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このページはこちらに移転しました そんなわけがない 作詞/うんこマン 人が桃から生まれるわけがない そもそも桃は川を下らない 赤ん坊とはいえ人間が 一人入るような桃はない 仮に桃から人が生まれたとして そんなに早くは成長しない そんなの作者の都合だよ お話を早く先に進めるため 仮にそんなに早く成長しても 鬼退治には出向かない そもそもこの世に鬼はいない 鬼の正体は人の欲望 仮に鬼がこの世にいたとして 旅路で犬・猿・雉子は仲間にならない きび団子を一つだけで 命を投げ捨てる馬鹿はいない 仮にそんな馬鹿がいたとして 仮に鬼もこの世にいるとして 人・犬・猿・雉子じゃ鬼には勝てない 鬼はどんだけ弱いんだ!? まして場所は鬼ヶ島 鬼はいったいどれだけいる? 犬・猿・雉子もそうだけど 桃太郎ってどんだけ強いんだ!?
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(10) book_bunko_img10.png 著者 伏見つかさ イラスト/作画 かんざきひろ 価格 本体590円 + 税30円 好評発売中(2012年4月10日発売) ISBN 978-4-04-886519-7 判型 A6判 ページ数 360 黒猫vsあやせ!? 意外な組み合せに注目な人気シリーズ最新刊! あのバカがしばらく一人暮らしをすることになった。受験勉強に集中するためってのと、あとひとつ、お母さんが最近あたしと京介の仲がよすぎることを変に疑ってるらしい……。あたしと京介がそんな関係に──なんて、あるわけないじゃん! で、まあ、責任の一端は、ちょっとだけあたしに……あるみたいだし、あいつもどうせコンビニのお弁当とかばっか食べそうだし、仕方ないから、あたしが面倒見てあげようかと思ったんだけど……。 ちょっとあんたたち、なに勝手に京介の家で引越し祝いパーティ開こうとしてんの!? 発案者の地味子はいいとして、黒いのに沙織に、あやせに……加奈子まで! ていうか、あんたたち知り合いだったの!? えっ? 地味子と仲直り? そんなのあとあと! あーもー、ひなちゃんは言うこと聞かないし! こんなんじゃ京介が勉強に集中できないじゃん!
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(11) book_bunko_img11.png 著者/伏見つかさイラスト/かんざきひろ 定価 620円 TVアニメ第2期製作決定! 大人気ドラマチックコメディ、待望の第11弾! 「あの頃のあたし───お、お兄ちゃんっ子だったの」 引っ越し祝いパーティの場で交わされた“約束”を果たすため、田村家を訪れた俺と桐乃。話し合いは、やがてそれぞれの過去話になっていって…… 「仕方ないことなんかなぁ、この世に一個だってねーんだよ!」「学校に行ったら負けだと思っている」「その謎のペットボトルは……まさか……おまえ禁断の行為を……!」 『凄いお兄ちゃん』なんて、最初からいなかったんだよ」「そんなことで、お兄ちゃんを嫌いになるわけないじゃん」 「だから。あたしは、あんたのことが嫌いになったんだよ」 兄妹冷戦の真相が、ついに明かされる。重要エピソード満載の最新刊!!
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http //blog-imgs-32-origin.fc2.com/z/e/a/zeark969/hirame130060.jpg 「くっ……! お兄さんみたいな変態の前で『うっかり』自分に手錠をかけてしまうなんて……これはピンチですよ!?」 「……………………ふむ」 「お兄さん! 絶対に!(チラッ) 絶対に変な気を(チラッ)おこさないでくださいよっ!?」 「んー、そうだなー、こんなに可愛いあやせが、こんな状態で拘束されてるわけだしなー、普通に考えて手出しちゃうよなー」 「な、何を企んでいるんですか……?(ワクワク)」 「でも、あやせは嫌がってるみたいだしなー、このまま離れたほうが」 「えぇっ!? や、だめ、行かないでくださいっ!」 「なに? 手、出してほしいの?」 「……そ、そ、そ、そ、そんなわけないじゃあないですかっ! バカっ! ただ、そう、あれですよ、こんな状況でひとりにされたら困るじゃないですかっ! は、外れませんし」 「ふぅん…………じゃあ、側にいてじっと見ておこうか」 ☆ 「じーっ。」 (うぅ……こんな、見られて、やだ……ずっと、見てるだけ、なんて……というか、あ………) 「うぅ………………お、兄さん、鍵、外して、もらえ、ませんか? その、ベッドの近くに落ちているはずですから」 「鍵? ……つーか、今まで言わなかったのに、何で言うんだ?」 「そ、それは、お兄さんが何もしな……もにょもにょ……じゃなくて、その……言いづらいんですけど」 「大丈夫だ、言ってみろ。言わなきゃ外さないぞ」 「うぅ…………うーっ、うーっ! そ、その、……ですね――――――――お、お花摘み…………です」 「ほほぅ……じゃあ、触るからな」 「はい……って!? ゃ、ゃあっ! ナニやってるんですかっ!」 「あやせのここ…………いい匂いがするな、ペロペロ」 「ゃ、だ、だめ、ゃ、我慢、してたのに、今、されたら、ぁっ! んっ、ぁっ、くっ、ぁあっ、あっ、だ、め……それは、トイレ、行ってから……っ!」 「大丈夫。――――――あやせのなら、俺、受け止められる。あやせのどんな姿見ても、俺はあやせが好きなのは変わらないから」 「なんで、それ、今っ……! ゃ、ちから、が、ぁ――――!」 (ちょろろろろろ…………) 「…………ひっく、お、お兄さん、に、見られちゃった…………一番恥ずかしいところ、見られちゃったよぅ…………」
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1257382677/871-873 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 最近のきょうちゃんの様子がどこかおかしいのは気付いていた。 小さな変化は結構前からあって、ちょうど一年前ぐらいからだった気がする。妹の桐乃ちゃんに『人生相談』を持ちかけられて、それを解決しているうちに少し険悪だった兄妹仲が改善されたらしい。 それ以来どことなくきょうちゃんはいろんな人に優しくなった気がする。元からお節介焼きで優しかったけど、それがさらに二割から三割増しぐらいで優しくなった。 それと「お兄ちゃん」って呼ばれてみたいらしい。三年生に進級する少し前ぐらいにきょうちゃんの家で、ぱそこんの画面に映っていた可愛らしい女の子の絵にもそう呼ばせていた。きょうちゃんは全力で否定してたけど、これも兄妹仲が良くなった影響なんだろうなぁ。 桐乃ちゃんがアメリカに行ってからは、きょうちゃんは「気にしてねぇよ。むしろせいせいすらぁ」と強がりを言っていたけれど、やはり少し元気を無くしてしまっていた。 こういうときこそ幼馴染の私が少しでもきょうちゃんの心の穴を埋めれれば良いのになぁ……と、あのとき私はそんなことを考えていた。 でも、その役目は、どうやら素敵な先約がいたらしい。いんたーねっとで知り合ったお友達で、同じ高校の後輩となった黒猫さん(本名は五更さんというらしい)にスポットライトは当てられた。 それから数ヶ月、私が気付いた時にはいろんなことが変わっていた。 きょうちゃんは三年生という時期になったというのに部活に入ったそうだ。 黒猫さんと同じ部活動で、げーむ研究会だそうだ。機械が苦手な私には全く何をするのか想像出来ないが、ときおり聞かされる話によると何やら大変面白いらしい。 その代わり、私ときょうちゃんがいっしょに下校する回数は減ってしまった。 放課後は部活動だけでなく、黒猫さんの掃除のお手伝いをしてあげたこともあった。 どうも黒猫さんがクラスで打ち解けていないらしくそれが心配なようだ。私も心配だったので黒猫さんのために手伝ってあげた。 その代わり、私がきょうちゃんに図書館で勉強を教える回数は減ってしまった。 休日も黒猫さんとよく会っているらしい。げーむを作って、それをお披露目する発表会があるため、そのげーむのでばっくという作業をやっていたとのこと。 きょうちゃんは休日返上でお節介を焼いていて、やっぱり優しいなぁと思った。 その代わり、私の家にきょうちゃんが遊びに来る回数は減ってしまった。 黒猫さんと遊んでいるときょうちゃんは本当に楽しそうな顔をしている。私にもたまに微笑みかけてくれるけど、それとはどこか違う心底楽しそうな笑いを黒猫さんには見せている。 私は幼馴染。だからきょうちゃんの隣に私が居るのは当たり前の日常のこと。 黒猫さんは……。 これは多分、きょうちゃんの隣に黒猫さんが居るのは特別な非日常のことなのだ。 きょうちゃんにとって私の存在は普通であって、決して特別な存在ではない。 ここ数ヶ月ばかり、そのことをひしひしと我が身に感じていた。 隣に居ると安心して、とっても地味で、気を置かないで話ができる幼馴染の女の子。 それが私の限界なんだと。きょうちゃんの中で存在する私の限界なんだと。 そんなことを考え感じていたここ最近であったが、ついに私は私の限界を現実に突きつけられる光景をこの目で見てしまった。 忘れもしないあの日の校舎裏。時刻は三時半だった。 アメリカに居る桐乃ちゃんから来ためーるを見てから、どこか顔色が悪くなって、 私の携帯電話を借りてあやせちゃんに電話をした後に、「ヤボ用ができた」と言って一人で学校へと戻っていったきょうちゃん。 私はそのまま家に帰ろうと思ってたけど、どうしてもきょうちゃんが気になってしまった。めーるを見たあとに垣間見たきょうちゃんは、どうにもただならぬ様子だったからだ。 私はきょうちゃんの後を追って学校に着き、下駄箱にきょうちゃんの靴がないのを見て屋外に居るのだろうと思いきょろきょろと校舎外を探し続け、校舎裏できょうちゃんともう一人の人影が見えた。 もう一人の人影が黒猫さんであることがわかるぐらいまで近づいたそのとき、私はまるで鈍器で頭を殴られたかのような衝撃を受けた。 好奇心から後をつけようなどという卑しい気持ちは無く、ただ純粋に心配で追いかけていっただけなのに。 好奇心から隠れて覗こうなどという卑しい気持ちは無く、ただ偶然にもその光景を見てしまっただけなのに。 きょうちゃんのピンチに私が颯爽と現れて助けてあげれば、今までみたいに私の相手をもっとしてくれるようになるかもしれないなどという卑しい気持ちは無く、ただ、ただ、ただ。 本当に、ただ本当に、きょうちゃんの助けになりたかっただけなのに。 私の見間違いで無ければ、黒猫さんはきょうちゃんの頬に背伸びして口付けをしていた。 このっ……、このっ……、このっ………………! 泥棒猫ぉッ……!! こんな汚い言葉を、今すぐに叫んでしまいたいほどの衝動に私は駆られ、それでも何とかその衝動を押さえつけ私はその場から駆け足で立ち去っていた。
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない(9) book_bunko_img09.png 著者/伏見つかさ イラスト/かんざきひろ 定価 578円 今度の『俺の妹』は“それぞれの視点”で描かれる特別編! さらには意外なコラボも!? あのルリ姉に──好きな人ぉ? どーせ脳内彼氏でしょ? (8)巻の顛末を黒猫の妹・日向の視点から描いた『あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使』。腐女子の妹を「世界一可愛い」と豪語する、もうひとつの“残念な兄妹”の物語『俺の妹はこんなに可愛い』。いくつもの“顔”を持つ沙織・バジーナの“ルーツ”に迫る『カメレオンドーター』。桐乃に“トラウマ”を植えつけた瀬菜の恐るべき行動とは?『突撃 乙女ロード!』。お兄さんが彼女と別れたのって、もしかして……私のせい? あやせのフクザツな乙女心と、加奈子のライブ楽屋裏の一幕『過ちのダークエンジェル』。ほか『真夜中のガールズトーク』『妹のウエディングドレス』2本を収録! さらにはアニメOP主題歌を担当した「ClariS」とのコラボが実現! 原作の主題歌『nexus』の発売や、作中に「ClariS」の二人が登場するなど驚き満載の特別編!!
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ここが加奈子の部屋かー マンガなんかではよくある初めて上京した地方人のように 周りを見渡しては、その新鮮さにハァ…とかふぅ…とか感嘆を漏らす。 来栖家に訪れたことはあったが、前は部屋までは上がらなかったからなぁ。 「入口に突っ立ったままで、なに呆けてんの」 飲み物と菓子を乗せた盆を手に部屋の主がやって来る。 手は塞がっているので、半開きの戸を小笠原流で器用に開きながら。 「はしたない」 「カノジョの部屋に入って第一声がそれかよ? 他にあるだろ、せめて用意してきた飲み物に礼を言うとかさ」 「そりゃそうだ。サンキュー」 盆ごと受け取って近くのテーブルに下ろすと、クッションをホイと寄越された。 察するに座布団代わりということらしい。 「そのしれっとした顔、すっとぼけた感じが癪だなぁ……こっちは結構緊張してたってのにさ」 「そ、そういうものか?」 「前に言ったっしょ。男が女を部屋にあげるのとはニュアンスが違うんだって」 言わせんな恥ずかしい、と小声で続ける加奈子。 思わず、抱き締めたいなマイハニー!という衝動に駆られるが、今はまだ紳士たらんと理性を総動員。 その後は、持ってきてくれた麦茶を飲みつつ、なんてこたない雑談に興じる。 ハンガーにかけられた服を可愛いと言えば、いま狙ってる似合いのボトムスがあるから買って欲しいとせがまれ。 CDラックにウチにないポップスを見かけて話題にすれば、貸してやるから聴いて気に入ったら新譜を買って(ry 「お前、彼氏を財布あつかいすんのも大概にしろよ…」 「四の五の言わない。これぐらいで加奈子を独占できるんだから、安い買い物じゃん。 京介があんまり渋るならいつかみたくナンパ待ちでもしようかな~?」 と、ろくでもない事をサラッと言うので さすがに聞き捨てならず、加奈子を掴まえて言い聞かせる。 「そういう冗談は、好かねえ」 「あ、ウソウソ。本気にすんなってば」 釘をさす意味で怒った風を強調してみたつもりだが、 所詮装いなのは筒抜けだったのか、加奈子は慌てた様子もなく笑みすら浮かべている。 「しないから、もうあんなこと。アタシにはもう京介って彼氏がいるんだし。安心していいよ」 屈託なく笑い、躊躇いもなく抱き着いてくる彼女はこの上なく愛らしい。 俺が折角なけなしの節制を振り絞ったというのに。 こうもアッサリ動揺させられるとは… 「あのなぁ、自分ちの中だからって無頓着すぎだ。いくら俺でもその気になりかねんぞ」 「いいよいいよ。むしろカモン? 家に上がるとき、家族は留守にしてるってちゃんと言ったじゃん」 確かに言ってたな…… 例によって、これなんてエロゲ?的な思考が走ったのを覚えている。 「あほ。それならこっちこそ言った筈だ。お前が高校出るまで一線は越えないってな」 「え~、これだけ御膳立てしてもまだ意地張っちゃってんの。カタイんだって京介は」 両想いの恋人なんだから欲望に忠実になっちゃえば、と煽る加奈子。 こいつがこんなだと余計に、俺がブレーキかけなくてどうするって意識が働く。 この通り加奈子の積極性が優勢で甚だ頼りない決意ではあるが… 「今は我慢しとけっつーの。お前のこと大事に思ってるからこう決めたんだ、わかれ」 「言ってる意味はわかるけど。それならそれで『加奈子のこと大事に思ってる』のを態度で示してくんない?」 ぶっちゃけ欲求不満なんだよねー、と絡んでくる加奈子。 これじゃあムードもへったくれも無いなと苦笑を誘われ、 同時にここは彼氏として相応に応えてやるべきかという気持ちが湧く。 「わかったよ、ホラこっち来い」 「ん」 改めて加奈子を抱き寄せる。数日ぶりの、恋人の距離だ 「寂しい思いさせてたなら、悪かった、気付いてやれなくて」 「謝んないでいーよ。加奈子のが、その…欲しがりなんだろーし…」 「かもな」 俺たちはごく自然に口付けをかわす。 陶然と薄目になった加奈子の唇に舌を滑らせると、繋いだ手に小さく震えが走った。 そのまま、上気した頬に逆の手を添えて軽く撫でる。 それを合図に加奈子も両手を俺の首の後ろへ回してきた。 開いた唇を交差させるようにして口内で貪りあう。 互いを求めてより強く抱き寄せる腕の感触と、荒い呼吸に時折混じって漏れ伝わる声が俺たちの全てだった 理性の「り」の字までかき消えてしまう前にと、辛うじて踏みとどまり顔を離す。 一瞬、二人の間に名残惜しむように唾液が糸を引いた。 未だ焦点の定まらない目をこちらに向ける加奈子の、てらてらと艶かしく光る唇をハンカチで拭いてやる。 じきに落ち着きを取り戻してきた加奈子が俺の胸に顔を埋めて呟いた 「ちょーしあわせ……頭ヘンになっちゃう、ね……」 「あぁ。俺も幸せだよ、加奈子」 「でも、足りない。もっとして。京介…」 「ちょtt」 結局この日俺たちは指折り数え切れないほどキスをして、 同じくらいかそれ以上に「幸せ」「好き」と睦み言を交わし、 陳腐な言い方になるが時の経つのも忘れて愛し合った。 それでもどうにか据え膳食わずを貫いたのが少し不服だったようだが。 帰り際、絶対にあと三年ももたせないんだからと宣言する加奈子に、敗北の予感が脳裏をよぎる。 俺の彼女がこんなに小悪魔なわけがない おわり
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/11-14 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 「…………うっ」 ジリリリリッと、けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音がうらめしい。 まだ時差ボケが残っているせいか身体がだるいが、このまま二度寝をするわけにはいかない。 この俺高坂京介は妹の桐乃の身を案じて、数日前に桐乃が留学しているアメリカまで飛んでいき、見事説得に成功して数日後には日本へと兄妹そろって帰国した。 帰国直後の空港には黒猫が待ち構えていて、開口一番に桐乃と憎まれ口を叩きあっていた。その様を傍で見ながら、あぁ桐乃が帰って来たんだなぁとニヤニヤしていると、桐乃と黒猫二人から声を揃えて「キモい」と言われてしまい、俺は苦笑するしかなかった。 せっかく来てくれた黒猫をそのまま帰すなんて野暮なことは出来ないので、外で待っていた親父の車に乗せて送ることにしてやった。 親父は初めて生で見たゴスロリ衣装を身に纏う黒猫に一瞬言葉を失ったが、少しずつオタク業界の知識をしっかりと取り入れているので流石にその場で卒倒するまでには到らなかった。 桐乃の趣味を認めさせるために写真では一度黒猫の写る姿を見せたことはあったが、一般人には多少刺激強い格好だったかもしれない。 黒猫も帰国初日から我が家に来て久しぶりの家族水入らずを邪魔するようなことはせず、我が家に到着すると後は自分の足で帰るとだけ言ってそそくさと帰ってしまった。例の「呪い」についてお礼を言おうかとも思ったが、なんとなく止めておいた。 べ、別に恥ずかしがってるわけじゃないだからな! 思い出しただけで顔真っ赤とかそんなこともねぇから! ……そこぉ、なにニヤニヤしてんだこらぁ。あんましそんな暖かい目で見守ってると、終いには泣くぞ。 まぁそんなことは置いといて、アメリカから帰国した俺と桐乃を家で待ち構えていたものはお袋とお袋の努力の結晶が垣間見えるご馳走の数々であった。 お袋も桐乃が帰ってきてくれてやはり嬉しかったんだろう、俺の誕生日の十倍は豪華な食事を用意していやがった。正直なところとても食いきれる量ではないのだが、そんなことは誰に気にせず久しぶりの家族四人揃って食卓に座り食べることになった。 食事のあいだ桐乃は少ししかアメリカ留学の話題には触れなかった。途中で諦めて帰ってきたという気持ちがやはりどこかであるのか、その話題についてのことを言うとわかりやすいまでに言葉が詰まっていた。 俺も親父もお袋もその話についてはあまり触れないようにし、俺が代表で桐乃の心が落ち着いたてから話したくなってから話せば良いと言っておいた。 それを聞いた桐乃がしおらしく頷いて素直に「ありがとう」と言うもんだから、その可愛らしさに俺は感涙しかけてしまった。 絶対にシスコンと呼ばれること受けあいであったので、『あぁ、俺の妹はこんなに可愛いかったのか』という心の中から沸いたツイートは、一生俺の心に秘めておくことにした。俺の脳内なう。 その後はただ笑って話していたことしか覚えていない。 年に一回見たら十分であった強面親父の笑顔も、この日は腐るほど見せられた。 さて、そんな大団円が開かれていたのがつい昨日の出来事。昨日の今日で俺もいろいろとあったので、今日は一日家でゆっくり休もうかとも考えていたのだが、なんとも間が悪いことに昨日は日曜日だった。 つまり今日は月曜日で平日。早い話が俺は学校へ行かねばならんのだ。 元々俺がアメリカに行くと決めた勢いそのままに親父が許可をくれたので、冷静に考えれば俺はアメリカに居た数日間高校を休んでいたことになる。 警察に勤めている真面目な親父がこれ以上体調を崩しているわけでもないのに、学校を休ませてくれるはずもなく、昨日の夜に上機嫌な笑みを浮かべたまま明日は学校に行けよと釘を刺されてしまった。 親父よ、そんな微笑みを浮かべながら忠告しないでくれ。真顔で言われるより怖いから。 まぁそんなわけで俺は未だに気だるい身体を何とかベッドから起こし、学校へ行く準備をし始めた。 「おはよう親父、お袋」 「あぁ、おはよう」 「おはよう京介」 食卓には新聞を広げる親父の姿とお茶をすすっているお袋の姿があった。 テーブルに並べられている料理は朝食にしてはとても豪華……もとい昨日のご馳走のあまりものだ。 お袋は朝食作りでサボタージュしたというのに俺は真面目に学校である。しかしいつもより頑張った朝食のように見える不思議ッ! じゃねぇよこのやろー。レンジで温めただけじゃねぇか! それでもいつもより箸が進むペースが速いので、文句を言えた義理じゃない。 あぁそうだよ、箸が進むペースも速いから自然と家を出る時間も早くなったさ。これじゃ欠席どころか遅刻すらしそうにないぜ。 ちなみに桐乃はアメリカ留学中も日本の義務教育制度に従って中学三年生へと進級していて、今日は月曜日なので中学校があるはずなのだが、手続きの都合上2~3日休みらしい。 昔は桐乃との待遇の差に泣いたもんだが、やつが帰ってきて早々それを思い切り突きつけられるとは思わなかったよド畜生。 「京介。学校には家庭の事情で数日間欠席すると伝えてある。学校に行ったら先生方に誤解の無いよう話をするのだぞ」 「わかった」 一晩明けてもニヤニヤが抜けていない親父に少々不安を覚えながらも、俺は短く返事をして食卓から立ち上がると真っ直ぐ玄関へと向かった。 「いってきま~す」 玄関の扉を開けてやる気なさげにそう言うと、お袋から小さく返事が来た。 やれやれ朝食作りをサボタージュしてんだから朝の見送りぐらいしてほしいもんだね。 あーあ、こんな日には俺の心のマイ・スイート・エンジェル・あやせたんといっしょに登校したいもんだぜ。フヒヒ。 ……あぁん? 黒猫といっしょに……なん、だと……? コホン、諸君よ。もうそれは一旦勘弁しといてくれねぇかな!? ただでさえ桐乃を連れ戻すために燃やしていた闘志の炎が落ち着いて、ようやく身体の熱が下がり始めてるってのによ。また俺のお熱が上がっちゃうだろうが! あぁ、もうさっさと学校行くぞ学校! ……あぁん? だから、別に一秒でも早く黒猫に会いたいから行くんだろとか言うなそこ! 聞こえてるぞ!! 学校に着いた俺はまず職員室へと行って、担任に今日からいつも通り授業に出席する旨を伝えた。 担任は心配そうな表情を浮かべながらも、俺の言葉に少し安心したようだった。 まぁ受験を控えた三年生のこの時期に、家庭の事情で欠席しますと俺から直接ではなく親から連絡されれば、否が応でも教師側には緊張が走るだろうさ。 その家庭の事情が、アメリカ留学している妹が心配で心配で仕方ないから説得をし帰国させるという事と知ったら、 一体どんな顔をされるだろうかと思いながら、俺はその事情の内容についてはぼかしを入れながら話をした。 担任も俺がわざと内容をぼかしているのを話しづらい事情があるのだろうと悟ったらしく、細かい内容についての追及はせず、ひとまず安心したと笑顔を浮かべながら俺を解放した。 帰国直後の疲れが抜けていない俺はこれ以上の精神的負荷がかからなかったことに歓喜した。 長々とめんどくさく追及される可能性もあったし、実際にそうなっていたら相手の追及をかわすのはとても骨が折れる作業だったに違いない。 俺は軽い足取りで職員室を後にして、数日振りにのぼる校舎の階段を一段一段踏みしめながら我が教室へと入っていった。 「おーっ、大丈夫だったか高坂?」 「あぁ……まぁいろいろとあったが大丈夫だ。もう問題ない」 教室に入ると一番に赤城が話しかけてきた。柄にもなく心配そうな面しやがって、ちょっと嬉しいじゃねぇか。 ……しかし、今この胸に浮かんだ喜びは絶対口にしないことにしよう。 こいつの妹の瀬菜が聞いたらまた変な妄想で悶えるに違いない。 何度か見たことあるが、あいつの眼鏡の下に浮かぶグヘヘと笑う表情は思い返すだけで背筋が震えそうになる。 偏見を無くそうと思えばそういう方面にも慣れればならないのだろうが、逆に慣れてしまう方が問題の気もするので難しい。 …………ん? ふと瀬菜の顔を思い浮かべたとき、どことなく今の自分に違和感を覚えた。 アメリカから帰国してようやく普段の日常に戻ったのに、まだ俺が本調子じゃない気がするのは単なる時差ボケではあるまいに。 瀬菜かー、瀬菜と言えば……やっぱしあの巨にゅ……よりも先に眼鏡だな眼鏡。うん、ビバ眼鏡である! しかし俺にとって眼鏡といえばやっぱり。 「あれっ、そういや麻奈実はどうしたんだ?」 やれやれ、眼鏡を思いうかべてようやく麻奈実を思い出すとは、俺も随分疲れがたまっていたらしい。 冷静に考えてみれば今朝は登校するときも会わなかったし、普通数日間学校を休んだ後に学校へ復学したらまず一番に話すのは麻奈実だろうが。 麻奈実という俺の中での絶対的不動な地位にいるあいつは、俺にとっての心のオアシス、隣に居るだけでその場所が癒しの空間となりえる幼馴染だ。 そうか、俺が本調子じゃないのは数日間一言も麻奈実と会話をしていないからだ。そうだそうに違いない。 しかし麻奈実を探そうと教室中を見回してみるが、その姿はどこにも見当たらない。 すると赤城が驚いたような表情で俺に迫ってきた。 「えぇっ? いやっ、それは俺が言いたかった台詞なんだが……」 「はぁ、なんだそりゃ?」 まじめな声を出すな息を吹きかけるな顔が近いんだよ気色悪い。 赤城の驚いた表情に驚きたいのはむしろ俺のほうである。 俺が言いたかった台詞だと。なんだ、麻奈実に何かあったのか? 「……いや、知らないなら良いんだ」 「良くねぇよ。俺が休んでる間に麻奈実に何かあったのか?」 「いやまぁ大したことじゃないんだが。田村さんも学校休んでんだよ」 「いつからだ?」 「お前が家庭の事情で休み始めた日から今日までずっと」 なんてこったい! せっかく平和な日常に舞い戻ったと思っていたのに、 その俺の求めるいつもと変わらぬ平穏平和な日常をその身体で体現しているとも言える麻奈実が学校を欠席しているだと。 アメリカに行っている間は連絡をとるほど心の余裕は無かったし、帰国した昨日もいろいろあって麻奈実の近況を知るすべなどなかった。 「だからさ、みんなで噂してたんだよ。お前と田村さんがかけおちでもしたんじゃねぇかって」 「はぁ!? なんでそうなるんだよ!」 その発想が一番の驚きであった。 確かに麻奈実との仲はすこぶる良好であったが、二人が同時のタイミングで長めの欠席をしたらかけおちした勘ぐるとかおかしだろそれ。 あーそういえば前に俺と麻奈実はクラス連中からすれば付き合っているようにしか見えないらしいな。 ちくしょう。こうなったらクラス中に広がる朝の小さな喧騒も、 麻奈実とかけおちしたはずの俺が一人で学校に来ていることについて、ひそひそと論争しているように思えてきたぜ。 ちょっとした男女の友情をすぐさま恋愛認定とか、発情期の犬かって話だ。 「良いか赤城。もう一度言っておくが、麻奈実と俺はそういう関係じゃないんだ」 「へいへい、わーったよ。そういうことにしとけば良いんだろ」 「だーかーらー」 あーあ、もうこの先は聞いてないな。そういう顔してやがる。 やれやれと思いながら俺はいたしかたがたなく麻奈実が来るのを期待して、 ホームルームが始めるまでの時間を赤城とのたわいも無い会話で過ごすが結局麻奈実は担任の先生が教室に入ってきても登校してくる気配は無かった。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/34-36 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない それから日中の授業はどうにも集中できず時間だけが流れ、とうとう放課後となってしまった。普段から特別集中しているわけではないが、今日は授業中にいつ麻奈実が来てもウェルカムな対応が出来るよう身構えていたのだ。 と言っても、特別な対応が出来たわけでもなければ、それをしようとも思っていない。 ただ数日振りに、いつもと変わらぬ俺らの普通の会話をしようと考えていた。 たまたま同じ日から休んで、たまたま同じ日数だけ欠席し、たまたま同じ日に登校してきたとしても、お前はきっと「すごい偶然だよね~」と、ほんわかな微笑みを浮かべながら言って、その後はいつもと変わらぬ取り止めも無い会話が始まっている。 お互いに何で休んでたのか話して、きっとまた無茶な行動に出てた俺を麻奈実が笑い、きっといつもと変わらぬ他人からしたらどうでも良いようなことで休んでいたであろう麻奈実を俺が笑い、じゃあ今度授業を休んでいた間の穴を埋めるため勉強会を開こうと話をしていただろう。 それが俺と麻奈実のいつものパターン。きっと俺たちが死ぬまでこの穏やかな流れは変わらない。 一時間目からじゃなく授業の途中から遅刻でも良いから来てほしかったのだが、どうやら麻奈実は本日も欠席らしい。 休み時間には麻奈実の携帯に何度も連絡を入れたのだが電話が繋がる気配は無い。 帰りのホームルームの終了後担任をつかまえて聞いてみたところ、麻奈実の欠席理由は体調不良だそうだ。 うちの担任は朝の出欠確認で欠席者の名前は点呼するが理由まで皆に伝えることはしない。 なんだちくしょう、赤城の心配そうな表情は俺が家庭の事情で休んでいたからじゃなく、単純にお前の誇大妄想で俺と麻奈実の関係がどうなったかが気になって仕方が無かっただけかよ。俺の喜びと感動を返せコノヤロー! しかしながら、そうなると今日の放課後の予定を大幅に変更する必要がある。 もし麻奈実が途中からでも来てくれれば、放課後はゲーム研究会に顔を出すつもりだった。 俺の出来ることは黒猫と瀬菜の間に入って二人の創作物の小さな手伝いをするぐらいのことだが、ちゃんと入部届けを出している正式な部活なので、一応短期の休暇を取った後は顔を出しておくべきだろう。 だが麻奈実の欠席理由が体調不良となれば俺はそちらにも行かねばならない。ただでさえ日曜を挟んでまで学校を病欠するほどの風邪を引いたのに、俺は一回も麻奈実のお見舞いに行けていないのだから。 お見舞いに行けなかった理由が、アメリカに行っていたからなどというぶっ飛んだ内容であることを麻奈実は知らないし、なぜ来てくれないのだろうと不安になっているかもしれない。 まぁ麻奈実のことだから、お見舞いに行ったら行ったで「風邪がうつるから来なくて良かったのに~」と、俺に気をつかいっぱなしの状態になったかもしれんが。 正直なところ休み時間にかけた電話の返事がないのも気になる。ただの偶然なら良いが、電話に出る余裕も無いほど麻奈実が衰弱している可能性も捨てきれず心配で仕方無い。 もし本当にそうだったら、俺はアメリカの出発と同じタイミングで麻奈実を襲った間の悪い病原菌を全力で罵倒し、駆逐方法を模索しウィルスとの戦争に取り掛かるだろう。戦争だ、一心不乱の大戦争だ。 とにかくこうなれば麻奈実の家には何が何でも行かねばなるまい。 だがゲーム研究会の方も何らかの挨拶だけはしておこうかとも考えている。 はてさてどうしたものか。 麻奈実が気になるので一秒でも早くどちらかの行動に移りたいのだが。 そんなことを考えながら教室の机で帰りの支度をしていたとき、俺はふと誰かの視線を強く感じた気がした。 なんだこれは……背中にひしひしと伝わってくるこの熱視線。まさか俺のマイ・スイート・エンジェル・あやせたんがわざわざお疲れの俺を癒しにきてくれたのか! よっしゃあやせたんが癒してくれれば、桐乃のどんな命令だって全力全開で取り組めるぐらいまで体力が回復するぜフヒッサー!! などと実にくだらない寸劇を頭の中で繰り広げながら、ふと視線を感じた教室の後ろのトビラの方に振り向いてみると、そこには俺の方をうつむき加減のジト目で睨んでいる黒猫の姿があった。 「…………よう」 「…………っ」 黒猫と俺の目と目が合う。俺がゆっくりと片手をあげて挨拶する。一瞬の間を置いて、黒猫が顔を赤らめながらぷいっとそっぽを向いてしまった。 ぬわー。これは……俺は一体どう対応すれば良いのだろう。黒猫の例の『呪い』を受けてからこうしてあいつと直に会うのは、空港でやつが桐乃の帰りを待ちわびていた昨日を加えて二回目だ。 しかし昨日は桐乃の帰国ということもあってそれどころではなかったが、今こうして冷静に対峙してみると何とも言えぬ恥ずかしさがこみ上げてくる。 そこ、ヒューヒューだの何だの囃し立てるんじゃねぇ! ……えぇ? 誰も何も言ってないって? ……こらそっちの傍聴席! 黒猫フラグキタコレとか言って盛り上がるんじゃない! ……はい? みんな静かにしてるだと? …………だぁぁぁぁぁああああああああああああああ! 何か言えよ盛り上がれよ騒ぎ踊り狂えよ! そんな固唾をのんで見守るんじゃねぇ! 冷やかされるより恥ずかしいじゃねぇかゴラァ!! くっ……し、しかしだな。こ、ここはお、俺が勇気を出す場面だろうよ。そうだ、まったくもってそうだ。 平穏な日々を暮らす平凡な一男子高校生に、あんな厄介な『呪い』なんてかけてくれやがってよう。俺がへこたれたら身体中から出血する『呪い』だと? 怖くて怖くて即日アメリカ行きだったんだぞ。 そんな悪いことする猫には俺からしっかりとしたしつけが必要だ。 机の中にあった残りの教科書を無造作に学生カバンへ詰め込むと、俺は威勢よく闊歩して黒猫の眼前に立つ。 ああちくしょう、勢いよく近づいてきた俺に対してビクッと震えるあたかも子猫のような姿が可愛いぜ。一気に俺の心にあった勇気が吹き飛んでって、残ったのは緊張だけじゃねぇか。 「……ぉ、おぃクゥロネコォ」 「な、なにかしら……」 おうおうおう。いつも言いなれてる黒猫のイントネーションすらおかしくなってるぜ。 まるでとある警部をおちゃらけて呼ぶときの大怪盗三世のようだぜとっつぁ~ん。 黒猫のやつはいつもの低い声を頑張って出しているが、明らかに逸らしたままの視線が泳いでやがる。 「……いや、あのな」 「…………」 だぁくそ二の句がでねぇ! 当たって砕けたとはまさにこのことか! せっかく勇気だして踏み出した一歩も、踏みしめた先に1ミリも隙間無く地雷が埋められてたんじゃ意味が無い。 もはやそれは地雷原じゃなくて単なる地下爆薬庫だからね! 情けなくも俺が何も言えないこの状況を打開してくれたのは、実に可愛いらしい俺の後輩であった。 「の、呪いは……解けたわ、先輩。に、人間風情のくせに、なかなかやるじゃない……」 「お、おう……それぐらい当たり前だっつの」 「そ、そうね。ここはお見事とだけ言っておくわ。素直に喜びなさい」 「お、おう……フ、ヒッ、……フヒヒッて高笑いしといてやるぜ」 「ちょ、調子にのるんじゃないわよ! ……た、ただ一つだけ言っておきたいことがあるのだわ。その……せ、先輩には、今日部活に来てもらうと困るの」 「……えっと、そ、そりゃどういうことだ?」 「の、呪いの影響なのだわ。そ、そのせいで……と、とうぶん先輩と、普通に話すことができないの。だ、だから……部活のときいろいろとまずいわけ」 「……そ、そっか。それはまずいな。その影響とやらが無くならないとまずそうだな、うん。そういやさっきからやけに話づらいと思ったら、それが原因か」 「えぇそう、そうなのよ。で、でも明日ぐらいには、というか明日までには何とかなるよう今夜儀式をするから! だ、だから明日まで部活に来るのは待ってほしいの……。部長には私の方からうまく言っておくから」 「わ、わかったぜ。……じゃ、じゃあまた明日な」 「え、えぇ……また明日」 そう言いきると、黒猫はいじらしくも何かに驚いた猫のように素早く身を翻して廊下を走り去っていった。 さて、先ほどの恐ろしく無駄の多い文章をものっそい手短に要約するとしよう。 まだ恥ずかしくてお互いに話すのも間々ならないし、一日だけど日を置いてからじゃないと目も合わせられません。だから今日は部活に来ないで下さい。 うん、おそろしく簡潔にまとまった。実に的確な要約だ。 そうとなれば後腐れも無く麻奈実のお見舞いに行けるってもんだ。 あぁもう駄目だ、ここ最近こういった普通じゃないことの連続で、俺の身体は思わずオンドゥル語が飛び出してしまいそうなほどボドボドダ! やっぱし俺は普通が良い。あぁ、ますます麻奈実が恋しくなってきたぜ。 やれやれ。この調子で麻奈実の家に行ったら、逆に俺が疲れを癒されることになりそうだ。 一秒でも早くお前の顔が見たいぜ。出来れば風邪でうなされた寝顔ではなく、ほとんど治りかけの穏やかな顔で居てくれよ。
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http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/85-88 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 俺は自宅を華麗にスルーして歩いて行き、商店街のなかにある一軒の店の前にたどり着いた。 いつもなら麻奈実と雑談しながら歩いて到着するのが、この俺の眼前にある和菓子屋田村屋なのだが、当然のごとく今日は俺一人で静かにここまで来た。 やけに学校から田村屋までの距離が短く感じたのはいつもの雑談が無かったからだろう。 いや、決して早歩きで来たから短く感じたとかないからね。途中で少し走ったのも赤信号に変わりかけた横断歩道だけだからね。 べ、別に寂しくて一秒でも早く着きたかったとかないんだぞ! ……はぁ、最近俺は自分で自分の首を絞めることがやけに多くなった気がする。 くやしい…! でも…感じちゃう! という性癖を持った記憶は無いのだが。 まぁくだらない言い訳はここらへんにしておこう。 あぁそうだよ。高校生にもなって放課後に全力疾走だ、文句あっか。 やっぱり素直に心配なわけだ。どんなに落ち着こうと考えても身体は正直だ。一秒でも早く麻奈実を見ていろんな意味で安心したかった。 いつ見ても二十一世紀から取り残されたかのような古風なたたずまいをしている田村屋の店内を覗いて見ると、珍しくカウンターのところで店番をしているロックの姿があったので俺は勝手口に回らず直接正面から田村屋に入ることにした。 「おうっす、ロック。久しぶりだな」 「……おー、あんちゃんか」 こいつとは久しぶりに会ったがいつの間にかヘアースタイルを五厘刈りで定着させたらしい。しかしながらいつもと比べ様子がおかしい。 いつものこいつはどれだけ売っても売れ残るほどのハイテンションの持ち主だ。それなのに今日は俺が話しかけても反応は鈍い。 おまけに旧式のレジスターがある会計台に突っ伏した状態で、顔をあげるようともしない。 なんだなんだ、ロックよお前まで風邪かなんか引いたのか? まさか俺の知らない間に田村家では何か凶悪なウィルスが大横行していたというのか。 今にも五厘刈りから毒キノコが生えてきそうなほどのどよんどした空気が流れる店内であったが、それまで半死のような状態であったロックの身体が突然ビクリと動き、がばぁっと顔を上げる。 「……ぁ、あ、あ、あああんちゃん!? 本当にあんちゃんなのか!!」 「うぉっ!? なんだ、なんだってんだよ急に」 突然死者が目覚めまるで親の仇を見るかのような目で睨みつけてきた。なんだロックのやつ元気じゃねぇか。 「あ、あんちゃん! もう、お、おっ、おっおっおっおおっ……」 「おっ、落ち着けロック!」 いやいや冗談じゃなくやばいって! 瞳孔開いんてじゃねぇっのって勢いでロックの両の目が見開いてやがる。 しかも呂律も回っていないもよう。第一おっおっおっを言いすぎだろ。 …………なんだ? まさかこいつこの後、「おえぇぇぇっ!」つって吐くんじゃねぇんだろうな!? いやもうなんかそんな空気がするぞ! この奇行というかおかしい振る舞いは体調がおそろしく悪いゆえの行動としか思えない。 これは実にまずい。マジで泣きたい五秒前! だがしかしこのまま何もしないほどあきらめの悪い俺ではなく、バケツかなんかねぇのかと店内を見回した。 そうしてロックから目を離した次の瞬間、俺にとって想定外の出来事が起こった。 「遅えぇんだよあんちゃんのバカヤロー!」 凄まじい音量の罵倒が俺の両耳に鳴り響く。よもやロックに本気でバカ呼ばわりさせる日が来ようとは。 さっきまでのあれは「遅えぇんだよ」って言いたかったのね。吐しゃ物と共に「おえぇ」じゃなくて良かったよ。 ただし俺の顔には思いっきり叫んだロックのツバが大量にとんできたけどね。 「バカはてめぇだコラァ! 汚えぇじゃなぇかよぉオイ!」 俺はただちにカウンター越しにいるロックの五厘刈り頭に対してヘッドロックをかけてやった。 「あいたたたぁっ! あんちゃんロープロープッ!!」 身体がカウンターの向こう側から引っ張られて大変痛々しいことになっているが、いつもかけているプロレス技と同じくらいの力加減にはしておいてあるので大丈夫だろう。さぁ俺にかけたツバと同じ量の涙を流してもらおうかロックよ。 しかしながら、さっきのロックが叫んだ内容の意味は理解できたぜ。 麻奈実が体調を崩してずっと学校を休んでいたのに何でもっと早くお見舞いに来ないんだって言いたかったんだろう? なんだかんだで姉想いなやつである。 でもそのことについて麻奈実からちょっとした小言を言われるならまだしも、お前にマジギレされるのはお門違いだろうが。 「あのなぁ、俺にだっていろいろ都合ってもんがあるんだよ。特に最近はいろいろあってな、今日になってようやく一段落着いたところなんだ。それで、麻奈実の調子はそんなに悪いのか? ことと次第によっちゃ今すぐ麻奈実の部屋で看病しはじめる気マンマンだから、さっさと現状を教えやがれ」 俺は長々しくそう言い終わると同時に、ロックにかけていた技をほどいてやる。するとロックは技から開放されたことよりも先に、重要なことを思い出したと言わんばかりの表情で俺に詰め寄ってきた。 「そうなんだよ! ねーちゃんがおかしいって言うか……なんつうかさぁ、とにかく変なんだよ!」 まじめな声を出すな息を吹きかけるな顔が近いんだよ気色悪い。本日二度目のこのセリフである。 それにしてもロックがこれほど狼狽するとは珍しい。どうやらすぐにでも麻奈実の様子を見に行った方が良さそうだ。 「これロック、うるさいわい! ……って、きょ、きょ、きょ、きょうちゃん! お、お前さんって奴はお、おっ、おっ、おっ、おっ、おおぉっ!」 「まじめな声を出すな息を吹きかけるな顔が近いんだよ気色悪い。それと遅くて悪かったなジジイ。ロックみたいに叫んだら、奴と同じ目にあってもらうぞ。それで、ジジイの目から見て麻奈実の様子はどうなんだ?」 おそらく今の麻奈実より元気であろうご老体が店の奥から出てきて同じ事の繰り返しになりそうだったので釘を刺しておく。 俺の目の前までわざわざ迫ってきた麻奈実のジジイは、喉元まで来ていたであろう叫びを押さえこみながら、俺の質問にしっかりと返答してきた。 「麻奈実の様子がおかしいって言うか……なんというか、とにかく変なわけよ!」 「ロックの言ったのと同じ情報しか含まれてねぇ!?」 「えぇ!? ワシってばロックと同じこと言ったの? マジでショックなんですけど!」 こいつらは本当に家族みんな天然揃いだなオイ! あーあ、ロックが「えっ!? 爺ちゃんが俺と同じこと言ったよ。マジでショックなんですけど!」って顔をしてやがる。 しかしまぁ、こんなところでこの二人のリアクション芸に付き合ってやるほどの暇も心の余裕も無さそうだ。 ひとまず俺は爺さんが出てきた居間と店内をつなぐところで、俺の顔を見て天の救いを求めるかのような視線を向けてくる麻奈実の親父さんとその後ろにいる婆ちゃんに小さく会釈をした。 田村家の居間には買い物に出かけた母と麻奈実を除いた四人と俺が机を中央に皆それぞれの顔が見渡せるように座る。 婆ちゃんが入れてくれたお茶を少し口にするが、いつもより温度が高い気がしたので冷めるのを待つことにしよう。 居間に座った俺は役に立たないロックとジジイを尻目に、親父さんから聞かされた話を頭の中で整理しながらある一つの結論にたどり着いた。 「それって……引き篭もりってことか?」 麻奈実の親父さんから聞いた話によると、俺がアメリカに飛び立った日から麻奈実の様子はおかしくなったらしい。家に帰ってくるやいなや何も言わず二階の自室に飛び込んでいったそうで、何か急ぎの用でもあったのかとさして誰も気に止めなかったらしい。 しかし、夕飯の時間になっても姿を見せずロックが呼びにいったが部屋から出てくる気配は無く、麻奈実が部屋から出てくるのはトイレか風呂に入るときだけだそうだ。 「まぁ今時の言い方だと、それが一番正しいんだろうねぇ……」 俺の言葉に婆ちゃんが困惑した表情でそう返した。 それにしても麻奈実が引き篭もりをするなんて俺は未だに信じられない。 俺の知る限り麻奈実は精神的に病んで病んで参っちまうなんてたちじゃないし、俺がアメリカに行った日から引き篭もりはじめたというのだから、あいつが何かもの凄く気の病むような出来事が起こった記憶も無い。 「本当にどっか身体が悪いってことはないんだな?」 「それは間違いないってあんちゃん。みんな心配して病院に診てもらおうかって言ったら、ねーちゃんが部屋の中からだけど『身体は本当に大丈夫だから!』って、すっげぇ強く言ってきたしさ」 「ふーん……飯はどうしてるんだよ? トイレと風呂のときしか出てこないんだろ?」 「お盆にのせてねーちゃんの部屋の前に置いとくんだよ。……でも、ほとんで食ってないみたいだ。ご飯もおかずも半分以上残してるし」 「なんだよそりゃ、やっぱ病気なんじゃねぇのか? 無理矢理にでも部屋に入って、様子見たほうが良いだろうよ!」 「それが無理なんだよ。ねーちゃんがどうしても一人になりたいって言うんだから。一回だけ無理矢理入ろうとしたんだけど、そしたらねーちゃん中から凄ぇ声で絶対入っちゃだめって叫んだんだ。俺、ねーちゃんがあんな大きい声出すの初めて聞いたよ……」 「むっ……そうか。…………チッ」 あまりの苛立ちと歯痒さに俺は思わず舌打ちをしてしまった。どうやら今までには無いほど麻奈実は不安定な状態らしい。 実際にその声を聞いたわけではないが、その異常さは話だけでも片鱗が伝わってくる。 なんせこんなしょぼくれて心配そうな表情のロックは初めて見たからな。 なぜこんなことになってしまったのか、俺にはまったく思い当たる節が見当たらない。それ故に明確な改善の方法も思いつかない。 しかも俺がアメリカに行った日に引き篭もりはじめるという、まるで悪魔的に絶妙なタイミングである。 原因がわからなくても、引き篭もりはじめた初日から毎日通っていれば麻奈実は今頃普通に過ごしていることが出来たかもしれない。 例え引き篭もりが続いていたとしても、麻奈実の心に何らかのアプローチはかけれたはずだ。 俺のアメリカ行きの件を麻奈実は知らないから、結果的には俺がずっとあいつを放置していたことになってしまう。というか、麻奈実にそうとられてもおかしくない。いや、おそらくあいつはそう思っているだろう。 今日の昼にかけた電話に出なかったということは、散々知らんぷりを決め込んでおいて何を今更という許せない気持ちだったに違いない。 そう考えたら、俺にはこの場にこれ以上一秒でも長く留まっていることは本能が許してくれなかった。 「……行ってくるぜ。麻奈実の部屋に」 すっかりぬるまってしまった婆ちゃんが入れたお茶をズズッと一気飲みをして、俺は力強く立ち上がり居間から廊下へと歩きはじめた。 気づいたことがある。どうやらお前の入れてくれたお茶じゃないと、俺の口には合わないらしい。 田村家の面々は俺を止める気は無い。むしろこの未曾有の危機を唯一解決できるかもしれぬ英雄の出陣を見守る平民のように、期待の込められた視線を送ってきているようだ。 他人に話したら、家族すら入り込む余地が無いのにたかが幼馴染が何になると鼻で笑われるかもしれない。 だがな、そんなことを言う輩には俺からはこの一行をメール便で百通ぐらい送ってやる。 たかが幼馴染、されど幼馴染だ。 その一行は、言うなれば長年培ってきた俺と麻奈実の絆がなせることだろう。 想像してみろよ。大して変わった会話も無く、いっつも同じようなゆったりとしただけの日々を何年もの間過ごして、飽きることなく大学までいっしょに行こうとしているんだぜ? しかも大学卒業後でも、きっと今までと変わらない日が続くと心のどこかで思い期待している。 悪いがもう俺と麻奈実はすでに家族みたいなもんなんだよ。 ……あぁ、心の中でとはいえ何て恥ずかしいこと言わせやがる。こんな状態にならねぇ限りと二度と言わないからな。 田村家の二階にある麻奈実の部屋に行くために階段を上りながら、俺が行けばきっと大丈夫などとまるで暗示か何かのようにずっとそう唱えていた。