お兄さんに美味しく食べてもらうため。決して他の人間や動物には食べられたくない。 なのに何故かれいむを焚き付けたれいむの方が、お兄さんのためのれいむの身体をむしゃむしゃと食べ始めた。 こんな結末、苦痛と絶望以外の何者でもない。「おたべなさい!」を冒涜されたれいむは、その全生涯を否定されたのだ。 「むーしゃ、むーしゃ♪」 「やめてね!!れいむをたべないでね!!れいむをたべていいのはおにいさんだけだからね!!」 空きっ腹れいむがどんなにゆっくり食べたとしても、一度誰かに口をつけられてしまった以上、 割れいむが「ふえちゃうぞ!」で再生する事は最早無い。同胞……いや、自分自身の裏切りを甘受し、このまま消えていくだけだ。 「どうじてごんなごとするの!!れいむやめてね!!これじゃゆっぐりでぎないよ!! やべてよおぉぉぉぉぉ!!!ゆっぐ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせーーーーー♪」 残された半身の口も食べられてしまい、断末魔の叫びが途絶える。 もう一人の自分の身体を跡形も無く食べつくしたれいむは、一回りほど大きくなり、心身共に満たされていた。 れいむはやっぱり、ものすごく美味しかった。こんなれいむをお兄さんが食べたら、一生分のゆっくりが味わえることだろう。 更にそんなれいむを食べたれいむには、ゆっくりが二人分乗算されている……これこそがこのれいむの、真の作戦だったのだ。 でっぷりと膨れた身体を引きずり、残ったれいむはお兄さんに向き直る。 「おにいさん!!れいむはやっぱりすごくおいしいんだよ!!おにいさんもきっとすごーーくゆっくりできるよ!! れいむはゆっくりできるれいむをたべたから、きのうよりもなんばいもゆっくりしてるよ!! こんなにゆっくりしたれいむならおにいさんもたべてくれるよね!!さあ・・・」 「あー、ちょっと待て」 お食べなさい、と言おうとしたれいむを、お兄さんがその手で制止する。 お兄さんは一連の光景を眺めて、どん引きしていた。この上食べてもらえないと泣き叫ばれては敵わない。 「俺、甘いもの嫌いなんだよ」 「ゆ・・・・?」 「食べたらオエッて吐いちゃうぐらいな。だからお前は食えん。悪いが」 れいむの頭は真っ白になった。 どうして? あんな裏切り紛いのことを働いてまで、お兄さんにゆっくりしてもらおうとしたのに…… どうして甘いものが嫌いなのに、れいむのことを飼ってたの? れいむと一緒にいっぱいゆっくりしたら、最後には甘い甘いれいむを食べるって決まってるのに。 れいむのゆっくりは、お兄さんに食べてもらうためにあったのに。 れいむは自分を食べてもらう以上に、お兄さんをゆっくりさせてなんてあげられないのに。 じゃあれいむは、本当はゆっくりできない、いらない子だったの? 次から次へと溢れてくる疑問が、そのまま涙となったかのように目からこぼれて来た。 「ゆっ・・・・ゆぐっ・・・・どうじで・・・・・・・・ゆぐっ・・・・」 「はぁ……別に食べてもらう以外にも付き合い方は色々あるだろ。そう落ち込むなよ」 お兄さんは事も無げにれいむを一瞥すると、洗面所に顔を洗いにいってしまった。 れいむははっと我に返り、お兄さんのあとを必死な顔でついていく。 「おにいさん!まってね!!れいむをたべなくてもいいよ!!だかられいむをきらいにならないでね!! れいむゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!おにいさんといっしょにゆっくりしたいよ!! もうあんなことしないからね!!だからあんしんしてゆっくりしていってね!!ずっといっしょだよ!!」 「…………」 バシャバシャと水を顔にかけながら聞いていたお兄さんには、返事は出来なかった。 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2265.html
ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)から 「あー、金と時間損した……ただいまー」 「ゆゆっ!おにいさんがかえってきたよ!!」 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 玄関のドアが開く音に続いて飼い主の青年の声が聞こえるや、 二個のれいむは押し合いへし合い、お兄さんを出迎えようと玄関に走った。 そんな光景を目の当たりにしたお兄さんは、素っ頓狂な声を上げざるを得ない。 「へっ!? 何で二個!?」 「ゆゆ!おにいさんがたべてくれないからふえちゃったんだよ!!」 「ゆっくりできるれいむがふえて、にばいゆっくりできるよ!!」 れいむ達は、あくまで前向きだった。 お兄さんは「ああ、そういえばこいつ今朝割れたんだっけ」と、どうでも良過ぎて忘れていた事を今思い出した。 ゆっくりが適当な存在であることはお兄さんも承知していたつもりだった。しかしまさか分裂するとは…… 頭を掻きながら家に上がり、とりあえず腰を落ち着けるお兄さんに、れいむ達はぴょこぴょこついてくる。 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!!」 「れいむもだよ!!ゆっくりごはんをちょうだいね!!」 「これ食い扶持が増えたってことだよなあ……別にそのぐらい困らないけどよ」 お兄さんはブツブツ言いながら、台所にゆっくりフードを取りに行く。 しかしゆっくりフードは買い置きを切らしており、残っていたのはあと一食分ほどだった。 彼は「しまった」と言おうとしたが、よく考えたら勝手に増えたのはゆっくりの方であることを思い出し、やめた。 他に何か作るか……と思うも、ペットショップ店員の言葉が脳裏に蘇る。 「基本的にこれ以外は食べさせないで下さいね。人間の料理などを食べさせると、舌が肥えますから。 そうすると餌代がかさむようになりますし、ゆっくりも満足出来難くなりますから、どちらにとっても良くないんですよ。 このゆっくりフードがゆっくりにとって、美味し過ぎず不味くもなく、一番ゆっくり出来るバランス食品なんです」 一度彼もゆっくりフードをつまんでみたことがあるが、何とも言えぬ微妙な味だった。 あれなら自分で作った酒のツマミなどの方が、よほど食べ物として上等と言える。 そんなものを食べさせて食事の水準を上げてしまっては、お互いの不幸を招こうというものだ。 仕方なく彼はゆっくりフードの箱を手にし、わくわくと身体を揺する二個のれいむの元へと戻る。 「おい、悪いけど一人前しかないぞ」 「ゆゆっ!?そんなぁぁぁぁぁ!!」 「れいむおなかいっぱいたべたいよ!!」 当然、れいむたちからはブーイングが噴出。しかし彼にとってこれは初めてではない。 以前にもゆっくりフードを買い忘れてしまい、れいむの晩ご飯が抜きになったことがあった。 確かにその晩は機嫌が悪かったが、翌日買ってきた餌を与えると、ケロリと忘れて上機嫌に戻った。 極端な話、数日抜いたところで別に死ぬようなものでもない。そう彼は楽観視していた。 「まあ明日は少し多めに買ってくるから。今日はそれで我慢しとけ」 「れいむおたべなさいしてつかれたよ!!おなかぺこぺこだよ!!」 「れいむだっていっしょだよ!!」 「だったら仲良くはんぶんこしないとな。それがゆっくりってもんだろ」 「「ゆっ・・・」」 しかしこの問題の根は、空腹とはまた違うところに存在した。 れいむたちは「二倍ゆっくりできる」と前向きに考えていたが、事実はそうではない。 お兄さんが与えてくれる有限のゆっくりを、二人ではんぶんこしなくてはいけないのだ。 それでは充分にゆっくり出来ず、満足な「おたべなさい!」が出来るかどうか解らない。 この「ごはんが足りなかった」という一事は、れいむ達の心にそう印象付けるに至った。 しかし内心はそう感じていても、そこはゆっくり。出来る限り波風を立てず、お互いゆっくりする方向で動いた。 「ゆっ、れいむ、いっしょにたべようね。おにいさんをこまらせないでね」 「ゆゆ、わかってるよ!はんぶんこしようね!」 「れいむはゆっくりしてるね!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 二個のれいむは形ばかりのすりすりで一応の親愛を高めると、食事に取り掛かった。 とはいえ、ゆっくりの知能で綺麗に二等分など出来るはずもなく、自然と偏りが生じた。 多く餌を取れた方のれいむは、「むーしゃ、むーしゃ♪」と食事に集中している。 そうでない方のれいむは、まだ咀嚼をしているもう一個のれいむを羨ましそうに見つめている。 そんな手持ち無沙汰の状態だったから、お兄さんがぽつりと呟いた一言に気付けたのだろう。 「くだらねえな……」 (ゆっ!?) れいむたちを見下ろすお兄さんの瞳は、どこか冷ややかだった。 いつもはぶっきらぼうながら、どこか暖かみのある視線を送ってくれていたのに。 しかしそれも無理からぬ。青年は心のどこかが次第に冷えていくのを感じていた。 彼は「自分対れいむ」という限定的に完結した関係性の中に意味、救いを見出していたのだ。 それがもう一個ゆっくりが増えたことにより、「れいむ対れいむ」という異なる関係性が生まれた。 人間は人間同士、ゆっくりもゆっくり同士の方が接しやすいだろう。 となると、彼がそこに食い込んでいくのにはエネルギーを使わなければならない。 それが彼には面倒臭い。それは彼が日頃疎ましく感じていた、社会というものの構図だからだ。 実際にはれいむたちは、お互いを内心嫌っており、お兄さんにゆっくりしてもらうことしか考えていない。 だが客観的に事実を見れば、れいむたちはお互いにゆっくりしており、お兄さんは観察者に過ぎなかった。 彼にはゆっくり同士が仲良く過ごすのを眺めるような趣味は無かった。 (いや、これは自己中心的な考えか……) そう思いなおしたとて、一度感じてしまったことを撤回することなど出来はしない。 まあ、長く付き合っていれば色々ある。自分もその内、こういった観察の良さが解ってくるかもしれない。 そう自分を納得させながらも、お兄さんは表情を顰めたままれいむ達に背を向け、PCの前に腰掛けた。 (おにいさんがゆっくりできてないよ。きっとこのゆっくりできないれいむのせいだよ) そんな様を見ていた食いっぱぐれいむは、お兄さんの感情の機微を直感した。 お兄さんは、れいむたちが増えちゃったのを見て、明らかにゆっくり出来なくなっている。 「晩御飯を食いっぱぐれる」という、分裂のデメリットを味わった方のれいむだからこそ出来た発想かも知れない。 このままではお兄さんもゆっくり出来なくなり、れいむの享受出来るゆっくりも、以前の半分以下になってしまうだろう。 まさに負のスパイラル、ゆっくり無き世界。待っているのは絶望だけ。 早急に何とかしなければならない。 ようやく食事を終えたもう一人の自分を見ながら、れいむは決心を固めた。 とにもかくにも、まずはゆっくりしなければならない。 とは言え、れいむ同士では到底ゆっくり出来ない。同じ髪飾りをつけたゆっくりなど気持ちが悪くて仕方がない。 お兄さんが構ってくれなければ、ゆっくり出来ない子と過ごすしかなくなってしまう。そんなの嫌だった。 れいむはネットの巡回を楽しむお兄さんの足下へと縋り付いて行った。 「おにいさん!れいむとあそぼうね!れいむとゆっくりしてね!!」 「えっ? どうしたんだ急に」 「おにいさんとゆっくりしたいよ!れいむとおはなししてね!!」 れいむがこんな風に遊びをせがんで来ることなど、今までほとんど無かった。 珍しいことだとお兄さんが一瞬戸惑っている間に、沢山ごはんを食べた方のれいむが慌てて駆け寄って来た。 お兄さんの足に身体を擦りつけていたれいむを、身体を使って押しのける。 「ゆっ、れいむ!おにいさんのじゃましちゃだめだよ!!」 「ゆゆ、でも、でも・・・」 「おにいさんはゆっくりしてるんだよ!れいむはれいむとゆっくりしようね!!」 「ゆぅぅぅぅ・・・・・」 沢山ごはんを食べて幸せになった方のれいむは、少し心に余裕が出来ていたようで、 「ゆっくり出来ないれいむとでも何とかゆっくり過ごしてやろう」という気概を見せていた。 しかしもう一方のれいむにとって、そんな気遣いはありがた迷惑も良いところであった。 「まあ良いじゃないか、仲良くしてろよ。ゆっくりはゆっくり同士の方が良いだろ」 「ゆゆ・・・おにいさん・・・・・」 「おにいさんもそういってるよ!むこうにいってゆっくりしようね!!」 お兄さんにまで言われては仕方がない。ここでゴネてお兄さんにまで嫌われたらどうしようもない。 部屋の隅に置かれたれいむ用のゴムボールに向かって、意気揚々と跳ねていくれいむと、 後ろ髪を引かれる思いで渋々その後ろについていくれいむ。 お兄さんはその背中をどこか寂しげに見送ると、PCに向き直り、面白動画サイトを見てアハハと笑っていた。 れいむとれいむは交互にゴムボールに体当たりし、キャッチボールのような遊びをしていた。 何だかんだで身体を動かす遊びは楽しいし、遊び相手がいるというのも悪くない。 それでもやはり、相手が自分と全く同じものだと思うと、両者とも良い気持ちはしなかった。 これからお兄さんが仕事に行っている間、ずっとこんな思いをしなければならない…… 一方のれいむは「その内慣れるさ」と自分に言い聞かせていたが、ごはんを少ししか食べられなかった方のれいむは 空きっ腹を抱えながら、来るべき憂鬱な生活を想像して、そんなのは耐えられないと感じていた。 「ゆっ!れいむ、ゆっくりしてる?」 「ゆっ・・・?れいむはゆっくりできてるよ!!」 「いっぱいゆっくりして、おにいさんをゆっくりさせてあげようね!!」 そんなものは欺瞞だ。れいむが二人もいる限り、お兄さんはきっとゆっくり出来ない。 空きっ腹のれいむはボール遊びを中断し、もう一方のれいむの傍に駆け寄った。 「ゆ?どうしたの?れいむもっとあそびたいよ!!」 「れいむきいてね。あしたになったらまたおたべなさい!しようね」 「ゆゆ!?でもまたたべてもらえなかったらたいへんだよ!もっとゆっくりしてからじゃないとだめだよ!」 「だいじょうぶだよ。れいむにいいかんがえがあるよ」 「ゆゆ・・・ほんとう?さすがれいむだね!!」 自分の分身の考えた作戦なら、きっと素晴らしいものに違いない。 疑いもなくそう確信したれいむは二つ返事で承諾し、二人はゆっくりと明日の打ち合わせを始めた。 ヘッドホンを付けて動画を見ていたお兄さんがその密談に気付くことはなかった。 もしかするとそれは、れいむ達が楽しそうにしている声をむざむざ聞きたくないという、ある種の防衛行動であったのかもしれない。 それぞれがダラダラと時間を過ごし、夜は更け、やがて一人と二個は深い眠りについていった。 運命の朝。 お兄さんがいつも通りの時間に起きて来ると、居間のテーブルには二個の饅頭が行儀良く並んでいた。 「「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」」 「ああ……おはよう。そういえばお前増えたんだっけ……」 そこ邪魔だからどいとけよ、とれいむたちに言い、流しに顔を洗いに行こうとするお兄さん。 しかしそんなお兄さんを、れいむたちは「ちょっとまってね!!」呼び止める。 「ん……何だってんだよ?」 「おにいさん!きょうこそれいむをたべてもらうよ!!」 「ふたりになったからにばいゆっくりできるよ!!」 「またその話か。だから俺は要らないって」 「えんりょしないでね!いっぱいあるからたべていってね!!」 「あのなあ……」 「れいむ!あれをやろうね!」 「ゆゆっ、わかったよれいむ!!」 「おい、ちょっとは聞けよ」 れいむたちの打ち合わせ。それはお兄さんのおいしい朝ごはんになること。 いっせーの、で二人同時に「さあ、おたべなさい!」をする。 そのまま放っておいてしまえば、可愛そうなれいむは四人に増えてしまう。 れいむが増えるとお兄さんはゆっくり出来なくなるのだから、今度こそ食べるしかあるまい。 お兄さんを脅かすようで気が引けるやり方だが、食べてもらいさえ出来ればゆっくりしてもらえるのだ。 その結果を得るためには、仕方の無い妥協だった。 れいむたちは互いに頷きあい、お兄さんにの顔をきりりと見つめる。そして…… 「「いっせーの、」」 「「さあ!」おたべなさい!!ゆっ!?」 「ああ、また……あれ?」 「さあ!」までは二人同時に発声した。しかし肝心の「おたべなさい!」を行ったのは一方だけだ。 作戦立案をした空きっ腹のれいむの方は、割れたれいむの隣で平然と、丸々と構えている。 お兄さんへの親愛は衰えていなかったため、「おたべなさい!」は痛みもなく上手くいった。しかしこの状況は何だ? 「ゆゆ、れいむどうしたの!?ちゃんとおたべなさいしてね!!」 「・・・・・・」 何か失敗したのだろうかと、割れたれいむが必死に呼びかける。 だが残ったれいむは何も言わず、割れいむが予想もしていなかった行動に出た。 バクンッ 「むーしゃ、むーしゃ・・・しし、しししししあわせーーー♪」 「ゆあああぁぁぁぁぁ!?どうしてれいむがたべちゃうのおぉぉぉーー!!」 れいむが「おたべなさい!」をしたのは、お兄さんに美味しく食べてもらうため。決して他の人間や動物には食べられたくない。 なのに何故かれいむを焚き付けたれいむの方が、お兄さんのためのれいむの身体をむしゃむしゃと食べ始めた。 こんな結末、苦痛と絶望以外の何者でもない。「おたべなさい!」を冒涜されたれいむは、その全生涯を否定されたのだ。 「むーしゃ、むーしゃ♪」 「やめてね!!れいむをたべないでね!!れいむをたべていいのはおにいさんだけだからね!!」 空きっ腹れいむがどんなにゆっくり食べたとしても、一度誰かに口をつけられてしまった以上、 割れいむが「ふえちゃうぞ!」で再生する事は最早無い。同胞……いや、自分自身の裏切りを甘受し、このまま消えていくだけだ。 「どうじてごんなごとするの!!れいむやめてね!!これじゃゆっぐりでぎないよ!! やべてよおぉぉぉぉぉ!!!ゆっぐ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせーーーーー♪」 残された半身の口も食べられてしまい、断末魔の叫びが途絶える。 もう一人の自分の身体を跡形も無く食べつくしたれいむは、一回りほど大きくなり、心身共に満たされていた。 れいむはやっぱり、ものすごく美味しかった。こんなれいむをお兄さんが食べたら、一生分のゆっくりが味わえることだろう。 更にそんなれいむを食べたれいむには、ゆっくりが二人分乗算されている……これこそがこのれいむの、真の作戦だったのだ。 でっぷりと膨れた身体を引きずり、残ったれいむはお兄さんに向き直る。 「おにいさん!!れいむはやっぱりすごくおいしいんだよ!!おにいさんもきっとすごーーくゆっくりできるよ!! れいむはゆっくりできるれいむをたべたから、きのうよりもなんばいもゆっくりしてるよ!! こんなにゆっくりしたれいむならおにいさんもたべてくれるよね!!さあ・・・」 「あー、ちょっと待て」 お食べなさい、と言おうとしたれいむを、お兄さんがその手で制止する。 お兄さんは一連の光景を眺めて、どん引きしていた。この上食べてもらえないと泣き叫ばれては敵わない。 「俺、甘いもの嫌いなんだよ」 「ゆ・・・・?」 「食べたらオエッて吐いちゃうぐらいな。だからお前は食えん。悪いが」 れいむの頭は真っ白になった。 どうして? あんな裏切り紛いのことを働いてまで、お兄さんにゆっくりしてもらおうとしたのに…… どうして甘いものが嫌いなのに、れいむのことを飼ってたの? れいむと一緒にいっぱいゆっくりしたら、最後には甘い甘いれいむを食べるって決まってるのに。 れいむのゆっくりは、お兄さんに食べてもらうためにあったのに。 れいむは自分を食べてもらう以上に、お兄さんをゆっくりさせてなんてあげられないのに。 じゃあれいむは、本当はゆっくりできない、いらない子だったの? 次から次へと溢れてくる疑問が、そのまま涙となったかのように目からこぼれて来た。 「ゆっ・・・・ゆぐっ・・・・どうじで・・・・・・・・ゆぐっ・・・・」 「はぁ……別に食べてもらう以外にも付き合い方は色々あるだろ。そう落ち込むなよ」 お兄さんは事も無げにれいむを一瞥すると、洗面所に顔を洗いにいってしまった。 れいむははっと我に返り、お兄さんのあとを必死な顔でついていく。 「おにいさん!まってね!!れいむをたべなくてもいいよ!!だかられいむをきらいにならないでね!! れいむゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!おにいさんといっしょにゆっくりしたいよ!! もうあんなことしないからね!!だからあんしんしてゆっくりしていってね!!ずっといっしょだよ!!」 「…………」 バシャバシャと水を顔にかけながら聞いていたお兄さんには、返事は出来なかった。 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2392.html
ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)から 「あー、金と時間損した……ただいまー」 「ゆゆっ!おにいさんがかえってきたよ!!」 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 玄関のドアが開く音に続いて飼い主の青年の声が聞こえるや、 二個のれいむは押し合いへし合い、お兄さんを出迎えようと玄関に走った。 そんな光景を目の当たりにしたお兄さんは、素っ頓狂な声を上げざるを得ない。 「へっ!? 何で二個!?」 「ゆゆ!おにいさんがたべてくれないからふえちゃったんだよ!!」 「ゆっくりできるれいむがふえて、にばいゆっくりできるよ!!」 れいむ達は、あくまで前向きだった。 お兄さんは「ああ、そういえばこいつ今朝割れたんだっけ」と、どうでも良過ぎて忘れていた事を今思い出した。 ゆっくりが適当な存在であることはお兄さんも承知していたつもりだった。しかしまさか分裂するとは…… 頭を掻きながら家に上がり、とりあえず腰を落ち着けるお兄さんに、れいむ達はぴょこぴょこついてくる。 「おにいさん、れいむおなかすいたよ!!」 「れいむもだよ!!ゆっくりごはんをちょうだいね!!」 「これ食い扶持が増えたってことだよなあ……別にそのぐらい困らないけどよ」 お兄さんはブツブツ言いながら、台所にゆっくりフードを取りに行く。 しかしゆっくりフードは買い置きを切らしており、残っていたのはあと一食分ほどだった。 彼は「しまった」と言おうとしたが、よく考えたら勝手に増えたのはゆっくりの方であることを思い出し、やめた。 他に何か作るか……と思うも、ペットショップ店員の言葉が脳裏に蘇る。 「基本的にこれ以外は食べさせないで下さいね。人間の料理などを食べさせると、舌が肥えますから。 そうすると餌代がかさむようになりますし、ゆっくりも満足出来難くなりますから、どちらにとっても良くないんですよ。 このゆっくりフードがゆっくりにとって、美味し過ぎず不味くもなく、一番ゆっくり出来るバランス食品なんです」 一度彼もゆっくりフードをつまんでみたことがあるが、何とも言えぬ微妙な味だった。 あれなら自分で作った酒のツマミなどの方が、よほど食べ物として上等と言える。 そんなものを食べさせて食事の水準を上げてしまっては、お互いの不幸を招こうというものだ。 仕方なく彼はゆっくりフードの箱を手にし、わくわくと身体を揺する二個のれいむの元へと戻る。 「おい、悪いけど一人前しかないぞ」 「ゆゆっ!?そんなぁぁぁぁぁ!!」 「れいむおなかいっぱいたべたいよ!!」 当然、れいむたちからはブーイングが噴出。しかし彼にとってこれは初めてではない。 以前にもゆっくりフードを買い忘れてしまい、れいむの晩ご飯が抜きになったことがあった。 確かにその晩は機嫌が悪かったが、翌日買ってきた餌を与えると、ケロリと忘れて上機嫌に戻った。 極端な話、数日抜いたところで別に死ぬようなものでもない。そう彼は楽観視していた。 「まあ明日は少し多めに買ってくるから。今日はそれで我慢しとけ」 「れいむおたべなさいしてつかれたよ!!おなかぺこぺこだよ!!」 「れいむだっていっしょだよ!!」 「だったら仲良くはんぶんこしないとな。それがゆっくりってもんだろ」 「「ゆっ・・・」」 しかしこの問題の根は、空腹とはまた違うところに存在した。 れいむたちは「二倍ゆっくりできる」と前向きに考えていたが、事実はそうではない。 お兄さんが与えてくれる有限のゆっくりを、二人ではんぶんこしなくてはいけないのだ。 それでは充分にゆっくり出来ず、満足な「おたべなさい!」が出来るかどうか解らない。 この「ごはんが足りなかった」という一事は、れいむ達の心にそう印象付けるに至った。 しかし内心はそう感じていても、そこはゆっくり。出来る限り波風を立てず、お互いゆっくりする方向で動いた。 「ゆっ、れいむ、いっしょにたべようね。おにいさんをこまらせないでね」 「ゆゆ、わかってるよ!はんぶんこしようね!」 「れいむはゆっくりしてるね!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 二個のれいむは形ばかりのすりすりで一応の親愛を高めると、食事に取り掛かった。 とはいえ、ゆっくりの知能で綺麗に二等分など出来るはずもなく、自然と偏りが生じた。 多く餌を取れた方のれいむは、「むーしゃ、むーしゃ♪」と食事に集中している。 そうでない方のれいむは、まだ咀嚼をしているもう一個のれいむを羨ましそうに見つめている。 そんな手持ち無沙汰の状態だったから、お兄さんがぽつりと呟いた一言に気付けたのだろう。 「くだらねえな……」 (ゆっ!?) れいむたちを見下ろすお兄さんの瞳は、どこか冷ややかだった。 いつもはぶっきらぼうながら、どこか暖かみのある視線を送ってくれていたのに。 しかしそれも無理からぬ。青年は心のどこかが次第に冷えていくのを感じていた。 彼は「自分対れいむ」という限定的に完結した関係性の中に意味、救いを見出していたのだ。 それがもう一個ゆっくりが増えたことにより、「れいむ対れいむ」という異なる関係性が生まれた。 人間は人間同士、ゆっくりもゆっくり同士の方が接しやすいだろう。 となると、彼がそこに食い込んでいくのにはエネルギーを使わなければならない。 それが彼には面倒臭い。それは彼が日頃疎ましく感じていた、社会というものの構図だからだ。 実際にはれいむたちは、お互いを内心嫌っており、お兄さんにゆっくりしてもらうことしか考えていない。 だが客観的に事実を見れば、れいむたちはお互いにゆっくりしており、お兄さんは観察者に過ぎなかった。 彼にはゆっくり同士が仲良く過ごすのを眺めるような趣味は無かった。 (いや、これは自己中心的な考えか……) そう思いなおしたとて、一度感じてしまったことを撤回することなど出来はしない。 まあ、長く付き合っていれば色々ある。自分もその内、こういった観察の良さが解ってくるかもしれない。 そう自分を納得させながらも、お兄さんは表情を顰めたままれいむ達に背を向け、PCの前に腰掛けた。 (おにいさんがゆっくりできてないよ。きっとこのゆっくりできないれいむのせいだよ) そんな様を見ていた食いっぱぐれいむは、お兄さんの感情の機微を直感した。 お兄さんは、れいむたちが増えちゃったのを見て、明らかにゆっくり出来なくなっている。 「晩御飯を食いっぱぐれる」という、分裂のデメリットを味わった方のれいむだからこそ出来た発想かも知れない。 このままではお兄さんもゆっくり出来なくなり、れいむの享受出来るゆっくりも、以前の半分以下になってしまうだろう。 まさに負のスパイラル、ゆっくり無き世界。待っているのは絶望だけ。 早急に何とかしなければならない。 ようやく食事を終えたもう一人の自分を見ながら、れいむは決心を固めた。 とにもかくにも、まずはゆっくりしなければならない。 とは言え、れいむ同士では到底ゆっくり出来ない。同じ髪飾りをつけたゆっくりなど気持ちが悪くて仕方がない。 お兄さんが構ってくれなければ、ゆっくり出来ない子と過ごすしかなくなってしまう。そんなの嫌だった。 れいむはネットの巡回を楽しむお兄さんの足下へと縋り付いて行った。 「おにいさん!れいむとあそぼうね!れいむとゆっくりしてね!!」 「えっ? どうしたんだ急に」 「おにいさんとゆっくりしたいよ!れいむとおはなししてね!!」 れいむがこんな風に遊びをせがんで来ることなど、今までほとんど無かった。 珍しいことだとお兄さんが一瞬戸惑っている間に、沢山ごはんを食べた方のれいむが慌てて駆け寄って来た。 お兄さんの足に身体を擦りつけていたれいむを、身体を使って押しのける。 「ゆっ、れいむ!おにいさんのじゃましちゃだめだよ!!」 「ゆゆ、でも、でも・・・」 「おにいさんはゆっくりしてるんだよ!れいむはれいむとゆっくりしようね!!」 「ゆぅぅぅぅ・・・・・」 沢山ごはんを食べて幸せになった方のれいむは、少し心に余裕が出来ていたようで、 「ゆっくり出来ないれいむとでも何とかゆっくり過ごしてやろう」という気概を見せていた。 しかしもう一方のれいむにとって、そんな気遣いはありがた迷惑も良いところであった。 「まあ良いじゃないか、仲良くしてろよ。ゆっくりはゆっくり同士の方が良いだろ」 「ゆゆ・・・おにいさん・・・・・」 「おにいさんもそういってるよ!むこうにいってゆっくりしようね!!」 お兄さんにまで言われては仕方がない。ここでゴネてお兄さんにまで嫌われたらどうしようもない。 部屋の隅に置かれたれいむ用のゴムボールに向かって、意気揚々と跳ねていくれいむと、 後ろ髪を引かれる思いで渋々その後ろについていくれいむ。 お兄さんはその背中をどこか寂しげに見送ると、PCに向き直り、面白動画サイトを見てアハハと笑っていた。 れいむとれいむは交互にゴムボールに体当たりし、キャッチボールのような遊びをしていた。 何だかんだで身体を動かす遊びは楽しいし、遊び相手がいるというのも悪くない。 それでもやはり、相手が自分と全く同じものだと思うと、両者とも良い気持ちはしなかった。 これからお兄さんが仕事に行っている間、ずっとこんな思いをしなければならない…… 一方のれいむは「その内慣れるさ」と自分に言い聞かせていたが、ごはんを少ししか食べられなかった方のれいむは 空きっ腹を抱えながら、来るべき憂鬱な生活を想像して、そんなのは耐えられないと感じていた。 「ゆっ!れいむ、ゆっくりしてる?」 「ゆっ・・・?れいむはゆっくりできてるよ!!」 「いっぱいゆっくりして、おにいさんをゆっくりさせてあげようね!!」 そんなものは欺瞞だ。れいむが二人もいる限り、お兄さんはきっとゆっくり出来ない。 空きっ腹のれいむはボール遊びを中断し、もう一方のれいむの傍に駆け寄った。 「ゆ?どうしたの?れいむもっとあそびたいよ!!」 「れいむきいてね。あしたになったらまたおたべなさい!しようね」 「ゆゆ!?でもまたたべてもらえなかったらたいへんだよ!もっとゆっくりしてからじゃないとだめだよ!」 「だいじょうぶだよ。れいむにいいかんがえがあるよ」 「ゆゆ・・・ほんとう?さすがれいむだね!!」 自分の分身の考えた作戦なら、きっと素晴らしいものに違いない。 疑いもなくそう確信したれいむは二つ返事で承諾し、二人はゆっくりと明日の打ち合わせを始めた。 ヘッドホンを付けて動画を見ていたお兄さんがその密談に気付くことはなかった。 もしかするとそれは、れいむ達が楽しそうにしている声をむざむざ聞きたくないという、ある種の防衛行動であったのかもしれない。 それぞれがダラダラと時間を過ごし、夜は更け、やがて一人と二個は深い眠りについていった。 運命の朝。 お兄さんがいつも通りの時間に起きて来ると、居間のテーブルには二個の饅頭が行儀良く並んでいた。 「「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」」 「ああ……おはよう。そういえばお前増えたんだっけ……」 そこ邪魔だからどいとけよ、とれいむたちに言い、流しに顔を洗いに行こうとするお兄さん。 しかしそんなお兄さんを、れいむたちは「ちょっとまってね!!」呼び止める。 「ん……何だってんだよ?」 「おにいさん!きょうこそれいむをたべてもらうよ!!」 「ふたりになったからにばいゆっくりできるよ!!」 「またその話か。だから俺は要らないって」 「えんりょしないでね!いっぱいあるからたべていってね!!」 「あのなあ……」 「れいむ!あれをやろうね!」 「ゆゆっ、わかったよれいむ!!」 「おい、ちょっとは聞けよ」 れいむたちの打ち合わせ。それはお兄さんのおいしい朝ごはんになること。 いっせーの、で二人同時に「さあ、おたべなさい!」をする。 そのまま放っておいてしまえば、可愛そうなれいむは四人に増えてしまう。 れいむが増えるとお兄さんはゆっくり出来なくなるのだから、今度こそ食べるしかあるまい。 お兄さんを脅かすようで気が引けるやり方だが、食べてもらいさえ出来ればゆっくりしてもらえるのだ。 その結果を得るためには、仕方の無い妥協だった。 れいむたちは互いに頷きあい、お兄さんにの顔をきりりと見つめる。そして…… 「「いっせーの、」」 「「さあ!」おたべなさい!!ゆっ!?」 「ああ、また……あれ?」 「さあ!」までは二人同時に発声した。しかし肝心の「おたべなさい!」を行ったのは一方だけだ。 作戦立案をした空きっ腹のれいむの方は、割れたれいむの隣で平然と、丸々と構えている。 お兄さんへの親愛は衰えていなかったため、「おたべなさい!」は痛みもなく上手くいった。しかしこの状況は何だ? 「ゆゆ、れいむどうしたの!?ちゃんとおたべなさいしてね!!」 「・・・・・・」 何か失敗したのだろうかと、割れたれいむが必死に呼びかける。 だが残ったれいむは何も言わず、割れいむが予想もしていなかった行動に出た。 バクンッ 「むーしゃ、むーしゃ・・・しし、しししししあわせーーー♪」 「ゆあああぁぁぁぁぁ!?どうしてれいむがたべちゃうのおぉぉぉーー!!」 れいむが「おたべなさい!」をしたのは、お兄さんに美味しく食べてもらうため。決して他の人間や動物には食べられたくない。 なのに何故かれいむを焚き付けたれいむの方が、お兄さんのためのれいむの身体をむしゃむしゃと食べ始めた。 こんな結末、苦痛と絶望以外の何者でもない。「おたべなさい!」を冒涜されたれいむは、その全生涯を否定されたのだ。 「むーしゃ、むーしゃ♪」 「やめてね!!れいむをたべないでね!!れいむをたべていいのはおにいさんだけだからね!!」 空きっ腹れいむがどんなにゆっくり食べたとしても、一度誰かに口をつけられてしまった以上、 割れいむが「ふえちゃうぞ!」で再生する事は最早無い。同胞……いや、自分自身の裏切りを甘受し、このまま消えていくだけだ。 「どうじてごんなごとするの!!れいむやめてね!!これじゃゆっぐりでぎないよ!! やべてよおぉぉぉぉぉ!!!ゆっぐ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせーーーーー♪」 残された半身の口も食べられてしまい、断末魔の叫びが途絶える。 もう一人の自分の身体を跡形も無く食べつくしたれいむは、一回りほど大きくなり、心身共に満たされていた。 れいむはやっぱり、ものすごく美味しかった。こんなれいむをお兄さんが食べたら、一生分のゆっくりが味わえることだろう。 更にそんなれいむを食べたれいむには、ゆっくりが二人分乗算されている……これこそがこのれいむの、真の作戦だったのだ。 でっぷりと膨れた身体を引きずり、残ったれいむはお兄さんに向き直る。 「おにいさん!!れいむはやっぱりすごくおいしいんだよ!!おにいさんもきっとすごーーくゆっくりできるよ!! れいむはゆっくりできるれいむをたべたから、きのうよりもなんばいもゆっくりしてるよ!! こんなにゆっくりしたれいむならおにいさんもたべてくれるよね!!さあ・・・」 「あー、ちょっと待て」 お食べなさい、と言おうとしたれいむを、お兄さんがその手で制止する。 お兄さんは一連の光景を眺めて、どん引きしていた。この上食べてもらえないと泣き叫ばれては敵わない。 「俺、甘いもの嫌いなんだよ」 「ゆ・・・・?」 「食べたらオエッて吐いちゃうぐらいな。だからお前は食えん。悪いが」 れいむの頭は真っ白になった。 どうして? あんな裏切り紛いのことを働いてまで、お兄さんにゆっくりしてもらおうとしたのに…… どうして甘いものが嫌いなのに、れいむのことを飼ってたの? れいむと一緒にいっぱいゆっくりしたら、最後には甘い甘いれいむを食べるって決まってるのに。 れいむのゆっくりは、お兄さんに食べてもらうためにあったのに。 れいむは自分を食べてもらう以上に、お兄さんをゆっくりさせてなんてあげられないのに。 じゃあれいむは、本当はゆっくりできない、いらない子だったの? 次から次へと溢れてくる疑問が、そのまま涙となったかのように目からこぼれて来た。 「ゆっ・・・・ゆぐっ・・・・どうじで・・・・・・・・ゆぐっ・・・・」 「はぁ……別に食べてもらう以外にも付き合い方は色々あるだろ。そう落ち込むなよ」 お兄さんは事も無げにれいむを一瞥すると、洗面所に顔を洗いにいってしまった。 れいむははっと我に返り、お兄さんのあとを必死な顔でついていく。 「おにいさん!まってね!!れいむをたべなくてもいいよ!!だかられいむをきらいにならないでね!! れいむゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!おにいさんといっしょにゆっくりしたいよ!! もうあんなことしないからね!!だからあんしんしてゆっくりしていってね!!ずっといっしょだよ!!」 「…………」 バシャバシャと水を顔にかけながら聞いていたお兄さんには、返事は出来なかった。 続く?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1196.html
ここは通常収録するのも投棄場に送るのも、どっちも微妙な作品を"一時的"に収録する場所です。 あくまで一時的収録の場所ですが、行き先が決まらない作品はずっと収録され続ける場合もあります。 投棄場作品と異なりますので、作者別や作品集にも原則的には加えられます。が、作者さんが後書きなどで作品集に入れるの拒否した場合などはその限りではありません。 ここに収録された作品を他に移す場合は、必ず下のコメントフォームで相談してから行ってください。これは荒らしが勝手に色々するのを防ぐための事です。 具体的な収録対象作品は下記の通りです。復讐物ではないのに、ゆっくり虐待よりも、東方原作キャラや人間、他の動物虐待要素が強い作品。 虐待スレで主流の設定を使っているため愛でに持って行けず、こちら向けで投下された作品。 虐待が皆無に近く、愛で要素が濃く主体な作品。 虐待要素も愛で要素も無いシュールやカオス系の作品。 wikiの掲載基準には合致しているものの、どうにも収まりが良い置き場が思いつかない作品。 wikiの掲載基準から逸れているが、ここ以外に受け入れ先が無さそうな作品。 通常収録だとスレが荒れそう、このwiki各所のコメントフォームも荒れそうな作品。 作者が注意書きや後書きで、収録場所にここを指定した作品。(この場合は作者本人の申し出が無い限り移動禁止) ここのネタをスレや感想フォームに持って行くのは止めましょう、スレでここの話題は禁止。 ただしスレと感想フォーム以外の、当wiki各コメントフォーム?や避難所で話題にするのは問題ありません。 また、下のコメントフォームに感想などを書くのも問題ありません。むしろ別に移す相談より、感想がメインになるの期待してのフォームですから。 ここへの収録は作者本人ではなく、他の方が行っても問題ありません。また、ここ向け作品の投下報告を下のフォームで行っても構いません。 ゆ虐の隙間1は作者さんの要請により作品投棄場に移動しました。by管理人 ゆ虐の隙間2 犯罪お兄さん? ゆ虐の隙間3 ハーフはつらいよ1(前編)? ゆ虐の隙間4 ハーフはつらいよ1(後編)? ゆ虐の隙間5 ゆ虐の隙間6 ゆっくり二郎? ゆ虐の隙間7 ゆっかりん・ぶりげいど・てらかおすふる? ゆ虐の隙間8 愛で派の発電所? ゆ虐の隙間9 人格を持った喋るユギャックソード、アネイキイとタオマーの夫婦剣を持つ鬼意山とゆっくりるーみあの冒険(前編)?虐ド希無外 ゆ虐の隙間10 人格を持った喋るユギャックソード、アネイキイとタオマーの夫婦剣を持つ鬼意山とゆっくりるーみあの冒険(後編)?他ド希 緩無原外幻 ゆ虐の隙間11 あのおねーさんのいうとおりにしただけなのに? ゆ虐の隙間12 越冬の苦労を赤れいむに語ってもらおう? ゆ虐の隙間13 sanaeeeee虐他性希※年齢制限内容を含むため、本文は外部ページ 「ゆ虐の隙間14 200⑨年⑨月⑨日はは作者の要請により削除されました。」 ゆ虐の隙間15 ゆっくり脳移植&先輩いじめ? 名前 コメント すべてのコメントを見る