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全てのジュエルシードをかけて全力で戦うなのはとフェイト。お互いの魔法を駆使した攻防は一進一退を続けていた。 周囲の苦言を受けながらも、『ジュエルシードを封印する』『フェイトとも和解する』の両方をやり抜く事を選んだなのははその心に秘めた『覚悟』によって、プレシアへの盲信で動き続けるフェイトと渡り合う。 そして、最後の瞬間の決め手となったのが、その受動的ではない自分自身を貫き続けたなのはの覚悟だった。 フェイトをバインドで捕える事に成功。抵抗するフェイトの魔法弾が全身を襲っても、なのははバインドを解除しなかった。 『いったん食らいついたら、腕や脚の一本や二本失おうとも決して『魔法』は解除しない―――』 幼い少女が胸に宿らせた鋼の信念は、襲い掛かるダメージを凌駕し、ついに最後の一撃によって雌雄は決したのだ。 激戦の果て。自らの敗北を受け入れたフェイトはなのはへジュエルシードを渡す事を決意したのだった。 スター・ライト・ブレイカーの直撃を受けたフェイトが束の間の眠りから目を覚ますと、体を支える暖かい腕の感触をまず感じた。 自分を容赦なく叩きのめした少女<高町なのは>の腕の中だった。 「……わたしの勝ちだね」 傷ついたフェイトを見下ろし、なのはが厳かに現実を突きつける。敗北した者に対する情けは、そこには無かった。 初めてなのはを見た時感じた儚さ、日常生活の中で偶然出会った時に見た柔らかな笑顔、それらの少女らしい雰囲気を一切削ぎ落とした戦士の顔がそこにある。 それはなのはの戦う時の顔だった。『やる』と決めた時、戦い抜く『覚悟』をした時、彼女はいつも変貌する。 自分は、その『覚悟』に負けたのだ―――フェイトは理解した。 「そう、みたいだね……」 敗北した僅かな失望感を抱き、フェイトは呟いた。 負けてしまった。母の為の戦いに敗北してしまった。これからどうなるのか、フェイト自身にも分からない。 しかし、不思議と不安や焦燥のようなものは感じていなかった。 何もかもなくしてしまったような消失感を感じながら、自分を抱く小さな少女の腕がとても暖かい事に奇妙な安らぎを感じる。 幾度も戦い、その容赦の無い戦い方に何度も戦慄した目の前の敵である少女に、今はもう全てを委ねてしまいたい気持ちすらあった。 戦いの中で、なのはは何度もフェイトを叱った。 敵から浴びせられる罵倒とも取れる叱責は、しかしプレシアがフェイトに叩きつける言葉とは全く違い、厳しさに隠された思いやりがあったのを、今の彼女は半ば悟っていたのだった。 『よし、なのは。ジュエルシードを確保して。それから彼女を―――』 クロノからの通信をなのはは無視した。 ただ、腕の中のフェイトを静かに見つめている。彼女が何かを言いたいのだと、なのはは分かっていた。 「……私は、これからどうなるんだろう?」 未だ茫然自失とした心のまま、フェイトは虚空を見上げたままポツリと呟く。 「アナタに負けて、ジュエルシードも全部失って……そして、母さんの願いも叶えられないまま、管理局に連れて行かれる……。私はこれからどこへ行くの?」 心の亀裂から漏れるように流れていくフェイトの呟きは徐々に震え始める。 現実感を取り戻してきた心が、滲んでくる黒い染みのように、不安を感じ始めていた。 「……フェイトちゃんがこれからどうなるのか? わたしの考えではたぶんこうだよ……。 まずフェイトちゃんのお母さんを捕まえる。裁判の流れによっては、罰も軽くなるかもしれない。そして、フェイトちゃんはそんなお母さんと一緒に罪を償いながら暮らしていく……。きっと遠い国で……少しずつ『普通の幸せ』を手にしながら暮らすんだよ……」 震えるフェイトになのはが紡いだ言葉が、静かに心に染み込んでいく。心に広がる黒い滲みを白く消していく。 不安に震える迷い子のような未来が、その言葉で明るく済んでゆくような錯覚をフェイトは感じた。 なのはが言った内容が、本当に現実となるのではないか―――そう信じてしまうような優しい響きが、なのはの淡々とした話の中にあった。 「……本当に、そうなるのかな? 私、本当に母さんと、そんな風に支え合って生きていけるのかな……?」 「そんな事を心配する親子はいないよ」 一見すると素っ気無いなのはの断言には、フェイトの不安をかき消す強さがあった。 「……そうだよね。その通りだよね……そんな事心配するなんて、おかしいよね……」 フェイトに小さな微笑みが浮かぶ。 全てが、なのはの言うとおりに進んでしまうような説得力。それがフェイトの心に安らかな気持ちを与えていた。 初めて出会った時から圧倒され続けていた、なのはの傲慢とも言える『貫く意志の強さ』 その強さが、こんなにも暖かくて心地良いものなのだと、フェイトは初めて理解したのだった。 フェイトの笑みに対して、なのはもようやく微笑みを浮かべる。 それが、本当に救いに思えた。 『Put out』 主の敗北を認めたバルディッシュが、収納していたジュエルシードを全て解放する。 全ての始まりだったジュエルシード―――それが今、ようやく終結に向かう。 なのはの手を離れ、向かい合う形になったフェイトは奇妙な清々しさの中ジュエルシードを渡そうと手を伸ばし―――。 次の瞬間、上空から巨大な魔力の雷がフェイトに飛来した。 「が……ぁ……っ!!」 「フェイト、ちゃん……?」 すでに魔力を使い果たしていたフェイトは、成す術も無く第三者の攻撃を受けるしかなかった。 不意の攻撃に呆然とするなのはの目の前で、フェイトが禍々しい雷光に包まれ、悶え苦しむ。主の代わりにダメージの大半を引き受けたバルディッシュが砕け、待機モードへ強制的に変化した。 「なにィィィィッ―――ッ!! フェイトちゃん!!!」 なのはは目の前の光景を理解し、湧き上がる驚愕と怒りの感情を爆発させた。 「まさかッ!」 この攻撃は、『誰』がしたものなのか。 「そんなッ! まさか―――ッ!」 この戦いを見ている可能性のある者の中で、こんな事をするのは、一体誰なのか! 考えたくはなかった。 高町なのはが生きていく上で、もっとも信じがたい現実が目の前にある事を認めたくはなかった。 家族とは守るもの。家族とは愛するもの。 優しい家庭で生まれ、育ったなのはにとって、それは最も度し難い許されざる事実! 有り得ない! 『母』が『娘』を手に掛けるなんてッ! 「プレシア・テスタロッサ―――ッ!!」 力尽き、落ちていくフェイトを慌てて抱き上げ、なのはは空を睨みながら呻くようにその名を口にした。 幸福に包まれた人間は、不幸な人間に言葉を掛けるべきではないのだろうか? 高町なのはには母親がいる。優しく、正しく、自分を生み出してくれた母親が。 苦しみの中で手にする力もあれば、優しさによって育まれる力もある。なのはの持つ力は、まさに後者であった。 彼女の目覚めは一人の少女との出会いだったが、彼女が正しい道を歩めるように教え導いてくれたのは、彼女の母であり家族であったのだ。 家族は、なのはをこの世のあらゆる残酷さから今日まで守ってくれていた。 ―――だから、今目の前で人生の全てを否定されたフェイトという少女に対して、自分はどんな慰めの言葉も掛ける資格はないのかもしれない。 目の前のモニターに映るプレシアから紡がれる言葉と、叩きつけられる現実。 それはおおよそ、誰も想像し得なかった最悪の現実だった。 『折角アリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない、私のお人形』 事故で亡くした実の娘<アリシア>の代わりとして作り出されたクローン<フェイト> 『作り物の命は所詮作り物……失ったものの代わりにはならないわ』 そのフェイトを娘として愛せないプレシア。 『いい事を教えてあげるわフェイト。アナタを作り出してからずぅっとね……私はアナタが、大嫌いだったのよッ!!』 「―――ッ!」 そして、決定的な一言が、フェイトを支える最後の柱をへし折った。 「フェイトちゃん!」 エイミィの叫びは悲鳴に近い。今、目の前の少女は心を深く刺されたのだ。 全てを失い、フェイトは気絶する。 倒れ込む彼女の体を、その場の誰よりも早く支える腕があった。 「……」 「なのは……」 高町なのはだった。 目の前で繰り広げれる悲壮な光景を、一番嘆き悲しむ筈の少女は、今の今まで無言を貫き、ただプレシアの映るモニターを見据えていた。 しかし、一見無表情に見えるなのはの内に燃え盛る業火を、誰よりも付き合いの長いユーノだけが正確に感じ取っていた。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「―――吐き気を催す、『邪悪』とは」 「な、なのはさん……?」 これまでの行動から、逆上しかねないなのはを落ち着かせようとするリンディだったが、歴戦の彼女すらも今のなのはの静かな迫力には圧された。 力なく横たわるフェイトを抱き締めたまま、なのははモニター越しにプレシアを睨み据える。 「何も知らない無知なる者を利用する事なの……。自分の利益だけのために利用する事なの…………」 「なのは……お、落ち着いて!! 魔力が溢れ出してる、危険だ!」 彼女を中心に湧き上がる見えない圧力に誰もが押し黙る中、言葉は静かに紡がれていたが、なのはの変化は確実に現れていた。 フェイトとの戦いで疲弊した筈の体から、マグマのように吹き上がる攻撃的な魔力の奔流。 なのはの内なる怒りを現すように、その魔力は放出されるだけで艦内の電子機器に異常な反応を起こさせる。 「母親がなにも知らぬ『娘』を!! てめーだけの都合でッ! ゆるさないッ! あんたは今、再びッ! フェイトちゃんの心を『裏切った』ッ!!!」 なのはの中で、これまで感じた事の無い『怒り』が爆発した。 「なのは……」 『怒り』を言葉にした少女を誰もが見つめる中、それは誰が呟いたものか。 ただ、その場の誰もが高町なのはに圧倒されていた。誰もが時空の秩序を守る組織に属する『正義の執行者』を誇りながら、彼女のあまりにも純粋で強烈な『間違った事への怒り』に呑まれていたのだ。 なのはの怒りには『正義の心』へ向かう意志があった。全員が、それを理解出来た。 『……『何』を、そんなに怒っているのかしら? 理解できないわ』 念話越しにすら感じるなのはの怒りの魔力は、プレシアの意識すら引き付けた。ただ、彼女にはなのはの怒りの意味を理解出来なかったが。 「フェイトちゃんが目を醒ましたのなら―――母親なんて最初からいなかったと伝えておくよ……」 『……フェイトですって? フェイトがなんだというの? その人形の事はアナタには何の関係もない!』 「貴女にわたしの心は永遠にわからないのッ!!」 最悪を告げる鐘が鳴る。 九つのジュエルシードがその力を解放され、次元を歪ませるようなエネルギーが荒れ狂う。狂った願いは、幾つもの想いを呑み込んでいく。 その渦中で、狂気に支配された魔法使いが一人。 その渦中に、自ら飛び込む魔法使いが一人。 最後の戦いが、今始まろうとしていた―――。 バ―――――z______ン! リリカルなのは 第十一話、完! to be continued……> <次回予告> ジュエルシードが発動し、次元震のアラームが鳴り響く中、なのははクロノ達と共にプレシア・テスタロッサの根城へ突入する事を決意する。 慌しく動き始める事態の中で、全てを失い傷ついたフェイトは、戦いながらも自分を導いてもくれたなのはに縋るのだった。 「クロノ君は『逮捕』と言うけれど、わたしはこれが『命の遣り取り』になると思っているの。そして、プレシア・テスタロッサは必ず倒す! ……フェイトちゃん、あなたはどうするの?」 甘えを許さぬなのはの視線を受けながら、目の前に置かれた残酷な選択に苦悩するフェイト。 「わ、わたし……」 母親に捨てられた今、傷を抱えてただじっとしているのか、それともなのはと共に全ての決着を付けに行くのか。 「ど……どうしよう? 私? ねえ……私、どうすればいい? 行った方がいいと思う?」 全てを失った今、フェイトは『何か』が欲しかった。否定された自分を現実に繋ぎ止める為の何かが。 「怖い?」 「うん……す、すごく怖いよ。 で……でも『命令』してよ……。『いっしょに来い!』って命令してくれるのなら、そうすれば勇気が湧いてくる。母さんの時みたいに、アナタの命令なら何も怖くないんだ……!」 しかし、目の前の厳しい少女は、フェイトに無条件でそれを与えてはくれない。 「だめだよ……こればかりは『命令』できない! フェイトちゃんが決めるんだよ……。自分の『歩く道』は、自分が決めるんだ……」 「わ……わからない。私、もうわからないよォ……だって、だって私は……」 「だけど、忠告はするよ」 人間であるという人としての基盤さえ失ったフェイトに、あまりに過酷な選択肢を与えたなのはは、答えを聞く前に踵を返した。 「『来ないで』フェイトちゃん……。アナタには向いてない」 傷ついたフェイトを置いていく厳しさと、母親と思っていた相手と戦わなければならない場所へ連れて行かない優しさを合わせ持つなのはの言葉が、最後まで彼女の胸に残った……。 一個の石から始まった物語。 多くの出会い、多くの別れ、多くの悲しみ、多くの痛み―――全てがここの結集する! 「バルディッシュ、私達の全ては……まだ、始まってもいない!」 立ち上がれ、少女! 「『なのは』ァアアアア!! 行くよッ! 私も行くッ! 行くんだよォ―――ッ!!」 目醒めろ、戦士! 「私に『来るな』と命令しないで―――ッ! このまま終わるのなんて嫌だ! 本当の『自分』を始める為に、今までの『自分』を終わらせるんだ!!」 次回、魔法少女リリカルなのは 第十二話『宿命が閉じる時なの』 「『友達だ』なら使ってもいいッ!!」 リリカルマジカル燃え尽きるほどヒート! 魔法少女の最終決戦、ここに決着ゥ―――ッ!! 前へ 目次へ 次へ
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スレ住人の皆様 ドラゴンボール系単発SS 288氏 ドラゴンボール×なのは 320氏 ドラゴンボール×なのは 其の二 375氏 リリカルなのはZ 376氏 無題(仮) 377氏 無題(仮) 410氏 無題(仮) 411氏 無題(仮) 二代目スレ123氏 無題(仮) 二代目スレ147氏 無題(仮) 二代目スレ149氏 無題(仮) 二代目スレ301氏 無題(仮) 三代目スレ446氏 もうひとつの無印なのは~天下分け目の超決戦なの 同氏 次回作 リリカルなのはZ 三代目スレ546氏 劇場版リリカルなのはZ とびっきりの最強対最強なの 同氏 劇場版リリカルなのはZ 復活のフュージョン!なのはとフェイト 同氏 劇場版リリカルなのはZ 龍拳爆発!なのはがやらねばだれがやる 同氏 劇場版リリカルなのはZ 次回策予告 四代目スレ6氏 単発ネタ 同氏 単発ネタ2 四代目スレ62氏 劇場版リリカルなのはZ~極限バトル!3大スーパー魔道師 四代目スレ130氏 劇場版リリカルなのはZ~激突!100億パワーの魔道師なの 四代目スレ278氏 もうひとつのなのは~魔道師襲来編、宇宙一の強戦士魔道師目覚める 四代目スレ362氏 ベジフェイト 五代目スレ160氏 なのは感動の?最終回「さらばなのは!また会う日まで」 八代目スレ69氏 新OPとそのアニメーション 八代目スレ316氏 ヴィヴィオが拉致された後の展開 同氏 17話のギンガのシーンで何があったか 八代目スレ481氏 かっこいいシグナム 八代目スレ553氏 あれ風ななのは次回予告 十一代目スレ131氏 宇宙一の強戦士サイヤ人目覚める~ミッドチルダが終わる日~ 十一代目スレ446氏 あれ風ななのは次回予告 十七代目スレ448氏 妄想ナンバーズの次回作での活躍 五十五代目スレ241氏 魔法少女リリカルなのは。超戦士は眠れない TOPページへ このページの先頭へ
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リリカルなのはGX 第??話「最強の魔法使いデッキ」 「俺のターンドロー!」 遊城十代は、左腕に付けたデュエルディスクからカードを引いた。 デュエルの相手は、コスプレなのだろうか白いショートコートにミニスカートな格好の女性だ。 「俺は、E-HEROスパークマンを召喚!カードを一枚伏せターンエンド」 十代のターンが終了し、白服の女性のターンが来る。 「私のターン…ドローなの!私は、ティアナ・ランスターを攻撃表示で召喚!」 現れたのは、二丁拳銃を持ったツインテールの女性だった。 「ティアナ・ランスター攻撃力1650・防御力1200のモンスターか」 「私は、カードを一枚伏せティアナで攻撃!」 『クロスファイヤーシュート!』 白い服を着た女性なのはの攻撃宣言により攻撃を開始するティアナ。 「そうは行くか!トラップカードオープン!」 十代が伏せていたカードは、トラップカード・ヒーローバリアだった。 「ヒーローバリアの効果で、E-HEROへの攻撃を無力化する!」 「私のターンは終了よ」 「そんじゃ、俺のターン…ドロー!俺は、手札のE-HEROクレイマンと場のスパークマンを融合! 現れろ、E-HEROサンダー・ジャイアント!」 十代の持つ融合のカードで現れたのは、雷をまとった巨大なヒーローだった。 「サンダー・ジャイアントの特殊効果発動!ヴェイパー・スパーク!」 その効果で場にいるティアナは、激しい雷に撃たれ破壊される。 「キャァー!」 「ティアナ!」 ティアナが破壊され、少し表情が曇るなのは。 「ザンダー・ジャイアントの攻撃は終わってないぜ!行けぇぇぇ!ボルティック・サンダー!!」 攻撃力2400のダイレクトアタックが決まり、なのはのLPが1600まで削られてしまう。 「くっ、罠カードオープン、魂の綱!1000ライフポイントを払うことでデッキから☆4以下のモンスターを特殊召喚!」 現れたのは、守備表示のフェレットだった。 「(ん?トラップのタイミングミスか。サンダー・ジャイアントの攻撃時に召喚すればダメージを受けずに済んだのに)」 十代が、そんなことを考えているとデュエル相手の女性が話しかけてくる。 「十代くん、バトルフェイズが終わったけどターン終了はまだかな?」 「あ、えーと、カードを1枚伏せターン終了だ」 十代がターン終了を宣言したのを聞いたなのはは、カードをドローする。 「私は、ユーノくんの効果でライフを500回復」 なのはが表側守備表示で出していたユーノくん攻撃力500守備力2050は、 スタンバイフェイズに一度ライフを500回復させる効果がある。 「そして、ユーノくんを生贄にフェイトちゃんを召喚!」 生贄召喚されたのは、☆6つの上級モンスターフェイト・T・ハラオウンと言う女の子だ。 攻撃力2500守備力1500の魔法使い族だ。 「すげぇぇぇ!そんなカードがあるなんて、翔が見たら喜びそうだなぁ」 「そして、装備カード・使い魔の援護を発動!この効果で攻守700ポイントアップ!」 攻撃力3200と成ったフェイトには、更なる効果があった。 「フェイトちゃんで、サンダー・ジャイアントを攻撃!」 「バルディッシュ!」 『Haken Saber』 金色の刃が黒い斧杖から発射され、サンダー・ジャイアントを切り裂き破壊する。 「ぐっ」 十代のライフは800削られLP3200となった。 伏せカードを使おうと考えた十代だったが、サンダー・ジャイアントの破壊前に使えなかったのだ。 「何故、伏せカードが使えないんだ?」 「フェイトちゃんの効果なの。一ターンに一度相手の場の伏せカードを1枚封じるの」 「すげぇ効果」 「そして、カードを1枚伏せターン終了なの!」 なのはの出した少女にサンダー・ジャイアント破壊されながらも、楽しくて仕方がない十代。 「ドロー!俺は、フレンドッグを守備表示で召喚!そして、カードを1枚伏せターン終了」 十代は犬型機械族モンスターを召喚し、伏せカード2枚目をセットしターンを終了した。 「私のターン、ドローなの!」 彼女は引いたカードをほほ笑む。 「私は、儀式カード・白き戦神を発動なの!☆8以上のモンスターを生贄に…出でよ!高町なのは!!」 手札のクロノ・ハラオウン☆8を儀式のコストとし、☆8の儀式モンスター・高町なのはを召喚したのだ。 その攻撃力は3200、守備力は2800と凄まじい。 「さぁ、私の攻撃!フェイトちゃんでフレンドッグを攻撃!ハーケン・セイバー」 金色の刃によって切断されるフレンドッグ。 「フレンドッグの効果発動!墓地に送られた時、墓地のE-HERO1体と融合を手札に加える」 「まだ、私のバトルは終わってないの!ディバイーン・バスター!!」 『Extension』 凄まじいピンク色の光が十代を襲う。 「伏せカードオープン!」 「フェイトちゃんの効果で1枚封じるよ!…そのカードを封じるわ」 「ラッキー!俺が発動するのはこっちだ!」 なのはが封じたのは融合解除だったのだ。 十代が発動させたのは、もう一つの方だった。 「ヒーロー・シグナルで、デッキからE-HEROを特殊召喚する!現れろ、バースト・レディ!」 炎のヒーローE-HEROバースト・レディが守備表示で召喚された。 なのはの攻撃は、バースト・レディを粉砕する。 単発総合目次へ 遊戯王系目次へ TOPページへ
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マクロスなのは 第19話『ホテルアグスタ攻防戦 後編』←この前の話 『マクロスなのは』第20話「過去」 オークションが終わって隊長陣の警備任務が解けた頃、地上部隊の技研の調査隊がすでにガジェットの破片の調査を開始していた。 「・・・・・・えっと、報告は以上かな?現場の調査は技研の調査隊がやってくれてるけど、みんなも協力してあげてね。あとしばらく待機して何もないようなら撤退だから」 普段の動きやすい青白の教導官の制服に戻ったなのはが、フォワードの4人を前に告げる。 ティアナ達は返事をすると、きびきびと陸士部隊の土嚢の撤去や調査隊の手伝いに散っていった。 (*) ホテル内の喫茶店 そこには警備を終えて一息入れているフェイトとはやて、そしてオークションが終了して手持ち無沙汰になったユーノが仲良く談笑していた。しかし、そこで少し寂しい話題が提供された。 「そう・・・・・・ジュエルシードが・・・・・・」 「うん。局の保管庫から地方の施設に貸し出されてて、そこで盗まれちゃったみたい」 「そっか・・・・・・」 寂しそうな顔をするユーノ。仕方ないだろう。彼がその災悪の根源であるジュエルシードを掘り出した張本人なのだから。 「まぁ、もちろん次元の海は本局が目を光らせているし、地上も私たち六課が追っていく。だから必ず見つかるよ」 「・・・・・・うん。ありがとう」 そこに、この話題には沈黙を決め込んでいたはやてが話に介入してきた。 「・・・・・・実はまだ非公開なんやけどな、この前ガジェットについての報告書が回ってきたんや」 元々物理メディアだったらしい。ホロディスプレイに表示される報告書の表紙。提供は地上部隊・技術開発研究所。しかし表紙には『SECRET(シークレット)』の印が押されている。 「・・・・・・これって僕が見てもいいのかな?」 ユーノが戸惑いながらはやてに聞く。SECRET(機密)の印が押されている書類は規定では管理局の佐官以上でなければ閲覧すらできない。 フェイトですら一等海尉なのに、管理局員でもない民間人に見せていいものではないはずだった。 「大丈夫や、問題あらへん。どうせもうすぐ公開される。・・・・・・でや、まずこの動力機関なんやけど、どうやら簡易化されたジュエルシードみたいなんや」 「「!!」」 「どうやら泥棒さんはジュエルシードの簡易量産に成功したみたいやな」 ホロディスプレイに映し出されているバッテリーに相当する部分の中枢は、ジュエルシードに間違いなかった。 「でも悲観することはあらへん。これと同時にガジェットの製作者も判明した。それが現在、違法研究で広域指名手配されているこの男─────」 ホロディスプレイの画像が切り替わる。瞬間、フェイトの顔色が変わった。 「スカリエッティ!?」 「ん?フェイトは知ってるの?」 ユーノが問う。 「うん。なのはが次元航行部隊、機動課(ロストロギア探索を主な任務にする部隊)に協力していた5年前に。その時、なのはとヴィータ、それと私で彼の秘密基地を強襲したの───── ────────── フェイトは何十体目になるだろう魔導兵器をバルディシュで一閃のもとに葬ると、周囲を見渡す。 周りには太古の遺跡があり、岩でできた建造物が朽ちている。 またすでに魔導兵器の大半は撃破されて、雪の積もる大地に遺跡同様構成部品をさらしていた。 「ヴィータちゃん!」 「おうよ!」 「「これでラストォォ!!」」 上空からのヴィータの魔力球が敵を囲むように着弾。追い詰められて集まった敵を、続くなのはの砲撃で全て葬った。 「ナイスショット。2人とも!」 フェイトの掛け声に、なのはとヴィータはハイタッチした。 (*) 「さて、ここが入り口だね」 フェイトの撫でたその扉は鋼鉄製で、なのはの砲撃でもなかなか破れそうにない程に頑丈だった。 しかし押しても引いてもダメ。無論スライドさせることもできず、開けられなかった。当然だが鍵がかかっているようだ。 「『鍵開け』するから、2人は周りの警戒をお願い」 「うん、お願いね。フェイトちゃん」 「周りは任せときな」 ヴィータとなのははそれぞれ別方向に飛んでいった。フェイトはそれを見送ると高ランク魔法である『鍵開け』を実行する。 この魔法は電子ロックから物理的な鍵までほぼすべての鍵に有効だが、時間がかかるのが難点だった。 フェイトが動けないそんな時、それは起こった。 「なのは!後ろ!」 「え・・・・・・!?」 ヴィータの警告に振り返るなのは。彼女はその半透明の何かを見切ると間一髪で回避。空に退避する。 そしてそれはヴィータの放った鉄球によって大破、沈黙した。 しかし姿を晒したそれが足の付いた地上型だったことや、それが撃破された安心感でなのはは1つの可能性を見逃していた。 『地上型がいるなら、理論上より簡単に姿を消せる航空型がいるかもしれない』と言うことを。 寸前で気づいたなのはは、優秀の一言に尽きる。そして普通の状態であれば問題なく回避できたはずの攻撃。しかし溜まった疲労は彼女の回避行動を寸秒遅らせた。 「「なのはぁぁぁ!!」」 フェイトは確かに見た。空に浮かぶなのはの、小さな体を貫く刃を。 彼女の赤い鮮血によって目視出来るようになった鋭い刃はまるで悪意の塊が友人の体から〝生えた〟ように見えた。 それは人間ならば絶対傷ついてはならない器官の納まっている胸の真ん中から生えていた。 次の瞬間には彼女の体は5メートルほど落下。その衝撃は雪が受け止めるが、ドクドクと怖いほど流れ出る鮮血が雪を染めた。 力なく横たわる大親友の姿と半泣き顔になって彼女に駆け寄るヴィータの姿がぼやけていく。 目の前の光景に現実感が失せていき、いつの間にか視界はブラックアウトしていた。 ────────── 「そんなことがあったんだ・・・・・・」 ユーノが呟く。 この案件は『TOP SECRET(最高機密)』とされていて、彼女の経歴を見てもその事実は確認できず、半年近い入院期間は『持病の悪化に伴う病養』となっている。 そのため家族など極めて親しい者しかこの事実を知らなかった。 だがここで1つ疑問が浮かぶ。 『なぜたった1人の撃墜をそうまでして隠さねばならないか?』という疑問が。 実はすでに流星の如く突然現れ『エース・オブ・エース』という二つ名で呼ばれていたなのはは世間一般に知られ、ヒーローとして祭り上げられていた。 事実それだけの実績もあったし、実力もあった。クラスSのリンカーコアを有しているいわゆる超キャリア組でも、たった14歳で一等空尉に登り詰めるのは容易ではない。 その頃のフェイトやはやてですら、両名とも地上部隊で三尉相当の階級であったことが比較としては適当だろう。(しかし断じて2人が無能な訳ではない。フェイトの所属する本局は事件が少なく、1発が大きい。はやては上級士官を目指し、ミッドチルダ防衛アカデミーの学徒となっていたためだ) そんな出世街道まっしぐらで国民的人気を誇る彼女が撃墜され、瀕死の重傷を負ったのだ。 それがどんな理由であれ公表されれば、管理局全体の士気と信用に関わる。こうなると管理局としては隠さざるをえなかった。 「そう。なのはは今でこそ元気に振る舞ってるけど、一時は「二度と歩けないんじゃないか」って言われて・・・・・・」 俯くフェイト。その背中からは、なのはを撃墜したスカリエッティに対する負のオーラが立ち昇っていた。 「それにあいつは母さんの─────プレシア母さんの研究を続けているらしくて、それがわたしには許せないんだ」 フェイトの母であるプレシア・テスタロッサは、かつては管理局の大魔導士として日夜研究を続けていた。 しかしある日、彼女の実の娘であるアリシアを事故で亡くしてしまった。そこで悲しみに暮れた彼女が手を出したのが禁忌の技術として知られる全身のクローン技術と人造魔導士技術だった。 こうして誕生したアリシアのクローン、それが彼女『フェイト』だ。しかし結局プレシアには受け入れてもらえず、とても悲しい思いをしていた。 「・・・・・・まぁ、とりあえずガジェットの製作者はそのスカリエッティや。ゴーストは第25未確認世界の元の設計から反応エンジンを主機に据えた独自のものらしい。「使われてるオーバーテクノロジーと設計が管理局から漏れたのか?」って揉めてるみたいやけど、当面六課はスカリエッティの線で追っていく。だからユーノくんは無限書庫で関連しそうな情報を調べて欲しいんや」 (そうか。わざわざ機密を聞かせたのはそういうことか) ユーノは納得すると、その依頼を引き受けた。そこに1人の女性が喫茶店の入り口に現れた。 「あ、なのは・・・・・・」 「久しぶりぃ~ユーノくん、元気だった?」 その笑顔に一点の曇りなく、さっきのフェイトの話が嘘だ。という錯覚をおぼえた。 「あ、なのは丁度よかった。これから交代しに行こうと思ってたところなんだけど、交代できる?」 「うん。フォワードの4人は調査隊と陸士さん達の手伝いに行ってるから見てきてあげて」 「わかった。はやても行こう」 「了解や。じゃあお2人さん、〝ごゆっくり〟ぃ〜」 はやてはそう意味ありげに言って外に出ていった。 (はやてここでそのセリフじゃ気まずいよ~!) こころの中で涙声になってしまう。 2人っきりの現状でそのセリフを吐かれては、どうしても彼女を意識してしまうではないか! それについさっきまでその彼女の話をしていたのだ そうでなくとも相手は意中の女性であるというのに・・・・・・ その想いを本人はともかく、周囲に隠し果せているつもりの青年は 「いってらっしゃ~い」 と見送るなのはに視線を向ける。―――――と同時に彼女が振り返った。 「本当に久しぶりだね!ユーノくん!」 「う、うん・・・・・・」 (ダメだ!まともに顔見られない~!) しかしいつまでもこうしているわけにもいかない。相手がいつも通り接して来てくれている以上、こちらもそれに応えなくては嘘だ。 ユーノは何とか自分に言い聞かせながら顔を上げる。 するとどうだろう?なのはもこちらの事を直視しているなどということはなかった 彼女は少し視線を逸らしつつ、頬を赤らめて口を開く。 「えっと・・・・・・今日は偶然、なのかな?」 (か、可愛い・・・・・・) ユーノはそんな幼なじみの仕草に無意識のうちに胸を高鳴らせていた。だがお互いに意識し合っていたらしいことがわかって反対に落ち着くことができた。 「うん。そうだと思う。聖王教会の騎士カリムからの直々の依頼でね」 カリムによれば、どうやらはやてが 「考古学者さんを探しているんだけど、いい人紹介してくれない?」 というカリムに自分を紹介したらしかった。 「それにオークションの鑑定も本命の1つなんだけど、騎士カリムはこの玉の調査を「どうしても」ってお願いされたんだ」 ユーノの手にはさっきフェイトが落下から救った紫色の水晶が乗せられていた。 (*) 所変わってはやてとフェイトの2人は出入り口の玄関で2人の人物と鉢合わせしていた。 「お、アルトくんにさくらちゃんやないか」 「よぉ。やっと見つけたぜ」 「なんや? 探しとったんか?」 はやての問いに、さくらが答える。 「はい。ちょっと今回の敵がどうも妙だったので、そちらはどうだったのかな?と思いまして」 「そっか・・・・・・実はこっちも妙な報告が上がって来ててな。立ち話もなんやし、もっかい喫茶店に行こうか。フェイトちゃんは外の方をよろしく」 ことの成り行きに戸惑うフェイト。なぜなら今あそこは───── 「・・・・・・それはいいんだけど、今喫茶店に行くのはちょっと・・・・・・」 「あ、そうや。なのはちゃんが─────」 「お、なのはもいるのか。丁度いい。頼みたいことがあったんだ」 スタスタ・・・・・・ 喫茶店に向かって歩いていく2人。それを見たはやては人生でそうない大ポカをしたことを悟った。 5日前にカリムにユーノを紹介したのも実は伏線だった。 カリムにその日 「ある〝物品〟の調査ができそうな人と、ホテル『アグスタ』のオークションで鑑定してくれる人を探しているのだけど、いい人知らない?」 と問われたはやては、迷わずユーノの名を出していた。 能力面になんの問題もなかったし、なにより都合がよかった。ユーノはなのはの撃墜事件以降お互い顔を合わせた事がない。 それはなのはが 「こんな姿を(彼に)見せて心配させたくない」 と言ったことにある。 またユーノも、以前地上本部ビルで偶然会った時、仕事の都合でなのはと全く会えないと嘆いていた。 そこではやてはお節介かもしれないがこんな方法をとったのだった。しかし───── (どないしよう!?2人をくっ付けるなんて簡単やと思っとったのに!) そう、このままアルト達が行けばせっかくの2人きりの雰囲気が台無しになる。 はやての頭はフルドライブ。脳内緊急国会を召集、急いで審議が始まった。 第1案、今すぐ呼び止める。 しかし野党の 「何か言い訳はあるのか?」 という反論と牛歩戦術によってタイムオーバー。廃案。 第2案、なのは達を通信で呼び出す。 衆議(直感)院は通過。しかし有識者(理性)会である参議院が 「それでは本末転倒ではないか!」 という理由で否決。衆議院での再可決は見送られ廃案。 第3案、本当のことを話す。 内閣は衆議院解散(思考停止)を盾にごり押し、参議院を通過させる。しかし肝心の衆議院の大多数が 「なんか嫌な予感がする・・・・・・」 と独特の理由で難色を示し、否決。廃案となった。 それによって脳内人格八神はやて内閣総理大臣は伝家の宝刀を行使。衆議院を解散した。 こうして思考停止に陥った〝はやて〟は、『これだから人間は何にも決まらんのや!』と自らの脳内人格(政治家)達を批判する。そして───── (ええい!もう、なるようになれ!) 彼女はついに最終手段である神頼みに入った。 (どうかお願いします。神様、仏様、夜神月様─────あれ?) しかし天はご都合主義(クリスマスも祝うし、正月には神社・お寺に参拝に行くため)で基本的に無信教の彼女を見捨てていなかったようだ。 なんとアルト達が乗ろうとしていたエレベーターになのはとユーノの2人が乗っていたのだ。 「あれ?どうしたんだ?喫茶店にいるんじゃなかったのか?」 「ああ、うん。そうなんだけど人がいっぱい来ちゃって、席が足りないみたいだったから出てきたの」 なのはのセリフを聞いた時、はやては神の存在を信じたという。 自分達が席を離れた時、まだ客は自分達しかいなかった。でなければ、公衆の場で堂々と機密情報の漏洩などやれるはずがない。当に神のみわざといえるピンポイントさだった。 「そうですか・・・・・・どうしましょうアルト隊長?機密もありますし、ここはまずいと思いますが・・・・・・」 「う~ん・・・・・・」 頭をもたげるアルト。胸をなでおろしていたはやては彼らに他の場所を提案した。 「じゃあヴァイスくんのヘリに行こう。あそこなら機密も保てるし、この人数でも十分や」 この案は即採用され、新人たちの所へ行くフェイト以外はヘリに向かった。 (*) 「―――――で、お前は誰なんだ?」 ヘリに入るとアルトは単刀直入にユーノに問うた。 「彼はユーノくん。私達の幼なじみで、管理局の情報庫である無限書庫の司書長をしてるの」 「なるほど。俺はフロンティア基地航空隊の早乙女アルトだ。ついこの前まで六課で世話になってたんだが、異動になってな。よろしく」 「こちらこそよろしくお願いします。・・・・・・ところでそちらの方は?」 ユーノがフロンティア基地航空隊のフライトジャケットを着た黒髪の少女を示す。 「彼女は俺の小隊の2番機を務める工藤さくら三尉だ」 「はじめまして、真宮寺・・・・・・いえ!工藤さくらです」 なぜかは知らないが彼女がいつも使う偽名を名乗ろうとしたが、アルトが先に紹介してしまったことに気づいたのか軌道修正した。 一方ユーノはなぜか『なるほど』という顔になった。 「はじめまして。やはりあなたがあの〝工藤家〟の当主になられたさくらさんですね。騎士カリムからお話は伺っております」 ユーノがおずおずと頭を下げる。 「そんな、頭をお上げになってください。あたしそんなたいそうな者ではありません。ただ工藤家に生まれてきただけの小娘ですよ」 (工藤家?あいつの家そんなに有名なのか?) しかし周りを見ると六課のみんなも知っていたようだった。 そこでよく知っていそうなはやてに念話を送る。 『(すまん。水をさすようだが、工藤家ってなんだ?)』 『(・・・・・・なんや知らんかったんかいな。通りでさくらちゃんを普通に使ってると思った)』 すると彼女は懇切丁寧に説明してくれた。 工藤家とは100年前のミッドチルダ、ベルカ間の全面戦争を終わらせた者の末裔らしい。 元々聖王教会とはその彼らが作ったもので、伝承によれば今では主神として祭られている聖王の力を借りて戦争を終わらせた。 聖王は当時の核兵器や衛星軌道兵器、ベルカ側陣営による隕石の落下すら無力化し、この地に平和を呼び込んだという。 映像や写真すら残っていないが、小学校の教科書にすら載っているこの実績ある神を崇める者も少なくない。そのため聖王を使役した工藤家は代々神との対話役として大切にされていた。 そして工藤家は管理局の魔導士になることが伝統とされており、彼女をバルキリー隊へ推薦をしたのは聖王教会らしい。 さくらはこの工藤家の末裔で、両親が早くに事故で死んでしまっていた。 そのため聖王教会に所属する騎士カリムは工藤家最後の1人になってしまった彼女の身を案じているという寸法だったらしい。 また、あの偽名も工藤家という事を隠したかったのだろう。との事だった。 (育ちがいいとは思っていたが、まさか本物のお嬢様とはな・・・・・・) アルトは彼女のトレードマークである大きな赤いリボンで結わえた麗しい黒髪を見た。するとそれが右に流れていき、さっきまであった場所が少し赤く染まった肌色に変わった。彼女が振り返ったのだ。 「・・・・・・どうしました?」 「いや、なんでもない。それでな、はやて、こっちではゴーストの連中と交戦に入ったんだがいつもより動きが良かったんだ。ここまでは聞いてるか?」 「うん、シャマルから報告は受けとるよ。なんでも賢くなったとか」 「そうだ。それでうちの3番機が早まって特攻しやがった。そしたら奴らどう対応したと思う?」 アルトの問いかけになのはが 「普通に考えたら迎撃だと思うけど、違ったの?」 と問い返す。 「違うんだよ。アイツらギリギリまで逃げて、激突寸前に自爆しやがったんだ。お陰でバカなまねした3番機は無事だったんだが、どうも解せねぇ」 「なるほど・・・・・・」 はやては腕組みしながら自らの考えを更に補強した。 今回ガジェット達を操作した召喚士は、本気で人死(ひとじ)にが出ることを恐れているらしい。 でなければ無人機とはいえ〝タダ〟ではないはずだ。トチ狂った敵のために自爆など、そうそうできることではない。 「聞いた話によればそっちも何かあったみたいだが、何があったんだ?」 アルトの問いに、はやてはガジェットの非殺傷設定と戦闘員への選択的攻撃について話す。 「─────と、こういう訳で陸士部隊の被害が少ないのや」 はやてはヘリの窓から近くに設営されている野戦病院を指さす。 確かにそこにいる陸士達はいずれも軽傷で、陸士部隊の救急搬送用のドクターヘリも駐機したまま、飛び立つ様子はなかった。 「でもおかしいよ。目的がわからない。こっちの被害がないんじゃ『本気を出せばこんなんなんだ!』って言いたい訳じゃなさそうだし・・・・・・」 ユーノの言に、なのはも 「そうだよね・・・・・・」 と同意する。 「やっぱり、シグナムが言っとった車上あらしが怪しいんかな・・・・・・」 はやての呟きに視線が集まる。 「どんな車上あらしだったの?」 「うん、実はな、人間じゃなくて召喚獣や使い魔らしいんや」 はやてはシグナムからの報告を全て話した。手法から撤退まで。ちなみにトラック自体は盗難車であることがわかっていた。 「この流れで行くとその召喚獣が本命っぽいね」 「でも、何を盗んだのかわからないのが困りますね」 「「う~ん・・・・・・」」 一同頭を捻るが、そこまでだ。 ホテル側やシャマルとシグナム、そしてAWACSに聞いてもそれ以上の情報はなかった。 こうなると、今後は調査隊の報告を待つしかなさそうだった。 (*) 「ところでアルトくん、なんかなのはちゃんに頼みごとがあったんやなかったか?」 「え? アルトくんどうしたの?」 考え込んでいたなのはがアルトに向き直る。 「ああ。それなんだがな、さくらがお前のところで1週間でいいから戦技教導してくれって言うんだ」 えっ!?となるなのはにさくらが畳み掛ける。 「お願いします!今日アルト隊長や天城さん─────僚機を守りきれなくて・・・・・・あたし、もっと強くなりたいんです!やる気はありますから、どうかお願いします!」 深々と頭を下げるさくらになのはは困った顔をした。 「え~、う~ん・・・・・・アルトくんやミシェル君には教えてもらえないの?」 「いえ、アルト隊長にもミシェル隊長にもよくしてもらっています。・・・・・・ただミシェル隊長は長距離スナイピングしか教えてくれないし、アルト隊長も主戦術が高速機動による撹乱と誘導弾との連携攻撃なので、あたしの特性に合わないんです。・・・・・・あっ、アルト隊長、全く役に立たないなんて言ってませんからね!」 あたふたしながら否定するさくらに、アルトは 「仕方ないさ。人それぞれの特性があるんだから」 と流した。 「そっか・・・・・・でも私はうちの新人達の面倒を見てあげなきゃいけないからなぁ・・・・・・さくらちゃんは何がやりたいの?」 「近・中距離での機動砲撃戦です。今日の戦いで、長距離からの援護狙撃という戦術に限界を感じたんです」 長距離からの狙撃にはどうしてもタイムラグが出てしまう。そこがスナイパーの腕の見せどころだったりするが、彼女には今が限界だった。 さくらの言った戦術はなのはの十八番とも言える戦術で、彼女が魔法を手にしてから10年間磨いてきた戦術機動だった。 「だったら1週間、なんて中途半端な期間はダメだね。さくらちゃん、3週間でも頑張れるかな?」 「はい!もちろんです!!」 さくらが嬉々として応える。なのはは頷くと、人指し指と中指を立てていわゆる〝ピース〟の動作をすると続ける。 「でも条件が2つ。まず1つ目に、アルトくんがさくらちゃんの面倒をみてあげること。わたし、魔導士としてのスキルしか教えられないから、それをバルキリー用に転換してあげないと」 アルトは仕方ないな。と肩をすくめる。 「2つ目に、どうしてもうちの新人の教導がメインになっちゃうから、教導は早朝と夕方ぐらいしかできないんだけど、それでもいい?」 「はい、構いません!お願いします!」 「うん、いい返事。明日の早朝には始めたいから、部隊に帰ったら荷物をまとめて、アルトくんと一緒においで」 「はい!ありがとうございます!」 さくらは最敬礼して言った。 これが地獄への入り口であった。 To be continue・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 試験駐屯を名目に機動六課に派遣されるサジタリウス小隊 しかし開始されたさくらの教導はあまりに――――― 次回マクロスなのは第21話「サジタリウス小隊の出張」 『なのはさんが、あんな人だったなんて・・・・・・』 ―――――――――― シレンヤ氏 第21話へ
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CCなのは クロス元:ファイナルファンタジーⅦ クライシスコア プロローグ TOPページへ このページの先頭へ
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リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~後編~」 『グウウウウウウウウウ…』 唸りと共に、生暖かい吐息が高町なのはの顔をなでる。 3つの首が、6つの青い目が、じっとその顔を見つめていた。 青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)。デュエルモンスターズ史上、最も偉大なドラゴン。 強さ、雄雄しさ、神々しさ…全てを内包したその巨体が、なのはとフェイトの目の前にあった。 動けない。 見開いた目は、まばたきすらできない。口を開け、声を発することすらできない。 怖い。 そんな感情を抱いたのは、もう何年ぶりのことだろう。 どんな巨大な敵にも、臆せず立ち向かってきた。どんな辛い目に遭っても、迷わず前進してきた。 だが、この敵は違う。 身体中の全神経が警告を発している。勝てないと。どう足掻いても、人間にどうこうできる相手でないと。 否、それだけならば、まだ無謀なりに戦いを挑むこともできただろう。 それだけでなかったのが問題なのだ。 勝てる勝てない以前に、怖れている。目の前の敵を。 怖い、怖い、怖い…怖くて怖くてどうしようもない。恐怖が身体をしばりつける。 エース・オブ・エースは、完全に目の前の究極竜に圧倒されていた。 「ワハハハハ! どうだぁぁぁ!」 眼下のカイバーマンが、再びあの高笑いを上げる。 「これぞ史上最強にして、華麗なる殺戮モンスターの姿だ!」 攻撃力4500、守備力3800。今までの低レベルモンスターとは明らかに次元の異なる力。 かつてデュエルモンスターズの頂点に君臨した「三幻神」すら脅かす力。 「ククク…最強のドラゴンを前に、臆して声すら出ないか」 図星を突かれても反応することすらできない。それほどまでに、なのはは追い詰められていた。 「ならば、その身でとくとその力を味わうといい!」 青眼の究極竜の3つの口が光を放つ。 全てを破壊する滅びのバーストストリームが束ねられ、巨大な光球と化した。 「アルティメットバァァァァーストッ!!!」 爆音が轟いた。 これまでに経験したことのない熱量と質量が、圧倒的な破壊力となってなのはの元へと殺到する。 「なのはっ!」 間一髪で我に返ったフェイトが、なのはを伴ってその一撃を回避した。 アルティメットバーストは虚空を直進し、僅かにアカデミアの校舎を掠める。 校舎のガラスが、衝撃波で次々と粉々に砕けていった。 恐ろしい破壊力だ。やはり見かけだけではないということか。 仮にアカデミアの全ての人間がこの場にいたとしても、青眼の究極竜ならば全て灼き殺すのに数分とかかるまい。 『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!!』 3つ首の竜王は、再びあの雄たけびを上げた。 「なのは…大丈夫?」 フェイトがなのはを気遣うように言う。 自身もあの圧倒的な力を前に戦慄していたというのに、大した気丈さだ。 同時に、なのはの中に1つの疑問が生まれた。 何故フェイトは回避行動を取れたのに、自分は1歩も動けずにいたのか? 感じていた恐怖は、なのはもフェイトも同じはずだった。ではそこにあった差は何だったのか。 あの時、自分が感じていたのが、恐怖だけではなかったとしたら…? (…あぁ、そうか…) その仮定が脳裏に浮かんだ瞬間、疑問は全て氷解した。 自分は、恐怖故にその身を縛られていただけではない。もっと別の感情が、同時に自分をあの場に押し留めていたのだった。 「…ふつくしい…」 思わず、呟いていた。 なのはは究極竜に恐れを抱くと同時に、その姿に見惚れていたのだ。 全身から発せられる、凄まじいまでの殺意と尊厳、そして力。 戦う者が持つべき全てを凝縮した、正に究極の戦士の姿。 青眼の究極竜は、なのはの中に宿る武士(もののふ)の心を揺り動かしたのだった。 「えっ…?」 事情を理解できないフェイトは、怪訝そうな顔をしている。 「…ごめん、フェイトちゃん。少しだけ、私のわがままに付き合ってくれる?」 『Exceed mode.』 レイジングハートの声が響き、なのはのバリアジャケットが変形した。 「なのは…?」 突然の全力解放に、フェイトは戸惑いも露わな声を上げた。 「どうしても、あのドラゴンと戦いたくなった!」 戦ってみたい。 敵わないにしても、自分の力がどこまで通じるのか試してみたい。 10年以上に渡って磨き続けた自分の魔法に、究極のドラゴンはどう応えるのかを見てみたい。 何より、自分は1人ではない。ならば… 「力を貸して、フェイトちゃん」 2人ならば、どこまで行けるのか。 なのはの瞳からは恐れが消え、異界の神にふれた喜びと、未体験の戦いへの高揚感に満ちていた。 「…止めても無駄なんでしょ?」 やれやれといった様子でありながらも、その顔に浮かぶのは穏やかな笑顔。 フェイトもまた、バルディッシュをザンバーフォームへと変形させる。 「行くよ、フェイトちゃん!」 「ええ!」 2人のエースが、巨大な竜目掛けて突っ込んだ。 「ククク…そうだ、そうでなくては面白くない! 迎え撃て、究極竜!」 カイバーマンもまた歓喜の声を上げ、青眼の究極竜へ指示を出す。 向かってくるなのは達は二手に分かれ、なのは上方、フェイトは下方から肉迫した。 3つの頭それぞれが滅びのバーストストリームを放ち、2人の魔導師を狙い撃つ。 両者はそれらの間を縫うように、素早い動作で避けていく。 「はあぁぁぁっ!」 遂にフェイトが敵の懐へと到達し、バルディッシュの金色の刃を振り下ろした。 対する究極竜は、その太く長い尾をしならせ、閃光の戦斧を殴りつける。 「くぅぅっ…!」 青眼の究極竜の尾は、びくともしなかった。 守備力3800を誇る竜鱗は、普通に斬りつけた程度では到底貫けるものではない。 加えて、その筋力だ。尾の形を成した巨大な塊は、じりじりとフェイトの身体をバルディッシュごと押していく。 一方のなのはは、3つ首の正面まで迫ると、真っ向からレイジングハートを構え、魔力をチャージする。 「ディバイィィィーン…バスタァァァァァァーッ!!!」 掛け声と共に、極太の魔力の線が、ドラゴンの頭目掛けて放たれた。 『グオオオオオオオオオオオッ!』 無論、黙って喰らってやるほどこの究極竜は穏やかではない。 中央の頭がバーストストリームを撃ち、ディバインバスターと激突させる。 先ほどのスバルと異なり、威力は完全に拮抗状態。桃色と水色の波動が、空中で正面衝突していた。 そこへ、右の頭から追撃のバーストストリームが撃ち込まれ、バランスは崩壊する。 2つのエネルギーは接触面で大爆発を起こし、なのはの身体を突風で煽った。 更に左の頭が、駄目押しのバーストストリーム。 「きゃああぁぁぁぁぁっ!」 辛うじてなのははプロテクションを展開したが、その衝撃全てを相殺するには至らず、盛大に吹き飛ばされる。 否、そもそもこの防御が成功したこと自体が偶然だった。次も同じように守れるはずがない。であれば防御は捨てるしかない。 (フェイトちゃん!) 普通にやり合っても勝てないという当然のことを再認識し、なのはは念話でフェイトを呼び戻した。 (どうするの、なのは!?) 巨大な尾から逃れつつ、フェイトは合流を急ぐ。 (1人1人の攻撃では、どうやっても傷1つつけられない…なら駄目もとで、一点同時攻撃しかない!) (…分かったわ、やってみましょう!) 遂に2人は並んで宙に浮き、なのははデバイスを構え、フェイトは左手を突き出す。 『Load cartridge.』 カートリッジが3つ連続でロードされた。両者の足元に、桃色と金色の魔法陣が浮かぶ。 この時、フェイトは確かに横目で見ていた。 なのはの顔に、かつてシグナムとの模擬戦で垣間見せた、凄絶なまでの笑みが浮かんでいたことを。 高町なのはは、修羅と化していた。 「エクセリオォォォーン…バスタアァァァァァァーッ!!!」 「トライデントスマッシャアァァァァァァァァァーッ!!!」 桃色の一直線の波動と金色の3つの波動が、複雑に絡み合い、青眼の究極竜を貫かんと迫る。 「ほぉう…確かにそれならば、究極竜に手傷を負わせることもできるだろう。…だが!」 カイバーマンの声を、大爆発がかき消した。 凄まじい閃光が周囲に満ち、なのはとフェイトの視力を奪う。 光が晴れた頃には、そこにはあの小山ほどの巨体を持った竜の姿は、跡形もなかった。 「やったの…?」 信じられないといった様子でフェイトが呟く。 そうだ。これはおかしい。 元より、今の一撃で青眼の究極竜を倒せるなどとは思っていない。 そこから開いた突破口をこじ開け、撃破するつもりだったのだ。それが何故、こうもあっけなく姿を消したのか。 『…グオオオオオオオオオオオオオオオオオン!』 答えはすぐに判明した。 気がつくと、なのは達の背後には、あの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。 それだけではない。斜め右前に2体目、さらに左前に3体目が姿を現した。 「速攻魔法・融合解除を発動した!」 攻撃の寸前に分裂した3体の青眼(ブルーアイズ)が、完全になのは達を取り囲んでいた。 「ククク…十代はこのコンボで俺と青眼に敗れた。さぁ、貴様らはどう切り抜ける?」 余裕たっぷりにカイバーマンが問いかけた。 答えるまでもない。戦うだけのこと。 それどころか、この状況は、なのはにとっては正に望むところだった。あれだけで倒れてしまうようでは張り合いがなさすぎる。 「一斉射撃をお見舞いしてやれ、青眼!」 分かりきった答えを聞く前に、カイバーマンは竜達へ号令を出した。 三方向から、あの滅びの光がなのは達に迫る。 「フェイトちゃん!」 「分かってる!」 意志疎通を図るまでもなかった。2人は瞬時にその場を離れ、行き場を失った砲撃はぶつかり合って爆発する。 なのはは3体のうち1体に狙いを定めると、レイジングハートを構えて攻撃を仕掛けた。 「ディバイィィィーン…バスタァァァァァァーッ!!!」 再び放たれた桃色の光が、青眼の白龍を狙い撃つ。 『ギャオオオオオオオオオオオオオオオッ!』 直撃を受けた青眼の白龍は、苦しげな声を上げて悶えた。 融合を解除したことで、個々の守備力は今や2500まで落ちている。これならば、何とか1人でも対応できた。 『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!』 と、背後から2体目のドラゴンの口がなのはへと殺到した。どうやら彼女を飲み込もうとしているらしい。 とっさにレイジングハートを支えにし、その口をふさぐものの、このままでは身動きが取れそうにない。 青眼の白龍は、凄まじいまでの顎の力で、なのはの身体を噛み砕こうとしていた。 「クロスファイア…シュートッ!」 なのはは右手から4つの魔力弾を放った。ドラゴンは苦しみもがき、彼女を吐き出す。 体内めがけて撃ち込むというあまりにあまりな攻撃法に、少々罪悪感を抱いたものの、そんなことは言っていられなかった。 一方のフェイトは、バリアジャケットをソニックフォームへと変形させ、最後の青眼の白龍へと迫っていた。 レオタードを思わせる軽装のソニックフォームは防御力を大幅に落とすが、 元々避けて当てるタイプのフェイトには大した問題でもない。 そもそも、今回は相手が相手だ。一撃でも直撃しようものなら、インパルスフォームでも即刻あの世逝きである。 『グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』 雄たけびを上げ、青眼の白龍はバーストストリームをフェイト目掛けて放つ。 「撃ち抜け、雷神!」 『Jet Zamber.』 バルディッシュから衝撃波が放たれ、バーストストリームを一瞬押し留めた。 続けて延長された長大な刃で、真っ向からその光を斬り裂きにかかる。 「はああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」 気合いと共に突き出された刃が、滅びの光を掻き分け、遂にドラゴンの身を捉える。 『ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!』 強烈な斬撃を受け、青眼の白龍は鼓膜をつんざくかのような悲鳴を上げた。 なかなかのダメージを与えることはできたが、まだまだ戦うことはできるらしい。フェイトはバルディッシュを握りなおす。 「戻れ、青眼!」 と、そこへカイバーマンの指示が響いた。 すぐさま3体のドラゴンは、彼の上空へと引き返す。 なのは達もまた合流し、距離を置いて青眼の軍団と相対する。 「…よくぞここまで戦い抜いた」 カイバーマンからかけられた言葉は、意外にも賞賛だった。 「貴様らの力、そして闘志…この目でしかと見届けさせてもらった。まさか青眼をここまで追い詰めるとはな」 そこまで言い終えると、彼の口元がにぃと歪む。 「その褒美として、最大最強の一撃を以って幕としてやろう!」 カイバーマンはデッキから、新たなカードをドローする。 「ククク…十代と戦った時の俺では、よくてここまでが限界だった。 …だが、俺は最早あの時とは違う! 過去とはただの足跡に過ぎん! 装備魔法・再融合を発動!」 「馬鹿なっ!?」 オブライエンが叫びを上げる。 再融合はライフを800ポイント払うことで、融合モンスターを蘇生させるカード。この戦いで消えた融合モンスターと言えば… 「再び舞い戻れ、青眼の究極竜! 3体の青眼の白龍と共に…その怒りの業火で、全ての敵をなぎ払うがいいッ!!!」 悪夢。 まさに目の前の状況は、それ以外の何物でもないのではないか。 逆に言えば、これほどまでに分かりやすい「悪夢」など、そう簡単には存在しないのではないか。 ――ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!! 青眼の究極竜が咆哮する。 ――ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ! ――グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ! ――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ! 3体の青眼の白龍が合唱する。 なのは達の目の前には、6つの同じ顔があった。 ―青眼の究極竜― 攻撃力4500 防御力3800 融合モンスター ―青眼の白龍― 攻撃力3000 防御力2500 通常モンスター ―青眼の白龍― 攻撃力3000 防御力2500 通常モンスター ―青眼の白龍― 攻撃力3000 防御力2500 通常モンスター 合計攻撃力、13500。 最早ありとあらゆる手立てが、まったくの無意味だった。 今更ライオットフォームを起動したところで、何の足しになるだろう。 今更ブラスターモードを発動したところで、何が変えられるのだろう。 絶対的な力、恐怖、絶望。 否、それらの言葉で語ることが、もはや無意味であった。 最も尊いドラゴンが3体に、神にも等しきドラゴンが1体。 こんな状況を、言葉を尽くして語ろうというのが馬鹿げている。言葉はそこまで高尚なものではない。 なのは達は覚悟を決めた。 「よくぞ俺にこの手を使わせた。…ククク…今一度褒めてやろう」 「どうも」 冷や汗を浮かべながら、なのはは皮肉を返す。 「では、これで終わりだ! その力を示せ、青眼の竜達よ! この世の全てを打ち砕く、絶対的な破壊をもたらしてやれ! バーストストリーム6連弾ッ!!!」 6つの頭が、一斉に光を撃ち出した。 なのは達の一点射撃を再現するかのように、バーストストリームが混ざり合い、1つとなる。 大気さえも焦がすかのような攻撃。否、最早攻撃ですらなかった。 これは天災だ。 4体の竜によってもたらされた、避けようのない天災だ。 (来る!) なのは達は固く目をつぶる。 「――トラップ発動! 攻撃の無力化!」 一瞬と経たず、2人の女性を残らず蒸発させるかと思われた一撃は、しかしその手前で押しとどめられた。 「――マジック発動! 光の護封剣!」 続けて、青眼の白龍達を、天から降り注ぐ無数の光剣が遮る。 「…これは…?」 なのは達は目の前のことについていけず、思わず周りを見回した。 ふと下を見ると、そこには、2枚のカードをデュエルディスクにセットした十代の姿。 「十代君…!」 「へへっ、危ないところだったな」 元気に笑うと、十代はカイバーマンへと視線を向ける。 「もういいだろ、カイバーマン? 勝負はなのはさん達の負け、アンタの勝ち。アンタも満足できたみたいだしな」 「チッ…余計な真似を」 カイバーマンは不満げに反論する。 「どうかな? ホントは、俺ならこうするってこと、分かってたんだろ?」 挑戦的な笑みを浮かべ、十代が問いかけた。 「フン…」 それに答えることなく、カイバーマンはなのは達を見上げた。 「見事だったぞ、異世界の女。十代達と同じ、デュエリストとしての意志…見せてもらった。 貴様らがこの先その意志を絶やすことがなければ、元の世界に戻ることも可能だろう。…できるな?」 「もちろん!」 なのはもまた、笑顔で応じるのだった。 (いや…あのまま行くと、なのはが鬼になっちゃうような…) 一方、修羅の表情を垣間見たフェイトは、何故か脳裏に般若の面を浮かべながら苦笑いするのだった。 「おのれぇぇ…迷惑なことしてくれるじゃないか…」 オレンジ色の影が、冒頭のアルティメットバーストの流れ弾をモロに受け大変なことになっていたのは、また別の話。 スバル「ねぇねぇ翔、ものすごくカッコイイロボットのカードがあるって本当?」 翔「え? それってひょっとしてステルスユニオンのこと? いやぁ~照れるなぁ~」 剣山「誰も丸藤先輩のことは褒めてないザウルス…」 次回 「勇者王対決! スバル対スーパーステルスユニオン!」 なのは「当然そんな話はないからね♪」 スバル「え~…」 単発総合目次へ 遊戯王系目次へ TOPページへ
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十代「新年まであと少し、そろそろカウントダウンが始まるな」 なのは「今年はいろんな事があったね、十代達やネオスペーシアンと出会えたりして」 エド「……それはいいとしても、何でここでやるんだ」inフィールド魔法「幽獄の時計塔」 レイ「いい会場が取れなかったから、カウントダウンに最適な場所はないか十代様に相談してみたんです」 十代「エドが運良くこっちに来てたから、ふと思い出したんだ、いいだろ?」 エド「十代、まったく君というやつは…」 はやて「まあまあ、それにしてもフィールド魔法って便利やなあ、これなら周囲への被害を抑えながら戦えそうやし」 スバル「ところで、彼らって…」 十代「年明けなんだから、相棒や仲間達とも一緒にと思ったのさ」 ティアナ「そうじゃなくてサイズがおかしいような?」 時計塔と並び立つネオス、肩にはネオスペーシアンたちが乗っている 十代「ああ、デュエル中は縮小されてるけど、これがネオスの本来の姿なんだ」 はやて「こんなにでかかったんやな、まるで光の巨人や」 なのは「……闇の力の使者でもあるから、言動がちょっとね」 レイ「十代様、そろそろカウントダウンが始まりますよ」 時計塔の針がゆっくり時を刻み、12時となった 全員「新年あけましておめでとう」 フェイト「今、時計塔が歪んで見えたような…」 エド「幽獄の時計塔のエフェクトが発動したのさ」 なのは「エフェクト?」 エド「幽獄の時計塔に時が満ちた時、それをコントロールしている者をあらゆる戦闘ダメージから守るのさ」 十代「こういうことさ、相棒」 ハネクリボーがエドに向かって飛んでいくが、見えない障壁に阻まれて接近できない エド「……十代、いいかげんに……」 はやて「便利やなあ、うちでも採用したいぐらいや、でも時計塔はわかるけど何で「幽獄」なんや?」 エド「こういうことさ、フィールド魔法「ダーク・シティ」発動」 時計塔が崩れ、新たなフィールドが形成され始める エド「この時、幽獄の時計塔に幽閉されていた男が解き放たれる、カモン!D-HERO ドレッドガイ!」 十代「わ、悪かったって、エド」 エド「ドレッド・ウォールで墓地のD-HEROを蘇生し、いけ!プレデター・オブ・ドレッドノート!」 十代「何で新年早々こういうオチになるんだ、うわあああ」 単発総合目次へ 遊戯王系目次へ TOPページへ
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スレ住人の皆様 遊戯王系単発SS クロス元:遊戯王 294氏 無題(仮) 294氏 一発ネタ(仮) 301氏 1発ネタ 遊戯vsなのは 294氏 第?話 正義の味方?参上 反目のスバル氏 リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~前編~」 反目のスバル氏 リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~後編~」 反目のスバル氏 無題(仮) エラッタ氏 無題(仮) 三十七代目スレ403氏 キャロが千年リングを見つけたそうです TOPページへ このページの先頭へ
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リリカルなのはFeather 第0話[天女たちの事情] 機動六課隊長室は緊迫した空気に包まれれている その原因は機動六課部隊長、八神はやてが発してる怒気のせいである [もう、どないせ~ちゅうねん」 そして隊長室のテーブルに置かれた沢山の報告書が宙を舞った 「落ち着いて下さい、はやて隊長、暴れても何もなりません] 其処にはやての副官であるグリフィスが必死にはやてを止めていた [離してグリフィスくん] 此処に至るまでの過程は先日機動二課がなのは達の世界でロストロギアの確保をして時ある宝石も付いてきた ついでに宝石も分析した結果ある事実が出たそこにはある文明の事が断片的に記されていた 管理局は余り気にしてなっかたが ある問題が出た、管理局のホストコンピュータがハッキングされ翌日マスコミにアルハザードの手掛かりとして報道された為に人々はこの事に異様な関心を占めていた 管理局もこの失態を隠すため選りすぐりの部隊を派遣する事になった そこでどの部隊なら世論を納得出来るかの会議が開かれていた 正直どの部隊の隊長も選ばれたくないそれが本音であった はっきり言ってこんなの生贄でしかない 魔法文明の無い世界で調査で信頼性が殆ど無い情報、こんなの成功するはずがない 時間の無駄そして経歴に傷を付ける様な物、醜い擦り付け合いが加速して来たころにレジアス・ゲイズ中将がある進言をした [やはり此処は出身者が居る機動六課に行って貰いましょう] その発言に居あわせた人達から一斉に賛成の意見が沸いた 元々六課に不満を懐いてた者達はレジアスの発言で勢いだし 他の人達もその勢いに乗りだした所に総務統括官つまりリンディ・ハラオウンがとめ様とした [いい加減にして下さい、機動六課はまだ設立したばかり部署なのですよそんな部署には荷が重過ぎます] となるべく客観的に抑えようとしてた、だが心無い一言が言われた [良かったじゃないですか、フェイト・T・ハラオウンはプレシア・テスタロッサ の娘なんでしょ母親のアルハザード探しの手伝いが出来るじゃなですか] その意見に溜まらずリンディは声を荒げた [なっ、そんな事あなた方には関係の無い事です] そこにレジアスが場をなだめ様としてた [皆さん少し落ち着いて下さい、リンディ・ハラオウン総務統括官、私達は別に六課を憎んでいる訳じゃありません数々奇跡を起こした者達が設立した部署に期待しているのてす] その意見にリンディ・ハラオウン以外の喝采が起きた レジアスは辛そうな顔をしてたが内心は良い厄介払い出来た事で喜んでいた 翌日には機動六課に正式に第97管理外世界の調査が言い渡された そして今に至る この怒気の一番の理由は六課にこの調査を言い渡された時に言われた一言である [良かったね、親友の母親のお手伝いが出来て] [あー今思い出しても腹が立つわ] また暴れだした [もういい加減に落ち着いてください] やっとはやての怒りが治まった [何時までも此の侭とゆう訳にはいかヘんからな悪いけどグリフィスくん、なのはちゃん達呼んで来てくれる] [はい、分かりました] ボロボロになったグリフィスの声が響いた 数十分後なのは達が隊長室に来た […あんなぁ、なのはちゃん、特にフェイトちゃんには悪いけどアルハザードの手掛かりの調査を言い渡されたんや] はやては落ち込んでる顔で言った [はやて、私は気にしてないよ、もしこの手掛かりが本当にアルハザードに繋がるなら私は知りたい] フェイトは力強く言った [うん、そうだねみんなでがんばろう] なのはも力強く言った [ありがとうホンマにありがとう] 三人は抱き合った 数日後 XV級艦船「クラウディア」に必要な物資を詰め込んでいる所に元気な青髪の少女の声が響いてる [ねぇねえティア、この宝石なんだよねアルハザードの手掛かり言われてるの凄いよね] [スバル、一応この宝石は大事な物なんだからね] とツインテール少女が言った [うん、あれ?] [如何したのスバル] [今なんかこの宝石光った様なしたんだけど] [気のせいじゃ無いの] 一方そのころ 地球ではある事が起きていた [瑠璃] 学校の屋上で落ち様としてた宮坂瑠璃を必死に救おうとしてた鷲崎飛翔の腕が遂に解けた [飛翔くん] そして宮坂瑠璃は落ちた 目次へ 次へ
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第6話「決意、そしてお引越しなの」 「じゃあ、メビウスからは何も連絡は……」 「はい……ウルトラサインもテレパシーも、一切ありません。」 地球から遠く離れた宇宙に存在する、M78星雲。 その中にある、地球よりも遥かに巨大な星―――光の国は、ウルトラマン達が住まう星である。 そんなウルトラマン達の中でも、優れた戦闘能力と、そして優しさを持つ戦士達がいた。 彼等はウルトラ兄弟と呼ばれ、宇宙の平和を守る宇宙警備隊の一員として、日夜戦っている。 そのウルトラ兄弟達に、今、未曾有の事態が起きた。 ウルトラ一族にとっては最大の宿敵の一人といえる、最大の悪魔―――ヤプール人が復活を果たした。 ヤプール人とは、異次元に存在する邪悪そのもの。 自らを、暗黒から生まれた闇の化身と豪語する悪魔である。 ヤプール人はこれまで、幾度となくウルトラ一族へと戦いを挑んできた。 ウルトラ兄弟達は、その都度何度も撃退したが……ヤプールは、何度も復活を果たしてきた。 彼等はヒトの負の心を好んでマイナスエネルギーに変えてエネルギー源としているため、その存在を完全に消し去る事は不可能なのだ。 ヒトがこの世から完全に消え失せれば、もしかすると可能かもしれないのだが、そんな馬鹿な話はありえない。 一時は、封印という形で決着をつけられたかのように思えたが……その封印も、悪しき侵略者に破られてしまった。 結局ウルトラ兄弟達は、ヤプールが復活する毎に打ち倒すという手段を取るしかなかった。 そしてつい先日、彼等はヤプールが潜む異次元へと乗り込み、決戦に臨み、ヤプールに打ち勝つことができたのだが…… ここで、予想外の事態が起こった。 ヤプールを倒した影響により、異次元世界は崩壊を迎えようとしたのだが……ヤプールがここで、最後の悪足掻きを見せた。 ウルトラ兄弟の末弟―――ウルトラマンメビウスを、道連れにしていったのだ。 メビウスはヤプールと共に崩壊に巻き込まれ、そして行方不明となった。 兄弟達は、様々な手段を使ってメビウスの捜索に当たっていたのだが、メビウスの行方は全く分からないままであった。 もしもメビウスがまだ生きているとするならば、可能性は一つしかない。 「やはり、崩壊の影響でどこか別の次元に落ちてしまったのか……」 「しかし……そうだとしたら、どうやってメビウスを探せばいいんですか?」 「メビウスから何か連絡があれば、どうにかならなくもないんだが……」 メビウスは、どこか別の異世界にいる可能性が高い。 それがどこか分からないのが、問題ではあるが……それさえ分かれば、救出に向かうことはできる。 ウルトラ兄弟の中には、異なる次元・異なる世界への転移能力を持つものもいるからだ。 今現在、メビウスを救う為に、光の国の者達は一丸となって動いている。 ウルトラ兄弟の長男にして宇宙警備隊の隊長であるゾフィーは、空を仰ぎ遥か彼方―――地球を眺め、弟のことを思う。 「メビウス……一体、どこに……?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なのは、フェイト!!」 「ユーノくん、アルフさん……」 「二人とも、もう体は大丈夫なのかい? 大分酷いダメージだったけど……」 「うん、何とか。 私はしばらく、魔法は使えないみたいだけど……」 丁度その頃であった。 時空管理局の本局にて、なのは・フェイト・ユーノ・アルフの四人が久方ぶりの再会を果たしていた。 こうして直接顔を合わせるのは、彼等が出会う切欠となったPT事件以来である。 しかし、彼等の表情には喜び半分不安半分という所である。 その原因は、大きく分けて二つ。 一つ目は、言うまでもなくヴォルケンリッター達の存在にある。 そしてもう一つは、なのはとフェイトが受けたダメージの大きさにあった。 なのはは、自分でも攻撃を受けた時点で予想はしていたが……魔力の源であるリンカーコアが、異常なまでに縮小していた。 魔力を吸い取られてしまい、回復するまでの間、一時的に魔法を使えない状態にあったのだ。 フェイトも、なのは程ではないとはいえ、それなりのダメージを受けていた。 しかし何より……二人とも、自分のデバイスに大幅な破損を受けてしまっていたのが大きかった。 レイジングハートもバルディッシュも、再起不能な状況にまで追い込まれてしまっていたのだ。 自己修復作用だけでは間に合わないため、現在パーツの再交換作業の真っ只中にあった。 「レイジングハート……」 「ごめんね、バルディッシュ……私の力不足で……」 「……こういう言い方は何だが、これは二人のミスじゃないよ。」 「クロノ、エイミィ、リンディ提督……それに……」 「ミライさん……」 落ち込むなのは達へと、部屋に入ってきたクロノが声をかけた。 その傍らには、彼の相棒であるエイミィと、アースラ艦長のリンディ。 そして……ミライがいた。 クロノは、自分達が相手をしていた敵の魔法体系―――ベルカ式について、簡潔に説明を始めた。 今回なのは達が敗北したのは、彼女達の魔法体系―――ミッドチルダ式との相性の悪さが大きかった。 ベルカ式とはその昔、ミッド式と魔法勢力を二分した魔法体系。 遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した術式である。 ミッドチルダ式と違い、一対一における戦いを念頭に置いてあるものなのだ。 そしてその最大の特徴は、デバイスに組み込まれたカートリッジシステムと呼ばれる武装。 なのは達もその目でしかと見た、ヴォルケンリッター達が使っていたシステム。 儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得る。 術者とデバイスに負担はかかるものの、かなりの戦闘能力を得られる代物である。 「随分、物騒な代物なんだね……」 「ああ……多くの時限世界に普及している魔術の殆どは、ミッド式だからね。 御蔭で、解析に少しばかり時間を取られてしまったよ……」 「そうだったんだ……」 ベルカ式に関しての説明が終わり、皆は少しばかり考えた。 自分達の使っている魔法が、魔法の全てではない。 これから先、自分達の前に立ちふさがるのは、まだ見ぬ未知なる強敵。 かつてのPT事件と同様か、それともそれ以上の戦いになるかもしれない。 誰もが息を呑むが……その直後であった。 皆が、ベルカ式よりも最も疑問に思わねばならぬ事に気づいた。 戦闘の最中、突如として謎の変身を遂げたミライ―――ウルトラマンメビウスについてである。 当然ながら、視線はミライに集中することになる。 ミライも、ここで隠し事をするつもりはなかった。 丁度いい具合にメンバーも揃っている……ミライは、全ての事情を話し始めた。 「リンディさん達には、先にある程度の説明はさせてもらったけど、改めて全部話すよ。 僕の事……ウルトラマンの事について。」 ミライは、隠していた事情も含めた全てを話した。 自分は宇宙警備隊の一人であり、そしてウルトラ兄弟の一人である、ウルトラマンメビウスである事。 異次元に潜む悪魔―――ヤプールとの戦いの末に、次元の狭間に呑まれた事。 そして気がついたら、アースラに救助されていた事。 自分の正体を明かせば、周囲の者達にも危険が及ぶと判断し、正体を隠していた事。 先に説明を受けていたリンディ・クロノ・エイミィの三人は、二度目となるため流石に驚いてはいなかった。 一方なのは達四人はというと、当然ながら驚き、そして呆然としている。 別世界の人間というだけならば、まだ分かるが……その正体が宇宙人ときては、少々許容の範囲外であった。 そして、ウルトラマンという存在についてにも驚かされた。 宇宙警備隊という、時空管理局に匹敵するほどの大組織の一員として、ミライ達は動いている。 彼は、その中でも特に秀でた戦士であるウルトラ兄弟の一人―――中には、メビウスよりも強いウルトラマンはいるという。 早い話……ミライがとんでもない大物であった事に、皆驚いているのだ。 「えっと……一つだけ、質問してもいいですか?」 「いいけど、何かな?」 「話を聞いてて、少しだけ不思議だったんですけど……ウルトラマンは、どうして地球を守るんですか? 守らなくてもいいとかそういう話じゃなくて、色んな星がある中で、どうして地球を選んだんだって……」 なのはには、ミライの話の中で一つだけ、腑に落ちない点があった。 ウルトラ兄弟達になる為には、地球防衛の任に就く必要があるという。 そうして多くの事を学び、ウルトラ兄弟になるに相応しいまでの成長を遂げるというのだが…… 何故、彼等が防衛する星が地球なのか。 話を聞く限りでは他にも多くの星はある筈なのに、何故態々地球を選んだのか。 そんな彼女の疑問を聞くと、ミライは少しばかり瞳を閉じた後、ゆっくりと口を開いた。 かつて、共に戦った大切な親友からも同じ質問をされた。 その時の事を思い出しながら……ミライは、なのはに答えた。 「僕達ウルトラマンも、元々はウルトラマンの力を持っていなかった。 皆と同じ……地球の人達と全く同じ、普通の人間だったんだ。」 「え……?」 「ある事故が切欠で、僕達はウルトラマンの力を手に入れた。 ……僕達は、地球の人達に自分達を重ねているんだ。 もう戻る事のできなくなった、あの頃の姿を……」 「だから、地球を……」 ウルトラマンが地球を守る理由。 それは、かつての自分達の姿を重ねているからであった。 更に、地球は多くの侵略者達から、特に狙われている星でもある。 だからウルトラマン達は、地球を守ろうと決めたのだ。 そうして人間達を守る戦いを続けていく内に、ウルトラマンとして何が大切なのかを知る事ができる。 それこそが、彼等の戦う理由であった。 だが、メビウスには……いや、これは全てのウルトラマンの思いだろう。 もっと重要な、戦う理由があった。 「それに……」 「それに?」 「僕達は、人間が好きですから。」 「……なるほど、ね。」 「勿論、人間だけじゃなくて……大切なもの全てを、守りたいと思っています。 困っている人がいるなら、その人を助けるためにウルトラマンの力はある。 僕はそう信じてます……だから、決めました。」 「え……決めたって?」 「ミライ君は、元の世界に戻る手立てがつくまでの間、私達に協力してくれるって言ってくれたんだ。」 ミライは、今回の事件に関して全面的に協力すると、リンディへと話を通していたのだ。 自分達を助けてくれた時空管理局の者達に、恩返しがしたいからと。 それに、もう一人のウルトラマン―――ダイナの事が気がかりであるからと。 前者だけでもミライにとっては十分な理由であり、加えて後者のそれもある。 ここで引き下がれというのが無理な話だ。 保護した民間人に戦闘をさせるというのは流石に気が引けたのか、最初のうちはリンディも遠慮していた。 しかし……ミライの積極的な申し出に、彼女も折れたのだ。 最も、局員ではないなのは、フェイト、ユーノ、アルフの四人が協力している時点で、今更な感はあるのだが…… メビウスの力は、確かに今後の戦いを考えると必要不可欠だろう。 闇の書側についているとされる謎のウルトラマンとの戦いには、最も彼が向いている。 なのはやフェイト達どころか、下手をすればアースラ最強の戦闘要員であるクロノさえも危ない程の強敵なのだから。 「さて……それじゃあ、フェイト。 そろそろ面接の時間だが……なのは、ミライさん。 二人も、僕に同行を願えないか?」 「……?」 「面接……うん、いいけど……」 なのはとミライの二人は、面接という言葉の意味がいまいちよく分かっていなかった。 聞く限りじゃフェイトの用事らしいのだが、それにどう自分達が関係するのだろうか。 不思議そうに、二人は顔を見合わせる。 そんな様子を見たクロノは、難しく考える必要はないと言い、部屋を出て行った。 三人は、彼の後についていく。 「エイミィ、面接って?」 「うん、フェイトちゃんの保護観察の事についてだよ。 保護観察官のグレアム提督と、まあちょっとしたお話。 なのはちゃんはフェイトちゃんの友人って事で呼ばれたんだと思うけど…… ミライ君は、まあ色々と大変な事情が重なってるからね。 多分、そこら辺の事に関してじゃないかな?」 「へぇ~……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「クロノ、久しぶりだな。」 「ご無沙汰しています、グレアム提督。」 そしてその頃。 クロノの案内によって、時空管理局顧問官―――ギル=グレアム提督の部屋に三人はついていた。 三人は椅子に座り、グレアムの言葉を待つ。 何処となく緊張している様子の彼等を見て、グレアムは少しばかり苦笑した。 その後、本題に入るべく、手元の資料を見ながら三人へと話しかける。 「フェイト君、だったね。 保護観察官といっても、まあ形だけだよ。 大した事を話すわけじゃないから、安心していい。 リンディ提督から、先の事件や、君の人柄についても聞かされたしね……君は、とても優しい子だと。」 「……ありがとうございます。」 「さて、次は……んん? へぇ……なのは君は日本人なんだな。 懐かしいなぁ、日本の風景は……」 「……ふぇ?」 「はは……実はね、私は君と同じ世界の出身なんだ。 私はイギリス人だ。」 「ええ!!そうなんですか?!」 「あの世界の人間の殆どは、魔力を持たない。 けれど希にいるんだよ、君や私のように、高い魔力資質を持つ者が。」 まさか時空管理局に、自分と同じ世界の出身人物がいるとは、思ってもみなかった。 驚き思わずなのはは声を上げてしまう。 するとそんな様子を見たグレアムは、彼女が予想通りのリアクションをしてくれたのを見て、静かに微笑んだ。 その後、彼は己の身の上話を話し始めた。 「おやおや……魔法との出会い方まで、私とそっくりだ。 私は、助けたのは管理局の局員だったんだがね。 それを機に、こうして時空管理局の職務についたわけだが……もう、50年以上前の話だよ。」 「へぇ~……」 「フェイト君、君はなのは君の友達なんだね?」 「はい。」 「約束して欲しいことはひとつだけだ。 友達や自分を信頼してくれる人のことは、決して裏切ってはいけない。 それが出来るなら、私は君の行動について、何も制限しないことを約束するよ……できるかね?」 「はい、必ず……!!」 「うん……いい返事だ。」 フェイトの力強い返答を聞き、グレアムは安堵の笑みを浮かべた。 その瞳に、一切の迷いはない。 友達の為、大切な人の為に活動できる、強い意志が感じられる……この子はきっと大丈夫だ。 これで、片付けるべき最初の問題は片付けた。 残るは……来訪者、ウルトラマンについて。 「ミライ君だったね……君の話をリンディ提督達から聞かされた時は、本当に驚いたよ。 魔法の力も、君からしたら十分非常識ではあるのだろうが……今の私は、それと同じ気分だね。」 「確かに……僕も最初に皆さんの話を聞いた時は、少し驚きましたよ。」 「はは……君もクロノに呼んでもらったのは、君がいた世界に関してなんだ。 君がいた世界の捜索なんだが、実は私の担当になりそうなんでね。 事情とかは既に聞いているから、改めて君から聞く必要はないが……そういう訳で、挨拶をしておきたかったんだ。」 「そうだったんですか……グレアムさん、よろしくお願いします!!」 「こちらこそ、よろしくだよ。 それで、君の能力に関してなんだが……仲間の人達と連絡を取る手段はないのかな?」 「テレパシーは試してみたんですけど、通じませんでした。 一応、他にももう一つだけ方法があるにはあるのですが……それは、地球に着き次第試してみたいと思います。 ウルトラマンに変身した状態じゃないと、使える力じゃないですからね。」 「うん、分かった。 それと、もう一つ質問するが……気になる事があってね。 君が一戦交えた、あのもう一人のウルトラマンについてなんだが……分かる事は何かないかな? どんな些細な事でもいいから、教えて欲しいんだ。 捜索の鍵になるかもしれないからね。」 「はい……けど、残念な事にはなるんですけど……」 「残念な事……?」 「僕とあのウルトラマン……ダイナとは、初対面なんです。 だから、お互いの事は何も分からないんです。」 「初対面……? ミライさんも会ったことがないウルトラマンさんなの?」 「うん……」 ミライとて、全てのウルトラマンを把握しているわけではない。 実際問題、かつて地上に降り立ったハンターナイトツルギ―――ウルトラマンヒカリの事は知らないでいた。 それに、光の国以外にもウルトラマンは存在している。 獅子座L77星生まれであるウルトラマンレオとアストラがその筆頭である。 この二人のみならず、ジョーニアス、ゼアス……彼等の様な他星の者達も含めれば、数は相当なものになる。 いや、そもそも……それ以前にあのウルトラマンは、自分がいた世界のウルトラマンなのだろうか。 なのは達の世界にウルトラマンが存在していない以上、ダイナは必然的に別世界のウルトラマンということになる。 問題は、その別世界がはたして自分のいた世界と同じなのかどうかという事である。 異次元世界での戦いにおいて、次元の裂け目に落ちたのは自分とヤプールだけだった。 まさかダイナがヤプールな訳がないし、そもそもヤプールがあのダメージで生きているとは思えない。 そうなると……ダイナは、もしかしたら別の世界のウルトラマンなのかもしれない。 自分と同じで、何らかの方法でこの世界に来たウルトラマンなのかもしれないのだ。 これに関しては、本人から聞き出す以外……知る方法はないだろう。 「ただ、戦ってみて分かったんですが……ダイナからは、邪悪な意思は感じられなかったんです。」 「邪悪な意思が……?」 「僕は今までに二回、同じウルトラマン同士でのぶつかり合いを経験した事があります。 その内の一人は、憎しみに捕らわれた可哀想な人でしたが……あの人から感じたような、憎悪とかはないんです。 寧ろダイナは、レオ兄さんの様な……強い信念を持っているように感じられました。」 ミライが、ダイナとの戦いで感じた事。 それは、彼から邪気が感じられないという事実であった。 かつて彼は、ハンターナイトツルギとウルトラマンレオと、二人のウルトラマンと対峙した経験があった。 ツルギとのそれは、対決にまでは至らなかったものの、ミライにとっては忘れられない記憶であった。 目的の為ならば手段を選ばず、ただ復讐の為に力を振るうツルギから感じられたのは、圧倒的な憎悪だった。 ダイナからは、そんな憎悪の様な感情は一切感じられなかった。 寧ろ、ウルトラマンレオの持つ強い正義感に近いものが彼にはあったのだ。 レオがミライに戦いを挑んだのは、敵に破れたミライを鍛えなおす為であった。 強敵を打ち倒す為のヒントを、彼は戦いの中でミライへと授けたのである。 あの行動は、紛れもなく正義を貫く為のもの。 大切な故郷である地球を守り抜きたいという、強い想いによるものであった。 ダイナには、それがあった。 「そうか……クロノ、今回の事件に関しては……」 「はい、もう、お聞き及びかもしれませんが…… 先ほど、自分達がロストロギア闇の書の、捜索・捜査担当に決定しました。」 「分かった……ミライ君。 君はあのウルトラマンとは、この先間違いなく対峙することになる。 その時、君は彼を止められるかな?」 「……絶対とは言い切れません。 ですが、ダイナは話が通じない相手ではないような気がします。 だから何とかして彼の目的を聞き、それが悪いことでないのならば、僕は彼を助けたいと思います。 避けられる戦いは、避けたいですから。 でも、もしも彼に邪な目的があるなら、そうでなくとも彼が立ちはだかる道を選ぶなら……僕はダイナと戦います。 皆を守るために、ダイナを何としても止めてみせます。」 「そうか……いい目をしているね。 君ならば、きっと大丈夫だろう……分かった。 あのウルトラマンダイナに関しては、君が一番頼りになるだろう。 クロノ達と助け合って、最善の道を歩めるよう頑張ってくれ。」 「はい!!」 「私から、君達に話すことは以上だ。 ……クロノ、私の義理では無いかもしれんが、無理はするなよ。」 「大丈夫です……急事にこそ冷静さが最大の友。 提督の教えどおりです。」 「そうだな……」 「では、失礼します。」 四人はグレアムに一礼した後、退室していった。 理解のある人で、本当によかった。 ミライ達は、心からそう思っていた。 彼の心に答える為にもと、三人は精一杯の努力をする決意を固めるのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「はやてちゃん、お風呂の支度できましたよ。 ヴィータちゃんも、一緒に入っちゃいなさいね。」 「は~い。」 同時刻、海鳴市。 八神家では、何てことない平和な日常の光景が見られた。 風呂が沸いた為、はやてとヴィータ、シャマルが三人で風呂場へと向かう。 シグナムはソファーに座って新聞を読み、ザフィーラは横になって寛いでいる。 そしてアスカはというと、テレビでやってるクイズ番組に夢中になっていた。 『ヘキサゴン!!』 『主にオーストラリアに分布する、その葉がコアラの主食として知られるフトモモ科の植物は何でしょう?』 ピンポンッ!! 『はい、つるの押した。』 『よしきたぁっ……笹ッ!!』 ブーッ!! 『え、何でだよ!?』 『……あのなぁ、つるの!! それコアラじゃなくてパンダやんけ!!』 「やっべ……俺も同じ事考えちまってたよ。」 「おいおいおい……」 「はは……シグナムは、お風呂どうします?」 「私は今夜はいい……明日の朝にするよ。」 「へぇ、お風呂好きが珍しいじゃん……」 「たまにはそういう日もあるさ。」 「ほんなら、お先に~」 三人が風呂場へと入っていく。 その後、ザフィーラはシグナムへと振り返った。 彼女が何故風呂に入るのを拒んだのか、何となく理由が分かっていたからだ。 アスカも二人の様子を感じ取り、振り返る。 「今日の戦闘か?」 「聡いな……その通りだ。」 「もしかしてシグナムさん、どっか怪我を?」 シグナムは少しばかり衣服を捲り上げ、二人に下腹部を見せた。 その行動にアスカは一瞬顔を赤らめ、反対方向へと向いてしまう。 しかし、見たのが一瞬であったとはいえ、十分に確認する事は出来た。 彼女には確かに、黒い傷跡があったのだ。 それは、フェイトとの戦いによって着けられたものであった。 「お前の鎧を撃ち抜いたか……」 「澄んだ太刀筋だった……良い師に学んだのだろうな。 武器の差が無ければ、少々苦戦したかもしれん。」 「でも……きっと、大丈夫っすよ。 今日初めて戦ってるところは見たけど……シグナムさん、結構強そうに見えたし。」 「ふふ……それはありがたいな。 そういうお前こそ……互角の戦いぶりだったな。」 「はい……ウルトラマンメビウス。 あいつとは、また戦うことになるだろうけど……負けません。 次は、必ず……!!」 「ああ……我ら、ヴォルケンリッター。 騎士の誇りに賭けて……」 『おい……お前、アホやろ。』 「あ、つるの抜けた。 よかったぁ、ビリじゃなくて……何か俺、こいつに親近感感じるんだよなぁ。」 「……ビリとビリの一歩手前とじゃ、五十歩百歩じゃないか?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「親子って……リンディさんとフェイトちゃんが?」 「そう、まだ本決まりじゃないんだけどね。 養子縁組の話をしてるんだって……プレシア事件でフェイトちゃん天涯孤独になっちゃったし。 艦長の方から、「うちの子になる?」って。 フェイトちゃんもプレシアのこととかいろいろあるし……今は気持ちの整理がつくのを待ってる状態だね。」 場所は時空管理局本局へと戻る。 なのははエイミィから、フェイトがリンディから養子縁組の話を受けたことを聞かされた。 この話は、とてもいいことだとなのはは感じていた。 無論、フェイトの気持ちの整理などもあるから、まだ先の話にはなるのだろうが…… 彼女達が親子となるならば、きっと上手くいくに違いないとなのはは思っていた。 そしてそれは、エイミィやクロノ達にとっても同様である。 (親子、か……) 二人の話を聞いていたミライは、昔の事を思い出していた。 自分も以前に一度、養子にして欲しいといってある人物を訪ねた経験があった。 相手は、今のこの姿―――ヒビノミライとしての姿のモデルとなった人物の、父親である。 彼はミライと暮らすことは出来ないと、その申し出を拒否した。 しかし……ミライが進むべき道を、はっきりと示してくれた。 彼の協力がなければ、今の自分はなかった……そう思うと、やはり感謝すべきだろう。 「さて……皆、揃っているわね。」 噂をすればなんとやら。 丁度、フェイトとリンディの二人が部屋へとやってきた。 それを合図に、騒がしかった室内が一気に静かになる。 今この部屋には、アースラクルーの者達が勢揃いしていた。 今回の事件に関しての説明が、これから行われるのである。 「さて、私たちアースラスタッフは今回、ロストロギア・闇の書の捜索、および魔導師襲撃事件の捜査を担当することになりました。 ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置くことになります。 分轄は観測スタッフのアレックスとランディ。」 「はい!!」 「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同。」 「はい!!」 「司令部は私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、フェイトさん、ミライさん、以上4組に別れて駐屯します。」 各々の役割分担について、リンディが説明し始めた。 地上におかれる司令部には、リンディ達五人が駐屯する事になる。 そして、その肝心の司令部の場所はというと…… 「ちなみに司令部は……なのはさんの保護をかねて、なのはさんのおうちのすぐ近所になりまーす♪」 「えっ……!!」 「……やったぁっ!!」 なのはとフェイトは顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。 その様子を見て、アースラクルー皆も笑顔を浮かべる。 今回の事件は、なのは達の世界が中心だからそこに司令部を置くのは当然のことではあるものの。 中々、リンディも粋な計らいをしてくれたものである。 早速引越しの準備ということで、皆が動き始めた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「うわぁ……すっごい近所だぁ!!」 「ほんと?」 「うん、ほらあそこ!!」 翌日。 なのは達は、司令部―――高町家から凄く近い位置にあるマンションにて、引越し作業の最中であった。 なのはとフェイトの二人はベランダから、外の風景を眺めている。 ミライはエイミィやクロノ達と一緒に、荷物の運び込みをしていた。 するとエイミィは、ある事に気付いた。 ユーノとアルフの姿が、人間ではない……動物形態へと変化していたのだ。 「へぇ~、ユーノ君とアルフはこっちではその姿か。」 「新形態、子犬フォーム!!」 「なのはやフェイトの友達の前では、こっちの姿でないと……」 ユーノはフォレットへと、アルフは子犬へとその姿を変えていた。 二人とも、正体を隠しておかなければならない事情があるために、動物形態を取っていたのである。 そこへとミライもやってきたわけだが……そんな二人の姿を、彼はじっと見つめていた。 「ミライさん、何か……?」 「いや……今凄く、二人に親近感が沸いちゃったから。 正体を隠す為に変身する……分かるよ、その気持ち。」 「あ~……そういえば、似たような身の上だったわよね、あたし達。」 「わぁ~!! ユーノ君、フェレットモードひさしぶり~!!」 「アルフも、ちっちゃい……」 「あはは……」 なのははユーノを、フェイトはアルフを抱きかかえた。 するとそんな時、クロノから二人の友達が来たと言われ、二人は玄関へと走っていった。 リンディも折角だからと、一緒についていく。 その後、なのは達はフェイトの歓迎会の為に、リンディは挨拶の為に、翠屋へと向かっていった。 「早速仲良しですね、フェイトちゃん達。」 「前々から、ビデオメールとかはやってたからね。 初対面って言うのとはちょっと違うし……あれ?」 「エイミィさん、どうしたんですか?」 「あはは……艦長ったら、忘れ物しちゃってるよ。 これ、フェイトちゃん達に見せてあげなきゃ……ミライ君、折角だし届けてもらっていいかな?」 「はい、いいですけど……これって?」 「フェイトちゃんにとっての、最高のプレゼントだよ。」 ミライはエイミィからある小包を受け取った。 その中身が何なのか、それを聞くとミライも笑みを浮かべた。 きっとフェイトは、喜んでくれるに違いないだろう。 駆け足で、ミライはフェイト達を追いかけていった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ユーノ君、久しぶり~♪」 「キュ~」 「う~ん……あんたのこと、どっかで見た覚えがあるような……」 「ク~……」 「にゃはは♪」 翠屋の前のオープン席で、なのはとフェイト達は、友人のアリサ=バニングスと月村すずかの二人と過ごしていた。 ユーノとアルフも混じって、楽しげに四人は会話をしていた。 すると、そんな最中だった。 なのはは、小包を持ってこちらに近づいてくる人物―――ミライの存在に気付いた。 「あれ……ミライさん?」 「あ、いたいた。 フェイトちゃん、これリンディさんからの贈り物だよ。」 「え、私に……?」 「なのは、この人は?」 「初めまして、僕はヒビノミライって言うんだ。 お仕事の都合で、しばらくの間フェイトちゃんの家でお世話になってるんだ。」 「へぇ、そうなんですか……」 「ミライさん、これって?」 「開けてごらん。」 ミライに促され、フェイトは小包を開けた。 すると、その中にあったのは、最高のプレゼントであった。 なのは達三人が通っている、聖祥小学校の制服であった。 これが意味する事は、一つしかない……彼女達は、たまらず声を上げた。 その後、フェイトは店内でなのはの両親へと挨拶をしているリンディの元へと走っていった。 なのは達三人も、その後に続く……その後姿を、ミライはしっかりと見守っていた。 (……世界が違っても、やっぱり同じだ。 僕は、あんな笑顔を守りたい……兄さん達には少し悪いけど。 問題が片付いて、元の世界に戻れるようになるまで……精一杯、頑張ろう。 皆と一緒に……!!) 戻る 目次へ 次へ