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ゆっくりおうちせんげんの末路 短期出張を終え久方振りに我が家へ帰るとそこは、ゆっくりの巣窟になっていた。 親ゆっくりまりさ、その番のれいむ、子まりさ2匹に子れいむ1匹に赤まりさと赤れいむがそれぞれ2匹 計9匹のゆっくりに私邸は物の見事に荒らし尽くされており、散らばり破られた本、カーペットやカーテンは引き千切られ 低い位置に置かれた日用品は散乱し、ベッドの上や床には無数のうんうんとしーしーがぶちまけられている。 「ゆっ!ここはまりさのおうちなのぜ。ゆっくりしないででていってね!」 「ゆゆ、ゆっくりできないにんげんさんはでていってね。ここはれいむたちがさいしょにみつけたおうちだよ!」 あまりにも無残な姿に変わってしまったマイルームと出張の疲れが相俟って僕は呆然と立ち尽くしていると、 親ゆっくりがぷくーっと膨れてぬけぬけとこちらを威嚇している、その隣で、閉まっておいた芋かりんとうを満足そうに平らげ うんうんを捻り出している子れいむの「きゃわぃぃれいむがうんうんするねー♪」の 反吐が出る台詞に我に返った僕は溢れんばかりの怒りが音もなく爆発した。 「わ~い♪おちょらをちょんでるみちゃ~い♪」 「ゆゆっ!!れいむのかわいいおちびちゃんになにをするの!ゆっくりしないではなしてね!!」 「ゆ!!じじぃ、まりさはつよいのぜ!!せいさいされたくなかったらおちびちゃんをもとにもどすのぜ!」 とりあえず素早い動きでゆっくり回収用の収納ボックスに子と赤ゆっくり計7匹を詰め込む、 泣いている饅頭もいれば怒っていたり喜んでいる饅頭も様々だ。 まずは親ゆっくりに今日の鬱憤を晴らすべく蹴りつける、既に汚された我が家だ、餡子が飛び出したところでどうということはない。 「よくもまぁ、やってくれちゃって……謝罪するまでゆっくり蹴ってあげようね!」 「ゆぐっ!!……やべ、やべて……ぐぇ、ゆぐぇえええええ!!」 まずは親まりさから、蹴る蹴る蹴る、ひたすら蹴る。 箪笥の角を狙って、部屋の木板を狙って、時には天井を狙って、泣こうが喚こうが構わず蹴り続けた結果、 親まりさの顔面は見事にタコのように真っ赤に膨張し常時ぷくーっ状態になってしまった。 「ゆああああああ!!まりさになにをしてるの!!ゆっくりしないでやめてね!!」 「謝るまで蹴るよ、まだまだ蹴るよ!」 「ぐえっ!やめ……ゆげぇ!……やべでぐがさい!!……じぢ、おでぃいざん、やべで!!」 「お兄さんのゆっくりプレイスを乗っ取った悪いゆっくりは蹴り殺されてもしょうがないよね」 収納ボックス越しに親の無残な姿を見た子と赤ゆっくりたちは気付けば隅に身を寄せ合いガタガタと小刻みに震えている。 時折そちらに視線を送ると、目が合っただけで子れいむがしーしーを漏らしてこの上ない恐怖心を剥き出しにしている。 「ばでぃざぁあああああ!!おでぃいざん!!やめでぐだざい!!ばでぃざがしんじゃいまず!!おでぃざん!!!」 真っ赤な状態から中の餡子が透けて見えるほど黒ずんだ辺りで、番の親れいむが蹴るのをやめろと涙ながらに懇願するが僕は構うことなく蹴り続ける。 まだまだこんなことで僕の怒りは収まる訳がない、僕は一度蹴るのをやめるとオレンジジュースを取り出しもはや瀕死状態の親まりさにぶっ掛ける。 「こんなんで死なれちゃ困る、まだまだ続けるぞ!ゲスまりさはもっともっと壊れてから死なすよ!死ねったら死ね!」 「ま、まっでぇ!ゆ、ゆるじで……ぐだざい”……ばでぃざがわるがだってです、やべでぇ……ぐださい”……」 やっと謝罪の意思を見せ始めたのでとりあえず蹴るのをやめる、 全身痣だらけの親まりさはボロボロと眼から涙を流して床に頭を擦り付けた。 「おでぃいざんのゆっぐでぃぶでぃずを……の”っどっでじまっだのぼあやまでぃばず……だがらゆづじでぐだざい……」 蹴った最中に歯が欠けたらしく上手く発音できていないがどうやら謝罪したようだ、 僕は蹴る行為をやめると、身を降ろし親まりさの視線に合わせて満面の笑みを浮かべ 「許す訳ねーだろバーカ、くたばれ糞饅頭」 と、親まりさの願いを一蹴した。 「ぞ、ぞんな……どぼじでごんな”ごどい”う”の”おおおぉぉ」 流石にこれ以上やったら死んでしまう、もとより殺すつもりでいるが こんな簡単に死んでしまっては面白くない、僕はくるりと身を翻すと軽快なステップで親れいむと対峙した。 「ゆゆっ……お、おでぃざん?」 ただならぬ気配を感じたいのか、ずりずりと後ずさり壁際まで後退するれいむ、良く見ればしーしーを漏らしている。 更に汚れたところでどうということはないと思っていたが、真正面でそれを見せられて僕の鉄さえも溶かす怒りが更に沸騰した。 「れいむもお兄さんのプレイスを乗っ取った悪いれいむだね、おしおきされるべきだーよね?」 「ばでぃざぁあ!だ、だずげで!!おじおぎなんでざれだらゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!」 親れいむの右の揉み上げを乱暴に引き千切り、眼を狙って中指と薬指の間に親指を挟んだ痛み倍増の摺り切りパンチ、 横っ腹には全身全霊を込めたミドルキック 身体で表現できるありとあらゆる攻撃を繰り返し、親まりさと同等の状態になったところで僕は痛めつけるのをやめた。 「ゆ”ゆ”っ……までぃざだちはおうぢをあぎらべまぶ、ぼうおうぢにがえじでぐだざい”のぜぇ……」 「ゆぐぇ……で、でいぶも……あやばりばず、だがらおぢびじゃんをがい”ほうじであげでぐだざい”」 僕は笑顔を絶やさず二人の言葉に頷くと、収納ケースに歩み寄り一番奥の赤れいむを取り出し掲げた。 親ゆっくりたちのぶくぶくに膨れ上がった顔が僅かに安堵の表情を浮かべるが、 その淡い期待を踏み躙るかのようにぎゅうぎゅうと拳に力を込めていく。 「ゆぶっ!おきゃあしゃん……だじゅげでぇ!……い”だい”よぉ、ゆっきゅぢでぎにゃい”ぃい”!!!」 下腹部の餡子が僕の力によって押し上げられる。 赤れいむの頭部(?)は押し寄せる餡子がまるで風船のように圧の掛かった顔にさせた。 「ゆ”ゆ”!!おぢびじゃああああああん!!やででぐだざい!!でいぶはどうなっでもい”い”でず、おでがい”でずがら!!」 「僕のお部屋がうんうんとしーしーでぐちゃぐちゃなんだ、片付けてくれるかな?」 「ゆっ!わがでぃばじだ、かだづげまず、だからばでぃざのあがじゃんだけは、あがじゃんだげは!!」 「いいからさっさとやれ、早くやんねーとマジで潰すぞ」 「わ、わがでぃばじだ!や、やでぃばず、やでぃばずがらぁあああ!!」 ずたずたになった身体に鞭を打って親ゆっくりの2匹が散乱したうんうんとしーしーの前で立ち尽くす。 すると親れいむが振り返りこちらを見ると『ぞうきんさんをかしてね』と願い出た。 雑巾を知っていることから元飼いゆっくりなのかもと思いつつも、僕は握り締めた赤れいむをを更に握りを強めて言い放つ。 「食べて片付けてね、遅いと制裁しちゃうよ。主に赤れいむを」 「ゆ”!!でぃぶのあがぢゃんにひどい”ごどじない”でぇえええ!!だべばず、だべでかだづげまずがら!!ゆうっう……」 親ゆっくりたちが苦虫を噛む様な顔で排泄物をぺーろぺーろしている傍ら、 僕は子と赤ゆっくりが詰まった収納ボックスを開け、怯えるゆっくりたちに言い聞かせる。 「よく見ておくけ、きったねぇうんうんを食べてるのがお前らの親だ、人間様に歯向かった馬鹿で愚鈍で愚図で能無しで無能にして軟弱であさましくいやしいゆっくりだ。親があんなだからお前らは酷い目に合わされるんだぞ、ゆっくり理解しろよ」 「ゆゆっ!!おかーさんをわるくいわないでね!わるいのはくそじじぃだよ、ゆっくりしないでしね!!」 果敢にも、この子供らの中で恐らく一番の年長者である子まりさがぷくーっと膨れて僕を威圧している。 親の惨めな姿を見て何も学ばない、やはりゆっくりはゆっくりだ、 低俗で成長しない糞饅頭、決してこれは高貴な知性を持つ生き物なんかではない。 「そんなに親が好きなら真似させてあげようね」 人質ならぬゆっくり質、ゆ質として捉えた赤ゆっくりを持つ反対の左手で、 ぎらぎらとした反抗心を向ける長女の子まりさを摘むと適当にうんうんが広がったエリアに顔面から押さえ付ける。 うんうんをびちゃびちゃと跳ねさせながら、子まりさは息苦しそうに身体を震わせる。 「ほら舐めろよ。お前のかーちゃんがやってんだ、見習わなきゃいけないよね」 「ゆぐぇ!!やべでぇ!!う”んう”んさんとずーりずーりしだぐない”よぉお”お”お”!!!」 姉妹たちはさぞ酷い顔付きでニヤついているであろう僕を見て更に怯え、 子まりさの叫びも疲労困憊で虚ろなままうんうんを食べ続ける親の耳には届かない、 僕は子まりさが全身がうんうん塗れになったところで元のケージに戻してやった。 べちょっと不快な効果音と共に落とされた子まりさはよろよろと隅に固まった姉妹たちにゆっくり近付くが。 「おにぇいちゃんうんうんしゃんぬりぬりされちぇちぇくちゃいよ!ゆっきゅちできにゃいからちかじゅかにゃいでにぇ!!」 「まりしゃおねーちゃんがいりゅとゆっきゅちできにゃいよ!ゆっくちしにゃいできえちぇね!!」 「どぼじでぞうい”うごどい”うのぉ!!」 姉妹たちは子まりさの親の名誉を守ろうとして反抗した姿勢を称える訳もなく、 文字通り糞饅頭になった糞まりさを倦厭しありったけの罵倒を浴びせる。 親の姿を見て学習するという点に置いては糞まりさよりもそこで怯えている姉妹たちの方が賢いと言えるだろう。 そして暫く待っていると親ゆっくりたちが疲れ果て焦点の合わない目付きのまま、うんうんとしーしーの後始末が終わったと言い、 赤れいむの開放を要求してきた。 部屋を見渡すとこびり付いた物を除けば一通り片付いたようだった。 「うんうんざんもしーしーざんもかだづげばじだ……でずがら、でずがらどうがばでぃざのあがじゃんを……」 「分かった」 そう言って僕は右拳の力を込め、赤ゆっくりを――――握り潰した。 「ゆぎょるびょぎゅゆゆゆ……」 内臓物が放出される奇妙な効果音と共に餡子を強制的に吐き出す赤れいむ、 若干握りを弱くしておいたためにまだ意識はある、小刻みに震え最後の踊りをし始めた。 一瞬の出来事に唖然と硬直した親ゆっくりの前に潰れた子饅頭を置いてやると無言のまま縮んだ顎下の、 人間で言う尻の部分をぷるんぷるんと左右に降り実に情けない姿を眼下に晒け出した。 「残念だったね、あと5秒早く片付ければ赤れいむは助かったんだよ……お前たちか愚図だからだよ。ゆっくりりかいしろよ」 言うまでもないがどんなに早くうんうんの処理を終わらせたとしても僕は赤れいむを潰していた。 理不尽な言い分を押し付けるのはとても気持ちがいい、僕は言い知れぬ快感を抱きながら親2匹に向けて不敵に笑う。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”!!!!で、でいぶのあがじゃあ”あ”あ”んがああ”ああ”ああ”ぁああ”ああ!!!!!!!」 「ゆ”あ”あ”あ”!!ばでぃざのあがじゃんをよぐも!!よぐも!!!ぐぞじじい!!ゆっぐりしない”でじね!!じね!!!」 「あ”あ”~?そんなこと言っちゃっていいのかなぁ~?」 赤れいむを潰され激情した親ゆっくりの前で、残された姉妹を収納したボックスを僕は激しく揺さ振る。 ケース内の姉妹たちは圧倒的な脅威に愚図り一斉に泣き始めた、親ゆっくりにはさぞ身に響く音であろう。 怒りの感情に身を任せた二匹の親ゆっくりはみるみる表情が青ざめていく。 まだ残り6匹のゆ質が僕の手中にあると悟ると親ゆっくりは萎縮し、機嫌を伺い腫れ物を触るように痛々しい作り笑いを浮かべる。 「お、おでぃいざん……ば、ばでぃざがわるがっだよ!……ばでぃざのおぢびじゃんにばでをだざないでね!!」 「で、でぶもあやばるよ……ゆっぐりゆるぢでね……」 「駄目だよお兄さん許さないよ、もう1匹殺しちゃにおうね」 まだまだ精神的に追い討ちを掛けなければ気がすまない、僕は収納ボックスの蓋を開けて 先ほど糞塗れになった糞まりさ目掛けてその辺に転がっていたシャーペンを脳天から突き刺した。 「ゆぐえ”っ!!」 「でいぶのおねえじゃあんがああぁ”あああ”!!」 ボックス内は阿鼻叫喚の地獄絵図になった、脳天を突き破られグリグリと中身を掻き混ぜられる糞まりさ、 赤ゆっくりたちは少量の餡子を吐き、残った子まりさと子れいむも大きく口を開けて糞まりさから離れていく。 「ゆふえ!ゆふぇっ!!ゆがゆがが!!!」 ちょっとずつ、僅かに、最大限に痛みを感じさせつつシャーペンを押し込んでいく、 糞まりさも自身の置かれた状況を理解しているらしく大粒の涙を流し何かを訴えている。 糞まりさが言いたい事の察しはつくが、僕はわざと分からない振りをして横暴さを強調してやった。 「やべでぇぇえ”え”え”!!おぢびじゃんをゆっぐりざぜでぇえ”え”え”!!!」 「あははっ、こいつ痙攣してるよ、おい聞こえるかー?お前の頭の中を掻きまーぜまーぜしてやってるよ、おーい聞こえてるかぁ? 「あ”……ッ!ゆ”っ……!ゆ”……も……っど……ゆ”………が……」 「やべでぇえええ!!どぼじでぇ!!どぼじでぇえええ!!おぢびじゃあ”あ”あ”ん!!!」 ぐちゃぐちゃと強引に手首のスナップを効かせて振り回す、今にも飛び出しそうな糞まりさの眼は明後日の方向を見つめている。 もう身体のあらゆる機能の融通が効かなくなったようで、伸びた舌が頬にべったりとくっ付いている。 「はい、おしまい。さっさと死ねてよかったね」 無情な台詞を吐いて僕は全力でシャーペンを突き刺した。 中枢餡を抜けあんよを突き破り糞まりさは息絶え永遠のゆっくりへと旅立った。 「なんでぇ……なんでえ”!!……おぢびじゃぁん……おぢびじゃああん……」 ものの5分足らずで子を2匹も失った親ゆっくりは戯言を繰り返し絶叫している。 一頻り甚振ったことで満足を得た僕は、失意の親ゆっくりをもう一つの収納ボックスに強引に収めると、 今日の虐待をここまでと区切りを付けて汚れた居間を後にした。 部屋を抜けると後ろからすすり泣く様なゆっくりたちの声が響いてくる、実にいい気味だ。 明日はどうやって虐待してやろうかと心を躍らせて僕はいい汗をかいた身体を休めた――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 翌日の早朝、出張時の代休を使い仕事も休みな僕は元気良く居間に入室すると 収納ボックスで死んだように眠っているゆっくりたちを無理矢理叩き起こした。 一時の安息を妨害され恨めしそうに僕を見つめるゆっくりたち、僕は彼らの期待に添えられるように 『今日の虐待を始めます♪』と高らかに宣言した。 「おでぃざん……もうばでぃざだちをがい”ほうしてくだざい”……ぎのうがらおぢびじゃんだぢはなにもだべでないんでず!!」 「ゆっぐ……ごのままじゃおぢびじゃんだちがじんじゃいまずぅ!!」 親ゆっくりの言うとおり赤まりさと赤れいむはぐったりとしている、食べ盛りの赤ゆっくりにとって 昨日の夜から口移しで物を入れていないのは結構な空腹に当たるらしい。 僕は赤いっくりを消費期限が限られていると考え今日明日中に殺すことを念頭に置き、 親の言い分を華麗にスルーして電気ポットを取り出す。 コンセントを挿し電気ポット内の湯がぐつぐつと煮えたぎったところで、 収納ボックスに入った親まりさと赤まりさ2匹を取り出した。 「お前らよくみておけよ」 そう言い聞かせ僕は持っていた大福を紐で括り泡を吹くポットに浸からせた。 30秒程して引き上げると皮が破れ中の餡をどろりと吐き出した無残な大福がそこにあった。 能天気にその大福を欲しがる赤まりさ2匹を他所に何かを察した親まりさは唾を飲んだ。 「ゆっ……おでぃざん……どういうごどなの?」 「つまり、こういうことだよ」 大福に見惚れている赤まりさ2匹を僕は片手でひょいと摘むと、凧糸をゆっくりの口部に引っ掛ける形で紐を括った。 突然口に紐を通され全身を軽く縛られた赤まりさたちは呂律の回らない口調を更に悪化させて文句を述べている。 電気ポットを壁際に避けて、僕はゆっくり2匹がぶら下がった長い凧糸を壁のカレンダーを掛けるためのU字フックに紐を通す。 丁度湯気の沸き立つ電気ポットの上で赤まりさ2匹が宙吊りになる形だ。 「ゆがっ!……ごごどでぼあぢゅいひょ!!……おぎゃーじゃん!!だじゅげじぇ”!!!」 「ゆあ”あ”あ”!!おぢびじゃぁん!!!」 親まりさの顔が面白いほど強張る。 死の淵に立たされた、この場合吊るされた赤まりさたちを見て慌てふためいている。 僕は紐を引っ張ったり緩めたりして、赤まりさたちが上下するのを親まりさに見せ付けると、 紐の先端を親まりさの口にお構いなしに捻じ込んだ。 そうされてハッとなる親まりさ、もう気付いたようだ。 「まりさの赤ちゃんを助けたかったらずっとそうしていてね、離したらドロッドロッになっちゃうよ」 「ふがが、ふがゅ!……」\ 「ゆぇえええん!!あじゅい”よぉ!!あじゅい”ぃいい”!!」 電気ポットの湯気にやられて赤まりさたちが叫び紐が軋む、親まりさは顔面に汗を浮かべ噛んだ紐を決して離さないよう勤める。 これでまりさチームの準備は完了だ、あとは時間が経てば結果が出るだろう。 「僕が帰ってくるまで赤まりさが死んでなかったら開放してやるよ、ずっとゆっくりしててね」 「ゆが……っ!」 「それとこれは餞別だよ、お腹が空いたら食べてね」 僕は見本に使った大福の余りを踏ん張る親まりさの横に4つ、四方を囲い並べた。 一瞬だけチラリと親まりさがそれを見ると、本能には抗えず口から涎が溢れ出て紐が僅かに緩んだ、どうやら滑ってしまったようだ。 「ゆ”ゆ”!!!あぢゅい!!あぢゅいよ!!おがーじゃんにゃにじちぇるにょぉ!!!こにょやきゅちゃちゃじゅ!!!!!」 ギリギリのところで紐を絡み取ったので難を逃れたが、状況は悪化するばかり。 強制的に湯気に近付かされた赤まりさたちは湯気から身を守るために全身を揺らしヒーヒーと荒い息遣いで親まりさを貶した。 「されじゃあ僕らは出掛けて来るよ、まりさはゆっくりがんばってね」 僕は嫌味たっぷりに親まりさを励ますと親れいむ、子れいむを取り出し家を出た。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 東の空が僅かに色付いた早朝の街の風景、まだ人影は見えない。 僕は抱えた親れいむにゆっくり用のリードをきつく装着させ輪を右腕に引っ掛ける、 右手にはゆ質として子れいむを握り締め、残った左手には銀色の浅い輝きを放つジッポライターを装備する。 もし早朝マラソンに勤しむおじさんや新聞配達のお兄さんとすれ違っても ライターと子れいむを隠せば飼いゆっくりを散歩させる好青年にしか見えないだろう。 「ゆっ?……お、おにいさん……これからどこにいくの?……おぢびじゃんにいたいことしないでね!」 「これかられいむたちのおうちに行こうね、お兄さんをゆっくりしないで案内してね!拒否権はないよ」 「ゆっくりりかいできないよ!れいむはそこにはいきたくないよ!!!」 「そうか、じゃあ子れいむはどうなってもいいね」 「ゆぐっ……おでぃざん、でいぶをづよぐにぎらない”でぇ!!いじゃい”よぉおお!!」 最初に赤れいむを潰した要領で親れいむに命令をすると引き攣った表情を浮かべ親れいむは了承した。 僕は、僕の家をおうち宣言する前にゆっくりたちが住んでいた元ゆっくりプレイスに行くことを思いついた。 子ゆっくりを抱えての移動ならばそう遠くではない、近所の森林公園か神社跡地か、人間の足で1時間弱程度だと睨んでいた。 ちなみに赤ゆっくりを抱えて引越しをするということは特殊な状況下でない限りほぼ有り得ないらしい、 恐らく僕の家で産み落としたのだろう、僕は私邸で親ゆっくりたちの 気持ちの悪いアヘ顔と「すっきりー」と言っている場面を想像し益々不愉快になった。 「ゆぐぇ……おでぃざん、もうむりでず……ぢょっどやずまぜでぐだざい……」 色々と考え込んでいると親れいむがもう弱音を吐き始めた。 腕時計を見てもまだ10分も経っていない、昨日の虐待で受けた傷が疼くのだろうか。 「そうだね、じゃあ休んでもいいよ。休んでる間に子れいむを甚振るけどね」 僕は左手のジッポライターのカバーを開きフリント、発火ドラムを勢い良く回すと軽い火を宿させた。 揺れる小さな火を、握り締めた子れいむのあんよに向けじっくりと炙り始める。 「ゆ”ー!!あ、あぢゅいよ!!なにするのぉ!?でいぶのきゃわいいあんよさんをい”ぢめない”でえ!!」 「ゆううう!!おぢびじゃんにひどいごどじないでええええ!!やずみまぜんがら!!あるぎまずがらぁ!!」 「分かればよろしい、さっさと歩け」 「ゆうっう……ゆゆうっ……」 そうこうしている間にれいむたちの元ゆっくりプレイスに到着した、睨んだ通り近所の森林公園だった。 そういえばこの辺りにゆっくりが生息しているって近所のお喋りなおばさんが言ってたっけ。 僕は勝手に身体を休ませ始めた親れいむを蹴っ飛ばし、尋ねた。 「この付近でれいむの仲のよかったゆっくりはいるかい?」 「ゆ”ゆ”!?そ、そんなゆっぐりはいないよ、ここはでいぶだちだげがずんでだんだよ」 あからさまに嘘だ、眼が泳いでいる。 僕はジッポライターを再び叩こうとすると、その前に親れいむが折れた。 「いまず……ぱちゅりーがおどもだぢでず……いばもぎっどごごにいまず……」 「よし、じゃあ巣から誘き出せ」 「ぞ、ぞんなごどでぎるわげないでしょおぉおお!?おでぃいざん、ぱじゅりーにひどいごどずるぎでしょぉおお!?」 「あっそ、じゃあもう一回火炙りな」 「やでぃまず……でもぱじゅりーにひどいごどじないでね……」 はいはいと適当に相槌を打って、親れいむには「悪い人間が追ってきてる、早く皆で逃げよう」と垂らし込めと強要した。 親れいむの満身創痍な身体なら疑われることなく信用されるだろう。 リードを離し親れいむが古い木の根元に近付くと落ちた枝を漁った、 すると中からカモフラージュしたゆっくりの巣を発見し親れいむはおずおずとその中に入っていく、 その間に右手に持った子れいむを先ほど使った凧糸の余りで括り、近くの木の枝に引っ掛け両手はフリーな状態に、 僕は手頃な木の枝を装備すると巣の近くで身を潜めた。 暫くして――わらわらと飛び出してくるゆっくりぱちゅりー、そして番のゆっくりありす、子ありす子ぱちゅりー、 赤ありす、赤ぱちゅりー、合計12匹もいる、随分な数だ。 「ありす、ゆっくりしないでにげるわよ。おちびちゃんたちもぱちゅりーのあとについてきてね」 「そうね!ゆっくりしているひまはないわ、いなかもののにんげんにつかまったらさいごよ!」 ぱちゅりーの先導で隊列を整える子供たち、いよいよ出発となったところで僕は颯爽と飛び出した。 「おはよう、君たちはゆっくりできるゆっくりかな?」 満面の笑み、だが右手は木の枝を今にも振り下ろそうとしている。 「おちびちゃんたち!!にげてぇえ”え”ええ”ええ”!!!」 ありすが叫ぶ、ぱちゅりーが子を庇おうと前に出る、一斉に散らばろうとする子供たち、 僕はまず逃げ足の速そうな子ありすを枝で突き刺し、次に子ぱちゅりーを二の足で容赦なく踏み潰した。 あっという間に3匹死滅、森林公園に響く悲鳴、轟音、それらを無視して今度は残った赤ゆっくりたちを一匹一匹丁寧に枝で引き裂いていく。 親ありすは決死の覚悟で膨れ上がり僕の足元へ突進するも、ただただ跳ね返るだけで意味を成していない。 親ぱちゅりーが赤ぱちゅりーを口に隠そうとするが寸前のところで僕が赤ぱちゅりーを捕まえると それを親ありす、親ぱちゅりーに見せ締め上げた。 気付けば残り4匹、怯えてうんうんとしーしーを漏らした田舎者の赤ありすと 僕の手に掴まれ苦しそうに悶える赤ぱちゅりー、そして親の2匹だ。 「むきゅー!!なんでぇえええ、ぱ、ぱちゅりーのおちびちゃんたちをなんでぇえええ!!」 「ありすの……ありすのかわいいおちびちゃんが……よぐもっ!!いなかもののにんげんはゆっくりしないでしねぇ!!しねええ!」 「はいはい落ち着いてね、騒ぐと赤ぱちゅりーを潰しちゃうよー」 「む、むきゅー……っ!?」 ほんの一瞬で家族の大半を殺された親ぱちゅりーと親ありすは 後れて溢れ出した砂糖水の涙にようやく現実を理解したようで嗚咽を漏らしている、 この家族は完全なとばっちりなだけに少々可哀相だと思ったが目的の為には手段を選ぶつもりはないと僕は自分を納得させた。 「おいっ、れいむ出てこいよ、よくやった」 僕の言葉に反応し、ゆっくりと実に申し訳なさそうにぱちゅりーたちの巣穴から出てくる親れいむ、 れいむは無残に転がる死体の山と親友のぱちゅりーが涙する姿を見て思わず顔面を地面に平伏せた。 「ぱ、ぱちゅりー……ご、ごめんなさいっ!でいぶは……でいぶはぁあ!!」 「……れいむ、あなた……ぱちゅりーたちをにんげんにうったのね!?」 流石は森の賢者、賢い分だけ状況を飲み込むのが早い。 「し、しかたなかったんだよ!れいむもかわいいおぢびじゃんをゆじちにとられてるんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ごのぉおおおうらぎりものぉおお!!!でぇええええぇいぃぃぃぶううううう!!」 全ては親れいむの罠だと悟り飛びかかろうとした親ありすを 僕は脳天から枝を突き刺し沈黙させる「ゆ”っ……ゆ”っ……」と中枢餡に傷を追ったありすは 二度と意思の疎通ができないゆっくりに変わり果ててしまった。 これは加工場の職人がやってのける技法だ、僕は勿論そんなスキルを持っていないので偶然の産物だった。 「ありずぅ!!ありずうぅ!!!」 口をあんぐりと開け放ちニタニタと笑うだけの饅頭になってしまったありすに近付き必死に自分をアピールする親ぱちゅりー、 僕はそっと後ろから近付くと、親ぱちゅりーを身動きの取れない程度に踏みつけ、手に持っていた枝を親れいむの前に転がした。 「れいむ、試練だよ。そこの赤ありすをそれでゆっくり殺してね」 「ゆ”ゆ”ゆ”っ!!!!!どうぢでぞごまでしないといげない”のぉ!?おにい”ざんはあぐまだよ!ぜったいにゆっぐりできないよ!!!」 「悪魔でも鬼でも何でも結構、やれるかやれないかハッキリしろ」 「ゆゆっ……うっう……うっ……」 余りにも突然の出来事に、たった一人残された赤ありすは穴という穴から砂糖水を垂れ流し固まっている。 親れいむはぶつくさと何かを囁いている、それが自身を正当化する言葉だと気付いた時、親れいむは僕の放った枝を口に咥えた。 「まって、まっでぐだざい!!ぞのごだげは、ぞのごだけはたずげであげでくだざい!!にんげんのおにいざん、ぱぢゅりーはなんでもじまず!!でも、でもぞのごだけがどうが!!どうが!!」 必死の懇願だった、ぱちゅりーは土を舐めながら踏みつけている僕に願う。 僕は少しだけ考えた後、親れいむに提案した。 「じゃあれいむが赤れいむを見捨てられるならその赤ありすは助けてやろう、れいむお前が選べ、お前の子か他人の子か」 「ゆ”ぐぐ……ぞ、ぞんなの、ぞんなの……でぃぶのあぢびじゃんに……ぎまっでるよぉ……」 やっぱり自分の子の方が可愛いらしい、親れいむはきゅっと口を強く紡ぐともう一歩赤ありすに近付いた。 「むぎゅぅうう!!!!でいぶぇ!やべでぇええ!!!ぱぢゅりーのあがぢゃんだげはだずげであげてぇ!!おねがいだがら!!」 「ぼめんべ……ぼめんべばじゅりー……でぇぶばびぶんぼごががばいいんだひょ……」 「ゆぅあああああん!おきゃーじゃん!!!だじゅげじぇえええ!!!!!」 枝の鋭利な先端がこちらに向けられていることに気付いた赤ありすはよちよち歩きに毛が生えた程度の速さで逃げ出す。 親れいむは助走を付けその枝を躊躇なく赤ありすに背後から突き刺した、 裂かれた小麦粉の肌、溢れ出るカスタード、背中から眼を突き破るように枝が食い込み、 ぴくんと一回脈打ってぱちゅりーの最愛の娘はれいむの手によって死に絶えた。 「ぱぢゅりーのあがじゃんがぁあああああああ!!ゆるざない!!でいぶぅうう!!ゆっしょううらぶよ!!!でぇええいぃいぶはゆっくりしないでじねぇえええええ!!!!」 もういいだろう、頃合だ。 手に持った赤ぱちゅりーを容赦なく握り潰すと恨み言を念仏のように唱える親ぱちゅりーの前に捨て、 赤ぱちゅりーの最期を見送らせた後、僕は足の筋肉を全力で引き締め親ぱちゅりーを踏み潰した。 ひしゃげた親友の死体と広がる生クリームを見て親れいむは虚ろなまま謝罪を続けている。 僕は何気なく周囲を見渡すと、森林公園で暮らす他のゆっくりたちが騒ぎを聞きつけ逃げられるほどの距離を保ちながら こちらの様子を伺っていることに気付いた、僕の視線と重なるとゆっくりたちは直ぐに姿を隠した。 「それじゃあ帰ろうか、れいむは約束を守ったから子れいむだけは助けてあげるよ」 「ばじゅりー……ごめんね……ごめんねぇえええ……」 まるで聞いちゃいない、とりあえずやれることはやったので小枝に引っ掛けた子れいむを回収し、 親れいむにリードを付け引きずるように帰路に付いた、さあこれで一通りのシナリオは整った、後は適当に苛めるだけでいいだろう。 僕は脳内に描いたストーリーがどのように成就されるか、弾む気持ちを胸に帰宅への道をスキップで歩き始めた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 自宅に到着した頃には、太陽は高い空の上で日差しが頭上から降り注いでいた。 人間で言う脱水症状のような状態のカサカサになった肌であんぐりと舌を垂らした親れいむに 僕は自販機で買った炭酸入りオレンジジュースを掛け応急処置を施すと、 電気ポットと戯れているであろうまりさチームの結果を確かめるべく家にあがった。 そこに広がった光景は――。 「ばでぃざの……ばでぃざのあがじゃん、ゆっぐりじないでべんじをずるのぜぇ!!おがあざんがべーろべーろしてあげるがらぁあああああ!!!」 電気ポットの中ではなく地面に転がった赤まりさ2匹、その様は高所から落とされ破れた肌から円状に広がるように餡子を放出している、どちらも既に息絶えているようで、傍らで親まりさが涙を流しながら起き上がらせようと必死にぺーろぺーろしている。 どうやら親まりさは『がんばりすぎた』ようだ。 この電気ポット虐待には3パターンの結末がある。 ・親まりさが紐を離してしまい電気ポットに赤まりさを落とし茹であげられ死に至らしめてしまうてこと。 ・親まりさが紐を離さず、電気ポットの上で宙吊り状態を保持し続けること。 ・親まりさが紐を持ったまま下がることで引っ張り続け、凧紐を引っ掛けたU字フックを壊して赤まりさを落下死させてしまうこと。 この場合は言わずとも知れた後者である、赤まりさを引き上げ安全圏に押し上げた発想は良かったが 欲をかいて助けようとしたのがまずかった、親まりさは自らの行為で赤まりさを永遠のゆっくりへと突き落としたのだ。 そもそも想像力があればU字フックの高さを考慮して予知できるであろうが、そこは流石餡子脳というべきだろう。 「だから、ずっとそうしていてね。って言ったのに、あーあ」 嘆き嗚咽を漏らす親まりさの横で収納ボックスに入った残りの姉妹である、 子まりさ、赤れいむの視線が何故か冷たいことに僕は気付いた。 どういうことだ、と首を傾げて親まりさの周囲を見るとある物が無くなっていた。 「おまっ、大福食ってんじゃねーか」 親まりさの周囲に置いた4つの大福が見事に消失していた、僕はわんわんと泣き続ける親まりさの口元をぎゅっと片手で締めると 数字の8を描くようなタコの口を強制的に作られる、口周りを見ると大福の残りカスが付いていた。 「ゆぐっ……ゆぐっ……だいぶぐざん?おいじがっだのぜぇ……」 親まりさが子の亡骸の前で「うめぇ!これめっちゃうめえ!!うめぇ!まじうめぇ!!!」と言っている様を想像して 僕は思わず吹きそうになった、一通り泣き通した後大福を食ったのか、それとも死んだと確認した後、急いで大福を掻き込んだのか どにちらにしても、収納ボックス内の姉妹には随分と滑稽に見えたことだろう。 「おきゃーしゃんがれいみゅのおにぇえじゃんをみごろじにじであまあまざんをだべだんだひょぉ!!」 「おがーさんがひっばらなげればまりざのいもうどはじななぐでずんだんだよぉ!!おがーざんのぜいだよ!!!」 親れいむが帰ってきたことで収納ボックスの中の姉妹が騒ぎ立てる 大福を食べたことは姉妹の心象を相当悪くしたようで 『助けようとした結果に死んでしまった』ことが『親まりさの所為で死んでしまった』ことにすり替わっていた。 「まりじゃぁああああ!!でいぶは、でいぶはだいべんだっだんだよぉ!!!ぞればのに、まりざはっ!!まりざはっ!!!」 「おじ、おじづんぐだぜ……まりさのせいじゃないのぜぇ!!まりさだってがんばってだのぜぇ!!!」 「うちょだよ!!おきゃーしゃんがおにぇぇーしゃんをごろじだんだよぉ!!こどみょをゆっくちさせにゃいおやはゆっくちちね!!」 「どぉおおじでぞういうごどいうのぉおおお!?ばでぃざだって、ばでぃざだって……だいべんだっだんだよぉお!!いのぢがげだっだんだよぉ!!!」 いつの間にか壮大な家族喧嘩に発展してしまった、これは想定外だと髪をぽりぽりと掻き毟りながら 僕は親まりさを背後から帽子ごと掴み持ち上げる、そのまま成体ゆっくり用の木製の椅子に座らせる。 その椅子は少し変わっており三本のゴム紐が取り付けられている。 「ゆゆっ!おでぃざん?なにずるのぉ?」 「子供を見殺しにしたゲスを制裁しようと思ってね」 てきぱきと作業を進め、親まりさの頭部の帽子を取って頭にヘルメットを被せる。 「お、おでぃざん……ご、ごのいずゆっぐりできないぎがずるのぜ……ゆ、ゆっぐりじないでおろじでね!!」 ただならぬ気配を感じたのだろう、全身をゴム紐で雁字搦めにされた親まりさは頻りに降ろせと要求するが 僕はそれを無視して作業を続行する、親れいむも、子供たちも何事かと黙って様子を伺っている。 この椅子はただの椅子ではない、頭のヘルメットの電極と親まりさのあんよに備えられた電極、 これは電流を放出しゆっくりを死に至らしめる、ゆっくり用の電気椅子である。 先ほど、ぱちゅりー一家を惨殺した帰りに立ち寄ったゆ虐ショップで買ってきたものだ、 僕は理科の実験をする子供のようにわくわくと頬を緩ませながら全ての準備を整えた。 そして備品である操作盤を取り出すとポップな竜宮の使いが描かれたボタンを僕は躊躇なく押し込んだ。 「衣玖さんパワーオンッ!!」 「ゆゆっ?――……ゆー、ゆぎょ、ゆぎょぉお!ゆぎょおお”ぉお”お”お”え”え”え”え”えぇぇぇええ”えええ!!!!」 ゴム紐をはち切らんばかりにのた打ち回り、喉を潰すほどの大絶叫を奏でる親まりさ 小麦粉の肌はばりばりと削れ、眼が白めを向いているがまだ意識はあるようだ。 「ゆがあぁあああ!!ば、ばでぃざあっ!!!!」 「ゆあぁぁっ!!……おがーざんがぁっ!!おがーざんがぁっ!!」 「ゆぎょおぉお!!ゆぎょぎょぼぉお”お”お”ぉおお”お!!!!!!!」 僕はゆっくりが発する声とは思えない程の絹を裂くような悲鳴が実に心地いいと思いつつ 操作盤のボタンの竜宮の使いが頬を染めている『最大放電ボタン』を何気なく押し込んだ。 「ぎょぉお”お”ぉおおお”おお”、ゆぐごぉおお!!!!ゆぎゅお”ぉおお”おお”おおぇぇぇえ”え”ぇええ!!!!!!!」 直ぐに親まりさに異変が発生する、身体の中から青白い光が浮かび、寒天の眼は蒸発しそこから青い炎が勢いよく放出された。 両目と口、あにゃるなど穴という穴から炎が吹き上がる。 それでもまだ親まりさは生きているようで、ゴム紐で縛った身体を乱暴に震わせて脱出を試みようとしている。 今更開放されたところで助かることなど無論ありえないが。 数分して火を宿したまま親まりさはぴくりとも動かなくなった。 「なかなかそそられる最後だったな、お兄さん満足だよ」 ふと収納ボックスを見ると、赤れいむが餡子を吐き切って絶命してしまっていた、どうやら刺激が強すぎたようだ。 親れいむも子まりさも子れいむ固まって微動だにしないので赤れいむが死んだことに気付いていない。 死んでしまったものはしょうがないので拾い上げてゴミ箱に捨てると残された3匹を死なない程度に虐めを繰り返した。 あまりにも惨たらしい死に様を目撃した後の3匹は実に従順でいい響きを何度も何度も聞かせてくれたのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 親まりさを電気椅子で殺してから一ヶ月が経過した。 それからの虐待は死んでいった家族たちのそれと比べるとかなり加減されたものであったが、 日に日に衰弱していく残りの3匹には相当応えるようであった。 最初に死んだ赤ゆっくりがどうやって死んだのか忘れたのを確認すると、僕は今までの虐待がまるでなかったことかのように 残った家族たちに優しく接し、あまあまを与え身体の回復を促した。 どういうことなのかと怯えるゆっくりたちであったが、翌日の日曜の朝に僕が発した言葉にゆっくりたちは思わず怪訝な顔を作った。 「今日でみんなをおうちに帰してあげるよ、今までご苦労だったね」 「ゆ……お、おでぃざん……も、もうでいぶだぢをいじめないの?……」 「そうだよ」 「ぼ、ぼんどうなの?もうなにもじないの?」 「なにもしないよ」 どういう吹き回しなのか、新しい虐めへの布石なのか、とゆっくりならぬ疑心暗鬼に陥っていたが 僕は3匹を車に乗せ、近所の森林公園に行くとそこで何をするでもなく3匹を開放した。 開放されたと分かったゆっくりたちは、ひぃーひぃーと物凄い速さで駆け抜け公園の奥へ進んでいった。 僕との距離を置き、完全に振り切れると確信した位置にくると親れいむは振り返り、僕に向かって最後に叫んだ。 「ぐぞじじいばゆっぐりじないでじねぇ!!!!」 最後の抵抗だったのだろう、僕はにやにやと微笑みつつ逃げていくゆっくり一家の背中を見送った。 GPS対応の携帯ゲーム機で地図を表示しインカム型のイヤホンと望遠鏡を取り出しゆっくりと一家の後を追った。 「もうおうぢがえるぅ!!ゆっぐりでぎないのはいやぁあああ!!!」 親れいむを先頭に、それを追い子れいむ、子まりさが泣きながら約一ヶ月振りとなる我が家を目指していた。 古い大木の根元に掘った巣穴に雪崩込むように入ると、そこには若いゆっくりの夫婦が陣取っていた。 見知らぬ顔のゆっくりまりさとその番のゆっくりありすである。 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ!!!!ゆっくりしないででていってね!!!!」 「なにいってるのぜ、ここはまりさとありすのぷれいすだよ!あとからきたゆっくりがおうちせんげんしちゃいけないんのぜ」 「あなたたちいなかものまるだしよ、まるでゆっくりできていないわ」 興奮冷めないという形相で怒り狂う親れいむ不、可解に首を傾げるまりさとありす。 すると巣の外がなにやら騒がしいことに気付いて、親れいむとまりさ、ありすは何事かと入り口から様子を伺うと この集落の長であるゆっくりぱちゅりーと近所のゆっくりたちが集まってきて人だかりができていた。 「ゆ!!おさっ!!れいむだよ、かえってきたんだよ!!くそじじいにひどいめにあわされたんだよぉ!!」 「むきゅー……れいむ……かえってきてしまったのね……」 何故かとても残念そうに溜め息を漏らす長ぱちゅりー、親れいむは不思議そうな顔をして周囲を見渡すと、 ご近所だったゆっくりみょんとゆっくりちぇんがいつの間にか子まりさ、子れいむを捕まえて離さないようにしていた。 「ゆゆ……おかーさん……」 「ゆ!!れいむのおちびちゃんになにをするの!!ゆっくりしないではなしてね!!」 「……ちーんぽ」 ゆっくりみょんの視線は鋭い、いや集落の全員が向ける視線が痛々しいほどに 突き刺さってくることに気付いて親れいむは威圧感に押される形で一歩だけ後ずさった。 「ど、どうしてぞんなごとするの?れ、れいむがなにをしたっていうのぉお!?」 「しね!!ゆっくりしないでしね!!おかーさんをにんげんにうったげすゆっくりはしね!!」 長ぱちゅりーの背中に隠れていたまだ成体になって間もないゆっくりぱちゅりーがひょっと飛び出すと 集落のゆっくりの中で一番鋭利な視線を向け、親れいむにぱちゅりー種ならぬ罵倒を浴びせた。 その容姿に親れいむは面影を見出した、親れいむを呪いながら死んでいった親友のぱちゅりーと瓜二つの顔を。 「ゆがぁ!?……ぱ、ぱちゅりー!?」 親れいむは思い出してしまった。 我が子の命と引き換えにぱちゅりー一家を、ぱちゅりーの大切な赤ありすを殺してしまった事実を。 このぱちゅりーはあの惨殺の日の前日から、独り立ちの日が近いことから 長の家で訓練と心構えを学ぶべく巣を離れており、難を逃れていたゆっくりだった。 しかし、遠くから何も出来ずに両親と姉妹が死んでいく様を目撃しており、 親ぱちゅりーの『ゆっしょううらぶよ!!』という悲痛な叫びも耳にしてしまっていたのだった。 一夜にして大切な家族が一人残らず殺されてしまう、若く幼いぱちゅりーに同情するのは集落のゆっくりのほぼ全てと言ってよかった。 「ゆぐっ……ば、ばじゅりー……ご、ごめんね……で、でいぶが、でいぶがわるがっだんだよ……」 「れいむ……おきてをまもるべきだわ、ゆっくりころしはせいさいをうけなければいけないのよ」 そう長ぱちゅりーが言い放つと、他のゆっくりたちが各々の口に手頃な枝を咥え始める。 その鋭く尖った先が向けられたのは親れいむではなく、子まりさと子れいむだった。 親れいむはハッとなった、本来は自分に向けられるであろう矛先がどうして子ゆっくりたちに向いているのかと。 「むきゅー、れいむのおちびちゃんはなるべくゆっくりしないでえいえんにゆっくりさせるのよ」 「まっで、まっでぇ!!どぉじでおぢびじゃんがせいざいをうげるのぉおお!? わるいのはでいぶだけだよぉお!!おぢびじゃんばがんげいないよぉおお!!」 長ぱちゅりーは一度だけ泣きじゃくる親れいむを一瞥した。 子ゆっくりたちに本来、罪はない、集落の掟にも親の罪を子が背負う道理などは決まっていないのだ。 だがなぜ親れいむへの制裁が子ゆっくりにも及ぶのか、それは集落の皆がそうするべきだと訴えたからだ。 もし長ぱちゅりーが長の権限で子への制裁を取りやめたら、行き場のない怒りを抱えたぴりぴりとした集落の関係に 埋められない程の深い溝を作ってしまう、それでは集落として機能がなされなくなてしまう。 それほどまでに今回の一件は集落のゆっくりたちに大きな傷跡を残してしまったのだ。 ルールを守るからこそ意味があるので超法規的措置としてそれを反故すれば秩序を保つのは難しくなってしまう。 長ぱちゅりーはそれがとても恐かった、だからこそ死んでいった者たちには悪いと思いつつ 親れいむ一家が帰ってこないことを密かに願っていたのだった。 「ま、まっでぐだざい!!で、でいぶはどうなっでもいいでず!!でもおぢびじゃんだげは!おぢびじゃんだけば だずげであげでぐだざい!!ずっどぐぞじじいにいじめられでだんでず!!やっどがいほうざれだんです!!ぜめで、ぜめで!!」 「むきゅー……そういってしんでいったぱちゅりーにれいむはなにをしたのかゆっくりおもいだすべきだわ……」 最初に飛び出したのは唯一の被害者家族であるぱちゅりー、身動きが取れず親れいむに助けを求める子まりさの眼を狙って 咥えた枝で襲い掛かる、それはあの日の親れいむと全く同じ光景だった、ただ一つ違うのは獲物を仕留めたぱちゅりーの表情が とても、とても満足そうにほくそ笑んでいたことだ。 次いで子れいむ、同じように知り合いのゆっくりまりさが力強い一撃を放ち永遠のゆっくりへと誘わせた。 「でいぶのぉおお!!でいぶのぉおおおお!!!!おぢびじゃあぁん!!!!!!」 一体、何故、どうして、何が、分からない、最後に残った親れいむは全ての家族を何もかもを失いただただ嘆くしか出来なかった。 これで何度目の涙だろう、枯れるほどに流した、しかし寒天で作られた眼が乾燥することは最期までなかった。 復讐の鬼と化したぱちゅりーが忍び寄る、何かを言っている、何を言っているのか良く分からない、いや、そうか――。 『でぇええいぃいぶはゆっくりしないでじねぇえええええ!!!!』 親友だった、裏切ってしまった、ぱちゅりーの声が、親れいむには確かに聴こえたのだった。 無数の枝の先が迫ってくる、魂を抜かれたようにぐったりと項垂れた親れいむは、意識が閑散となったことで 遠くでこちらを見ている人影を見たくもない人影を見つけてしまった。 あのくそじじいがこちらを見て笑っている、あいつの所為だ、あの人間の所為なんだ、 そう叫ぶことも叶わず、親れいむは何十の殺意の中で消えていった。 もうれいむはなにもかんじることができない――。 END ※あとがき 本作品が二作目です、長々とした本作にお付き合い下さり最大級の感謝です! 私事で恐縮なうえにここで書くべきことではないと思うのですが 前作のanko2103.ゆっくり熟年離婚の挿絵を描いてくれた方、ありがとうございましたっ 自分の作品如きに挿絵だなんて恐縮というか逆に申し訳なくなりました どこでお礼を言えばいいのか分からなかったのでここで書いてしまいましたけど まずいかなぁ、まずかったらごめんなさい…… 書いた人:おおかみねこあき
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ゆっくりおうちせんげんの末路 短期出張を終え久方振りに我が家へ帰るとそこは、ゆっくりの巣窟になっていた。 親ゆっくりまりさ、その番のれいむ、子まりさ2匹に子れいむ1匹に赤まりさと赤れいむがそれぞれ2匹 計9匹のゆっくりに私邸は物の見事に荒らし尽くされており、散らばり破られた本、カーペットやカーテンは引き千切られ 低い位置に置かれた日用品は散乱し、ベッドの上や床には無数のうんうんとしーしーがぶちまけられている。 「ゆっ!ここはまりさのおうちなのぜ。ゆっくりしないででていってね!」 「ゆゆ、ゆっくりできないにんげんさんはでていってね。ここはれいむたちがさいしょにみつけたおうちだよ!」 あまりにも無残な姿に変わってしまったマイルームと出張の疲れが相俟って僕は呆然と立ち尽くしていると、 親ゆっくりがぷくーっと膨れてぬけぬけとこちらを威嚇している、その隣で、閉まっておいた芋かりんとうを満足そうに平らげ うんうんを捻り出している子れいむの「きゃわぃぃれいむがうんうんするねー♪」の 反吐が出る台詞に我に返った僕は溢れんばかりの怒りが音もなく爆発した。 「わ~い♪おちょらをちょんでるみちゃ~い♪」 「ゆゆっ!!れいむのかわいいおちびちゃんになにをするの!ゆっくりしないではなしてね!!」 「ゆ!!じじぃ、まりさはつよいのぜ!!せいさいされたくなかったらおちびちゃんをもとにもどすのぜ!」 とりあえず素早い動きでゆっくり回収用の収納ボックスに子と赤ゆっくり計7匹を詰め込む、 泣いている饅頭もいれば怒っていたり喜んでいる饅頭も様々だ。 まずは親ゆっくりに今日の鬱憤を晴らすべく蹴りつける、既に汚された我が家だ、餡子が飛び出したところでどうということはない。 「よくもまぁ、やってくれちゃって……謝罪するまでゆっくり蹴ってあげようね!」 「ゆぐっ!!……やべ、やべて……ぐぇ、ゆぐぇえええええ!!」 まずは親まりさから、蹴る蹴る蹴る、ひたすら蹴る。 箪笥の角を狙って、部屋の木板を狙って、時には天井を狙って、泣こうが喚こうが構わず蹴り続けた結果、 親まりさの顔面は見事にタコのように真っ赤に膨張し常時ぷくーっ状態になってしまった。 「ゆああああああ!!まりさになにをしてるの!!ゆっくりしないでやめてね!!」 「謝るまで蹴るよ、まだまだ蹴るよ!」 「ぐえっ!やめ……ゆげぇ!……やべでぐがさい!!……じぢ、おでぃいざん、やべで!!」 「お兄さんのゆっくりプレイスを乗っ取った悪いゆっくりは蹴り殺されてもしょうがないよね」 収納ボックス越しに親の無残な姿を見た子と赤ゆっくりたちは気付けば隅に身を寄せ合いガタガタと小刻みに震えている。 時折そちらに視線を送ると、目が合っただけで子れいむがしーしーを漏らしてこの上ない恐怖心を剥き出しにしている。 「ばでぃざぁあああああ!!おでぃいざん!!やめでぐだざい!!ばでぃざがしんじゃいまず!!おでぃざん!!!」 真っ赤な状態から中の餡子が透けて見えるほど黒ずんだ辺りで、番の親れいむが蹴るのをやめろと涙ながらに懇願するが僕は構うことなく蹴り続ける。 まだまだこんなことで僕の怒りは収まる訳がない、僕は一度蹴るのをやめるとオレンジジュースを取り出しもはや瀕死状態の親まりさにぶっ掛ける。 「こんなんで死なれちゃ困る、まだまだ続けるぞ!ゲスまりさはもっともっと壊れてから死なすよ!死ねったら死ね!」 「ま、まっでぇ!ゆ、ゆるじで……ぐだざい”……ばでぃざがわるがだってです、やべでぇ……ぐださい”……」 やっと謝罪の意思を見せ始めたのでとりあえず蹴るのをやめる、 全身痣だらけの親まりさはボロボロと眼から涙を流して床に頭を擦り付けた。 「おでぃいざんのゆっぐでぃぶでぃずを……の”っどっでじまっだのぼあやまでぃばず……だがらゆづじでぐだざい……」 蹴った最中に歯が欠けたらしく上手く発音できていないがどうやら謝罪したようだ、 僕は蹴る行為をやめると、身を降ろし親まりさの視線に合わせて満面の笑みを浮かべ 「許す訳ねーだろバーカ、くたばれ糞饅頭」 と、親まりさの願いを一蹴した。 「ぞ、ぞんな……どぼじでごんな”ごどい”う”の”おおおぉぉ」 流石にこれ以上やったら死んでしまう、もとより殺すつもりでいるが こんな簡単に死んでしまっては面白くない、僕はくるりと身を翻すと軽快なステップで親れいむと対峙した。 「ゆゆっ……お、おでぃざん?」 ただならぬ気配を感じたいのか、ずりずりと後ずさり壁際まで後退するれいむ、良く見ればしーしーを漏らしている。 更に汚れたところでどうということはないと思っていたが、真正面でそれを見せられて僕の鉄さえも溶かす怒りが更に沸騰した。 「れいむもお兄さんのプレイスを乗っ取った悪いれいむだね、おしおきされるべきだーよね?」 「ばでぃざぁあ!だ、だずげで!!おじおぎなんでざれだらゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!」 親れいむの右の揉み上げを乱暴に引き千切り、眼を狙って中指と薬指の間に親指を挟んだ痛み倍増の摺り切りパンチ、 横っ腹には全身全霊を込めたミドルキック 身体で表現できるありとあらゆる攻撃を繰り返し、親まりさと同等の状態になったところで僕は痛めつけるのをやめた。 「ゆ”ゆ”っ……までぃざだちはおうぢをあぎらべまぶ、ぼうおうぢにがえじでぐだざい”のぜぇ……」 「ゆぐぇ……で、でいぶも……あやばりばず、だがらおぢびじゃんをがい”ほうじであげでぐだざい”」 僕は笑顔を絶やさず二人の言葉に頷くと、収納ケースに歩み寄り一番奥の赤れいむを取り出し掲げた。 親ゆっくりたちのぶくぶくに膨れ上がった顔が僅かに安堵の表情を浮かべるが、 その淡い期待を踏み躙るかのようにぎゅうぎゅうと拳に力を込めていく。 「ゆぶっ!おきゃあしゃん……だじゅげでぇ!……い”だい”よぉ、ゆっきゅぢでぎにゃい”ぃい”!!!」 下腹部の餡子が僕の力によって押し上げられる。 赤れいむの頭部(?)は押し寄せる餡子がまるで風船のように圧の掛かった顔にさせた。 「ゆ”ゆ”!!おぢびじゃああああああん!!やででぐだざい!!でいぶはどうなっでもい”い”でず、おでがい”でずがら!!」 「僕のお部屋がうんうんとしーしーでぐちゃぐちゃなんだ、片付けてくれるかな?」 「ゆっ!わがでぃばじだ、かだづげまず、だからばでぃざのあがじゃんだけは、あがじゃんだげは!!」 「いいからさっさとやれ、早くやんねーとマジで潰すぞ」 「わ、わがでぃばじだ!や、やでぃばず、やでぃばずがらぁあああ!!」 ずたずたになった身体に鞭を打って親ゆっくりの2匹が散乱したうんうんとしーしーの前で立ち尽くす。 すると親れいむが振り返りこちらを見ると『ぞうきんさんをかしてね』と願い出た。 雑巾を知っていることから元飼いゆっくりなのかもと思いつつも、僕は握り締めた赤れいむをを更に握りを強めて言い放つ。 「食べて片付けてね、遅いと制裁しちゃうよ。主に赤れいむを」 「ゆ”!!でぃぶのあがぢゃんにひどい”ごどじない”でぇえええ!!だべばず、だべでかだづげまずがら!!ゆうっう……」 親ゆっくりたちが苦虫を噛む様な顔で排泄物をぺーろぺーろしている傍ら、 僕は子と赤ゆっくりが詰まった収納ボックスを開け、怯えるゆっくりたちに言い聞かせる。 「よく見ておくけ、きったねぇうんうんを食べてるのがお前らの親だ、人間様に歯向かった馬鹿で愚鈍で愚図で能無しで無能にして軟弱であさましくいやしいゆっくりだ。親があんなだからお前らは酷い目に合わされるんだぞ、ゆっくり理解しろよ」 「ゆゆっ!!おかーさんをわるくいわないでね!わるいのはくそじじぃだよ、ゆっくりしないでしね!!」 果敢にも、この子供らの中で恐らく一番の年長者である子まりさがぷくーっと膨れて僕を威圧している。 親の惨めな姿を見て何も学ばない、やはりゆっくりはゆっくりだ、 低俗で成長しない糞饅頭、決してこれは高貴な知性を持つ生き物なんかではない。 「そんなに親が好きなら真似させてあげようね」 人質ならぬゆっくり質、ゆ質として捉えた赤ゆっくりを持つ反対の左手で、 ぎらぎらとした反抗心を向ける長女の子まりさを摘むと適当にうんうんが広がったエリアに顔面から押さえ付ける。 うんうんをびちゃびちゃと跳ねさせながら、子まりさは息苦しそうに身体を震わせる。 「ほら舐めろよ。お前のかーちゃんがやってんだ、見習わなきゃいけないよね」 「ゆぐぇ!!やべでぇ!!う”んう”んさんとずーりずーりしだぐない”よぉお”お”お”!!!」 姉妹たちはさぞ酷い顔付きでニヤついているであろう僕を見て更に怯え、 子まりさの叫びも疲労困憊で虚ろなままうんうんを食べ続ける親の耳には届かない、 僕は子まりさが全身がうんうん塗れになったところで元のケージに戻してやった。 べちょっと不快な効果音と共に落とされた子まりさはよろよろと隅に固まった姉妹たちにゆっくり近付くが。 「おにぇいちゃんうんうんしゃんぬりぬりされちぇちぇくちゃいよ!ゆっきゅちできにゃいからちかじゅかにゃいでにぇ!!」 「まりしゃおねーちゃんがいりゅとゆっきゅちできにゃいよ!ゆっくちしにゃいできえちぇね!!」 「どぼじでぞうい”うごどい”うのぉ!!」 姉妹たちは子まりさの親の名誉を守ろうとして反抗した姿勢を称える訳もなく、 文字通り糞饅頭になった糞まりさを倦厭しありったけの罵倒を浴びせる。 親の姿を見て学習するという点に置いては糞まりさよりもそこで怯えている姉妹たちの方が賢いと言えるだろう。 そして暫く待っていると親ゆっくりたちが疲れ果て焦点の合わない目付きのまま、うんうんとしーしーの後始末が終わったと言い、 赤れいむの開放を要求してきた。 部屋を見渡すとこびり付いた物を除けば一通り片付いたようだった。 「うんうんざんもしーしーざんもかだづげばじだ……でずがら、でずがらどうがばでぃざのあがじゃんを……」 「分かった」 そう言って僕は右拳の力を込め、赤ゆっくりを――――握り潰した。 「ゆぎょるびょぎゅゆゆゆ……」 内臓物が放出される奇妙な効果音と共に餡子を強制的に吐き出す赤れいむ、 若干握りを弱くしておいたためにまだ意識はある、小刻みに震え最後の踊りをし始めた。 一瞬の出来事に唖然と硬直した親ゆっくりの前に潰れた子饅頭を置いてやると無言のまま縮んだ顎下の、 人間で言う尻の部分をぷるんぷるんと左右に降り実に情けない姿を眼下に晒け出した。 「残念だったね、あと5秒早く片付ければ赤れいむは助かったんだよ……お前たちか愚図だからだよ。ゆっくりりかいしろよ」 言うまでもないがどんなに早くうんうんの処理を終わらせたとしても僕は赤れいむを潰していた。 理不尽な言い分を押し付けるのはとても気持ちがいい、僕は言い知れぬ快感を抱きながら親2匹に向けて不敵に笑う。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”!!!!で、でいぶのあがじゃあ”あ”あ”んがああ”ああ”ああ”ぁああ”ああ!!!!!!!」 「ゆ”あ”あ”あ”!!ばでぃざのあがじゃんをよぐも!!よぐも!!!ぐぞじじい!!ゆっぐりしない”でじね!!じね!!!」 「あ”あ”~?そんなこと言っちゃっていいのかなぁ~?」 赤れいむを潰され激情した親ゆっくりの前で、残された姉妹を収納したボックスを僕は激しく揺さ振る。 ケース内の姉妹たちは圧倒的な脅威に愚図り一斉に泣き始めた、親ゆっくりにはさぞ身に響く音であろう。 怒りの感情に身を任せた二匹の親ゆっくりはみるみる表情が青ざめていく。 まだ残り6匹のゆ質が僕の手中にあると悟ると親ゆっくりは萎縮し、機嫌を伺い腫れ物を触るように痛々しい作り笑いを浮かべる。 「お、おでぃいざん……ば、ばでぃざがわるがっだよ!……ばでぃざのおぢびじゃんにばでをだざないでね!!」 「で、でぶもあやばるよ……ゆっぐりゆるぢでね……」 「駄目だよお兄さん許さないよ、もう1匹殺しちゃにおうね」 まだまだ精神的に追い討ちを掛けなければ気がすまない、僕は収納ボックスの蓋を開けて 先ほど糞塗れになった糞まりさ目掛けてその辺に転がっていたシャーペンを脳天から突き刺した。 「ゆぐえ”っ!!」 「でいぶのおねえじゃあんがああぁ”あああ”!!」 ボックス内は阿鼻叫喚の地獄絵図になった、脳天を突き破られグリグリと中身を掻き混ぜられる糞まりさ、 赤ゆっくりたちは少量の餡子を吐き、残った子まりさと子れいむも大きく口を開けて糞まりさから離れていく。 「ゆふえ!ゆふぇっ!!ゆがゆがが!!!」 ちょっとずつ、僅かに、最大限に痛みを感じさせつつシャーペンを押し込んでいく、 糞まりさも自身の置かれた状況を理解しているらしく大粒の涙を流し何かを訴えている。 糞まりさが言いたい事の察しはつくが、僕はわざと分からない振りをして横暴さを強調してやった。 「やべでぇぇえ”え”え”!!おぢびじゃんをゆっぐりざぜでぇえ”え”え”!!!」 「あははっ、こいつ痙攣してるよ、おい聞こえるかー?お前の頭の中を掻きまーぜまーぜしてやってるよ、おーい聞こえてるかぁ? 「あ”……ッ!ゆ”っ……!ゆ”……も……っど……ゆ”………が……」 「やべでぇえええ!!どぼじでぇ!!どぼじでぇえええ!!おぢびじゃあ”あ”あ”ん!!!」 ぐちゃぐちゃと強引に手首のスナップを効かせて振り回す、今にも飛び出しそうな糞まりさの眼は明後日の方向を見つめている。 もう身体のあらゆる機能の融通が効かなくなったようで、伸びた舌が頬にべったりとくっ付いている。 「はい、おしまい。さっさと死ねてよかったね」 無情な台詞を吐いて僕は全力でシャーペンを突き刺した。 中枢餡を抜けあんよを突き破り糞まりさは息絶え永遠のゆっくりへと旅立った。 「なんでぇ……なんでえ”!!……おぢびじゃぁん……おぢびじゃああん……」 ものの5分足らずで子を2匹も失った親ゆっくりは戯言を繰り返し絶叫している。 一頻り甚振ったことで満足を得た僕は、失意の親ゆっくりをもう一つの収納ボックスに強引に収めると、 今日の虐待をここまでと区切りを付けて汚れた居間を後にした。 部屋を抜けると後ろからすすり泣く様なゆっくりたちの声が響いてくる、実にいい気味だ。 明日はどうやって虐待してやろうかと心を躍らせて僕はいい汗をかいた身体を休めた――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 翌日の早朝、出張時の代休を使い仕事も休みな僕は元気良く居間に入室すると 収納ボックスで死んだように眠っているゆっくりたちを無理矢理叩き起こした。 一時の安息を妨害され恨めしそうに僕を見つめるゆっくりたち、僕は彼らの期待に添えられるように 『今日の虐待を始めます♪』と高らかに宣言した。 「おでぃざん……もうばでぃざだちをがい”ほうしてくだざい”……ぎのうがらおぢびじゃんだぢはなにもだべでないんでず!!」 「ゆっぐ……ごのままじゃおぢびじゃんだちがじんじゃいまずぅ!!」 親ゆっくりの言うとおり赤まりさと赤れいむはぐったりとしている、食べ盛りの赤ゆっくりにとって 昨日の夜から口移しで物を入れていないのは結構な空腹に当たるらしい。 僕は赤いっくりを消費期限が限られていると考え今日明日中に殺すことを念頭に置き、 親の言い分を華麗にスルーして電気ポットを取り出す。 コンセントを挿し電気ポット内の湯がぐつぐつと煮えたぎったところで、 収納ボックスに入った親まりさと赤まりさ2匹を取り出した。 「お前らよくみておけよ」 そう言い聞かせ僕は持っていた大福を紐で括り泡を吹くポットに浸からせた。 30秒程して引き上げると皮が破れ中の餡をどろりと吐き出した無残な大福がそこにあった。 能天気にその大福を欲しがる赤まりさ2匹を他所に何かを察した親まりさは唾を飲んだ。 「ゆっ……おでぃざん……どういうごどなの?」 「つまり、こういうことだよ」 大福に見惚れている赤まりさ2匹を僕は片手でひょいと摘むと、凧糸をゆっくりの口部に引っ掛ける形で紐を括った。 突然口に紐を通され全身を軽く縛られた赤まりさたちは呂律の回らない口調を更に悪化させて文句を述べている。 電気ポットを壁際に避けて、僕はゆっくり2匹がぶら下がった長い凧糸を壁のカレンダーを掛けるためのU字フックに紐を通す。 丁度湯気の沸き立つ電気ポットの上で赤まりさ2匹が宙吊りになる形だ。 「ゆがっ!……ごごどでぼあぢゅいひょ!!……おぎゃーじゃん!!だじゅげじぇ”!!!」 「ゆあ”あ”あ”!!おぢびじゃぁん!!!」 親まりさの顔が面白いほど強張る。 死の淵に立たされた、この場合吊るされた赤まりさたちを見て慌てふためいている。 僕は紐を引っ張ったり緩めたりして、赤まりさたちが上下するのを親まりさに見せ付けると、 紐の先端を親まりさの口にお構いなしに捻じ込んだ。 そうされてハッとなる親まりさ、もう気付いたようだ。 「まりさの赤ちゃんを助けたかったらずっとそうしていてね、離したらドロッドロッになっちゃうよ」 「ふがが、ふがゅ!……」\ 「ゆぇえええん!!あじゅい”よぉ!!あじゅい”ぃいい”!!」 電気ポットの湯気にやられて赤まりさたちが叫び紐が軋む、親まりさは顔面に汗を浮かべ噛んだ紐を決して離さないよう勤める。 これでまりさチームの準備は完了だ、あとは時間が経てば結果が出るだろう。 「僕が帰ってくるまで赤まりさが死んでなかったら開放してやるよ、ずっとゆっくりしててね」 「ゆが……っ!」 「それとこれは餞別だよ、お腹が空いたら食べてね」 僕は見本に使った大福の余りを踏ん張る親まりさの横に4つ、四方を囲い並べた。 一瞬だけチラリと親まりさがそれを見ると、本能には抗えず口から涎が溢れ出て紐が僅かに緩んだ、どうやら滑ってしまったようだ。 「ゆ”ゆ”!!!あぢゅい!!あぢゅいよ!!おがーじゃんにゃにじちぇるにょぉ!!!こにょやきゅちゃちゃじゅ!!!!!」 ギリギリのところで紐を絡み取ったので難を逃れたが、状況は悪化するばかり。 強制的に湯気に近付かされた赤まりさたちは湯気から身を守るために全身を揺らしヒーヒーと荒い息遣いで親まりさを貶した。 「されじゃあ僕らは出掛けて来るよ、まりさはゆっくりがんばってね」 僕は嫌味たっぷりに親まりさを励ますと親れいむ、子れいむを取り出し家を出た。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 東の空が僅かに色付いた早朝の街の風景、まだ人影は見えない。 僕は抱えた親れいむにゆっくり用のリードをきつく装着させ輪を右腕に引っ掛ける、 右手にはゆ質として子れいむを握り締め、残った左手には銀色の浅い輝きを放つジッポライターを装備する。 もし早朝マラソンに勤しむおじさんや新聞配達のお兄さんとすれ違っても ライターと子れいむを隠せば飼いゆっくりを散歩させる好青年にしか見えないだろう。 「ゆっ?……お、おにいさん……これからどこにいくの?……おぢびじゃんにいたいことしないでね!」 「これかられいむたちのおうちに行こうね、お兄さんをゆっくりしないで案内してね!拒否権はないよ」 「ゆっくりりかいできないよ!れいむはそこにはいきたくないよ!!!」 「そうか、じゃあ子れいむはどうなってもいいね」 「ゆぐっ……おでぃざん、でいぶをづよぐにぎらない”でぇ!!いじゃい”よぉおお!!」 最初に赤れいむを潰した要領で親れいむに命令をすると引き攣った表情を浮かべ親れいむは了承した。 僕は、僕の家をおうち宣言する前にゆっくりたちが住んでいた元ゆっくりプレイスに行くことを思いついた。 子ゆっくりを抱えての移動ならばそう遠くではない、近所の森林公園か神社跡地か、人間の足で1時間弱程度だと睨んでいた。 ちなみに赤ゆっくりを抱えて引越しをするということは特殊な状況下でない限りほぼ有り得ないらしい、 恐らく僕の家で産み落としたのだろう、僕は私邸で親ゆっくりたちの 気持ちの悪いアヘ顔と「すっきりー」と言っている場面を想像し益々不愉快になった。 「ゆぐぇ……おでぃざん、もうむりでず……ぢょっどやずまぜでぐだざい……」 色々と考え込んでいると親れいむがもう弱音を吐き始めた。 腕時計を見てもまだ10分も経っていない、昨日の虐待で受けた傷が疼くのだろうか。 「そうだね、じゃあ休んでもいいよ。休んでる間に子れいむを甚振るけどね」 僕は左手のジッポライターのカバーを開きフリント、発火ドラムを勢い良く回すと軽い火を宿させた。 揺れる小さな火を、握り締めた子れいむのあんよに向けじっくりと炙り始める。 「ゆ”ー!!あ、あぢゅいよ!!なにするのぉ!?でいぶのきゃわいいあんよさんをい”ぢめない”でえ!!」 「ゆううう!!おぢびじゃんにひどいごどじないでええええ!!やずみまぜんがら!!あるぎまずがらぁ!!」 「分かればよろしい、さっさと歩け」 「ゆうっう……ゆゆうっ……」 そうこうしている間にれいむたちの元ゆっくりプレイスに到着した、睨んだ通り近所の森林公園だった。 そういえばこの辺りにゆっくりが生息しているって近所のお喋りなおばさんが言ってたっけ。 僕は勝手に身体を休ませ始めた親れいむを蹴っ飛ばし、尋ねた。 「この付近でれいむの仲のよかったゆっくりはいるかい?」 「ゆ”ゆ”!?そ、そんなゆっぐりはいないよ、ここはでいぶだちだげがずんでだんだよ」 あからさまに嘘だ、眼が泳いでいる。 僕はジッポライターを再び叩こうとすると、その前に親れいむが折れた。 「いまず……ぱちゅりーがおどもだぢでず……いばもぎっどごごにいまず……」 「よし、じゃあ巣から誘き出せ」 「ぞ、ぞんなごどでぎるわげないでしょおぉおお!?おでぃいざん、ぱじゅりーにひどいごどずるぎでしょぉおお!?」 「あっそ、じゃあもう一回火炙りな」 「やでぃまず……でもぱじゅりーにひどいごどじないでね……」 はいはいと適当に相槌を打って、親れいむには「悪い人間が追ってきてる、早く皆で逃げよう」と垂らし込めと強要した。 親れいむの満身創痍な身体なら疑われることなく信用されるだろう。 リードを離し親れいむが古い木の根元に近付くと落ちた枝を漁った、 すると中からカモフラージュしたゆっくりの巣を発見し親れいむはおずおずとその中に入っていく、 その間に右手に持った子れいむを先ほど使った凧糸の余りで括り、近くの木の枝に引っ掛け両手はフリーな状態に、 僕は手頃な木の枝を装備すると巣の近くで身を潜めた。 暫くして――わらわらと飛び出してくるゆっくりぱちゅりー、そして番のゆっくりありす、子ありす子ぱちゅりー、 赤ありす、赤ぱちゅりー、合計12匹もいる、随分な数だ。 「ありす、ゆっくりしないでにげるわよ。おちびちゃんたちもぱちゅりーのあとについてきてね」 「そうね!ゆっくりしているひまはないわ、いなかもののにんげんにつかまったらさいごよ!」 ぱちゅりーの先導で隊列を整える子供たち、いよいよ出発となったところで僕は颯爽と飛び出した。 「おはよう、君たちはゆっくりできるゆっくりかな?」 満面の笑み、だが右手は木の枝を今にも振り下ろそうとしている。 「おちびちゃんたち!!にげてぇえ”え”ええ”ええ”!!!」 ありすが叫ぶ、ぱちゅりーが子を庇おうと前に出る、一斉に散らばろうとする子供たち、 僕はまず逃げ足の速そうな子ありすを枝で突き刺し、次に子ぱちゅりーを二の足で容赦なく踏み潰した。 あっという間に3匹死滅、森林公園に響く悲鳴、轟音、それらを無視して今度は残った赤ゆっくりたちを一匹一匹丁寧に枝で引き裂いていく。 親ありすは決死の覚悟で膨れ上がり僕の足元へ突進するも、ただただ跳ね返るだけで意味を成していない。 親ぱちゅりーが赤ぱちゅりーを口に隠そうとするが寸前のところで僕が赤ぱちゅりーを捕まえると それを親ありす、親ぱちゅりーに見せ締め上げた。 気付けば残り4匹、怯えてうんうんとしーしーを漏らした田舎者の赤ありすと 僕の手に掴まれ苦しそうに悶える赤ぱちゅりー、そして親の2匹だ。 「むきゅー!!なんでぇえええ、ぱ、ぱちゅりーのおちびちゃんたちをなんでぇえええ!!」 「ありすの……ありすのかわいいおちびちゃんが……よぐもっ!!いなかもののにんげんはゆっくりしないでしねぇ!!しねええ!」 「はいはい落ち着いてね、騒ぐと赤ぱちゅりーを潰しちゃうよー」 「む、むきゅー……っ!?」 ほんの一瞬で家族の大半を殺された親ぱちゅりーと親ありすは 後れて溢れ出した砂糖水の涙にようやく現実を理解したようで嗚咽を漏らしている、 この家族は完全なとばっちりなだけに少々可哀相だと思ったが目的の為には手段を選ぶつもりはないと僕は自分を納得させた。 「おいっ、れいむ出てこいよ、よくやった」 僕の言葉に反応し、ゆっくりと実に申し訳なさそうにぱちゅりーたちの巣穴から出てくる親れいむ、 れいむは無残に転がる死体の山と親友のぱちゅりーが涙する姿を見て思わず顔面を地面に平伏せた。 「ぱ、ぱちゅりー……ご、ごめんなさいっ!でいぶは……でいぶはぁあ!!」 「……れいむ、あなた……ぱちゅりーたちをにんげんにうったのね!?」 流石は森の賢者、賢い分だけ状況を飲み込むのが早い。 「し、しかたなかったんだよ!れいむもかわいいおぢびじゃんをゆじちにとられてるんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ごのぉおおおうらぎりものぉおお!!!でぇええええぇいぃぃぃぶううううう!!」 全ては親れいむの罠だと悟り飛びかかろうとした親ありすを 僕は脳天から枝を突き刺し沈黙させる「ゆ”っ……ゆ”っ……」と中枢餡に傷を追ったありすは 二度と意思の疎通ができないゆっくりに変わり果ててしまった。 これは加工場の職人がやってのける技法だ、僕は勿論そんなスキルを持っていないので偶然の産物だった。 「ありずぅ!!ありずうぅ!!!」 口をあんぐりと開け放ちニタニタと笑うだけの饅頭になってしまったありすに近付き必死に自分をアピールする親ぱちゅりー、 僕はそっと後ろから近付くと、親ぱちゅりーを身動きの取れない程度に踏みつけ、手に持っていた枝を親れいむの前に転がした。 「れいむ、試練だよ。そこの赤ありすをそれでゆっくり殺してね」 「ゆ”ゆ”ゆ”っ!!!!!どうぢでぞごまでしないといげない”のぉ!?おにい”ざんはあぐまだよ!ぜったいにゆっぐりできないよ!!!」 「悪魔でも鬼でも何でも結構、やれるかやれないかハッキリしろ」 「ゆゆっ……うっう……うっ……」 余りにも突然の出来事に、たった一人残された赤ありすは穴という穴から砂糖水を垂れ流し固まっている。 親れいむはぶつくさと何かを囁いている、それが自身を正当化する言葉だと気付いた時、親れいむは僕の放った枝を口に咥えた。 「まって、まっでぐだざい!!ぞのごだげは、ぞのごだけはたずげであげでくだざい!!にんげんのおにいざん、ぱぢゅりーはなんでもじまず!!でも、でもぞのごだけがどうが!!どうが!!」 必死の懇願だった、ぱちゅりーは土を舐めながら踏みつけている僕に願う。 僕は少しだけ考えた後、親れいむに提案した。 「じゃあれいむが赤れいむを見捨てられるならその赤ありすは助けてやろう、れいむお前が選べ、お前の子か他人の子か」 「ゆ”ぐぐ……ぞ、ぞんなの、ぞんなの……でぃぶのあぢびじゃんに……ぎまっでるよぉ……」 やっぱり自分の子の方が可愛いらしい、親れいむはきゅっと口を強く紡ぐともう一歩赤ありすに近付いた。 「むぎゅぅうう!!!!でいぶぇ!やべでぇええ!!!ぱぢゅりーのあがぢゃんだげはだずげであげてぇ!!おねがいだがら!!」 「ぼめんべ……ぼめんべばじゅりー……でぇぶばびぶんぼごががばいいんだひょ……」 「ゆぅあああああん!おきゃーじゃん!!!だじゅげじぇえええ!!!!!」 枝の鋭利な先端がこちらに向けられていることに気付いた赤ありすはよちよち歩きに毛が生えた程度の速さで逃げ出す。 親れいむは助走を付けその枝を躊躇なく赤ありすに背後から突き刺した、 裂かれた小麦粉の肌、溢れ出るカスタード、背中から眼を突き破るように枝が食い込み、 ぴくんと一回脈打ってぱちゅりーの最愛の娘はれいむの手によって死に絶えた。 「ぱぢゅりーのあがじゃんがぁあああああああ!!ゆるざない!!でいぶぅうう!!ゆっしょううらぶよ!!!でぇええいぃいぶはゆっくりしないでじねぇえええええ!!!!」 もういいだろう、頃合だ。 手に持った赤ぱちゅりーを容赦なく握り潰すと恨み言を念仏のように唱える親ぱちゅりーの前に捨て、 赤ぱちゅりーの最期を見送らせた後、僕は足の筋肉を全力で引き締め親ぱちゅりーを踏み潰した。 ひしゃげた親友の死体と広がる生クリームを見て親れいむは虚ろなまま謝罪を続けている。 僕は何気なく周囲を見渡すと、森林公園で暮らす他のゆっくりたちが騒ぎを聞きつけ逃げられるほどの距離を保ちながら こちらの様子を伺っていることに気付いた、僕の視線と重なるとゆっくりたちは直ぐに姿を隠した。 「それじゃあ帰ろうか、れいむは約束を守ったから子れいむだけは助けてあげるよ」 「ばじゅりー……ごめんね……ごめんねぇえええ……」 まるで聞いちゃいない、とりあえずやれることはやったので小枝に引っ掛けた子れいむを回収し、 親れいむにリードを付け引きずるように帰路に付いた、さあこれで一通りのシナリオは整った、後は適当に苛めるだけでいいだろう。 僕は脳内に描いたストーリーがどのように成就されるか、弾む気持ちを胸に帰宅への道をスキップで歩き始めた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 自宅に到着した頃には、太陽は高い空の上で日差しが頭上から降り注いでいた。 人間で言う脱水症状のような状態のカサカサになった肌であんぐりと舌を垂らした親れいむに 僕は自販機で買った炭酸入りオレンジジュースを掛け応急処置を施すと、 電気ポットと戯れているであろうまりさチームの結果を確かめるべく家にあがった。 そこに広がった光景は――。 「ばでぃざの……ばでぃざのあがじゃん、ゆっぐりじないでべんじをずるのぜぇ!!おがあざんがべーろべーろしてあげるがらぁあああああ!!!」 電気ポットの中ではなく地面に転がった赤まりさ2匹、その様は高所から落とされ破れた肌から円状に広がるように餡子を放出している、どちらも既に息絶えているようで、傍らで親まりさが涙を流しながら起き上がらせようと必死にぺーろぺーろしている。 どうやら親まりさは『がんばりすぎた』ようだ。 この電気ポット虐待には3パターンの結末がある。 親まりさが紐を離してしまい電気ポットに赤まりさを落とし茹であげられ死に至らしめてしまうてこと。 親まりさが紐を離さず、電気ポットの上で宙吊り状態を保持し続けること。 親まりさが紐を持ったまま下がることで引っ張り続け、凧紐を引っ掛けたU字フックを壊して赤まりさを落下死させてしまうこと。 この場合は言わずとも知れた後者である、赤まりさを引き上げ安全圏に押し上げた発想は良かったが 欲をかいて助けようとしたのがまずかった、親まりさは自らの行為で赤まりさを永遠のゆっくりへと突き落としたのだ。 そもそも想像力があればU字フックの高さを考慮して予知できるであろうが、そこは流石餡子脳というべきだろう。 「だから、ずっとそうしていてね。って言ったのに、あーあ」 嘆き嗚咽を漏らす親まりさの横で収納ボックスに入った残りの姉妹である、 子まりさ、赤れいむの視線が何故か冷たいことに僕は気付いた。 どういうことだ、と首を傾げて親まりさの周囲を見るとある物が無くなっていた。 「おまっ、大福食ってんじゃねーか」 親まりさの周囲に置いた4つの大福が見事に消失していた、僕はわんわんと泣き続ける親まりさの口元をぎゅっと片手で締めると 数字の8を描くようなタコの口を強制的に作られる、口周りを見ると大福の残りカスが付いていた。 「ゆぐっ……ゆぐっ……だいぶぐざん?おいじがっだのぜぇ……」 親まりさが子の亡骸の前で「うめぇ!これめっちゃうめえ!!うめぇ!まじうめぇ!!!」と言っている様を想像して 僕は思わず吹きそうになった、一通り泣き通した後大福を食ったのか、それとも死んだと確認した後、急いで大福を掻き込んだのか どにちらにしても、収納ボックス内の姉妹には随分と滑稽に見えたことだろう。 「おきゃーしゃんがれいみゅのおにぇえじゃんをみごろじにじであまあまざんをだべだんだひょぉ!!」 「おがーさんがひっばらなげればまりざのいもうどはじななぐでずんだんだよぉ!!おがーざんのぜいだよ!!!」 親れいむが帰ってきたことで収納ボックスの中の姉妹が騒ぎ立てる 大福を食べたことは姉妹の心象を相当悪くしたようで 『助けようとした結果に死んでしまった』ことが『親まりさの所為で死んでしまった』ことにすり替わっていた。 「まりじゃぁああああ!!でいぶは、でいぶはだいべんだっだんだよぉ!!!ぞればのに、まりざはっ!!まりざはっ!!!」 「おじ、おじづんぐだぜ……まりさのせいじゃないのぜぇ!!まりさだってがんばってだのぜぇ!!!」 「うちょだよ!!おきゃーしゃんがおにぇぇーしゃんをごろじだんだよぉ!!こどみょをゆっくちさせにゃいおやはゆっくちちね!!」 「どぉおおじでぞういうごどいうのぉおおお!?ばでぃざだって、ばでぃざだって……だいべんだっだんだよぉお!!いのぢがげだっだんだよぉ!!!」 いつの間にか壮大な家族喧嘩に発展してしまった、これは想定外だと髪をぽりぽりと掻き毟りながら 僕は親まりさを背後から帽子ごと掴み持ち上げる、そのまま成体ゆっくり用の木製の椅子に座らせる。 その椅子は少し変わっており三本のゴム紐が取り付けられている。 「ゆゆっ!おでぃざん?なにずるのぉ?」 「子供を見殺しにしたゲスを制裁しようと思ってね」 てきぱきと作業を進め、親まりさの頭部の帽子を取って頭にヘルメットを被せる。 「お、おでぃざん……ご、ごのいずゆっぐりできないぎがずるのぜ……ゆ、ゆっぐりじないでおろじでね!!」 ただならぬ気配を感じたのだろう、全身をゴム紐で雁字搦めにされた親まりさは頻りに降ろせと要求するが 僕はそれを無視して作業を続行する、親れいむも、子供たちも何事かと黙って様子を伺っている。 この椅子はただの椅子ではない、頭のヘルメットの電極と親まりさのあんよに備えられた電極、 これは電流を放出しゆっくりを死に至らしめる、ゆっくり用の電気椅子である。 先ほど、ぱちゅりー一家を惨殺した帰りに立ち寄ったゆ虐ショップで買ってきたものだ、 僕は理科の実験をする子供のようにわくわくと頬を緩ませながら全ての準備を整えた。 そして備品である操作盤を取り出すとポップな竜宮の使いが描かれたボタンを僕は躊躇なく押し込んだ。 「衣玖さんパワーオンッ!!」 「ゆゆっ?――……ゆー、ゆぎょ、ゆぎょぉお!ゆぎょおお”ぉお”お”お”え”え”え”え”えぇぇぇええ”えええ!!!!」 ゴム紐をはち切らんばかりにのた打ち回り、喉を潰すほどの大絶叫を奏でる親まりさ 小麦粉の肌はばりばりと削れ、眼が白めを向いているがまだ意識はあるようだ。 「ゆがあぁあああ!!ば、ばでぃざあっ!!!!」 「ゆあぁぁっ!!……おがーざんがぁっ!!おがーざんがぁっ!!」 「ゆぎょおぉお!!ゆぎょぎょぼぉお”お”お”ぉおお”お!!!!!!!」 僕はゆっくりが発する声とは思えない程の絹を裂くような悲鳴が実に心地いいと思いつつ 操作盤のボタンの竜宮の使いが頬を染めている『最大放電ボタン』を何気なく押し込んだ。 「ぎょぉお”お”ぉおおお”おお”、ゆぐごぉおお!!!!ゆぎゅお”ぉおお”おお”おおぇぇぇえ”え”ぇええ!!!!!!!」 直ぐに親まりさに異変が発生する、身体の中から青白い光が浮かび、寒天の眼は蒸発しそこから青い炎が勢いよく放出された。 両目と口、あにゃるなど穴という穴から炎が吹き上がる。 それでもまだ親まりさは生きているようで、ゴム紐で縛った身体を乱暴に震わせて脱出を試みようとしている。 今更開放されたところで助かることなど無論ありえないが。 数分して火を宿したまま親まりさはぴくりとも動かなくなった。 「なかなかそそられる最後だったな、お兄さん満足だよ」 ふと収納ボックスを見ると、赤れいむが餡子を吐き切って絶命してしまっていた、どうやら刺激が強すぎたようだ。 親れいむも子まりさも子れいむ固まって微動だにしないので赤れいむが死んだことに気付いていない。 死んでしまったものはしょうがないので拾い上げてゴミ箱に捨てると残された3匹を死なない程度に虐めを繰り返した。 あまりにも惨たらしい死に様を目撃した後の3匹は実に従順でいい響きを何度も何度も聞かせてくれたのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 親まりさを電気椅子で殺してから一ヶ月が経過した。 それからの虐待は死んでいった家族たちのそれと比べるとかなり加減されたものであったが、 日に日に衰弱していく残りの3匹には相当応えるようであった。 最初に死んだ赤ゆっくりがどうやって死んだのか忘れたのを確認すると、僕は今までの虐待がまるでなかったことかのように 残った家族たちに優しく接し、あまあまを与え身体の回復を促した。 どういうことなのかと怯えるゆっくりたちであったが、翌日の日曜の朝に僕が発した言葉にゆっくりたちは思わず怪訝な顔を作った。 「今日でみんなをおうちに帰してあげるよ、今までご苦労だったね」 「ゆ……お、おでぃざん……も、もうでいぶだぢをいじめないの?……」 「そうだよ」 「ぼ、ぼんどうなの?もうなにもじないの?」 「なにもしないよ」 どういう吹き回しなのか、新しい虐めへの布石なのか、とゆっくりならぬ疑心暗鬼に陥っていたが 僕は3匹を車に乗せ、近所の森林公園に行くとそこで何をするでもなく3匹を開放した。 開放されたと分かったゆっくりたちは、ひぃーひぃーと物凄い速さで駆け抜け公園の奥へ進んでいった。 僕との距離を置き、完全に振り切れると確信した位置にくると親れいむは振り返り、僕に向かって最後に叫んだ。 「ぐぞじじいばゆっぐりじないでじねぇ!!!!」 最後の抵抗だったのだろう、僕はにやにやと微笑みつつ逃げていくゆっくり一家の背中を見送った。 GPS対応の携帯ゲーム機で地図を表示しインカム型のイヤホンと望遠鏡を取り出しゆっくりと一家の後を追った。 「もうおうぢがえるぅ!!ゆっぐりでぎないのはいやぁあああ!!!」 親れいむを先頭に、それを追い子れいむ、子まりさが泣きながら約一ヶ月振りとなる我が家を目指していた。 古い大木の根元に掘った巣穴に雪崩込むように入ると、そこには若いゆっくりの夫婦が陣取っていた。 見知らぬ顔のゆっくりまりさとその番のゆっくりありすである。 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ!!!!ゆっくりしないででていってね!!!!」 「なにいってるのぜ、ここはまりさとありすのぷれいすだよ!あとからきたゆっくりがおうちせんげんしちゃいけないんのぜ」 「あなたたちいなかものまるだしよ、まるでゆっくりできていないわ」 興奮冷めないという形相で怒り狂う親れいむ不、可解に首を傾げるまりさとありす。 すると巣の外がなにやら騒がしいことに気付いて、親れいむとまりさ、ありすは何事かと入り口から様子を伺うと この集落の長であるゆっくりぱちゅりーと近所のゆっくりたちが集まってきて人だかりができていた。 「ゆ!!おさっ!!れいむだよ、かえってきたんだよ!!くそじじいにひどいめにあわされたんだよぉ!!」 「むきゅー……れいむ……かえってきてしまったのね……」 何故かとても残念そうに溜め息を漏らす長ぱちゅりー、親れいむは不思議そうな顔をして周囲を見渡すと、 ご近所だったゆっくりみょんとゆっくりちぇんがいつの間にか子まりさ、子れいむを捕まえて離さないようにしていた。 「ゆゆ……おかーさん……」 「ゆ!!れいむのおちびちゃんになにをするの!!ゆっくりしないではなしてね!!」 「……ちーんぽ」 ゆっくりみょんの視線は鋭い、いや集落の全員が向ける視線が痛々しいほどに 突き刺さってくることに気付いて親れいむは威圧感に押される形で一歩だけ後ずさった。 「ど、どうしてぞんなごとするの?れ、れいむがなにをしたっていうのぉお!?」 「しね!!ゆっくりしないでしね!!おかーさんをにんげんにうったげすゆっくりはしね!!」 長ぱちゅりーの背中に隠れていたまだ成体になって間もないゆっくりぱちゅりーがひょっと飛び出すと 集落のゆっくりの中で一番鋭利な視線を向け、親れいむにぱちゅりー種ならぬ罵倒を浴びせた。 その容姿に親れいむは面影を見出した、親れいむを呪いながら死んでいった親友のぱちゅりーと瓜二つの顔を。 「ゆがぁ!?……ぱ、ぱちゅりー!?」 親れいむは思い出してしまった。 我が子の命と引き換えにぱちゅりー一家を、ぱちゅりーの大切な赤ありすを殺してしまった事実を。 このぱちゅりーはあの惨殺の日の前日から、独り立ちの日が近いことから 長の家で訓練と心構えを学ぶべく巣を離れており、難を逃れていたゆっくりだった。 しかし、遠くから何も出来ずに両親と姉妹が死んでいく様を目撃しており、 親ぱちゅりーの『ゆっしょううらぶよ!!』という悲痛な叫びも耳にしてしまっていたのだった。 一夜にして大切な家族が一人残らず殺されてしまう、若く幼いぱちゅりーに同情するのは集落のゆっくりのほぼ全てと言ってよかった。 「ゆぐっ……ば、ばじゅりー……ご、ごめんね……で、でいぶが、でいぶがわるがっだんだよ……」 「れいむ……おきてをまもるべきだわ、ゆっくりころしはせいさいをうけなければいけないのよ」 そう長ぱちゅりーが言い放つと、他のゆっくりたちが各々の口に手頃な枝を咥え始める。 その鋭く尖った先が向けられたのは親れいむではなく、子まりさと子れいむだった。 親れいむはハッとなった、本来は自分に向けられるであろう矛先がどうして子ゆっくりたちに向いているのかと。 「むきゅー、れいむのおちびちゃんはなるべくゆっくりしないでえいえんにゆっくりさせるのよ」 「まっで、まっでぇ!!どぉじでおぢびじゃんがせいざいをうげるのぉおお!? わるいのはでいぶだけだよぉお!!おぢびじゃんばがんげいないよぉおお!!」 長ぱちゅりーは一度だけ泣きじゃくる親れいむを一瞥した。 子ゆっくりたちに本来、罪はない、集落の掟にも親の罪を子が背負う道理などは決まっていないのだ。 だがなぜ親れいむへの制裁が子ゆっくりにも及ぶのか、それは集落の皆がそうするべきだと訴えたからだ。 もし長ぱちゅりーが長の権限で子への制裁を取りやめたら、行き場のない怒りを抱えたぴりぴりとした集落の関係に 埋められない程の深い溝を作ってしまう、それでは集落として機能がなされなくなてしまう。 それほどまでに今回の一件は集落のゆっくりたちに大きな傷跡を残してしまったのだ。 ルールを守るからこそ意味があるので超法規的措置としてそれを反故すれば秩序を保つのは難しくなってしまう。 長ぱちゅりーはそれがとても恐かった、だからこそ死んでいった者たちには悪いと思いつつ 親れいむ一家が帰ってこないことを密かに願っていたのだった。 「ま、まっでぐだざい!!で、でいぶはどうなっでもいいでず!!でもおぢびじゃんだげは!おぢびじゃんだけば だずげであげでぐだざい!!ずっどぐぞじじいにいじめられでだんでず!!やっどがいほうざれだんです!!ぜめで、ぜめで!!」 「むきゅー……そういってしんでいったぱちゅりーにれいむはなにをしたのかゆっくりおもいだすべきだわ……」 最初に飛び出したのは唯一の被害者家族であるぱちゅりー、身動きが取れず親れいむに助けを求める子まりさの眼を狙って 咥えた枝で襲い掛かる、それはあの日の親れいむと全く同じ光景だった、ただ一つ違うのは獲物を仕留めたぱちゅりーの表情が とても、とても満足そうにほくそ笑んでいたことだ。 次いで子れいむ、同じように知り合いのゆっくりまりさが力強い一撃を放ち永遠のゆっくりへと誘わせた。 「でいぶのぉおお!!でいぶのぉおおおお!!!!おぢびじゃあぁん!!!!!!」 一体、何故、どうして、何が、分からない、最後に残った親れいむは全ての家族を何もかもを失いただただ嘆くしか出来なかった。 これで何度目の涙だろう、枯れるほどに流した、しかし寒天で作られた眼が乾燥することは最期までなかった。 復讐の鬼と化したぱちゅりーが忍び寄る、何かを言っている、何を言っているのか良く分からない、いや、そうか――。 『でぇええいぃいぶはゆっくりしないでじねぇえええええ!!!!』 親友だった、裏切ってしまった、ぱちゅりーの声が、親れいむには確かに聴こえたのだった。 無数の枝の先が迫ってくる、魂を抜かれたようにぐったりと項垂れた親れいむは、意識が閑散となったことで 遠くでこちらを見ている人影を見たくもない人影を見つけてしまった。 あのくそじじいがこちらを見て笑っている、あいつの所為だ、あの人間の所為なんだ、 そう叫ぶことも叶わず、親れいむは何十の殺意の中で消えていった。 もうれいむはなにもかんじることができない――。 END ※あとがき 本作品が二作目です、長々とした本作にお付き合い下さり最大級の感謝です! 私事で恐縮なうえにここで書くべきことではないと思うのですが 前作のanko2103.ゆっくり熟年離婚の挿絵を描いてくれた方、ありがとうございましたっ 自分の作品如きに挿絵だなんて恐縮というか逆に申し訳なくなりました どこでお礼を言えばいいのか分からなかったのでここで書いてしまいましたけど まずいかなぁ、まずかったらごめんなさい…… 書いた人:おおかみねこあき 挿絵:車田あき
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『おうち宣言を証明してね!』 55KB いじめ 自業自得 お家宣言 同族殺し 共食い 群れ 野良ゆ ゲス 現代 虐待人間 「ゆゆっ?どうしてくそにんげんがまりささまのおうちにいるんだぜ?」 「ゆっくりしないではやくでていってね!ここはくそにんげんごときが、きやすくはいっていいばしょじゃないんだよ!」 「おうちせんげんしたんだからこのおうちはもう、まりささまのおうちなんだぜ!」 「でみょそにょみゃえにあみゃあみゃはおいちぇっちぇにぇえ!そちたられいみゅのうんうんをたべしゃせてあげちぇもいいよ!」 「うんうんたべちゃらまりちゃちゃまのどれいにして、しぬまでこきつかってやっちぇもいいんだじぇ!げらげら!」 歩いて2分のコンビニにちょっと振込みにいって自宅に帰ってみると。 野良と思われる糞饅頭どもが俺の家に入り込んで部屋を荒らした挙句、偉そうに俺に命令してきやがった。 どうやら俺が家を留守にした隙を狙い、おうち宣言のルールを盾に家を乗っ取ろうという魂胆のようだ。 まったく、おうち宣言なんつーゆっくりが作った手前勝手なルールなんか 人間には通用しないというのがなんでいまだに理解できないのかねえ…… 「ゆっ!まってねまりさ!れいむはむかしぱちぇりーからきいたことがあるよ!」 「なにをきいたんだぜれいむ!?」 「くそにんげんはゆっくりのでんっとうっのぎしきである『おうちせんげん』をりかいできないていのうっなんだって!」 「な、なんだってぇぇぇっ!くそにんげんはそんなにっ!あたまがっ!かわいそうっ!なのかぜぇぇぇぇっ!?」 「おうちせんげんはぜっちゃい!なんだじぇ!そんにゃのこどものまりちゃでもしっちぇるんだじぇぇぇっ!」 「そうだね!おちびちゃんはかしこいね!でもくそにんげんはばかだからわからないんだよ!」 ……そうだな、ここんとこ忙しくてゆっくりの虐待ができずストレスが溜まってた所だ。 ちょうど汚ねえ糞野良どもが自分からのこのこやってきたんだし、ひとつ暇つぶしに遊んでやるかな? 「で、でもれいむ!もしかしたらこのじじいはばかじゃないかもしれないんだぜ!?」 「ばかだったらおうちせんげんのるーるすらりかいできないくずだよ!まんがいちこのじじいがばかじゃなかったら このおうちをれいむたちにあけわたすはずだよ!」 「ばかはゆっくちできにゃいにぇえ!げらげら!」 「じじいはばかにゃの?ばかはゆっくちできないのじぇ!」 うん、こいつらまごうことなき正真正銘のゲスだな。たった今お前らの命運は尽きたぞ?ははっ。 糞野良ゆっくりに家を乗っとられたらどうする! どうする?どうする?君ならどうする!?まかせるんだ!鬼意惨にッッ! さあさあっ虐待鬼意惨のパーフェクト糞野良いじめタイムがはじまるよー! 「おいっもういちどきくのぜ!じじいはおうちせんげんがわからないばかじゃないのぜ!?」 「ばかだとおもわれたくなかったら、いますぐれいむたちにおうちををあけわたしてね!」 「おうちせんげんがりきゃいできにゃいくしょにんげんはばきゃ!」 「ばきゃといわれたくなかっちゃらおうちをよこすんだじぇ!あとあみゃあみゃももってくるんだじぇ!」 へえ?頭の悪い糞野良のクセに少しは知恵を出してきたじゃないか。 わざとバカだのなんだのとプライドを刺激する挑発的な言葉を使い、バカだと言われたくなかったら おうち宣言を認めろと誘導しているわけだ。まあ誘導がヘタクソすぎてゆっくりしか騙せない話術だがな。 ふーん……いいよ?あえて乗ってやるよそれ。そういう相手を騙して貶めることをやらせたら 人間の方が一枚も二枚も上手だということを思い知らせてやるぜ。 「とんでもない!俺はバカじゃないよ!ゆっくりの伝統の儀式であるおうち宣言を理解できないはずないじゃないか!」 「ゆ……ゆわぁぁぁい!や、やったのぜ!じじいがおうちせんげんをみとめたのぜぇぇぇぇっ!」 「このゆっくりできるおうちはきょうかられいむたちのものだよぉぉぉぉっ!」 「ゆぷぷ!でもじじいはやっぱりばかなのじぇ!」 「じぶんがばかだっちぇみとめたくないからって、おうちせんげんをみとめりゅなんちぇにぇえ!」 「ゆんっ!でももうおそいよ!ゆっくりげんちはとったんだからね!おうちはもうかえさないよ!」 「まりささまのずのうてきしょうりなのぜぇぇぇっ!ねえおうちとられてどんなきもち?どんなきもちぃ~~?」 いやあ見事なまでに調子こいてるなあ。 まあ今のうちにせいぜいいい気になってればいいさ……ククク。 「まあ心配せずとも本当におうち宣言したのならこの家の所有権はちゃんと認めてやるさ。 ああそうだ、出て行く前にちょっといくつか聞きたいことがあるんだけど……まずお前たちはいつおうち宣言したの?」 「さっきだぜ!」 「さっきじゃわからないよ。何時何分何秒?だいたいでいいから教えてくれよ」 「ゆっ?……さ、さっきはさっきだぜ!しついこいとまりさおこるんだぜ!」 「ふーん。じゃあ今はそれでいいや。あと君たちがおうち宣言したときにこの家に誰かいたかい?」 「ゆっ?なにいってるの?わざわざじじいのるすをねらっておうちにはいりこんでおうちせんげんしたんだよ? だれもいるわけないよ!」 おいおい。このれいむ空き巣同然におうち強盗をしたと自分から白状しちまいやがったよ。 「ふむ……つまりお前達がおうち宣言をした正確な時間はわからず、おうち宣言を証明してくれる人もいないと……」 「それがどうしたのぜ!?もういいからくそじじいはさっさとまりささまのおうちからでていくのぜ!」 「はやくでていってね!ここはもうおまえのおうちじゃないんだからね!りかいできないならもういちどいうよ! このおうちはれいむたちがおうちせんげんしたんだよ!だからもうじじいの……」 「嘘、だな」 「……ゆっ?」 「お前ら本当はおうち宣言なんてしてないんだろ?俺が意外に早く帰ってきたからとっさに嘘をついたんじゃないか? おうち宣言しましたってさ……まったく最低だな!嘘つきゆっくりなんて!」 しばしの沈黙……野良ゆっくりどもは俺が言ったことを即座には理解できない。 そりゃそうだ餡子脳と言われるくらい低脳なゆっくりだからな。 だが時間をかけてだんだん俺の言葉が理解してくる……そうそう理解しつつあるのが表情に現れてきたぞ。 顔を赤くして歪ませてぷるぷるふるえて……さんはい! 「ゆうううううううっ!な、なにぞれえええええええええええっ!?」 「れいぶはうそなんてづいでないぃぃぃぃぃっ!ほんとうにちゃんとおうちせんげんをしたんだぁぁぁぁぁっ!」 「えー本当にしたのぉ~?」 「まちがいなくおうちせんげんしたよ!ちゃんとかぞくみんなで!ここをみんなのゆっくりぷれいすにするよって!」 「じゃあ確かにそのおうち宣言をしたという証拠を見せてよ!」 「ゆ?ゆゆゆゆゆゆっ!?」 「ど、どぼいうごとぉぉぉぉぉっ!?」 「おうち宣言をしたらこの家はお前達のもの……それはいいよ!ゆっくりの伝統の由緒正しい儀式で常識だものね! 認めるよ!でもおうち宣言をしたという嘘をついただけならば話は別だよ!」 「だ、だきゃらぁ!まりしゃたちはおうちせんげんしたっちぇいっちぇるでしょぉぉぉっ!?」 「じじいはばきゃにゃの!れいみゅのことばがわきゃんにゃいにょ!?ちぬにょおおおおおおおっ!?」 「だっていつ宣言したのか時間もわからない!宣言を聞いた者もいない!それじゃ本当におうち宣言をしたのかどうか 不明瞭すぎて信用できないよ!だからお前ら親子がここで確かにおうち宣言したという証拠もしくは証人を見せてね! 今すぐでいいよ!」 「しょ、しょんなごといわれちぇにょ……」 もちろん「おうち宣言した証拠」なんてものがこの糞野良親子に出せるわけがない。 そりゃそうだ。ゆっくりが写真だの動画だの撮れるわけないし、 そもそも留守狙いなんだから宣言に立ち会った第三者の証人もいるわけがない。 というわけで今回は頭からおうち宣言を否定して痛めつけるというお決まりの虐待ではなく、 おうち宣言を認めた上でおうち宣言の成立を否定するという少し変わった虐待いじめをするよ! 「じゃあおうち宣言したなんて嘘をついた嘘つきゆっくりは今すぐでていってね!ここはお前らのおうちなんかじゃないよ!」 「だがらぁぁぁぁっ!ばりざはおうちせんげんしたっていっでるでしょぉぉぉっ!?」 「じじいはばかなの!?じぬのぉぉぉっ!なんでれいぶだちがうそついたってきめつけるのぉぉぉぉぉっ!」 「だったら嘘じゃないという証拠を見せてってば!おうち宣言が嘘じゃないなら簡単に出せるでしょ!」 「ぞ、ぞれはぞの……しょ、しょうこさんはないげど、ぞれでもたじかにばりざはおうちせんげんじだんだぜぇぇぇっ!」 「ぞうだよ!ばりざのいうどおりだよ!いいがかりっもたいがいにじでねぇぇぇっ!」 「証拠を出せないんだ?じゃあやっぱりおうち宣言したというのは嘘だったんだね!」 「だぁぁぁぁっ!かぁぁぁぁっ!らぁぁぁぁっっっ!!」 野良まりさとれいむは必死に自分達はおうち宣言を確かにしたんだと俺に喰らいついてくる。 ここまでおうち宣言したと主張するということは宣言自体は本当に行われたのだろう。 嘘をついていたら必ずどこかで諦めたり折れたり矛盾したりする。 事実だからこそしつこく食い下がる。 だけど俺はその言葉を信じない。いや信じないフリをする。 何故ならばそれが真実を訴える者にとって一番堪える行為だからだ。 「おうち宣言の証拠を出せないようだね!じゃあ俺のおうちに不法侵入したゲスにゆっくりお仕置きするよ!」 「だきゃらおうちせんげんしたっちぇ、いっちぇりゅでしょぉぉぉっ!?」 「なんでじじいはれいぶのおはなしがりかいできないのぉぉっ!ばかなの?じ……」 ピシャァァンッ! 「い……っ?い、いだいぃぃぃっ!?」 「れいぶぅぅぅっ!じ、じじいぃぃぃぃっ!ばりざのれいぶになにをじだぁぁぁぁっ!?」 「なにってただハエ叩きでぶっただけだよ!嘘つきゆっくりには罰を与えないとね!」 「だきゃらうしょなんちぇちゅいてにゃいぃぃぃぃっ!ど、どぼじでぇぇぇっ!? どぼじてくしょじじいはれいみゅのおはなしをしんじにゃ」 ピシャァッ! 「ゆぴぃぃぃっ!」 「じ、じじいぃぃぃっ!おばえなにやっでるんだぁぁぁっ!?ばりざのおちびをいじめるなぁぁぁぁっ!」 「うるさいよこの嘘つきゆっくり!嘘をついたお前らが悪いんだよ!ゆっくりしないでりかいしてね!」 「り、りがいでぎるがぁぁぁぁっ!ゆがああああああっ!」 「嘘つきまりさはゆっくりおしおきするよ!」 ピシィッ! 「ゆぴょぉっ!?い、いだいいいいい!おぼにぜんしんがいだいいいいいいいっ!」 「おうち宣言を悪用した、悪いゆっくりのおうち強盗はお兄さんが許さないよ!」 「きょ、きょにょぉぉぉ!へりくつばきゃりいうくちょじじいは、さいっきょうのまりちゃがしぇいしゃいちてや」 ピシィッ!ピシッ! 「ゆんやああああ!いじゃいぃぃぃ!きゃわいいまりちゃのびはだしゃんぎゃぁぁぁぁぁっ!?」」 「ばりざにのりりしいおちびがぁぁぁっ!」 「ばりざぁぁぁ!はやくじじいをせいさいっじでねぇぇぇっ!?はやくじでねぇぇぇぇぇっ!」 「ゆっ?ゆゆっ!ぞ、ぞうだぜ!つよいばりざがくそじじいをせいさいっすれば」 「うっせバーカ」 ピシャッ!ピシャッ!ピシャァァンッ!! 「ゆぎゃぁぁぁぁっ!や、やらぁ!はえたたきさんはもうやらぁぁぁっ!?いたいのはもうやらぁぁぁぁっ!」 「ばりざぁぁぁぁっ!ゆっぐじ!ゆっぐじじでよぉぉぉっ!ゆああああっ!どぼじてぇぇぇぇっ!? どぼじてごんなごとにぃぃぃぃっ!?」 「ゆんやあああああ!」 「ゆっくちできにゃい!こんにゃのじぇんじぇんゆっくちできにゃいんだじぇぇぇぇぇっ!?」 「嘘つきはゆっくり反省してね!嘘つきはゆっくり反省してね!嘘つきはゆっくりしないで猛省してねっっっ!!」 ピシャッ!ピシィッ!ピシャァッ!ピシャァァァッ! 俺は糞野良一家どもを優しく、やさ~~しく手加減しながらハエ叩きで全身をまんべんなく叩き続けた。 あまり力を入れすぎると脆弱なこいつらは皮が破れて餡子が漏れすぐ死んだり狂ったりしてしまう。 それでは興醒めなのだ。せめて自力でここから逃げ出せるくらいの力はあえて残すようにしないと…… ふむ、ハエ叩きによる打撃で糞野良の四匹は全身のいたる所が赤く腫れまくってきたな。 砂糖水の涙をちょちょぎらせてゆんやーゆんやーと叫ぶばかりでもはや反撃も抵抗もしようとはしない。 もうすぐだ。ほうらもうすぐ心が折れるぞ…… 「も、もうやらぁっ!ばりさおうちかえるぅぅぅぅっ!」 「ま、まっでよばりざぁぁぁっ!れいぶをおいていかないでぇぇぇぇっ!」 「ゆわーん!れいみゅはゆっくちにげりゅよぉぉぉっ!」 「ゆっくち!ゆっくちぃぃぃ!だれでもいいきゃら、きゃわいいまりちゃをゆっくちしゃせりゅのじぇぇぇぇっ!」 やっと出たかおうち帰る宣言。 糞野良どもは泣きながらケツをぷりぷり振りつつ懸命にいずこかへと一直線に這っていく。 ああくそ、あのうんうんがこびりついた汚ねえケツをこのハエ叩きで思う存分叩きてえぇぇぇぇっ! だがまて!我慢しろ俺……!ここでこの糞どもを逃がしとかねえと後が続かないんだ。辛抱するんだ俺! ……ん?あ、糞どもが逃げる先をよくよく見れば庭に面した引き戸が開いてやがる。 糞野良どもめあそこから入ってきたのか? まったく俺がうっかり鍵を閉め忘れた隙を抜け目なく突きやがって……! 「おじびぃぃぃぃっ!おどうさんのおぼうしのながにはいるんだぜぇぇぇっ!」 「おかあさんのおくちのなかにはいればあんっぜんっだよぉぉぉっ!」 「ゆゆっ!はやくおちょうしゃんのおぼうちにひなんっしゅるのじぇ!」 「ゆえーんゆえーん!もうこんなゆっくちできにゃいおうちはいやりゃよ!はやくおきゃあしゃんのおくちにはいりゅよ! でもいっぴゃいはねちぇちゅかれちゃきゃら、ひとやすみしてきゃらいきゅよ!」 にしてもこいつら逃げるのが遅いなー 命がかかった逃走劇だというのにトロすぎるなんてもんじゃねえわ。 これはいくらなんでもゆっくりしすぎだろ…… 「ゆひぃ!ゆひぃ!もうすぐでぐちさんなのぜぇぇぇっ!」 「ゆゆーん!おちょうしゃんのおぼうちのにゃかはゆっくちできりゅんだじぇ!」 「おきゃあしゃんのおくちのなかはてっぺきっだにぇえ!くそじじいはてもあしもだしぇないもんにぇえ!」 「ゆゆっ!くそじじいはれいむたちのじんっそくっなえくそだすさんにおいつけないみたいだよ!?」 「れいぶぅぅぅっ!はやくあんっぜんっなここまでくるのぜぇぇぇ!はやくぅぅぅっ!」 ……そして俺の足元から糞野良一家が逃走を開始してからおよそ5分後。 糞野良一家はようやく庭に面した引き戸に到着すると、 よほど疲れたのかしばらくはゆへーゆへーと息を整えていた。 息を整えたらそのまま引き戸の隙間から外へ逃げるのかな?と俺は思っていたのだが…… なぜか一家が揃って一勢に俺の方を振り向きやがった。 わざわざ親まりさの帽子の隙間からまりちゃが顔を出し、親れいむも口を開いて中のれいみゅが顔を見せている。 そして今しがたまで泣き喚きながら俺から逃げてたというのに、急に勝ち誇ったような不愉快なドヤ顔で俺に捨て台詞を吐いた。 「「「「まりさ(れいむ)においつけないくそじじいはのろまでばかだね!そこでゆっくりせずにしんでね!げらげらげら!」」」」 そう言い放って連中は俺に背を向けると野良一家は引き戸の隙間に飛び込んでそのまま庭へと逃げた。 親れいむはお返しだとばかりに去り際にぷぴぃ~!屁をこくというオマケつきだ。 野郎。わざと逃がしたとはいえムカつく最後っ屁を放ってくれたじゃねえか…… 今のは少しピキィッ!ときたぞ? ……ふん、まあいいさこれで終わりってわけじゃねえんだ。むしろこれからが本番さ……ククク…… お兄さんの家の敷地を出てほんの少しだけ離れた道にある電柱の陰。 脱出になんとか成功した野良まりさ一家はひとまずそこで休憩をとっていた。 親まりさは周囲を見渡して先ほどのお兄さんが追ってこないかどうか警戒していた…… が、どうやらその心配は杞憂に終わったようだ。 「ゆっ?ゆっ?……ゆふん!もうあんしんっなんだぜ!くそじじいはおいかけてこないんだぜ!」 「ゆゆ~ん!れいむたちのあまりのあんよのはやさにおいつけなかったんだよ!ほんとじじいはのろまだね!」 「まりさ、うさいん・ぼるときゅうのしゅんっそくっでごめんね!」 「ゆぷぷ!じじいはのろま!じじいはのろまぁぁぁっ!」 「ゆっくち~!」 ついさっきまでお兄さんにハエ叩きでさんざんに痛めつけられて泣かされたことは都合よく忘れ、 ゆっくりできない人間から逃げきれたことに有頂天になってゆっくりする野良まりさ一家。 とりあえず一通り家族で生還の喜びを分かち合ったが人間のおうちを失ったという事実は変わらない。 これからどうするかと思案する野良一家であったが…… 「ねえまりさこれからどうするの?ゆっくりしたおうちはへりくつこねるくそじじいにとられちゃったんだよ……?」 「ゆん……しかたないんだぜ!ひとまずこうえんさんにある、まえのおうちにかえってゆっくりするんだぜ!」 「ゆゆっ?おうちしゃんをもらうのはやめちゃうにょ?れいみゅもっちょあみゃあみゃたべちゃいよ!」 「くしょじじいをしぇいしゃいっしないのじぇ?おちょうしゃん、しょれはゆっくちできないんだじぇ……?」 「ゆっ!かんちがいしないでねおちびたち!しんぱいせずともまりさたちのおうちをひきょうで ふとうっなしゅだんでうばった、あのくそじじいはあとでかならずせいっさいっするんだぜ! でもさっきまでゆっくりできなかったから、とりあえずいまはかえってゆっくりするんだぜ! ゆっくりしたらこうえんさんのむれのみんなにこのひどうっをうったえるんだぜ! そうすればかならずみんながまりさたちのせいせんっにきょうりょくするはずなのぜ! そのときこそがくそじじいへのりべんじっ!のときなんだぜ!」 「ゆゆ~~ん!かっこいいよぉまりさぁ~~♪さすがれいむのまりさだよぉぉぉっ!」 「ゆううううう!そうっだいっなびじょんっにもとづいたかんっぺきなけいかくなのじぇぇっ! しゃしゅがさいっきょうっのまりちゃのおとうしゃんなのじぇぇぇぇっ!」 「しょうときまれば、ゆっくちこうえんしゃんのおうちにかえろうにぇ!」 「ゆんっそうだね!まえのおうちにかえって!みんなでとっておきのあまあまさんをたべて!すーやすーやして! それからむれのどれいどもをあつめて、くそじじいにふくしゅうっするんだぜ!」 「「「ゆっくり(ち)~~~~♪」」」 そう言いたい放題いってひとまずゆっくりすると、 野良まりさ一家は「公園のむれにある前のおうち」とやらに意気揚揚と帰っていったのであった。 その様子をほくそえみながら隠れて見ている者がいるとも知らずに…… 「ゆんっ!ようやくこうえんさんにかえってきたんだぜ!」 そして野良まりさ一家は、お兄さんの家から200mほど離れた場所にある児童公園にやっと帰還した。 本当にやっとである。ずーりずーりと這っては疲れたと言って休憩してはゆっくりをし、 そしてまたずーりずーりと移動を再開してはすぐに疲れたといって休憩をし…… まあハエ叩きでやられたダメージもあるのだろうが結局人間なら遅くても徒歩5分、 元気なゆっくりなら遅くとも15分で到達するところをこの一家は40分近くもかかってようやく公園に辿り付いたのだった。 「はやくまえのおうちにかえろうね!かえってすぐにゆっくりしようね!」 「ゆゆ~ん♪まりしゃゆっくちするんだじぇ!」 「れいみゅみょ、あみゃあみゃしゃんをたべちぇゆっくちしゅるよ!」 「まえのおうちはこっちにあるんだぜ!みんなおとうさんについてくるんだぜ~~♪」 公園内に入り込んでもう危険はないと思ったのか、 無警戒にぴょんぴよん跳ねながら前のおうちへと向かう野良まりさ一家。 目指すは公園の隅にあるブルーシートがかけられた横倒しのダンボール箱である。 それがこの野良まりさ一家が言う「おうち」だ。 はやく帰ってむーしゃむーしゃしよう、ゆっくりしてすーやすーやしよう、ただそれだけを思って跳ねていくまりさ達。 だがおうちに近付くにつれ親まりさはおうちに普段とは違う違和感を感じた。 おうちの前に誰かがいるみたいだという違和感を。 (……ゆっ?まりさのまえのおうちのまえにだれかいるんだぜ?だれだぜ?どこかでみたような……) 親まりさが跳ねながらそう思ったそのとき。 その誰かは野良まりさ一家にゆっくりと振り向き突如宣言した。 「ゆっくりしていってねっ!ここはお兄さんがおうち宣言をした、お兄さんののおうちだよ! 糞野良が気安く入っていい場所じゃないよ!ゆっくり理解したらゆっくりしないでとっととどこかへ消えてね!」 「「「「ゆっ…………?ゆ、ゆうううううううううううううっっ!??」」」」 ダンボール箱のおうちの前で折り畳み式のイスに座ってゆっくりしつつ、おうち宣言したその人物とは。 先ほど野良まりさ一家をハエ叩きで痛めつけて家から追い出したお兄さん……いや虐待鬼意惨その人であった! やれやれ、やっと糞野良どものお帰りか……まったく待ちくたびれたぜ。 ん?俺が公園に来てまで何をしているかって?そりゃもちろんさっきの虐待いじめの続きさ。 仮にも虐待鬼意惨を名乗る者がおうち宣言したゲス相手にたったあれだけで済ますわけないだろぉ? というわけで連中が公園のおうちに帰ると盗み聞きした俺は、先回りしてこの公園へとやってきたわけだ。 野良ゆっくりの行動範囲なんてどうせ狭いに決まってるんだから、公園といえば俺の家から一番近いここしかないだろう。 そう思ってこの公園にきて、ここに住んでいる群れの野良どもにあの一家のことを聞いたら見事ビンゴだったというわけだ。 群れの野良どもからさらに糞野良一家の「前のおうち」とやらの場所も聞き出した俺は、 こうしておうち宣言返しという新たなステージへと虐待いじめを進めたというわけなのである。 「ど、どぼいうごどおおおおおおおおおっっ!?」 「おうちせんげんっちぇ……れいみゅたちのおうちとられちゃったにょぉぉぉっ!?」 「にゃにしょれぇぇぇぇぇっ!しょんにゃのゆっくちできにゃいんだじぇぇぇぇぇっ!?」 「じ……じじいぃぃぃっ!?な、なにいっでるんだぜぇぇぇっ!?ぞこはばりざのおうちなのぜぇぇぇぇっ!」 「だーかーらー!俺がここでおうち宣言したんだってば!よってこのクソ汚ねえダンボール箱はもう俺のおうちだよ!」 「ふ、ふ、ふざけないでねぇぇぇぇっ!ぞのおうちはれいぶだちのおうちでしょぉぉぉぉっ!」 「おやぁ~?もしかしてれいむはおうち宣言を破る気なの?ゆっくりの由緒正しい伝統の儀式なんでしょお~?」 「ゆぐっ!?ぞ、ぞれは……ぞの……!」 「おうち宣言を破るのはゲスのやることだよ!ゆっくりしないで即座に理解してね!」 「り、り、り、りがいなんででぎるかぁぁぁぁぁっ!」 「そしてそこのまりちゃ!お前さっき言ってたよなあ?おうち宣言は絶対!で子供でも理解してるルールだってな!」 「ゆぅぅっ!?」 「だったらお前も俺のおうち宣言に文句なんてないよな?だっておうち宣言は絶対っ!のルールなんだから!」 「まりちゃのばきゃぁぁぁっ!どぼじてぞんなよけいなごといっだにょお!」 「ま、まりちゃはわるくにゃいんだじぇぇぇぇっ!」 案の定、俺のおうち宣言返しに糞野良一家どもは狼狽してやがる。 ああこれだよーこの野良どもの焦燥と絶望感がたまんねえ~。いい気味いい気味♪ 「で、でぼっ!でぼおうちをとるなんてあんまりでしょぉぉぉぉっ!?ごれかられいぶたちはどこで むーしゃむーしゃやすーやすーやをすればいいのぉぉぉっ!?」 「さあ?そんなの知らないよ!とにかくここはお兄さんのおうちになったんだからいますぐでていってね!」 「ぞ、ぞんなひどいっっ!ぞんなのっでないでしょぉぉぉぉ!いくらなんでもりふじんっすぎるでしょぉぉぉぉっ!? ぞのおうちにはいっぱいっ!いっばいっっ!いーっぱいのおもいでがつまっている、 れいむとばりざとおちびじゃんたちのめもりあるっ!なんだよぉぉぉぉっ!? しんこんじだいっのれいぶとまりざのっ!おちびじゃんだちがうまれてゆっくりしたときのっ! たくさんのおもいでがつまったかけがえのないおうちなんだよぉぉぉぉっ! ぞれをとるなんであまりにもひどすぎるでしょぉぉぉっ!?」 「と、言われてもおうち宣言はそういうものだから仕方ないよ!それに理不尽と言われても、 そもそもおうち宣言はゆっくりが自分たちで決めたルールなんだから人間であるお兄さんに文句言われても困るよ!」 「ゆ、ゆぐぅぅぅっ!?ぞ、ぞんな……!ぞんなぁぁぁぁっ!」 ふん。他人の家を奪うときには偉そうにおうち宣言を大義名分にするくせに、 自分の家がおうち宣言で奪われたら理不尽だって泣き叫ぶのかよ。 なんなんだろうなこいつらゆっくりって? 思い出がたくさん詰まったメモリアルであるお家とやらを口先ひとつで奪われた奴の気持ちを考えれば、 おうち宣言なんていう穴だらけのルールはおかしいと普通思うはずだが…… ゆっくりはそういう事を誰も考えようとはしないんだろうか? ……まあ考えないんだろうな。所詮こいつらは自分だけがゆっくりできればそれでいいわけで、 ゆっくりを奪われた他の連中が泣こうが喚こうが悲しもうがどうなってもいいんだろう。 むしろその嘆き悲しむ姿を見てさらにゆっくりしようという貪欲で腐れ外道なナマモノときたもんだ。 ま、そんな腐れナマモノだからこそ俺も糞ゆっくりどもに対して遠慮無用で思う存分やれるってわけだがな。 「も、もうゆるちぇないのじぇぇぇ!おうちをうばうげしゅなくしょじじいは、さいっきょうっのまりちゃがしぇいしゃい…」 「ん?なに?もう一度お兄さんとやりあおうっていうの?」 「は、は、はえたたきしゃんだぁぁぁっ!?」 「ゆんやああああ!ありぇでたたきゃれるのはゆっくちできにゃいぃぃぃぃっ!」 「ゆううう!お、おちびじゃんはおがあさんがぜっったいっにまもるよぉぉぉっ!ぷくーっ!ぷくく――――っ!」 まりしゃとれいみゅを背後に隠した親れいむが俺に頬を膨らまして威嚇してきやがる。 毎度お馴染みのぷくーってやつか。ああハエ叩きでこいつの膨らんだ横っツラをおもいっきりはたきてぇー。 「ゆっ!くそじじいっそこまでなんだぜっ!」 「……?」 と、その時。今まで黙りこくってた親まりさが突然俺の前に出てきた。 妙に自信たっぷりなニヤニヤ顔がムカつく。ふーんこいつ……その浅知恵でなにか思いつきやがったのかな? 「ねんのためにじじいにもういちどきくのぜ?くそじじいはまりさのおうちでおうちせんげんをしたのぜ?」 「ああ、したよ?」 「おうちせんげんのるーるはぜったいっ!なのぜ。いちどおうちせんげんされたらそれはもうくつがえらないのぜ。 つまりそのおうちはもう……じじいのおうちってことになるのぜ」 「だな」 「ぷしゅるるるぅぅぅぅ~~……ばりざぁぁぁっ!な、なにをいって…」 「れいむはだまっててね!」 「ゆゆっ!?」 「もういちどいうのぜ?おうちせんげんはくつがえらないんだぜ…… ただし!それはおうちせんげんをほんとうにしたのなら、のはなしだぜぇぇぇぇっ!」 「ゆゆっ!?ば、ばりざぞれっで!」 「さあくそじじいぃぃぃっ!おまえがおうちせんげんをたしかにした!というしょうこさんをいますぐみせるのぜぇぇぇっ! しょうこさんがなければそのおうちはじじいのおうちじゃなくて、やっぱりまりさたちのおうちなのぜぇぇぇぇっ!!」 「す……すごいよばりざぁ!じじいのへりくつをさかてにとったんだねぇぇぇっ!」 「ましゃにべつりょういきからのやいばっ!なのじぇぇぇっ!」 「おちょうしゃん、あちゃまいい~~~~!」 「さあさあさあ!しょうこさんをいますぐだすんだぜ!でもおうちせんげんのしょうこなんてだせるはずないんだぜ!」 「けいせいっぎゃくてんっだねくそじじいっ!ねえいまどんなきもち?ねえねえどんなきもちぃ~~? くやしい?ねえくやしい~~?ぷぷぷっ!くやしがってるひまがあったらさっさとおうちからでていってね! そこはれいむたちのおうちなんだよ!」 「……いいよ?見せてあげるよ」 「しょれにしても、しゃしゅがまりちゃのおとうしゃんにゃのじぇ!おうちせんげんのもうてんっをつくなんて すごしゅぎるのじぇ!」 「ゆゆ~~ん♪それほどのことはあるのぜおちび!」 「ばりさはかりだけじゃなくて、ずのうもてんさいっだったんだね!れいむはながたかいよ!」 「ゆふん!あたまがおばかじゃよのなかわたっていけないのぜ!もっとほめてくれていいのぜ!」 「いますぐ証拠を見せてあげるからちょっと待っててね~」 「こりぇでおうちはふたたびれいみゅたちのもにょだにぇえ!」 「まりちゃはいつかこのしゅごいおとうしゃんをのりこえてみしぇるのじぇ!そちたらしぇかいをしぇいふくちて くそにんげんどもをみ~んなまりちゃのどれいにしてやるのじぇえ!」 「まりさにのおちびちゃんならば、おとうさんがなしえなかったゆめをきっとかなえることができるんだぜ!」 「りりしいよまりしゃとおとうしゃん……まさにかんっどうっのおやこあいだよぉぉっ!」 「ゆっ……!れいむ、なんだかなみだがでてきちゃったよ……これがかんっどうっのなみだなんだね…!」 「これとこれと……」 「ゆふふ……かんっどうっはおうちでゆっくりしたあとでおもうぞんぶんしたらいいのぜ! って、まだいたのかぜくそじじいっ!さっさとそこをどくんだぜぇ!じじいのむだにでかいずうたいがじゃまで まりさたちがおうちにはいれないんだぜぇぇぇっ!」 「あ、安い三文芝居はおわった?はいこれ。俺がおうち宣言した証拠だよ!」 「…………ゆっ?」 「……ゆっ?」 「…ゆっ?」 「………しょ……しょうこ……しゃん?」 俺はとりあえず数枚の写真を取り出して野良まりさ達に見せた。 なんかこいつら、さっきまで人の話も聞かずに異様に勝ち誇って盛り上がっていた反動ゆえか 出るはずがない証拠という現実に唖然とした顔で固まってやがるな。 思考が追いつかないのか?まあ口出ししてくれない方が話が早いのでさっさと説明してやることにしよう。 「ほらこの写真見てみろ。お前らのダンボール箱の前で俺がピースしてるだろ?これがまずおうち宣言した証拠その1な」 「……」 「写真の隅に時刻もちゃんとあるのがわかるだろ?2011年10月○日、午後2時12分……今からだいたい20分前だな」 「……」 「まあこれだけじゃ本当におうち宣言したと認めない恐れがあるので……おうち宣言した証拠その2、 ハンディカムデジカメ~!これに全部録画してあるよ!俺がおうち宣言した所をいま見せてあげるね!」 「……」 俺はデジカメをちゃっちゃと操作すると画面を固まっている糞野良一家に見やすいように向けた。 画面内では俺が汚いダンボールの前でピースしながら「ここをお兄さんのゆっくりプレイスにするよ!」と叫んでいる。 ……しかし我ながらなんと恥ずかしい。ゆっくりのやる行為ってまさにアホ丸出しのものばかりだな。 「とまあこんなもんかな?さあちゃんとおうち宣言した証拠を出したんだから、今度こそ出て行ってよね!」 「……」 「……」 「……」 「……」 物的証拠を出して完璧におうち宣言を立証した俺。 しかし完璧にやり込めたわりには糞野良どもになんの反応もないのが気になるな。 ショックのあまり死んだか?うーんこのまま様子見ていても埒があかないし、 蹴飛ばして生きてるのかどうか反応を確かめてみるかな……と思ったその時。 「……っぞう……な…ぜ……」 「ん?」 「…んなの……しょうこさんじゃ…んだぜ……ねつっぞうした…うその……さんなんだ…ぜ……」 「……はあ?」 そう呟くや野良一家どもは目に涙をためた汚いツラをキッ!と上げて、俺に猛然と喰ってかかってきやがった。 「ぞんなのっ!ぞんなのっ!ばりざだちからおうちをうばうためにねつっぞうっした、うそのしょうこさんだぜぇぇぇっ!」 「おうちせんげんじたじょうこざんなんであるわけないんだ!だがらぞれはうそなんだぁぁぁっ!」 「じじいのおうちせんげんにゃんかむこうっなんりゃぁぁぁっ!れいみゅがそういうからそうなんりゃぁぁぁぁっ!」 「みとめないのじぇぇぇぇっ!まりちゃのおうちはまりちゃのものなのじぇぇぇぇっ!」 「おいおい、写真や映像にちゃんと日時もはっきり表示されてるのに捏造なんて出来るわけないだろ?バカなの?死ぬの?」 「ば、ばかはじじいのほうだぁぁぁぁっ!さっぎも!いまも!ふとうっでひきょうなしゅだんでばりざがら おうちをうばおうとしやがっでぇぇぇっ!」 「だいいち、おうちせんげんおうちせんげんってじじいがひどりでがっでにいっでるだけのごとでしょぉぉぉっ!?」 「ちょうだよ!じじいがおうちせんげんをしちゃというにゃら、しょれをしょうめいしちぇくりぇる しょうにんしゃんをちゅれちぇきょい!」 「ゆふん!でもどうせしょんにゃのいないにきまっちぇるのじぇぇぇぇ!」 「ゆ……ゆゆっ!?おちびたちそれはいいかんがえなのぜ!じじいのおうちせんげんにしょうにんさんなんて」 「いるぞ?」 「いるわけな……はあああああああっ!?」 「おーいみんなでてこーい」 俺が声をかけると公園のあちこちから野良ゆっくりどもがぞろぞろと出てきた。 こいつらはこの公園で群れて細々と暮らしている野良ゆっくりたちだ。 さっきまでの俺たちのやり取りを見ていたからか、どいつもこいつもなんか複雑な顔をしている。 そんな野良ゆっくりどもの中から年老いたぱちゅりーが一匹進み出てきた。こいつはこの公園の群れの長である。 「まりさ……れいむ……」 「お、おさぁ!こ、これはいったいどういうことなのぜぇぇぇっ!?」 「……なあ長。俺あの薄汚いダンボール箱の前でおうち宣言したよなぁ?」 「むきゅ。たしかににんげんさんはおうちせんげんしたわ……」 「おざぁぁぁっ!?ど、どぼじでぞんなごというんだぜぇぇぇぇっ!?」 「どぼじてくそじじいのみかたをずるのぉ!?れいぶがごんなにごまっでるんだよ!?ぱちゅりーはばかなのぉぉぉっ!?」 「みかたもなにないわ。だってじじつだもの。むれのみんなでにんげんさんのおうちせんげんにたちあったんだから、 だれにきいてもおなじこたえがかえってくるはずよ。むきゅ」 「「「「ど、どぼじてぞんなごというのぉぉぉぉぉぉっ!?」」」」 さて説明せねばなるまい。 先回りして公園にきたとき、俺はまっ先にこの群れのゆっくりどもを味方につけておいたのだ。 なに味方につけるといっても一番安いゆっくりフードをバラまいて あとは逆らうと一勢駆除しようかなーとかなんとか言って軽く脅すだけでいい。 飴と鞭をちょっと使うだけで、公園の野良ゆっくりという輩はおとなしく人間の言うことをきくようになる。 それに俺の要求というのはこれから誰も住んでいないダンボール箱の前でおうち宣言するから、 みんなでその宣言に立ち会って証人になってくれというだけのものだ。 その程度のことならば野良どもにとって断る理由などなにもあろうはずがない。 しかしまあ結果的に群れの一員である野良まりさ一家にとって不利な証言をしなければならないのだから、 連中の心中は穏やかではないと思う。ゆっくりフードで買収されたという後ろめたさもあるのだろう。 それが連中の複雑な表情の理由となっている。 はっはっはっこれもまた野良ゆいじめの醍醐味という奴だな!愉快愉快♪ 「にんげんさんのおうちせんげんはせいとうっなものだったわ。だからもうこのおうちはまりさたちのものじゃないわ まりさとれいむにはわるいけど……このおうちはにんげんさんのおうちってことね。むきゅ…」 「もんくのつけようのないおうちせんげんだったのぜ。こうなったらまりさたちはなにもてだしできないのぜ」 「これはもうどうしようもないんだねー。まりさとれいむはゆっくりあきらめてねー!」 「お、おさぁぁぁっ!みんなぁぁぁ!?どぼじでえ!?どぼじでみんなしてばりさたちにいじわるずるのぉぉぉっ!?」 「ひどいよぉぉぉぉっ!れいぶがゆっくりしてるからみんなしっとしでるのぉぉぉぉっ!?」 「しっとなんかしてないわ。それよりも……まりさにれいむ?あなたたちにんげんさんのおうちへいったそうね!」 「ゆ……ゆゆっ!?」 「ど、どぼじておさがぞれをじっでるんだぜぇぇぇっ!?」 「このにんげんさんからすべてきいたわ。あなたたちがしたことをぜんぶね!」 「ゆ、ゆげえええええええっ!?」 「むれのおきてで、にんげんさんのいえにはいりこんでのおうちせんげんはきんしされているはずだみょん!」 「おきてをやぶるなんていなかもののすることよ!?」 「ちぇんにはわからないんだねー!どうしてそんなばかなことをしたのー!?」 「まりさたちのかってなこうどうのせいで、むれがくじょされちゃったらどうせきにんをとるつもりなの!」 「な……なんでぇぇぇぇっ!?なんでまりざたちがみんなにおこられでるのぉぉぉぉぉっ!?」 「なんなのごれぇ!どぼじてれいぶがごんなめにあわなぎゃならないのぉぉ!?どぼじてぇぇぇぇっ!?」 「ゆううううっ!き、きょわいんだじぇぇぇぇっ!」 「なんでもいいきゃられいみゅをゆっくちしゃせてよぉぉぉぉっ!」 さーて今度は野良まりさ一家が群れから弾劾される番だ。 何故ならばこの群れではおうち宣言のみならず、とにかく人間に迷惑をかける行為のすべてが禁止されている。 当たり前の話だ。人間にお目こぼししてもらう事でなんとか公園で辛いながらも生き延びてる状態だというのに、 その人間の機嫌を損ねたらこんなチンケな公園の群れなどたちまちのうちに駆除されてしまう。 この群れの連中は人間を敵に回すことの愚かさを嫌というほど思い知っているのだ。 「むきゅ!さあまりさ、ゆっくりせつめいしてちょうだい。なんでにんげんさんのおうちをとろうとしたの!」 「だ、だって……ばりさのおうちせまくなっできたじ……くそじじいのおうちのほうが……ぞの、 ゆっくじでぎそうだったし……」 「だからって、にんげんさんにかかわってはだめでしょ!ぱちゅはおさとしてあなたがおちびちゃんのころから くちがすっぱくなるほどおしえたはずよ!にんげんさんのものをとろうとしたらゆっくりできなくなるって!」 「で、でぼ……でぼぉぉ……」 「むきゅぅぅっ……!あとれいむ!」 「ゆっ!?」 「れいむもどうざいっよ!なんでまりさをとめようとしなかったの!」 「れ、れいぶはとめたんだよ!?で、でもばりさがくそじじいはせいさいっするからだいじょうぶっていうから! れいぶもばりさにだまされたんだよ!せ、せいさいっするならばりさだけにしてね!?」 「れ、れいぶうううううっ!?どぼじてぞんなごというのぜぇぇぇぇっ!」 「……むきゅ、そうはいかないわ。おきてをやぶったゆっくりはどんなじじょうであれせいさいっされるのよ!」 「ゆ、ゆげぇぇぇぇぇっ!?だ、だかられいぶはだまされただけでわるくないんだってばぁぁぁっ! ぱちゅりーはみみがとおいのぉぉぉぉっ!?」 「……れいむ。れいむがほんとうにまりさをとめるきがあったのなら、 れいむはさいごまでまりさをせっとくっして、にんげんさんのおうちにいくのをやめさせるべきだったのよ。 けっきょくれいむもいっしょににんげんさんのおうちにいったってことは、まりさにさんせいしたってことでしょ? いいだしっぺはまりさかもしれないけど、おうちにいったじてんでれいむにもれんたいせきにんがあるのよ!」 「ゆ、ゆがあああああ!わけのわがらないごとをいうなああああああああっ!」 「どぼじてぇぇぇぇっ!?どぼじてみんなしてまりざにいじわるするのぜぇぇぇぇっ!? まりざがおうちせんげんしたらそこはもうまりざのおうちでしょぉぉぉぉっ!? しょうことかしょうにんとかごちゃごちゃとなんなのぉぉぉぉっ!? じじいのおうちも!こうえんさんのおうちも!ぜんぶぜーんぶまりざのおうちだろぉぉぉぉッ!!」 親まりさと親れいむはもはや、じたばた地面を転がって駄々をこねるだけの子供と化した。 その姿はでおもちゃ売り場でおもちゃを買ってとねだる子供そのものだ。 泣いて喚いて暴れて。それもゆっくりの成体という大の大人がやってるんだからまったくウザいことこの上ない。 最初は申し訳なさそうな複雑な顔をしていた群れのゆっくりたちも、 親まりさとれいむの醜態を見ているうちにだんだんといーらいーらしてきたようだ。 そして遂にさっきから何か言いたそうにしてた野良ありすが、意を決して駄々をこねまくる親まりさ達の前に進み出てきた。 「まりさ……!」 「……ゆっ!?お、おとなりのありす!?たすけにきたのぜ?かわいそうなまりざをはやくたすけるのぜぇぇっ!」 「ねえまりさ。きょうのおひるごろ、まりさがこのおうちからでてきたところをありすとあったわよね。おぼえてる?」 「ゆ……ゆっ?」 「ありすがおちびちゃんたちまでつれてどこへいくの?ってきいたら『あたらしいおうちをさがしにいくんだぜ』って まりさはじょうきげんでありすにいってたでしょ?」 「ゆっ……!た、たしかにこうえんさんをしゅっぱつするときにありすにはあったのぜ。でも」 「そのときありすはなにげなくまりさにきいたわ。『じゃあこのおうちはどうするの?』って」 「ぞれが…」 「そしたらまりさはえがおでこういったわ!『こんなせまくてちいさいおうちなんかもういらないんだぜ!』ってね!」 「どうし……ゆ、ゆああああああああっ!?」 「おもいだした?まりさはじぶんからこのおうちをすてたのよ!にんげんさんのおうちせんげんがどうあろうと このおうちはもうまりさたちのおうちじゃないの!」 「あ、あああ……!ぞ、ぞんなぁぁぁっ……」 「ば、ばりざあああああ!どぼじてぞんなよけいなごといっちゃったのぉぉぉぉっ!?」 「だっでくそにんげんのおうちへおひっこしすれば、もうこのおうちはいらないでしょぉぉぉぉっ!?」 「だがらっでぇぇぇっ!」 「まちなさいよ。れいむもたしかまりさのあとにこういってたわ…… 『うんうんまみれのきたないおうちでいいならありすにあげてもいいよ!せいぜいだいじにすんでね!げらげら』って!」 「ゆううううううううううっ!?」 「おきゃあしゃんのばきゃぁぁぁぁっ!どぼちてしょんなこちょいっちゃったにょぉぉぉぉっ!?」 「ゆんやああああ!おうちがないのはいやなんだじぇぇぇっ!じぇんじぇんゆっくちできにゃいんだじぇぇぇぇっ!」 これで野良まりさ一家のおうち所有権の正当性、そのすべてが崩れ去ったわけだ。 引越し先を決めずに無計画の行き当たりばったりで行動してばかりいるからそういう目にあうのだバカめ。 それに何がメモリアルだ。偉そうな御託並べてたくせに最初から捨てる気満々だったんじゃねーか。 さて、そろそろ頃合かな……俺は糞野良どもの「前のおうち」の前に行くとわざとらしく言った。 「でもまあ……おうち宣言したはいいけれど、こんなダンボール箱じゃ小さすぎてお兄さんじゃとても住めないよなー 住めないもんはどうしようもないし、これどうしようっかなー?」 そう呟く俺の言葉に糞野良一家どもの目が一勢に輝いた。 住めないのだから自分たちにおうちを返してくれるかもしれないとかそういう都合のいいこと考えているんだろう。 ゆっくりってほんとすぐこういう薄っぺらい希望に飛びつくよなぁ。 「そ、そうだぜ!そのおうちはくそじ…にんげんさんにはちいさすぎるのぜぇ!」 「すめないおうちをもっててもしかたないでしょ!だったられいぶたちに…」 「そうだな!住めないおうちを持ってても仕方ないしな!公園の美観を損ねることだしこんなおうち壊して捨てちまおう♪」 「……ゆっ?」 「まずはゴミ袋をとりだして……箱の中のガラクタやゴミを捨てまーす♪」 「ゆ、ゆぎゃああああ!ばりざのふかふかざん(古タオル)がぁ!おちびのべっどさんがぁぁぁっ!?」 「ゆんやああああ!まりしゃのたかりゃものぉぉっ!きれいないししゃんがあぁぁ!かえちて!かえちてよぉぉぉぉっ!」 「中身をカラッポにしたらダンボール箱をバラして……びーりびーり!しあわせ~♪」 「どぼじてだんぼーるさんをやぶいちゃうのぉぉぉぉっ!?」 「やめちぇぇぇっ!ゆっくちちたれいみゅのおうちしゃん!おうちしゃんをこわしゃないぢぇぇぇぇっ!」 「ついでにブルーシートも二度と野良どもが利用できないようにカッターで細切れにしちまおう♪」 「やべて!やべてやべてやべてぇぇぇっ!ばりざのおうちっ!ぐろうじてつくったばりざのおうちぃぃぃぃっ!」 嬉々としておうち破壊に勤しむ俺に我慢できなくなったのか、野良一家どもが俺に向かって突進してきた。 しかしそんな野良一家の前に公園の群れのゆっくりたちが立ちふさがる。 口にくわえた尖った枝を突きつけて野良まりさ達を威嚇しはじめた。 「ちかづくんじゃないみょん!」 「あれはもうまりさたちのおうちじゃないんだねー!にんげんさんがじぶんのものをどうしようがかってなんだよー!」 「かってっでごとないでしょぉぉぉぉぉっ!?あれはばりざのおうちなんだよぉぉぉぉっ!?」 「いいえっ!あれはにんげんさんのおうちよ!これいじょうじぶんのおうちだといいはるつもりならまりさ!れいむ! にんげんさんにめいわくをかけたつみでこんどこそほんとうにせいっさいっするわよ!むきゅっ」 「ゆ、ゆぎぃぃぃぃぃっ!」 「ゆんやああああああああああああああああああっっ!!?」 それから野良一家は歯を折れんばかりにかみ締め、大量の涙を流し、俺を睨み殺さんばかりの目でおうち破壊を見続けていた。 もちろん俺はそんな恨みだの悲しみだのはどこ吹く風だけどね♪ ゆっくりごときの怨念が怖くて虐待鬼意惨がやってられるかい。 そうこうしている内に作業は終わりおうちを完全に破壊した。2つのゴミ袋におうちの残骸を詰めてはい終了。 さーていい暇つぶしになったしそろそろ帰ろうかな。 「じゃあ長、俺そろそろ帰るわ。このゴミは俺の方で処分しとくから心配すんな」 「むきゅ、わかったわにんげんさん」 「ああ、あと……あの野良一家だけどさ。掟破りらしいけど制裁はしないでくれるかな?」 「むきゅ?に、にんげんさんがそういうのならせいさいっはしないけど……でもどうして?」 「なーに俺は迷惑かけられたなんてこれっぽっちも感じてない。別に怒ってないからいいってことさ」 「あ、ありがとうにんげんさんっ!むきゅきゅっきいた?まりさ!れいむ!じひぶかいにんげんさんがゆるしてくれるそうよ! ほらっあなたたちからもにんげんさんにちゃんとおれいをいいなさい!」 「ゆ、ゆぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃっ!」 「ゆごぐげごごごごっっ!」 顔を醜く歪ませ、今にも俺に飛び掛らんばかりの形相で怒りを懸命にこらえている野良まりさと野良れいむ&ちび。 ま、俺にお礼を言えといわれたって悔しくて悲しくて腹が立って、とてもそんな気持ちにはなれないだろうよ。 そんなわけだから俺の方から野良一家どものところへ行くと、しゃがんで野良まりさたちにやさ~しく語りかけた。 「おいてめーら俺に感謝しろよ?本来ならお前達はな、俺の家で虐待されて死ぬよりも辛くて恐ろしい苦しみを味わうか、 もしくは掟破りで群れに制裁されるかのどちらかしかねーんだ。それをお前、お飾りもおさげも破壊しないでさ、 多少ハエ叩きで痛めつけただけという無事な状態で帰してやろうってんだから俺はなんて優しいんだろうな? こんなに優しい虐待鬼意惨はめったにいないぞ!お前ら運がよかったな!」 「ゆぎぎぎぎっっっ!だ、だばれぇぇぇ……!おばえの……おばえのぜいでぇぇぇぇっ!」 「お、おうち……れいぶのおうちをこわじでおいで……こわじでおいでおばえはなにをいっでるんだぁぁぁぁっ……!」 「ころちてやりゅぅぅぅ……ぜっちゃいにころちてやりゅのじぇぇぇぇ………っ!」 「いちゅかかならじゅ、おばえをゆっくちできにゃくちてやりゅぅぅぅぅぅ……!」 「あっそ。んじゃそんときをせいぜい楽しみにしてるわ♪じゃーな糞野良ども!はっはっはっ……すっきりぃ―――っ!」 「「「「ゆ、ゆがあああああああああああああああっっっ!!」」」」 俺は糞野良一家の怨嗟の絶叫をゆっくりした気持ちで聞きつつゴミ袋を手に公園を後にした。 確かに俺のいじめは人間の家に侵入しておうち宣言をした野良ゆっくりに対する処罰としては軽いものかもしれない。 虐待鬼意惨のやることとしては物足りないと誰もが思うだろう。 だが俺にとってはこれで充分だった。なぜって俺には確信があるからだ。 このゲスっぷりじゃあどうせこの一家は長く生きられねーだろーなー……という確信がな。 「ざ、ざぶいぃぃぃぃっ!」 「しゃむしゅぎるんだじぇぇぇぇっ!おきゃあしゃぁぁぁん!もっちょまりちゃにしゅーりしゅーりちてぇぇぇぇっ!」 「おちびじゃん!もっどおかあさんのそばによっでね!ほらすーりーすーり!すーり!すーりぃぃぃぃっ!!」 「し、しゃぶいのもうやらよぉぉぉ……れいみゅおにゃかしゅいたよぉぉぉぉ……」 男が公園から去った後……すぐに日が暮れて夜となった。 秋の日はつるべ落としとはよく言ったもので、野良まりさ一家が破壊されたおうちの代わりを探す暇などまったくなかった。 しかも群れの制裁は免れたものの、掟を破って醜態を晒したまりさ一家に対する群れのゆっくり達の態度はどこか冷たい。 今夜はどこか他のゆっくりのおうちに泊めてもらい、翌日新しいおうちを探しにいこう…… と考えていた野良まりさ一家であったが、群れのゆっくり達にことごとく宿泊を断わられたのであった。 まあ四匹もの野良ゆっくりに宿を貸せるほど広いおうちをもった野良ゆっくりなど この公園にはいないというのが実情ではあるが。 で、結局野良まりさ一家はこうして新聞紙で身をくるんだだけの状態で野宿する羽目となった。 秋も深まり寒くなりつつあるこの時期に野宿は辛い。 長ぱちぇりーから一応群れの一員だから、という理由で貰った晩ごはんはとっくにみんなで食べ尽くした。 外のあまりの寒さにガタガタ震えるばかりでゆっくりはもちろん、すーやすーやなんてとてもできない。 すーりすーりを繰り返して少しでも暖を取ろうとするが、そんな運動をしていれば段々体力を消耗してお腹がすいてくる。 だが食べるものなどもうどこにもないのだ。 「ど、どぼじてぇぇぇ……?どぼじてまりさたちがごんなめにあわなきゃいけないのぜぇぇぇっ……?」 親まりさはわけがわからなかった。 本当ならば今頃クソジジイのおうちで快適にゆっくりしているはずなのに…… いやクソジジイのおうちが駄目だったとしても公園のおうちでゆっくりできてたはずだ。 なのにクソジジイのおうちは手に入らず、公園のおうちはそのジジイに破壊されて今はもうない。 (なんでぇ?ばりさなにもわるいことしてないんだぜ?りふじんっなのぜ。ごんなのゆっぐりできないんだぜぇぇぇ……) 新聞紙で身をくるんで震えていると周囲のゆっくり達のおうちからゆっくりとした声が聞こえてくる。 「むーしゃむーしゃしあわせー!」だの「しゅーりしゅーり!」だのといった幸せいっぱいの声ばかりが。 家族団欒の楽しげな会話……喜びの声……夕食時は群れのゆっくりたちの貴重なゆっくりタイムだ。 それらの声や会話は今の親まりさ、いやこの一家全ゆんにとって聞きたくないものだった。 何故なら周囲が楽しげであればあるほど今の自分たちのみじめさを嫌でも思い知らされるから。 「おかあしゃん!ちぇんにしゅーりしゅーりちてにぇえー!」 「ゆふふっ!ありすのおちびちゃんはあまえんぼうね!ほうらすーりすーり!」 「ゆっくちできりゅんだにぇ~わきゃるよぉ~!」 「ちぇんのおちびちゃんはあまえたいざかりなんだねー。ほほえましいんだねーわかるよー!」 「……」 「……」 野良まりさたちが震えている所から一番近い場所にある少し大きめのダンボールのおうち。 その中では野良ちぇんと野良ありす、そしてそのおちびちゃんである子ちぇんが家族団欒の時間を楽しんでいた。 しばらくの間、寒さに凍えながら虚ろな表情で野良まりさ一家はちぇん一家の様子を聞いていた。 親まりさは最初ちぇん達はゆっくりしているなと思った。次に羨ましく思った。次に惨めな気分になった。 そして……だんだんゆっくりしているちぇん一家が妬ましく、そして終いには憎らしく思えてきた。 (なんでまりさがゆっくりでぎてないのに、ちぇんのやつだけがゆっくりしてるんだぜ……?ぞんなのおかしいんだぜ… きっとまりさのゆっくりをふとうっでひきょうっなしゅだんでひとりじめにしているにちがいないのぜぇっ……!) 親まりさは家族の元をふらりと離れて、ふらふらとちぇんとありすのおうちへと向かっていった。 他の家族も親まりさと同じことを考えていたのだろうか、 くるまっていた古新聞を捨てて3匹とも親まりさの後についてふらふらと移動を開始した。 「それじゃそろそろみんなですーやすーやするんだねー!おやす……ゆっ?」 「ま、まりさ?れいむにおちびちゃんたちも……?こんなよなかにどうしたの?ありすのおうちになにかよう?」 「……」 ちぇんとありすのおうちの入り口に立った親まりさと親れいむ。 野良ありすの問いに答えることはなく死んだような目でちぇんのおうちの中をじろじろ見ている。 その様子はゆっくりにとってたまらなく不気味であった。 「……ゆふん。かけっこしかのうがないちぇんにしては、なかなかわるくないおうちなのぜ?」 「そうだね。れいむもそうおもうよ……くずにしてはじょうできなんじゃない?」 「ごひゃんしゃんもありゅにぇえ……」 「べっどしゃんもねごこちよさそうなのじぇ……」 「な、なにをいってるのー?ちぇんにもわかるようにいってねー!」 (なにかしら……まりさたちのようすがいつもとちがう。おかしいわ………ゆっ?まさか……!) その時。ありすの脳裏に昼間の出来事が強く思い浮かんだ。 おうち宣言が問題となった昼間のあの騒動……ありすは理屈ではなく直感で感じた。 もしかしたら親まりさ達はちぇんとありすのおうちを奪おうとおうち宣言をしようとしている?……と。 そしてその直感は的中した。親まりさたちはいきなりニヤリとゲス丸出しの顔をすると高らかにおうち宣言を始めたのだ! 「まりさはこのおうちがきにいったんだぜぇぇぇ!」 「れいむもきにいったよぉぉぉぉっ!」 「れいみゅもぉ!」 「まりちゃもなんだじぇぇぇっ!」 「ここをまりさ(れいむ)たちのゆっくりぷれいすにす『だめよっ!ここはありすとちぇんのおうちよっ!』……ゆっ?」 おうち宣言にはたったひとつだけ合法的に宣言を無効にする方法が存在する。 それはおうち宣言をしている最中に異議を唱えることだ。 おうち宣言の最中にそのおうちの持ち主等に宣言を邪魔されたらその宣言は成立せず無効となる。 だがこの方法でゆっくりがおうち宣言を阻止できた例は天文学的に少ない。 何故ならば突然、他のゆっくりが巣に入り込んできていきなりおうち宣言をするという 一種の奇襲に対応できるほどゆっくりの頭の回転は早くないからだ。 だからおうち宣言はまず防げないのが常識となっている。 ならばなぜ野良ありすは奇跡的ともいえるおうち宣言阻止を成しえたのであろうか? それは親まりさ達がおうち宣言をするであろうと直感で見抜き、宣言に備えて身構えていたからである。 奇襲が奇襲でなくなれば。相手の次の行動を予測して備えることができれば。 ゆっくりでも三分七分くらいの確率でおうち宣言阻止はできるはず。 野良ありすは運良く稀少なおうち宣言阻止成功という目を引き当てたのだ。 「ど、どぼじてばりさのおうちせんげんをだめだなんていうのぉぉぉぉぉっ!?」 「なんでぇ?なんでぇぇ?おうちせんげんはしたらぜったいにせいこうっするはずなのにぃぃぃぃっ!?」 「もうわけがわかりゃにゃいよぉぉぉぉっ!」 「わけがわからないのはこっちのせりふよ!このいなかものっ!」 「「「「ゆっ!?」」」」 「ありすとちぇんのいえでおうちせんげんをするなんて、まりさたちはいったいなにをかんがえているの!? あぶないところだったけれど……あなたたちのおうちせんげんはありすがだめっていったからむこうよ! さあっ!さっさとありすのおうちからでていきなさい!」 「…………はっ!?そ、そうなんだねー!ありすのいうとおりなんだねー!まりさたちはとっととでていってねぇー!」 「ま、まつのぜちぇん!おそとはさむいさむいでとてもゆっくりできないのぜ!? おねがいだからこんやだけでもこのおうちにとめてほしいのぜ!」 「はあ?たったいまありすのおうちをうばおうとしておきながら、いまさらなにをいってるの?そんなのおことわりよ!」 「ぞこをなんとかおねがいじまずぅぅぅっ!れいぶのおちびじゃんたちがかわいそうでしょぉぉぉぉっ!?」 「いつおうちせんげんするかわからないまりさたちをいえにとめるなんて、 ゆだんもすきもなくてぜんぜんゆっくりできないんだねー!それくらいわかれよーっ!」」 「きゃわいいれいみゅがゆっくちできにゃいのはきゃわいしょうでしょ……?だきゃらおうちちょうりゃいにぇ……?」 「まりちゃにおうちをくれちゃら、おれいにありしゅをちゅっきりーどれいにしちぇあげてもいいんだじぇ?」 「……っ!な、なんてずうずうしいのこのいなかものどもは……!」 「とにかくっ!ちぇんのおうちにまりさたちはとめないよー!そしてまりさたちがおうちせんげんしようとしたことは、 あさになったらおさにほうこくするよー!まりさたちはかくごしていてねー!」 「「ゆ、ゆげえええええええええええっ!?」」 ちぇんの一言に親まりさと親れいむは心底震え、己の前途に絶望した。 何故ならばおうち宣言による巣の取り合いは群れの掟で禁止されている。 長に報告されるということは今度こそ掟破りの罪で制裁されることを意味するのだ。 野良まりさ一家は焦った。と同時に苛立ちがつのって爆発寸前にもなっていた。 それはそうであろう。人間のおうちを奪おうとして空き巣同然のおうち宣言をやったら宣言は屁理屈で無効にされ、 公園のおうちは壊され、群れのみんなからゆっくりできない目で見られるようになった。 おうちをなくしたせいで夜は寒さに震え、ちぇんのおうちを奪おうとしたらありすに邪魔をされ、 そして今また掟破りによる制裁の危機。 すべて野良まりさ一家の自業自得とはいえ今日はやることなすことすべて失敗ばかり。 親まりさ達はこの理不尽の数々に腹がたって仕方なかった。 そしてちぇんの一言で袋小路に追い詰められた野良まりさ一家は遂に爆発したのであった。 「ゆ、ゆがああああああっ!おうちをひとりじめにするちぇんはじねぇぇぇぇぇっ!!」 「ゆっ……わがらなっ!?」 突然、親まりさはちぇんに全力の体当たりを喰らわせた。 ちぇんは悲鳴をあげながらおうちの奥の壁に叩き付けられる。 「ちぇん!?な、なにをするのまりさ!ぼうりょくをふるうなんていなかもののすることよ!」 「うるざいぃぃぃっ!どいつもこいつもれいぶたちをばかにじでぇぇぇっ!おうちせんげんをじゃまずるげずはじねえ!」 「ゆぎゃっ!?」 「いいきみなのぜぇぇぇっ!れいぱーのぶんざいでおうちをひとりじめにずるからそういうめにあうのぜぇぇぇっ!」 「れいぱーありすはゆっぐじじね!れいぱーありずはゆっぐじじねぇぇぇぇっ!」 「むーしゃむーしゃ!これうみぇえ!まじぱにぇえ!」 「じあわぜぇぇぇぇっ!むーじゃむーじゃじあわぜぇぇぇぇぇっ!」 「ゆびゃぁぁっ!やべちぇぇぇぇっ!ちぇんをたべにゃいでぇぇぇぇっ!」 「お、おちびじゃ………ありずの…おち……ゆっ!も、もっと……ゆっぐりじた・……が…」 もう地獄絵図であった。 親まりさと親れいむがありすの上に乗っかって押しつぶし、あまりの空腹ゆえかその死体を夢中で喰らっている。 子ちぇんも同様で餓鬼のごときれいみゅとまりちゃに食い殺されていった。 だが野良まりさ一家がちぇんの家族を食べるのに夢中だったことは親ちぇんにとっては幸いした。 野良まりさ一家に占拠されたダンボールのおうちから脱出することになんとか成功したのだ。 痛む体を引きずりつつも、ちぇんは長ぱちゅりーのおうちへと懸命に跳ねる。 この凶行をなんとかできるのはもう長しかいないからだ。 「お、おさ……おさー!」 「むきゅ?こんなよなかにいったいなにごと……ち、ちぇん!?そのけがはどうしたの!」 「ま、まりさにやられたんだねー!そ、それにありすが……ちぇんのおちびちゃんが……!まりさたちに……!」 「まりさたちに?どうなったの!」 「え、えいえんにゆっくりさせられたうえに、たべられちゃったんだよぉぉぉぉっ!わ、わからないよぉ―――っ!」 「な、なんですってええええええっ!?」 ゆっくり殺し。同族喰い。どれもゆっくりにとって最大のタブーと言われている最低のゲス行為である。 もちろん群れの掟でもそれらは禁止されている。その掟破りをよりにもよってをあのバカまりさとアホれいむがやったのか! おうち宣言どころの話ではない!長ぱちゅりーはもう吐きたい気分を懸命に抑えるので精一杯であった。 だがことは急を要する。長としての仕事はちゃんと果さなければならない。 「ちぇん、あなたはあしがはやいわ!からだがいたむでしょうけどひとっぱしりいって、むれのかんぶたちを このおうちのまえにつれてきてちょうだい!」 「わかったよー!ちぇんもありすとおちびちゃんのかたきをうちたいんだねー!かんぶにこのじけんをしらせるのが ちぇんのかたきうちなんだねーっ!わかるよ―――っ!」 そう言うやちぇんは公園のあちこちのおうちに走っていく。 この夜、ちぇんの知らせによって召集された群れの幹部が長ぱちぇりーと共にちぇんのおうちを家宅捜索した。 そこで腹を膨らませて幸せそうにぐーすか眠る野良まりさ一家を発見。ただちに叩き起こして連行した。 さらにちぇんのおうちからありすのものと思われるカチューシャと、子ちゃんのものと思われる帽子をも発見。 これによってありすと子ちぇんの死亡と野良まりさ一家の同族殺し&同族喰いの罪が明らかになったのである。 そして翌朝…… まあ確信はあってもやはり気になるものは気になるわけだ。 俺はその後の糞野良一家の様子を確かめに公園に足を向けた。 するとグッドタイミングなことに俺はちょうどカーニバルのまっ最中にでくわした。 「むきゅ!みんなきいてちょうだい!このまりさたちはゆうべ、ちぇんとありすのおうちをのっとろうとしたわ!」 「しかもありすにおうちせんげんをそしされたのにもかかわらず、むししておうちをとろうとしたんだぜ!」 「さらにおうちせんげんをじゃましたことにはらをたてて、ありすをえいえんにゆっくりさせちゃったんだねー!」 「まりさたちはきのうにんげんさんにめいわくをかけただけじゃなく、むれのゆっくりまでころしたわ! これはもうぜったいにゆるすことはできないわ!むきゅっ!」 「「「「「せいっさいっ!せいっさいっ!せいっさいっ!せいっさいっ!」」」」」 「ばりざはわるぐないのぜぇぇぇ!おうちせんげんしたんだがらちぇんのおうちはばりざのおうちなのぜぇぇぇ!」 「ぞうだよぉぉぉ!ありすはおうちをひとりじめにするげすだったんだよ!だからせいさいっしたんだよぉぉぉっ!」 「ゆええええん!もうしゃむいのみょ、おにゃかしゅくのもいやなのじぇぇぇぇっ!」 「もういやりゃぁぁぁぁっ!おうちかえりゅぅぅぅぅっ!」 昨日の糞野良一家を群れのゆっくりどもが取り囲んでいる……何事だこれは? どうも長ぱちゅりーが糞野良連中の罪状を群れの連中に説明しているのを聞くに、 お家をなくした一家は公園の野外で一夜を過ごそうとしたが、 あまりの寒さに我慢できなくなって群れのゆっくりのおうちを奪おうとしたらしい。 しかもお粗末なことにおうち宣言に失敗して、阻止されたことに逆上して群れのゆっくりを殺してしまったんだとさ。 ……なにそれ?まったくバカとしか言いようのない連中だなおい。 「いいかげんにかんねんしなさいまりさ!ちぇんのしょうげんで、ありすがおうちせんげんをむこうにしたことは わかっているのよ!」 「お、おさぁ!なにいっでるのぜぇぇぇっ!ばりざはほんどうにおうちせんげんしたのぜぇぇぇっ! ちぇんのおうちもうはばりさのおうちなのぜぇぇぇぇぇっ!?」 「むきゅぅ……ありすをころしてちぇんのおうちをうばおうとしただけでなくうそをつくとはね! やっぱり…しんじたくなかったけど、きのうにんげんさんがいってたのはほんとうだったようね……」 「にんげ……?く、くそじじいがなんだというのぜぇぇぇぇっ!?」 「まりさ!れいむ!ぱちゅはにんげんさんからきのうぜんぶきいたわ!まりさたちはにんげんさんのおうちで おうちせんげんをしたんじゃなくて、おうちせんげんをしたと『うそ』をついたってね!むきゅっ!」 「ゆっ……?」 「そしてこんかいもまた、うそをつくのね!ありすにおうちせんげんをむこうにされておきながら、 おうちせんげんしたという『うそ』をっ!!」 「ゆ……ゆっ……ゆあああああああああああああああああああっ!!?」 「やっぱりそうだったのね!あなたたちはへいきでうそをつく……『うそつきゆっくり』だったのね!むきゅ」 「!?!???」 あーあ、長ぱちゅさんよーそりゃねーんじゃないの? まあ糞野良どものおうち宣言を嘘だと決め付けたのは確かに俺だけどさ、 しかし糞野良ども本人にとっちゃ俺の家でしやがったあのおうち宣言は本当の出来事だったんだろうよ。 ゆうべの群れで起きたおうち宣言はまあ嘘だったとしてもさ、 俺の家の場合といっしょくたにされて嘘つき呼ばわりしたらあの糞野良どもも浮かばれないんじゃね? ……て、まあいっか別に。ゲス野良を擁護する気なんて俺には毛頭ねえ。 つかそれより糞野良どもの顔が面白いことになってる。 長ぱちゅに嘘つき呼ばわりされて相当ショックだったんだろう。 ほら見ろよ。顔面蒼白になって、口をパクパクさせて、ぶるぶる震えて、涙は滝のように流し…… 多分いま連中の頭ン中はぐちゃぐちゃだぞ間違いなく。 あーそろそろ爆発しそうだぞ。表情からしてもうすぐ……もうすぐだ……そらきた! 「「「「うそつきっていうなあああああああ!うそじゃないっ!うそなんがついでな……ゆぎゃあああああああああっ!」」」」 俺の予測どおり野良一家の無駄にでかい大口から魂からの…と言うに相応しい無念の叫びが迸った。 そしてその瞬間、長ぱちゅりーの合図で口に枝を咥えたゆっくり達が 四方八方から襲いかかって四匹の糞野良を串刺しにしたのだった。 「ゆがぁ!ゆがぁぁぁぁっ!うそじゃないぃぃぃっ!ばりざはぁ!ばりざはぁぁぁぁっ!」 「じ、じねぇぇぇぇっ!れいぶをうそづきよばわりずるげすはそくざにじねぇぇぇぇっ!」 「まりちゃはゆっくじっ!ゆっくじじゅる……ゆびぃ!もっちょもっちょゆっくじじゅるんじぁぁぁぁっ!」 「れいみゅはうしょちゅきじゃないぃぃぃっ!ゆべぇっ!う、うぞじゅき…・…じゃ……も、もっちょ……ゆ……」 「むきゅっ!なにしているの!いちげきっでせいかくにちゅうすうあんをつきなさい!つぎ!」 「じねぇ!じねぇぇぇぇっ!ゆぶっ!くぞじじぃぃぃっ!ありずぅぅぅっ!ぱじゅりぃぃぃっ!みんなじねぇぇぇっ!」 「じぬもんがぁぁぁぁっ!れいぶはもっどゆっくじずる…ゆべぇ!?………もっと……ゆっく……りじ………」 「ま、まりちゃはしぇかいのおうっ!になりゅうちゅわなんだじぇ!こんなときょ…ゆぴょぉ!」 「まりさのとどめがまだよ!つぎ!はやくっ」 「う……ぞつぎ……じゃない……ばりざ……ばり……………ゆっ!」 ……制裁は終わったか。糞野良どもの最後を見届けると俺はもうこれ以上ここにいる必要はないと公園を後にした。 ほら見ろ、おうち宣言をするゲスの末路なんてこんなものだ。 俺が直接手を下すまでもなく勝手に自滅するのさ。 むしろ野良を一匹道連れにした分すっきりー♪てなもんだ。 まあアレだな、こうなった野良一家に俺が言えることはもうひとつだけだ。 ざまあみろ。
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『おうち宣言の果てに 前編』 20KB 制裁 自業自得 お家宣言 群れ ゲス 自然界 独自設定 ナナシ作 「そろーり!そろーり!ゆっくりすすむよ!」 今、とあるゆっくりの群れ内で、一匹のれいむがキョロキョロと周囲を警戒しながらゆっくりと移動している。 まあ、警戒しながらとはいったもの、このれいむは口で自身の状況をいちいち実況するマヌケなタイプのゆっくりであったため、 傍から見れば全く隠れておらずバレバレの状況ではあったのだが。 が、しかし幸運にも、このときれいむの周囲には本当に誰もいなかったために、れいむは無事目的地へ見咎められることなく到着することができたようだ。 「ゆゆ!ついたよ!」 れいむの目の前にあるのは、広く掘られた洞窟タイプのゆっくりのおうちであった。 そのおうちは、多くのゆっくりが作るような粗末なそれとは違い、しっかりとした奥行きがあり、 ゆっくりにとっては中々に高級なおうちと言えるだろう。 「ゆふふふふ!ついに!ついにこのひがきたよ!」 れいむは、最後の確認とばかりにもう一度キョロキョロと周囲を見わたす。 ここでもし他のゆっくりがいるようなことがあれば、れいむの企みは失敗に終わる可能性があるのだ。 「だれもいないようだね!それじゃあさっそく!」 無遠慮におうちの中へと侵入するれいむ。 「ゆわぁ~!」 中に入ったれいむは、おうち内の想像以上にゆっくりできる空間に感嘆の声を上げる。 おうちの中は広々としており、ゆっくりでそうな草のベッドや石でできたテーブルなどが随所にきちんと設置されている。 奥のほうに貯蓄されている食料の量も申し分なく、このおうちの持ち主のゆっくりはかなり優秀な個体であることをうかがわせた。 「うん!ごうかくだよ!やっぱりすごくゆっくりしているれいむには、これくらいのゆっくりぷれいすがないとね! それじゃあいっくよー!」 れいむは、スゥーと大きく息を吸い込むと、 「ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ!!!」 これ以上ないくらいのドヤ顔で、堂々のおうち宣言をかました。 シーンと静まりかえるおうち内、どこからも反論の声は上がらない。 周囲には誰もいないのだからそれも当然のことだ。 『おうち宣言』それはゆっくりの本能に刻まれているルールだ。 ゆっくりという種は、所有という概念が希薄なために物をめぐっての争いが絶えない。 そこで、登場するのがこのおうち宣言である。 このおうちせんげんを、空間内、主に洞窟などのおうちで宣言し、その結果どこからも反論がなかった場合、 その場所は宣言したゆっくりのものとなるのだ。 さらに、こうしておうち宣言をした場所にあるものは、全てそのゆっくり、及び家族の所有物となり、如何なる反論も許されない。 ゆえに洞窟などのおうちので暮らしているゆっくりは、そこに住み着く前に必ず儀式としてこのおうち宣言をおこなうのだ。 しかし、このおうち宣言というルールは、言うまでもなく多くの問題をはらんでいる。 そう、まさに今れいむがその問題の行為を行っている最中なのだ。 おうち宣言を利用した最大の悪事、他ゆんのおうちの乗っ取り行為である。 「やったね!これできょうかからここはれいむのおうちだよ! ゆゆ!おうちせんげんしたら、おなかがへっちゃったよ!それじゃさっそくむしゃむしゃするよ!」 おうち宣言という重労働(れいむにとっては)をしたれいむは、さっそくおうちに保存してある食料を貪り食らいはじめる。 おうち宣言が成功した以上、このおうちはれいむの物であり、当然そのおうち内にある食料や、ベッドなどの雑貨も全てれいむのものとなるのだ。 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせえええええええええ!」 感極まった表情で叫ぶれいむ。 他ゆんが必死に狩りをした結果を、何の苦労もなくおうち宣言で横取りして食べる食料は、さぞ美味いことだろう。 と、そのとき 「な、なにやってるのれいむ!」 唐突にれいむに声がかけられる。 「ゆん?」 れいむはスーパーお食事タイムを邪魔され、不機嫌そうな声を上げながら、声をかけられた方を見やる。 するとそこには、驚愕の表情でプルプルと震えているありすがいた。 ありすはこのおうちの『元』の持ち主である。 「ゆあああん?いきなりどうしたのありす?そんなへんなかおして?ゆっくりできないよ! てゆうか、そもそもここはれいむのおうちだよ!かってにはいってこないでね!」 「なにわけのわからないことをいってるの!ここはありすのおうちよ! いまれいむが、あほずらでたべてるそのしょくりょうだって、ありすがひっしになってあつめたものよ! ふざけたことをいってないでさっさとでていってちょうだい! あまりごねるようなら、せいっさいもやむなしよ!」 マヌケ面のれいむに、凄まじい形相ですごむありす。 この群れの掟では、他ゆんの物を盗んだりすることは制裁の対象となりえるのだ。 しかし、れいむはそんなありすを見下したような表情で言う。 「さっきからいったい、なにいってるの?このおうちはれいむのものだよ! だってれいむは、さっきこのばしょで、おうちせんげんをしたんだからね!」 「!?そ、そんな!どうして!」 れいむの発言に顔面を蒼白にするありす。 確かにれいむの言う通りに、おうち宣言をされてしまった後ならば、 ここはもはやありすのおうちではなく、れいむのおうちということになってしまう。 しかしありすは信じられなかった。 仮にも同じ群れの仲間であるゆっくりから、おうち宣言をされることになるなんて! 「ゆふふふふ!どうやらどっちがせいぎか、わかったようだね!」 ニヤニヤ顔のれいむ。 「れいむ!どうして!れいむはここが、ずっとありすがおうちとしてつかっていたばしょだと、しっていたはずでしょう! それなのに、なんでこんなおうちせんげんなんてことをするの!」 れいむに迫るありす。 おうち宣言はゆっくりにとって絶対にして神聖なルール! それゆえに、群れ内などの集団ではそう迂闊に乱発してよいものではないのだ。 少なくとも、宣言する場合はそこに他ゆんが住んでいないかどうかを、よく確認してから行うのが通例だ。 「はあああああん!どうして?そんなのきまってるでしょ! とってもゆっくりしているれいむには、それそうおうのゆっくりぷれいすがひつようなんだよ! このぷれいすは、ゆっくりしてないありすには、ふさわしくないよ! だかられいむがおうちせんげんしてあげたんだよ!かんしゃしてね!」 「そ、そんなめちゃくちゃな!」 なおも食い下がろうとするありす。 しかしそんなありすに対して背後から声がかけられる。 「ゆゆ?いったいどうしたのかな?」 「なんだかゆっくりできないようすだよ!」 「なにかもめてるみたいだね!」 その場にぞろぞろと現れたのは、がらの悪いれいむたちの集団だった。 どいつもこいつも、ゲスゆ特有のふてぶてしい表情をしている。 「ゆゆ!みんなまってたよ!さあ、はいってはいって! ここがれいむのあたらしいおうちだよ! これからみんなで、むしゃむしゃぱーてぃーをしようね!」 そんなれいむたちの集団に対して、おうち宣言をしたれいむが気さくに声をかける。 この集団はれいむがあらかじめ呼んでおいたのだ。 今日新しいおうちが手に入るから、みんなでそのお祝いをしよう、と。 「ちょっ、ちょっとまってよれいむ!まだはなしはおわってないわ!」 予測不能の事態の連続に慌てふためくありすは、おうち内にいるれいむに詰め寄る。 ありすの抗議はまだ終わってはいないし、当然こんな理不尽なこと認められるはずもない。 だがしかし、 「ゆふん!」 ドン! 「ゆげばは!」 ありすは、突然のれいむの体当たりによってうちの外へとはじき出される。 「さっきからごちゃごちゃうるさいよ!げすなありすは、れいむのおうちにかってにはいらないでね! これいじょうごねるようなら、せいっさいもやむなしだよ!」 「そうだそうだ!」 「おうちせんげんをすませた、れいむにけちつけようなんて、ありすはとんでもないげすゆっくりだよ!」 ありすに対して、次々と暴言を浴びせるれいむたち。 「ゆううう!そっ、そんな、ひどい……」 あまりの仕打ちに涙するありす。 しかし、向こうにはおうち宣言という強力な正当性があるのだ。 それを錦の御旗として主張されてはどうにもならない。 下手に騒げば、ゲスとして制裁されるのは自分の方なのだ。 こうして、ありすは突然に自身のゆっくりプレイスを失ってしまうことになった。 その後ありすは、何とかして、おうち宣言し返すことにより、自身のおうちを奪還しようとれいむがおうちを離れるスキをうかがっていたのだが、 れいむはおうちにたっぷりと蓄えてある備蓄を食い荒らすばかりで、一歩も外にでることがなかった。 れいむがおうちでゆっくりしている間も、ありすは外で常に見張っていなければならない。 そんな苛酷な状況のなか、ありすは日々衰弱していき、やがて力尽き永遠にゆっくりした。 とある平和な群れを襲ったおうち宣言による悲劇。 しかしこれはほんの始まりすぎなかった。 「わがらないよおおおおおおお!ちぇんのおうちが、れいむにおうちせんげんされちゃったよおおおおお! ゆえええええええん!」 「まりさのおうちがもなんだぜえええええ!きょうからどこでくらしていけばいいんだぜええええ!」 「みょん!しんじられないみょん!ちょっとおうちをはなれたすきに、れいむがおうちせんげんしてたんだみょん! あれはもう、はじめからみょんのおうちを、ねらっていたとしかおもえないみょん!」 「おさぁああ!なんとかしてよおおおおおお!」 「むっ、むっきゅう~!」 長ぱちゅりーのおうちの前には、連日おうち宣言されて、おうちを乗っ取られたと嘆く群れのゆっくりたちが集まってきていた。 どうもここ最近、とあるれいむ一派の仕業のよる、おうちの乗っ取りが事件が多発しているようなのだ。 この事態には、長ぱちゅりーも頭を悩ましていた。 そもそも、おうち宣言によるおうち乗っ取りという事態が、ゆっくりの群れで多発することが異常なのである。 確かにゆっくりの本能に刻まれたルールにより、誰もいないおうちで、おうち宣言すれば、そのおうちを強引に横取りすることもできるだろう。 しかし通常、他ゆんが住んでいるおうちでおうち宣言してはいけないというのは、野生に生きるゆっくりたちの暗黙の了解なのである。 ごく稀に、ゲスや極端に頭の悪い個体が、乗っ取りのおうち宣言をすることがあるらしいが、それはあくまで群れとして機能していないバラバラな地域での話しだ。 ほぼ全員が顔見知りであり、それなりに秩序がある群内にて、ここまでおうち宣言による乗っ取りが横行するなど前代未聞の珍事である。 ことの主犯であるこの群れのれいむたちは、確かに他と比べて明らかに素行がよくない個体が数多くいるとはいえ、まさかこんな事態になるとは……。 「むきゅ!れいむたちは、いったいなんのつもりなのかしら!」 憤る長ぱちゅりー。 これほど多くの乗っ取りが同時期に起きるなど、もはやおうちに誰もいないと思って勘違いしてしまったというレベルを超えている。 現に今群れにあるおうちの八割近くが、れいむたちによって乗っ取られており、 おうちを追い出されたゆっくりたちの中には、途方にくれて永遠にゆっくりしてしまったものも多数出ているのだ。 こんなことを長として放っておくわけにはいくまい。 そんな決意を長ぱちゅりーがしている最中、突然不快な声が投げ掛けられる。 「ゆっふっふーん!どうしたのかな?みんなでこんなところにあつまって!」 その場に現れたのは、今まさにおうち宣言で話題になっている、れいむ一派のボスれいむとその取り巻きれいむたちであった。 「ゆゆ!おまえはぁ!かえせ!まりさのおうちをかえせ!」 「ちぇんのいっしょうけんめいあつめた、ごはんさんをかえしてよぉ!」 「ありすのとかいはなおうちに、かってにおうちせんげんするなんて、このいなかものがぁ!」 唐突に長ぱちゅりーのおうちの前に現れたれいむたちの集団を、おうち宣言の被害にあったゆっくりたちが責め立てる。 しかし当のれいむたちは涼しい顔だ。 そんな様子のれいむの集団に、長ぱちゅりーはみなを代表して抗議する。 「れいむ!いったいどういうことなの! あなたちはさいきん、みんながおうちをはなれたすきをねらって、おうちせんげんをくりかえしてるそうじゃない! すでにゆっくりがすんでいるおうちで、おうちせんげんをするなんて、とんでもなくゆっくりできないこういよ! いますぐのっとったおうちを、みなにあけわたしなさい!」 「はあああああああん!なにいってるのおおおおおおおおお! れいむたちはただ、ゆっくりのるーるにのっとたこういをしているだけだよおおおおおお! おうちせんげんは、おかすことのできない、しんっせいかつこうっすいなこういだよ! むれのおさともあろうものが、そんなこともわからないの!」 「むぎゅぎゅぎゅ………」 抗議に対して、不遜な態度で答えるボスれいむ。 それに対して唸ることしかできない長ぱちゅりー。 確かにおうち宣言は、ゆっくり内では絶対のルール。 訓練された飼いゆっくりや、人間に近い領域で暮らしている野良ゆっくりならともかく、 野生のゆっくりにとってはその縛りはより強く働くことになる。 「だいたいねえ、このむれは、いままでがおかしかったんだよ! ゆっくりとしたおうちには、とってもゆっくりとしているれいむたちがふさわしいはずなんだ! それなのに、このむれのゆっくりしたおうちは、ひるまっからせこせことうごきまわってるゆっくりばかりがせんりょうしている! これはゆるされることじゃないよ! だかられいむたちは、ゆっくりしたゆっくりのためにそんざいするるーるであるおうちせんげんによって、 このむれを、ただしきかたちにもどしているだけなんだよ!りきゃいできる?」 「そんなむちゃくちゃがゆるされるとおもっているの! とつぜんおうちせんげんされたみんなは、すむところがなくなってこまってるのよ!」 「ゆふん!そんなことしったこっちゃないよ! ………っといいたいことろだけど、れいむたちはとっても、かんっだいだいなゆっくりだからね! れいむたちのおうちに、たっくさんごはんさんをもってくれば、ひとばんくらいはとめてあげてもいいことにするよ!」 「なんですって!」 ボスれいむの理不尽な要求に声をあげる長ぱちゅりー。 「だっ、だれがおまえらなんかに、ごはんさんをわたすもんか!」 「ふざけたことをいわないで、このいなかものが!なにがとめてやるよ!もともとはありすたちのおうちでしょうが!」 「みょん!そもそもおまえらが、いま、まいにちたべてるごはんさんだって、もともとはみょんがあつめたものだみょん!」 おうちを奪われたゆっくりたちも口々に訴える。 「ふん!べつにむりにとはいわないよ! まあ、ゆっくりしてない、ゆっくりどもには、やねなしの、のじゅくがおにいかもね! でもさぁ、よーくかんがえてみたらぁ?おうちがなくてゆっくりできるかなぁ? おうちがないと、こそだてができなよ?おちびちゃんもつくれないね! あめさんがふったらどうするかなぁ?あっというまに、えいっえんにゆっくりしちゃうよぉ! それに、たっくさんごはんさんをあつめても、おうちがないと、けっきょくはほぞんしておくことができないんだよぉ! だったられいむたちに、そのぶんをわたしたほうが、りこうだとおもうなぁ?ゆぷぷぷぷ!」 ニヤニヤ顔で語るボスれいむ。 もはやここまでくればボスれいむの狙いは明白である、それは群れの乗っ取りであった。 ゆっくりにとって、おうちという存在は生きる上での重要な要因となりうる。 野生生活において、拠点となるおうちがあるかないかでは、それこそ生存率が桁違いに異なるのだ。 今ボスれいむが言った実害以外にも、メンタルな面でもおうちがあるのとないのとでは大違いだろう。 群れにあるおうちを支配するということは、群れのゆっくりを支配するということなのだ。 ゆえにボスれいむは、手下のれいむを総動員し、電撃的に群れの存在するおうちの約8割をおうち宣言により奪い取る計画を立てたのだ。 この作戦の成功の秘訣は、やはりおうち宣言の手ごろさにある。 何せ、誰もいないところを見計らって、大声で宣言するだけで、ゆっくりしたおうちが手に入るのだ。 いかにボスれいむの手下のれいむたちが無能揃いであったとしても、任務の遂行は容易だったし、 なによりれいむたちは、数だけは大量にいたので、この短期間で群れの八割のおうちを奪うことも可能だった。 こうして大量のゆっくりできるおうちを手に入れたれいむたち。 しかしこれだけでは、不十分だ。 何故なら、おうち宣言で奪ったおうちは、同じくおうち宣言によって取り返される可能性が高いからだ。 いくら奪ったおうちに、大量に食料が蓄えてあるとはいえ、ずっと引きこもっているのにも限界がある。 そこで一般的な解決策としては、れいむ同士が変わりばんこに留守をして、片方が狩りをする傍ら、 もう片方がおうち宣言を警戒するのが現実的な方法だった。 しかしこの方法には問題があった。 れいむたちは、そんなゆっくりできないことはごめんだったし、第一この群れのれいむたちは狩りが下手だったので、 自分以外のれいむの食料を確保することは不可能だったのだ。 だがボスれいむは、狡猾にもおうちを奪ったゆっくりたちに対して、 おうちを仮宿として使わせることを条件に、ごはんを持ってこさせることを要求したのだ。 こうすることでれいむたちは、何の苦労もなく、ゆっくりしたおうちと半永久的な食料の供給を得ることができるのだ。 おうちを取られてしまったゆっくりは、また新たにおうちを作ればいいじゃないかと思うかもしれないがそう簡単にはいかない。 人間がそうであるように、ゆっくりにしたって、おうちは手頃にポンポンと作れるものではないのだ。 立地条件や穴を拡張するための労力、生活を豊かにする道具の入手など、それら全てはとてもゆっくり一代で入手しきれるものではない。 現にこの群れにある、おうちのほとんどが、ゆっくりたちの親子によって代々引き継がれてきたものだ。 ゆえに勤勉で優秀なゆっくりのおうちはゆっくりとでき、だらだとゆっくりしているだけだった、この群れのれいむたちのおうちは、 ゆっくりできていなかった。 そしてそれが、ボスれいむが行動を開始する要因となったのである。 「ゆふん!それじゃ、れいむたちはもういくよ! おうちのないせかいかつは、たいへんだとおもうけど、まあれいむたちにしょくりょうをもってくれば、 いつでもれいむのおうちに、とめてあげるからあんしんしてね! ゆふふふふふふふ!」 言いたいことだけ言うと、れいむの集団はニヤニヤと勝ち誇った笑いをしながらぞろぞろと去っていった。 「おさぁ!どうしよぉ!おうちがないとゆっくりできないよおおおお!」 「む、むっきゅー」 れいむたちが去った後、長に泣きつくゆっくりたち。 長ぱちゅりーは困っていた。 今回の件の非常に厄介なところは、れいむ一派の行動は、なんら群れの掟に触れていないことなのだ。 確かに他ゆんが住んでいるおうちで、おうち宣言をかますなど非難されてしかるべき行為なのは間違いないのだが、 何分それは、言ってみればモラルのようなもので、掟として明確に条文化されているわけではなかった。 ボスれいむは、そこを巧みに付いてきたということだ。 そんなわけで、長ぱちゅりーとしても、ボスれいむがなんら違反をしているわけではないので、強行策には出られない。 そして何より長ぱちゅりーもまたゆっくりなのだ、おうち宣言には逆らえない性を持つ。 残念ながら、現時点で長ぱちゅりーに打つ手はなかった。 そして数日後…。 「ゆゆ!なんなの、このしょくりょうのりょうは! れいむの、ゆっくりとしたおうちにとまるのに、こんなりょうでいいとおもってるの! こんなんじゃぜんぜんたりないよ!もっとたくさんもってきてね!」 「ゆぐぐぐぐ、これでも、せいいっぱいなのぜ! きょてんとなるおうちがないいじょう、いつものはんぶんていどしかとれないのはしかたないんだぜ!」 「そうよ!だいたいおうちのなかには、ありすたちのしょくりょうが、まだじゅうぶんにちょちくしてあるはずよ! それをくわえればじゅうぶんなりょうになるはずだわ!」 「ふん!おうちにたくわえてあるのは、『れいむ』のしょくりょうだよ!まちがえないでね、あさましい!」 とあるゆっくりとしたおうちの前で、れいむ、まりさ、ありすがなにやらもめている。 どうやら、元おうちの持ち主のまりさとありすが、今のおうちの持ち主であるれいむに一晩の宿を頼んで断られているようだ。 何でも、まりさたちが持ってきた食料の量が気に食わないらしい。 「ゆがあああ!れいむ!いいかげんにするのぜ!べつにまりさたちは、むりしておうちにとまるひつようはないんだぜ! そしてまりさたちが、しょくりょうをもってこないと、れいむだってこまるはずなのぜ!」 「ゆっふっふーん!いいのかなー!そんなこといっちゃって! こんやは、くもさんがゆっくりしてないねー!これはそのうちあめさんがふっくるんじゃないかなぁ! おうちもないのに、あめさんがふってきたらどうなっちゃうのかなー?ゆぷぷぷぷ!」 「くっ、こんなの!こんなのぜんぜんとかいはじゃないわぁ!」 余裕のれいむに対して憤るありす。しかしどちらか優位な立場にいるかは目に見えて明らかであった。 実際、おうちの中で惰眠を貪ってゆっくりしているれいむに比べ、 まりさとありすの二匹は、ここ数日野宿続きでゆっくりできなかったためにかなり消耗しており余裕がない。 「ゆぐぐぐぐ、しかたないのぜありす、こうなったらもうひとふんばりするしかないのぜ!」 「そうそう、わかればいいんだよ!あめさんがふるってくるまえに、たくさんしょくりょうをもってくてね!」 嫌味な笑みを浮かべるれいむを無視して、疲れた身体にムチを打って狩場へと向かうまりさとありす。 どんな疲弊してようとやるしかない。雨が降ってきてしまう前におうちを確保できなければそれでおしまいなのだ。 この日の夜、森には強めの雨が降り、群れの何組かのゆっくりの家族が、おうちを確保できず永遠にゆっくりしたという。 それからまた数日後…。 「むっきゅー!これはそうきゅうになんとかするひつようがあるわ!」 おうちにて、一匹悩み声を上げる長ぱちゅりー。 今、この群れでは、れいむ以外のゆっくりたちの消耗が非常に激しい状況にあった。 理由は言うまでもなく、れいむ一派によるおうち乗っ取りの影響である。 多くのゆっくりがおうちを奪われ苦しんでいる中、特に悲惨だったのが子ゆっくりたちに狩りを教えるために、 一家総出で留守にした際におうち宣言されてしまったゆっくりたちだ。 まだ身体の弱い子ゆっくりたちにおうち以外での生活は厳しく、すでに多くの子ゆっくりが永遠にゆっくりしてしまっていた。 また他にも老ゆっくりや身体の弱いぱちゅりー種など、おうちを奪われることで死の危機に瀕しているゆっくりは多い。 長ぱちゅりーをはじめとした、何とかおうちを奪われなかったゆっくりたちが協力して休ませたりしているが、 いかせん確保できているおうちの絶対数が少なすぎるのだ。 実例を挙げれば、群れのれいむたちとその他のゆっくりのゆん口割合が3対7なのに対して、れいむが占領してるおうちとその他のおうちの割合が、 8対2なのだ、これでは足りるはずがなく、必ず半数程度のゆっくりが野宿をする羽目になる。 そして、もし雨など降ろうものなら、いかに屈辱とはいえれいむたちに食料を持っていき、おうちに入れてもらわなければならない。 こうしてれいむたちはますます肥え、その他のゆっくりはますます消耗していく。 まさに悪循環だ。 長ぱちゅりーは早急にこの事態を解決しなくてはならないのだ、そのためには……。 「むきゅ!もうこうなったらゆっくりのるーるになんてかまってられない! むれがいきるかしぬかってときに、おうちせんげんもくそもないわ! むれのみんなをひろばにあつめて、きんっきゅうしゅうかいよ!」 長ぱちゅりーはとある決意を胸に、群れのゆっくりたちに緊急収集をかけたのだった。 後編へ続く
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『おうち宣言の果てに 後編』 24KB 制裁 自業自得 お家宣言 群れ ゲス 自然界 独自設定 ナナシ作 ざわ…ざわ…。 ざわめく群れの広場。 長ぱちゅりーが緊急集会を開くということで、群れにある広場には沢山のゆっくりたちが集まってきていた。 しかし、その場にいるゆっくりたちを観察すると、ふと妙なことに気づく。 確かに沢山のゆっくりが広場に集まっているのだが、その中において、れいむ種の数がほとんど見当たらないのだ。 別に緊急会議において、れいむ種だけ連絡をしていないとかそういうことはない。 きちんと今日会議があることは、群れの全ゆっくりが知っているはずなのだ。 にもかかわらず、広場にいるのはれいむ一派を率いるボスれいむと、その取り巻き数匹のみであった。 「むきゅ!ほかのれいむたちはどうしたの!」 広場の中央にいる長ぱちゅりーが、ボスれいむに問いかける。 「ゆふふふふ、しんぱいしなくても、みんなおうちにちゃんといるよ! さいきんぶっそうだからね、れいむたちがおそとにでているあいだに、ほかのげすゆっくりたちに、 れいむたちの、ゆっくりしたおうちを『おうちせんげん』されちゃうとこまるからね! まあ、かいぎのないようは、あとでれいむがみんなにつたえておくからあんしんしてね!」 (ゆぷぷぷぷ!バカなぱちゅりーだよ。 れいむたちを広場に集めて、そのスキにおうち宣言して、れいむたちからおうちを奪おうったってそうはいかないよ。 全てのおうちには、部下のれいむたちを配置済みなんだよ! おお、おろかおろか、無駄な努力だったね!) ニヤリと笑うボスれいむ。 ボスれいむは今回の緊急収集は、おうちに居座っているれいむたちを一旦外に出させるための口実だと推測したのだ。 ゆえに、おうちに居座っている全てのれいむたちには、会議には参加するなと指示してある。 広場にれいむ種の姿がほとんど見えないのはそのためだ。 「ゆふふふふ!さあさあどうしたの? さっさとかいぎをはじめようよ!れいむたちのことならしんぱいないよ!」 勝ち誇った様子のボスれいむに対して、長ぱちゅりーは静かに語りだす。 「そう、れいむたちはこのばしょにこないのね。 それは…………けいかくどおりね!」 「ゆ?」 戸惑うボスれいむをよそに、カッと目を見開く長ぱちゅりー。 「きょうみんなにあつまってもらったのは、ほかでもない、むれにあらたなおきてをていあんするためよ! ぱちぇは、このむれのあたらしいおきてとして、おうちせんげんきんしほうをていあんするわ!」 「「「「!!?」」」」 ざわ…ざわ…。 長ぱちゅりーの宣言を受けてざわめく広場。 当然の反応だ、おうち宣言といえばゆっくりの特性とすら言える考えかたの一つである。 いわゆる、『お野菜は勝手に生えてくる』や『おちびちゃんはゆっくりできる』などと並んだゆっくりが生まれつき持つ本能的的な概念なのだ。 それを突然禁止するなど、戸惑いが起こってあたりまえなのである。 「はああああああああああああああん!ふざけるなあああああああああああああああああ!」 そして当然の如く誰より強く反発したのはボスれいむだった。 「おうちせんげんをきんしするぅ?きはたしかなのおおおおおおおおおおおお! おうちせんげんはねぇ、ゆっくりのでんっとうと、かくしきにのっとった、ゆいしょただしいぜったいのるーるなんだよおおおおおお! それを、きんしするなんてばかなこといわないでね!これはぜんゆっくりにたいする、ぼうとくこういだよ! こんなげすはせいっさいすよおおおおおおおお!」 必死になって訴えるボスれいむ。 ボスれいむとしては、こんな掟は是が非でも通すわけには行かない。 今この群れで、おうち宣言のよってもたらされる既得権益の恩恵を、一番に受けているのはボスれいむなのだから。 だが悲しいかな、強力な既得権益を維持するためにはそれ相応の強力な力いる。 人間の世界で言えばそれは、集団だったり金だったり人脈だったり地位だったり……。 しかし、今のボスれいむはそのどれもが不足していた。 「ゆゆ!まりさは、おさのていあんにさんせいなのぜ! もうおうちせんげんなんて、こりごりなのぜ!」 「みょん!そもそもだれもいないところで、ただせんげんしただけで、おうちがてにはるということじたいおかしいんだみょん!」 「わかるよー!ちぇんもまえまえから、このるーるはなんだかおかしいとおもってたんだねー!」 「だいたい、おうちせんげんなんて、いなかもののすることなのよ! とかいはなゆっくりはそんなことしないわ!」 広場に集まっているボスれいむ以外のゆっくりたちは、みなこぞって長ぱちゅりーの提案を支持する。 このゆっくりたちは、おうち宣言によって不利益を被っている立場なので当然といえば当然の反応だ。 「れいむ!あたらしいおきてをつくるさいのるーるはしっているわね! かいぎにあつまった、ゆっくりたちの、はちわりいじょうのさんせんをえられれば、あたらしいおきてをつくることができるのよ! このけっかはむれのそういなのよ!うけいれなさい!」 「ゆぐぐぐぐぐ!」 言葉に詰まるボスれいむ。 ちゅりーの言うとおり、群れでは会議に集まった8割以上のゆっくりが賛成すれば、新たな掟を作ることができるというルールは確かにある。 しかし、8割という条件の難しさから今まで新しい掟が作られた前例はなかったのだ。 実際もしこの場にれいむ一派のれいむたちがいれば、賛成が8割を超えることはなかっただろう。 だがボスれいむは、おうち宣言を警戒するあまり、ほぼ全てのれいむにおうち待機を命じてしまった。 その警戒が仇となってしまったというわけだ。 おうち宣言を絶対視していたボスれいむは、まさか長ぱちゅりーがルールそのものを変えてくるなど予想外だったのだ。 逆に言えば、今この群れが置かれている状況はそれまでのルールを変えなければならないほど切羽つまったものだったともいえる。 どちらにせよ、これでこの群れ内にかぎっては、おうち宣言というふざけた概念は消滅することになる。 「むきゅ!それじゃあ、あらためてせんげんするわ! いま、このときより、このむれではおうちせんげんきんしほうをしこうするわ! それにともなって、いままでされたおうちせんげんも、すべてむこうとするわ! れいむ!おうちにいすわっているほかのれいむたちにも、このことをしっかりとつたえてちょうだい! わかったわね!」 「ゆぐぐぐぐ!こんな!こんなばかなことが……」 歯を食いしばり、悔しげに唸るボスれいむ。 しかし多勢に無勢、今は大人しく引き下がるほかない。 (ゆぐううううう!ちくしょう!今に見てろよおおおおおおお! こんなことで、れいむのゆっくりが壊されてたまるかあああああああ!) だがしかし、ボスれいむは何も諦めてははいなかった……。 数日後……。 「わかるよー!きょうもたいりょうなんだねー!」 ポヨンポョンとゆっくりにしては軽快なステップで、自身のおうちへと跳ねているちぇん。 その帽子には、溢れんばかりの食料が押し込まれている。 おうち宣言禁止法によって、自らのおうちをれいむから取り戻したちぇんは、 れいむによって食い荒らされた保存用の食料を再補充するために、日々森を駆け巡っていたのだ。 そして、その甲斐があってかちぇんのおうちには再び充実した貯蓄が蓄えられつつあった。 「わかるよー!ちぇんのおうちにとっちゃくなんだねー!」 自身の根城にたどり着くちぇん。 だがちぇんは予想だにしていなかった。 そこに、再び悪夢の光景が待ち構えていようとは。 狩りから帰ってきたちぇんが、自分のおうちで見た光景は…… 「すーやすーや!ぐごごごおお!」 「がーつがーつ!うめ!これめっちゃうめぇ!」 「ゆふぃー!れいむのすーぱーうんうんたいむのはじまりだよおおお!」 れいむだった。 信じられないことに、数匹のれいむが自分のおうちで好きほうだい振舞っているのだ。 あるれいむは、大口を開けて草のベットで昼寝をしていた。そのしまらない口からは涎がたっぷりと流れ落ち、ベッドに染みを作っている。 あるれいむは、ここ数日の間にちぇんが一生懸命集めた食料を無遠慮に食い散らかしていた。 あるれいむは、おうちの中央でうんうんをしていた。多分部屋の隅でするよりも、真ん中でしたほうが広々として気持ちいいからという理由からだろう。 「なっ、なんなのおおおお!これはあああああああ!わからないよおおおおおおおお!」 絶叫を上げるちぇん。 もはや何が起こっているのか、ちぇんには理解不能である。 「ゆゆん?なんなの?うるさいよ!しずかにしてね!ゆっくりできないよ!」 そんなちぇんの様子に対して、見当ハズレの反応をするれいむ。 「わからないよおおおおおおお!おまえらちぇんのおうちでなにやってるのおおおおおおお!」 「なにって?れいむたちはただゆっくりしているだけだよ! それのいったいなにがいけないの!ばかいわないでね!」 「そうだよ!まったくちぇんはゆっくりしてないねぇ!むーしゃむしゃ!げっぷ!」 「でる!れいむのげいじゅつてきな、うんうんがでるよおおおおおおお!」 悪びれるどころか、なおも好き勝手振舞うれいむたち。 「ふざけないでねえええええ!もうここはれいむたちのおうちじゃないんだよおおおおお! ゆっくりするならどこかほかのばしょでやってね!それくらいわかれよおおおおおお!」 怒りが頂点に達したちぇんを尻目に、れいむは呆れたような口調で語りだす。 「ゆふう!これだからばかなゆっくりはこまるね! あのねぇ、なにかかんちがいをしているようだけど、れいむたちのこうどうは、 むれのおきてにのっとった、なんらひなんされるものじゃないんだよぉ!」 「わからないよおおお!おうちせんげんはもうきんしされたんだよ! だからここはもうれいむのおうちじゃないんだよ!だからでてってよ!」 「ゆふん!たしかにちぇんのいうとおり、おうちせんげんは、きんしされたね!だからこのおうちはれいむのものじゃないよ! でもね、だからといって、ちぇんのものでもないんだよ!」 「ゆ?え?」 予想外の答えに、キョトンとするちぇん。 「だってちぇんは、このばしょでしてないんでしょ?おうちせんげんを! だったらこのばしょはだれいのものでもないんだよぉ! ということは、このばしょにあるごはんさんも、べっどさんも、みんなみんな、だれのものでもないんだよぉ! れいむたちはねえ、ただおちているごはんさんや、べっどさんをつかってゆっくりしているだけなんだよ! ちぇんだって、かりでおちている、ごはんさんをひろってきてるでしょ? それとおなじことなんだよおおおおおおおおお!」 そう、そうなのだ! 長ぱちゅりーによって、この群れではおうち宣言は一旦白紙に戻されたばかりでなく、その後のおうち宣言まで禁止されているのだ。 おうち宣言とは、いわば所有権の宣言に他ならない。 これが禁止されるということは、この群れにある全ての物の所有権は、すべて宙に浮いてしまっている状態と同義である。 いや、より正確に言えば、この群れからは所有権という概念が消滅してしまったと言うこともできる。 ともすれば、いまれいむが言ったように、元ちぇんのおうちにある食料や家具などは、ちぇんの持ち物足り得ない。 いかにそれらがちぇんが集め、作ったものであることが明らかであったとしても、おうち宣言をしていない以上は、 それらは誰の所有物でもなく、そこらへんに落ちているものと同等の扱いを受けることになるのだ。 これらのことを利用し、ボスれいむ率いるれいむ集団は他ゆんの獲得してた食料をはじめとする持ち物を、 片っ端から横取りする作戦を開始したのだ。 今、ちぇんのおうちでくりひろげられているのと同じような光景は、ボスれいむの指示によって、群れ全体で見ることができた。 無論こんな事態になるとは、長ぱちゅりーはまるで想定していなかった。 長ぱちゅりーの取った行動は、何か問題が起こったから、その問題の原因となっているものを取り除くという単純にして明快な解決方法ではあったのだが、 そのことによって、また新たな問題が発生するかもしれないという可能性には気づけなかったのだ。 れいむの集団を率いているボスれいむもまた、当初はこのことに気づいていなかった。 だがしかし数日後には、このおうち宣言禁止法の盲点に気づき行動を開始することになる。 その意味でボスれいむのズル賢さは、長ぱちゅりーよりも上だと言えるかもしれない。 が、しかしボスれいむはある致命的な勘違いをしていた。 それは……。 「ゆふふふふ!どうやらりかいできたようだね!わかったらごはんをおいてさっさとどっかいってね! れいむは、すーぱーおひるねたいむの、つづきをしなきゃいけないんだからね!」 「むーしゃむしゃー!じわあせぜええええええ!」 「でるよおおおお!れいむのすてきなうんうんがとまらないよおおおおお!」 すっかり勝ち誇った様子のれいむたち。 ちぇんはそんなれいむたちを冷め切った目で見つめそして、 「わかれよー!このげす!」 ドン! 「ゆぴぎゃああああ!」 そのうちの一匹に体当たりをかまし、吹き飛ばした。 「ゆぎゃああああ!いだいよおおおおおおおおお!」 「ゆゆゆゆゆ!なにするのおおおお!」 「どうして!ゆっくりできないよ!」 完全に予想外のちぇんの行動に慌てふためくその他のれいむ。 どうしてちぇんがこんな酷いことをするのか、その理由がれいむにはわからない。 「ちぇん!いったいなんなのこのしうちは!このおうちはちぇんのものじゃないんだよ! それがわかってるの!」 「おまえらこそ、じぶんたちのたちばをわかれよー!」 理不尽に対して憤る様子のれいむに対し、バカにしきった口調で答えるちぇん。 「ねんじゅうおうちでぐうたらしたり、ほかのみんなにたかったりしているれいむたちはわからないかもしれないど、 かりばは、せんじょうなんだよー! だれのものでもない、しょくりょうはちからでうばいあいなんだねー! おまえらが、ここにおちているごはんさんをもっていくというのなら、ちぇんはそれをちからずくでそしするだけだよー!」 言うが早いか残りのれいむたちにも攻撃を仕掛けるちぇん。 「ゆぎゃあああああ!」 「やべでえええええ!」 ドガ!バキ!グチャ! 次々とおうちからはじき出されていくれいむたち。 「おらおらさっさとどいてねー! いままでは、おなじむれのよしみで、たしょうはえんりょしてたけど、 そっちがそのつもりなら、こっちもこんごいっさいようしゃしないよー!」 「どじでえええええ!なんでこうなるのおおおおおおお!」 想定外のちぇんの行動に悲鳴をあげるれいむたち。 ボスれいむをはじめとするれいむ一派は勘違いをしていた、今まで他のゆっくりがれいむの集団に腹立ちを感じながらにも、 手を出せなかったのは、おうち宣言という強力な後ろ盾があってこそなのだ。 それがなくなってしまった以上、れいむたちを暴力から守る壁は存在しない。 おうち宣言が無効になったことにより、他ゆんのおうちにある物は誰のものでもない、よって勝手に食べたり持っていってもよいという理屈は、 なるほど確かにその通りだ。 しかし誰のものでもないということは、つまり前回のおうち宣言作戦とは違い、れいむたちのものになったわけでもないのである。 他ゆんが大人しく、れいむたちのされるままにしているわけがない。 ゆっくりの群れはその内部こそは平和だが、ひとたび外に出ればそこは熾烈な縄張り争いの連続だ。 群れの掟にしても、他ゆんの持ち物を強引に奪ったり、無意味なゆっくり殺しは禁止されているが、 狩場での食料をめぐっての争いは良しとされている。 これは野生に生きるものたちでは当たり前のことなのだ。 まあ、それでも同じ群れの仲間同士なので、いろいろと融通が利く場面も多いのだが、 今回の件でれいむ一派は完全に自分たち以外のゆっくりを敵に回してしまった。 さらに悪い事にれいむたちが自分たちで言い出した、群れ内にあるものは誰のものでもない宣言により、 この群れからはただでさえ曖昧なゆっくりたちの所有という概念が消えたのだ。 これは強いものが全てを支配する、完全な弱肉強食時代に突入したことを意味する。 今日、この日より群れの様子は一変することとなった。 そして基本能力も低い上に、群れ内での繋がりも希薄なれいむたちが、この事態の深刻さに気づくのにそう時間はかからないだろう。 れいむたちの地獄はここから幕を開ける。 一週間後……。 「ゆひい!ゆひい!」 群れ内にて、ズタボロになったある一匹のれいむがキョロキョロとあたりを必死に見回している。 そんなれいむの頭のには、数個のどんぐりが乗っかっている、れいむが必死になって集めた僅かな食料だ。 しかし、そんな僅かな食料も、もし他のゆっくりに見つかるようなことがあればたちどころに奪われてしまうことだろう。 今の群れの状況では、それが当たり前なのだ。 そのためにれいむは念入りに周囲を確認し続ける。 「ゆぐぐぐ!ゆっくりできないいいいいい!」 あまりのゆっくりできなさから、思わず唸り声を上げるれいむ。 そう、あの日から全てが変わってしまったのだ。 ボスれいむ率いるれいむ集団の群れ乗っ取り作戦は、前記の通り失敗に終わった。 そして、その後に待っていたのはれいむたちに対しての厳しい冬の時代である。 一応れいむたちは、あからさまに掟を破っていたわけではないので制裁こそされなかったが、群れのみなの心証は最悪だった。 そして、その弊害として、みんながみんなれいむたちの食料を横取りするようになったのだ。 もちろんこれは掟違反とはならない。おうち宣言が禁止されているこの群れでは、所有という概念そのものが存在しないのだから。 仮にれいむたちが持っている食糧を無理やり奪い取ったとしても、それは単純に強いゆっくりが、落ちている食料を拾っただけだという扱いになる。 そのときたまたまれいむがすぐ近くにいただけだった、それだけのことである。 要するに群れに存在している全てのものは、誰のものでもなくどれだけ勝手に持っていってもお咎めなしということだ。 このことより、群れにいたれいむたちは、その全ての持ち物を他ゆっくりたちに取り上げられることになる。 実際能力の低いれいむたちは、他ゆんたちにとってもいいカモだっただったのだろう。 自分たち以外の全ての群れのゆっくりから、常に食糧を狙われることとなったれいむたちの生活は一気に苦しくなった。 さらに、もとよりこの群れにいるれいむたちは、数ばかり多くて基礎能力が低い個体ばかりだったことも事態に拍車をけることになる。 奪われたのなら奪い返せばいいじゃないかと思うかもしれないが、やはり基本能力が低いれいむたちでは、 その他の優秀なゆっくりたちには、まるで太刀打ちすることができなかった。 今までれいむ集団が好き放題やってくこれたのは、所詮おうち宣言という強力な後ろ盾があっての話というわけだ。 ちなみに、れいむ以外のぱちゅりーなどの力の弱いゆっくりたちは、相手の持ち物を奪わない代わりに、 自分の持ち物にも手を出さないという、掟とは別の紳士協定を他ゆんたちと早々に結ぶことで強奪を回避した。 一部のれいむたちも、その協定を他ゆんと結ぼうとしたようだが、当然のごとく拒否されることになる。 それだけおうちを奪われた恨みは根が深いものがあったということだろう。 こうしてれいむたちは、群れ内において、周りが全て敵という八方塞の状況に追い込まれたのであった。 「はぁ、ひさしぶりのごはんさんだよぉ!」 れいむは、目の前の数個のどんぐりを見つめながらしみじみと呟く。 あの日以来、ほとんどろくなものをれいむは食べていなかった。 何故なられいむが狩場で狩りでもをしようものなら、食料を得るたんびに周りにいるゆっくりたちからすぐさま奪われしまうからだ。 かといって、れいむの実力では他ゆんの食糧を力づくで奪うことなど不可能だし、最近ではみな警戒しておうちには必ず見張りがいるのだ。 そんな状況の中、みなの目を盗みながら必死で確保したのがこの数個のどんぐりなのである。 「ゆふぅ!もっとたくさんむしゃむしゃしたいよぉ!どうしてこんなことに……。 ゆう、でもいまはしかたないね、それじゃゆっくりいただきま………」 「ゆゆ?こんなところでれいむがなにかたべようとしてるのぜ?」 「ほんとだわ、わたしたちもごいっしょさせてもらおうかしら?」 「!?」 れいむが、数個のどんぐりを口に含もうとしたちょうどそのとき、近くの茂みからまりさとありすのつがいが現れた。 その突然の事態に、恐怖に見開かれるれいむの瞳。 「やっ、やめてね!とらないでね!れいむのどんぐりさんとらないでねえええええ! でいぶはもうみっがもろくにたべてないんですううううううう! おねがいだから、みのがしてええええええええ!」 今までの経験により、どんぐりを強奪されると感じたれいむは、必死に自分を見逃してくれるよう懇願する。 しかしまりさとありすは、そんなれいむの様子にも顔色一つ変えない。 「とる?れいむは、いったいなにをいっているのかしら? ありすたちは、おちているごはんさんをひろうだけよ?そうでしょまりさ!」 「そうなのぜ! べつにそのどんぐりさんが、れいむのものってわけじゃあるまいし、いったいなにをあわてているのかぜ!」 そういいながらじりじりとれいむに近づいていく二匹。 「ゆっ、ゆひいいいいい!おっおねがいだよおおおおお! れいむたちがわるかったよおおおおお!だからもうゆるしてよおおおお!ゆっくりさせてええええええ!」 「あら?さっきかられいむは、いったいなにをいっているのかしら? れいむはべつにおきてをやぶったわけじゃないし、なんにもわるいことしてないわよね!」 「そうなのぜ!だからこれからまりさたちがすることも、べつになんらわるいことじゃないのぜ! ゆふん!」 言いながらまりさは、れいむに対して軽く体当たりをした。 「ゆがべし!」 しかしそれでも、貧弱な上に消耗しているれいむには充分な威力だったようで、 れいむは、もっていたどんぐりを盛大に待ち散らしながら、後方へと吹っ飛ばされる。 「あらまりさ、こんなところに、どんぐりさんがおちてるわ! ちょうどこばらがすいてきたところだし、いただくとしましょう!」 「ゆゆ!それはいいかんがえなのぜ!それじゃさっそく、 むーしゃむしゃー!それなりー!」 地面に転がったどんぐりを、まったく躊躇なく食す二匹のゆっくり。 当然だ、それは誰の物でもない、ただ落ちているにすぎない食料なのだから。 まりさたちがそれを食べたところで何の罪もない。 「あっ!ああああああ!でいぶのどんぐさんがあああああああああああああああ!」 目の前で、必死にの思いをしてまで手に入れたどんぐりを食べられ絶望の声を上げるれいむ。 「ふう、それじゃあいきましょうかまりさ、いつまでも、しりあいのみょんにるすばんをさせていたらわるいわ!」 「ゆゆそうだったのぜ!まったくふべんなよのなかになったものなのぜ!」 「ほんとにね、こんなことのげんいんになったゆっくりは、しねばいいのにね!」 それだけ言うと、れいむを無視していずこへと去っていくまりさとありす。 後には放心状態のれいむだけが残った。 その瞳には溢れんばかりの涙が溜まっている。 「ゆっぐううう!ゆっくり!ゆっくりしたいよおおおおおおおおお! どうしてれいむがこんなめにいいいいいい! うわあああああああああああああああああああああ!」 自身を襲った余りの仕打ちに号泣するれいむ。 しかし、どれだけ泣いたとことで誰かが助けてくれる筈もない。 れいむは、空腹と極度のゆっくりできないストレスにより、この二日後に永遠にゆっくりした。 場所は変わってここは群れの外の狩場。 身も心もズタボロになったれいむがまたここにも一匹。 「ゆぐぐぐ、こんなはずじゃ………」 ずりずりとボロボロになった身を引きずるれいむ。 息も絶え絶えのその様子は、その他のれいむたちよりも一層酷い風に見受けられる。 それもそのはず、このれいむは騒動の発端となったれいむ一派を率いていたボスれいむだったのだ。 このボスれいむの現状は悲惨の一言である。 何故なら、ボスれいむは群れのゆっくりたちからだけでなく、れいむ一派のれいむたちからも恨まれていたからだ。 群れ中から敵視されているとは言え、れいむ一派のれいむたちはまだれいむ同士で組むことができる余地がある。 事実、幾つかのれいむのグループは、巧みに連係することにより、 まったくゆっくりできない劣悪な環境ながらも、何とか生きていくことはできてはいた。 しかし、このボスれいむは、同じれいむたちからさえも、こうなった事態の責任ということではぶられていたのだ。 群れ内にて自分以外が全て敵、まさに孤立無援の四面楚歌の状態である。 もはやこのボスれいむは完全に『詰んで』いた。 「ゆふふふ……ごはんさん、むしゃむしゃしたいよぉ……ゆふふふ…」 虚ろな表情にて、群れの外にある狩場をふらふらとうろつくボスれいむ。 もうずいぶん長い間、食料を口にしていない。 それもそのはずで、どれだけ頑張って食料を確保しても、みなから恨まれているボスれいむは優先的に強奪の対象とされてしまうからだ。 今も狩場の周りにいるゆっくりたちが、チラチラとボスれいむの様子をうかがっている。 ボスれいむが何か食料を手に入れたら、口に入れてしまう前に奪う気なのだ。 「ゆぐぐぐぐ……どうして…どうして!」 ボスれいむは虚ろな頭で考える、自分の計画は完璧だったはずなのだ!何故ならおうち宣言はゆっくりの絶対のルールだからだ。 そうだ!そうだとも!こんなの間違っている!おうち宣言を禁止するなんて、言語道断な行為のはずだ! みんなおかしい!まちがっている! 本来、おうちも家具も食料も、全てがゆっくりしているゆっくりのために存在している、すなわちれいむのために存在しているのだ! しかしそれらは、嘆かわしいことに、ゆっくりできないゆっくりがひとりじめしている! そんな愚かな連中に、あらためてそれらは誰の物であるかを主張し、しっかりと理解させる!それがおうち宣言の本来の意義のはずだ! 「ゆふ…ゆふふふふふふ!」 そうだ!かまうことはない!おうち宣言禁止法など、所詮は自分の利益しか考えないゲスが、 本来れいむの物であるはずの物を横取りしようとして、でっち上げた悪法にすぎない。 そんなもので、でんっとうあるおうち宣言を封じ込めようなどとは片腹痛い! 今こそ真に正しい秩序の復活の時なのだ! ボスれいむは、力の入らない身体を振り絞り、大きく息を吸う。 そして、渾身の気力をもって、高らかに宣言する。 「ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ!!!」 決まった!見たか!これが完璧なおうち宣言だというものだ! これで愚か者どもも理解したはずだ。 いったい何が正しいことかということを! この群れがいったい誰のものかと言うことを! そしてこのむ……。 グサ! 「………あ?」 ボスれいむの思考は突然自身を襲った未知の衝撃により中断した。 ボスれいむのすぐ後ろにはみょんがいた、そしてみょんは木の枝を加えており、その枝は後ろからボスれいむの身体を後ろから貫通して前に突き出て……。 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああ!」 事態を把握したボスれいむの口から絶叫がほとばしる。 「みょん!こいつは、むれのおきてできんしされている、おうちせんげんをやらかしたみょん! これはもうせいっさいするしかないみょん!」 「ゆゆ!そうだねこんなげすはせいっさいだよ!」 「わかるよー!やっとげすがほんしょうを、あらわしたんだねー!」 「おきてをやぶったんだから、しょうがないわよね!」 グサグサグサ! 四方八方から枝を加えたゆっくりたちが迫り、次々と身体を貫かれていくボスれいむ。 「ゆぎょえええええええええ!やべでええええええええ!だずげでええええええええええ!」 痛みで我に返ったボスれいむが、必死に助けを求める。 しかし、ただでさえみんなから嫌われている上に、新たなる掟であるおうち宣言禁止法をも破ってしまったボスれいむの声を聞くものはいない。 いや、それどころか、みなボスれいむを直接制裁する口実ができたと、積極的に木の枝を突き刺してくる。 「なんでええええ!なんでわからないのおおおおおおお! ぜんぶれいむのもののはずなのにいいいいいい!おうちせんげんしたでしょおおおおおおお! いだいいいいい!やべでえええええええ!」 多数の木の枝で全身を貫かれ、ハリネズミのような有様になったボスれいむ。 もはや誰もボスれいむの話を聞いてなどいない。 このまま苦痛と絶望に飲み込まれながら、ゆっくりと死に絶えていくことだろう。 ボスれいむが最後までしがみついていたおうち宣言など、所詮状況が変わればただの悪法にすぎないということだ。 「れいむ、けっきょくのところおうちせんげんは、あなたが、いいえ、ゆっくりたちが、 おもっているほど、ばんのうではないとうことなんでしょうね。 それにさいごまできづかなかった、いや、きづこうとせずに、おうちせんげんをしたあなたは、ゆっくりのかがみかもね。 でもぱちぇはそんなのはごめんだわ」 制裁されるボスれいむを遠巻きに眺めながら、長ぱちゅりーはそんなことを呟いたのだった。 おしまい。 以下全然読む必要のない後書き。 こんな拙い文章を最後までよんでくださってありがとうございました。 何が面白いのかわからなくなったら初心に帰ればいい。 今回のテーマは回帰、まあ上手くいったかどうかはわかりませんけどね。 少しでも読者の方々がゆっくりできたら幸いです。 と、まあそんなわけでまた次の機会によろしくお願いします。 ナナシ。
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『弱くないまりさ』 26KB いじめ いたづら 自業自得 日常模様 お家宣言 野良ゆ 自然界 現代 独自設定 ありがちネタ ありがちなネタな気がするから被ってる可能性がとっても高いよ! それを考えるとすっごい怖いよ! しかもそんなネタですら上手く料理できてないよ! ネタ被ってたらごめんね! つまんなかったらごめんね! 許してね! 許したらあまあまもってきてね 注意事項 ・俺設定注意 ・善良(?)ゆっくり死亡注意 ・虐待殆ど無し注意 それではどうぞ 実のところ、ゆっくりという生物(ナマモノ)は決して弱くないのだ。 『弱くないまりさ』 まりさは群れで一番強いのだ。 自分でそう思っているし、森の中に住んでいる群れのみんなもそう考えている。 その若ゆっくりのまりさは、群れでもダントツに素早いちぇんにかけっこで勝つことができた。 また、木の枝を巧みに操るようむにちゃんばらで勝つことだってできた。 長である年老いたぱちゅりーのきょうっいくっにもまりさ種とは思えない理解力を示し、 とかいはなありす達に並ぶほど物作り(笑)の技術もある。 は? れいむ? ゆっくりプレイスに襲来した胴無し子れみりゃを死闘(笑)の末に打ち倒した頃には、 文武両道を地で行くまりさは群れの勇者(笑)として尊敬と羨望の眼差しを一身に受ける存在になっていた。 普通であればここで驕り高ぶり、ゆっくり特有のゲス気質を発揮して群れを壊滅させたりするものだが、 まりさは鍛練や実績からくるプライドを持ちつつも他ゆんを見くびることをしないゆっくりに育った。 殊更に美ゆっくりとして生まれたわけではないが、おぼうしの形も悪くない。 いや、どちらかと言うのならば、むしろ整った方である。 誰にでも分け隔てなく爽やかな笑顔を向けるまりさと会話をして、頬を赤らめずにいられる未婚ゆっくりはいなかった。 力が強く、技を持ち、頭も悪くなく、そして善良。 野生ゆっくりの群れの中では数十世代に一匹生まれるか生まれないか、 まりさはそんな優れたゆっくりである。 ―――――――――――――――――――― 「ゆっ! それじゃあ、まりさはかりにいってくるよ! おやさいさんをたくっさんっとってくるからゆっくりきたいしててね! かってにはえるおやさいさんをひとりじめするにんげんさんたちをこらしめてくるからね!」 「「「ゆぅーっ! まりさ、ゆっくりがんばってね!」」」 これである。 いかに優秀とは言え、そこは野生ゆっくりの限界。 "勝手に生えてくるお野菜さんを人間さんは独り占めしている" "人間さんは強いけど、まりさ程の勇者なら懲らしめることだって不可能ではない" 残念だが、このような幻想から逃れることはできなかったようだ。 狩り(笑) …群れを離れて数日、辛く険しいまりさの長旅の終着点には素晴らしい景色が広がっていた。 見渡す限りの広大な空き地に、数え切れないくらいのお野菜さん。 群れのみんながここで暮らせば、一体どれほどのしあわせーを享受することができるのだろうか。 ぱちゅりーのおはなしできいてはいたけど、まさかここまでのゆっくりぷれいすだったとはっ…! 幼馴染である"はやぶさのちぇん"や"えんげつさっぽうのようむ"と共に幾多の冒険を繰り広げ、 野生ゆっくりでは考えられないほど多種多様な経験を積んだ"ゆうしゃまりさ"ではあるがしかし、 想像を絶するほど豊かなプレイスを前にして、うれしーしーとおそろ(畏ろ)しーしーを止めることなどできなかった。 胸(?)をぐるぐると駆け巡る感動、そして畏れ。 筆舌に尽くしがたい感情(笑)の渦に身を震わせていたまりさの中に、一つの言葉が浮かんでくる。 は…… た…… け…… それは自分の両親から聞いた言葉ではなく、尊敬する老賢者の長から教わった単語でもない。 まりさの体の内側よりじわじわと滲み出てきた温かい気持ち。 ゆっくりである自分の中に代々受け継がれてきた、本能が伝えてくる言葉であった。 は…た…け…? はたけ…。 ゆっ、そうなんだね このゆっくりぷれいすは"はたけ"さんっていうんだね! 不思議な感覚であったが、まりさはそれを素直に受け止める。 恐るべき咆哮で大地を揺らす獰猛な魔獣(子イヌ) 剣を弾く鎧のような鱗を纏った死を司るドラゴン(子ヘビ) 旅の途中、それまで培った知恵と勇気が通用しない死地において、常に自分を救ってくれたのはこの"本能"だったのだ。 毎日へとへとになるまで繰り返した肉体の鍛練。 ゆっくりと時間をかけて育ててきた知恵と知識。 そしてどんなときでも心の片隅に置いていた全てのゆっくりのしあわせー。 それら全てを駆使して辿りついた場所は、もはやこの世のものとは思えない桃源郷であった。 まりさは理由も分からずぼやける視界を戻すように、一度だけ時間をかけてまばたきをした。 ほんの少し顔を上げ、いまだ止まらない体と心の震えに全てを委ね、その顔はキリッとしたドヤ顔を形作る。 深く深く息を吸い込んで、自然に生まれた笑顔が大きく口を開き…… 「このはたけさんを、まりさたちのゆっくりぷれいすにするよっ!!」 万感の想いと共に、輝かしい"おうちせんげん"が飛び出した。 ―――――――――――――――――――― 「またか…」 思わず溜息をついてしまった。 諦めに似た気分で四、五メートルほど離れた場所で騒ぐ不思議饅頭に目を向ける。 手に持っていたクワを傍に置き、少しずれた麦わら帽子の位置を戻して、 農夫は黒い帽子のゆっくりに近づいて行った。 確か"まりえ"…… いや、前にテレビで聞いたのは"まりあ"だったか? そのゆっくりの名前は覚えていないが、まあそんなことはどうでもいい。 大切なのは、森に近い場所に作ってしまったこの畑の野菜を、時々現れる饅頭が狙っているということだ。 「おい、そこのゆっくり」 「…ゆ?」 なんだかぷるぷると震えていたゆっくりが、こっちを向いた。 声をかけられると思っていなかったのか、不思議そうな表情をしている。 小汚い。 人間の帽子を真似たような形の物体を頭に乗せているが、途中からぐちゃっと折れ曲がっている。 体には土がついているのか、ところどころ茶色い染みが出来ていた。 食品である普通の饅頭と同じ材質、成分だとは知られてるが、 あんな薄汚れた物が地面に転がっていて、食べる人間なんているのだろうか 肌にこびりついている茶色い染み。 土ならばまだ水で流せばいいが、自然の野原を転げまわっている野生ゆっくりのことだ。 それが野生動物の糞などでないという保証はどこにもない。 衛生的に問題無いよう加工するとは言え、肥料として家畜の排泄物を畑にまくことは現在でもある。 この野菜も糞尿にまみれて育ったと考えられないことはないが…。 いやいや、それでもアレは無いな(笑) というか野菜と一緒に考えるのは極端すぎたか 「…………? …………? …………! ………ゆっ!?」 ぽかんとした間抜けな顔が、短い鳴き声と共に驚愕の表情っぽいものに変化した。 他の生物と比べたゆっくりの無能ぶりを舐めてかかってはいけない。 こちらを向いてたっぷり1分は使ったが、ようやく目の前の自分に気がついたのだろう。 これが噂の餡子脳だ。 いつもなら即潰して捨てるだけのゆっくりだが、そろそろキリのいい時間帯である。 休憩がてら野生の饅頭にちょっかいを出してみるのも悪くはない。 このゆっくりはどういう反応をするのだろうか。 気分がのっている今なら、意味も無く潰したりすることもしない。 素直だったり運のいいゆっくりなら生き延びることはできるだろうが、さて。 ―――――――――――――――――――― 突如現れた巨大な影に、まりさは素早く警戒を強めた。 大地に突き刺さる、巨木を思わせる二本の柱。 更に見上げれば、その上に用途の分からぬ謎の塊。 両側からはれいむのおさげさんと同等の働きをする二つの触手。 そして遥か頂上に見える、ゆっくりのお顔を模した体。 ぱちゅりーに聞いている。 その性質は野蛮で残忍。 餡子もクリームも(人間で言うところの「血も涙も」)無い卑劣な手段を好んで使う。 軽々と振るう力は大のゆっくり数ゆん分。(笑) かけっこ自慢のちぇん種に負けずとも劣らぬ速度で大地を移動し、(笑) その無尽蔵の体力と言ったら、狩りの得意なまりさ種を僅かに凌ぐほど。(笑) そして悪知恵だけならぱちゅりー種をも超えるという。(笑) 主にお野菜の勝手に生えてくるゆっくりプレイスに生息する、最凶最悪の巨大生命体…!(笑) その名も"にんげん"さん!! 人間さんには十分注意しろ、と老賢者は眉間にしわを寄せて何度も言っていた。 群れの誰もが遭遇したことは無いが、その恐ろしさだけなら誰でも知っている。 人間さんの中にも道理を理解し、穏やかな気質でゆっくりに従う種族がいると伝わっているが、 それも他の種族と比べたらほんの少ししか生息していないという。 少なくとも、目の前の一匹がマトモな方だと考えるのは早計に過ぎる。 お野菜さんのことを習って人間さんの存在を知った日から、 たとえ相手がその恐るべき悪魔であろうと勝利を勝ち取るため訓練を積んできたという自負を持つまりさ。 しかし、それでも戦闘になれば苦戦を強いられることは間違いない。 いや、下手をすれば負けてしまう可能性だって考えられないことではないのだという。 目の前の人間さんは知性を持った"めで"種族か、それとも強大な力を無闇に振るう"ぎゃくたい"種族なのか。 判別法をぱちゅりーに教わったことを思い出したまりさは、勇気を振り絞って巨大な生き物に問うた。 「ゆっ… にんげんさん! ゆっくりしていってね!?」 「はいはいゆっくりゆっくり」 なんと、彼方の空より響いてきたのはちゃんとした挨拶ではなかった…! ゆぅ、ゆっくりしてないごあいさつだよ これは"めで"じゃないにんげんさんなんだね… まりさは人間さんに気付かれぬよう、警戒の度合いを少し強める。 だが、お野菜さんの生えるプレイスを人間さんが徘徊しているだろうことは百も承知。 その個体が"めで"ではないという可能性だって、もちろん考慮していた。 そう、この次に待っているのはカスタードをチョコレートで(人間で言うところの「血を血で」)洗う死闘なのだ…! しかし如何に理知に欠け、ゆっくりしていない種族とはいえども、無闇に傷つけることをまりさはよしとしない。 全てにおいて完全であるように思えるまりさ。 その唯一の欠点は、獰猛な獣に対しても優しさとゆっくりを与えてしまうという"甘さ"であった。 「にんげんさん! このゆっくりぷれいすはまりさがおうちせんげんしたんだよ! にんげんさんはでていってね! でも、すこしくらいならゆっくりしてもいいからね! ゆっくりしていってね!」 まりさは人間さんを理性で説き伏せることはできないと知ってはいたが、 それでも、温かい慈悲を見せれば心を入れ替えることもあるのではないかと少しだけ期待をかけていた。 ほんの短い間とはいえ、自分のゆっくりプレイスでゆっくりすることを許す。 まりさは人間さんが怯えることの無いよう、優しく穏やかな笑顔を浮かべて伝える。 「……………………」 しかし人間さんは答えない。 彼方を向いて、ああ…そうそう"まりさ"だった…、などと呟いているが、まりさに喋っているのではないのだろう。 もしや、言葉が通じないのか…? 致命的に問題をややこしくさせる可能性にも頭がいったまりさだったが、 一応、言語を扱うことはできると長が教えてくれたのを思い出し、落ち着きを取り戻すまりさ。 そう言えば、先ほども"ゆっくり"という言葉を使っていた。 カタコトではあるが、聞いたり喋ったりする程度の知恵はあるのだろう。 そう思ったまりさは、人間さんの返答をゆっくり待つことにした。 「ふむ、まりさよ お前がおうちせんげんした時、俺は少し向こうにいたよな? だからこのエリア…… いや、ここらへんのプレイスは俺がいないと思ったんだろう」 雲を突き抜ける高みから、人間さんのものと思われる声がようやく届いてきた。 「だがな、お前が今立っているプレイスも俺がさっきいたプレイスも、 実は一つに繋がっているんだ つまり、お前は俺がいたゆっくりプレイスでおうちせんげんしてしまったんだよ」 な…、何を言っているのだこいつは? まりさは愕然とした。 自分達の"おうちせんげん"には、たった一つだけ欠点が存在している。 それは「誰かがいることに気付かず、おうちせんげんしてしまうこと」である。 おうちせんげんは、そのプレイスが自分のものであるという唯一にして確実な証拠。 しかし、先住ゆんの存在に気付かずに行ってしまえば、そのプレイスは誰のものになってしまうのか? この複雑怪奇な問題に対し、ゆっくり達は正しい答えを持っている。 即ち、先に住んでいるゆっくりが後から来たゆっくりのおうちせんげんを邪魔すればいい、ということだ。 そうすれば、先住ゆんに気付かずにおうちせんげんをしかけたゆっくりも、誰かが先にいた事実を理解する。 丁寧に問題点を洗い出され、緻密に組み立てられた"おうちせんげん"システムは完全無欠の法となった。 これは自分達の群れだけではなく、他の群れでも同様に行われているようだ。 まりさが子供の頃にこのお話を聞いたとき、餡子に衝撃を受けたことを覚えている。 自分達の群れだけではない、この広い世界全てのゆっくりが使っている完璧な"おうちせんげん"。 それはつまり、住んでいる土地や文化に関わらず、ゆっくりなら誰でも"おうちせんげん"を思いつき得るということ。 "ゆっくり"という生命に眠る知恵のポテンシャル。 その高さに、まりさは大きな感動を覚えたのだった。 ……だと言うのに! この人間さんは意味の分からない理論を展開し、自分を正当化しようとしてくる! 先にゆっくりプレイスに住んでいる場合、他ゆんのおうちせんげんには途中で声をかける。 生後一週間を過ぎれば赤ゆっくりでも知っているこの方法を、人間さんは行わなかったのだ。 それどころか、恥知らずな人間さんは勝手に都合よくシステムを作りかえ、ゆっくりプレイスの所有権を主張してきた。 それは即ちルール違反! ゆっくりしていないゆっくりとして、即座におうちから叩き出されても仕方ないのだ! 心優しいまりさとて、流石にこれには怒りを覚える。 正義感の強い父に育てられたまりさは、卑劣な行為をなによりも憎んでいるのだ。 「にんげんさん! おうちせんげんがふふくなときは、おうちせんげんのとちゅうにおうちせんげんをするんだよ! そんなこともしらないの!? ばかなの!? かってなことをいわないでね!! まりさおこるよ!!」 それでもまりさは怒りに耐える。 人間さんは卑怯なのではなく物を知らないだけなのだと考え、丁寧に説明をしてあげる。 普通なら「ばかなの? しぬの?」と続けるところを「ばかなの?」で止めてあげることさえした。 それに対する返答は…… 「ほう、なるほどなるほど だがなあ、お前らゆっくりは知らないかもわからんが、 人間さんは元々"おうちせんげん"というのを使わないんだ」 「…………ゆ?」 一瞬、その生物の言っている言葉の内容が理解できず、まりさは硬直した。 その隙をついて、人間さんは更に話を続ける。 「そのルールだと、お家を留守にしている場合 他のゆっくりのおうちせんげんの途中に邪魔できないだろう? だから人間はおうちせんげんの代わりに"ここは自分のお家です"って文字で伝えることにしてるんだ」 めろすは激怒した。 失礼。 まりさは激怒した。 おうちを留守にするとおうちせんげんが邪魔できない? だからみんな、苦労をしておうちに"けっかい!"を張るのだ!! そう言えば、けっかい!が張れないなどと文句を付けるのか? だったらおちびちゃんにお留守番をしてもらえばいいだろう!! ああ言えばこう言い、こう言えばああ言う。 揚げ足取りにすらなっていない屁理屈を繰り返す人間さんの態度に、まりさは目の前が真っ白になったように錯覚した。 それは無論、生まれてこの方感じたことのないような怒りによるものである。 「ふっざけたことをいわないでねええええええええええええ!!? いまどき、おちびちゃんだってもっとまともないいわけをするよおおおおおおおおおおお!!!」 わなわなと怒りに震えるまりさ、ついに堪忍袋の緒が切れてしまった。 にんげんさんがこんなにもわからずやだったとはおもわなかったよ! まりさはもうおこったよ! ぷくー!じゃあすまされないよっ!! そしてまりさは話し合いで解決する意思を放棄する。 もちろん、まりさの知らない事実であるが、それは同時に"まりさの生存する可能性"を捨てることでもあった。 ―――――――――――――――――――― 「いいかげんにしろおおおおおおおおおおおおお!! おんっこうっなまりさもどたまにきたよおおおおおおおおおおおお!!!」 ぶるぶる痙攣していたと思ったら、そのゆっくりは突如ヨダレを撒き散らしながら怒りだしたようだった。 「う、うわっ…… これはキモい……」 歯をむき出しにして作られた表情は、はっきり言って通常の人間では直視に堪えないほど醜い。 ぐねぐねと軟体生物っぽく暴れまわるその動きは、地面と垂直に円を描いているようにも見える。 農夫は少し前のニュースで見た、急に人数が倍増した音楽ユニットのパフォーマンスを思い出した。 本題には関係ないが、先程まりさの主張した"おうちせんげん"。 これは通常「この○○○を、○○○のゆっくりぷれいすにするよ!」という言葉で行われる。 その言葉が開始してから終了するまでの間に先住ゆっくりがおうちせんげん返しをすることのできる可能性は、 普通種、希少種、胴付き、あらゆるゆっくりで調べた結果、0%だと加工所から発表されている。 ゆっくりはただでさえ頭が鈍く餡(脳)の回転が遅い生物(ナマモノ)であり、言葉を理解するだけでワンクッション、 自分にとってショックな内容の言葉だとさらにツークッションを必要としている。 他ゆんのおうちせんげんを言葉が完了してから理解するまでにかかる時間は、普通種で大体1分45秒とのことだ。 このまりさの群れでも、先住ゆんに気付かずにおうちせんげんが為されることは多い。 そうした場合は当然の如くゆっくり同士の殺し合いになるのだが、それを原因として一週間に平均5匹のゆっくりが死亡している事実は、 まりさは当然、長のぱちゅりー以下全てのゆっくりが知らないことである。 よくそれで群れとしてやっていけているものだ。 「ゆっうううううううううううううう!! もうがまんのげんっかいっだよ!! にんげんさんはすこし、いたいめにあったほうがいいよ!! まりさがこらしめてあげるよっ!!」 ひとしきり激昂してから動きを止めたまりさは、へたったおぼうしから木の棒を取り出して口に咥える。 「えいえんにゆっくりはさせないからあんしんしてね! ゆっくりしねええええええええええええええええええええええええ!!!」 とんでもなく矛盾したことを口走りつつ、こちらに向かってぴょんぴょん飛び跳ねてくるまりさ。 その鬼気迫る表情から、恐らく突進をしかけているつもりではないかと予測できる。 ゆっくり如きに人間を怪我させられる道理もないが、それでも尖った木の棒は危険だ。 ズボン越しとはいえ、スネにあたったらかなり痛いだろう。 もしかしたら絆創膏を貼らなければならない事態に陥る可能性もある。 「ふぁーんふぁーんうぃーひっざ……おっと」 当然だが、農夫はまりさが到達する前に軽く足をあげた。 するとこれまた当然、まりさは地面に顔から突っ伏すことになる。 口に木の棒を咥えていたために地面さんと熱いちゅっちゅをかますことにはならなかったが、 激突の瞬間にした"ベキィ!"なる音から、砂糖細工の歯が何本か折れたことが分かる。 「ゆべっ!? ……ばっ…! ばりざのさわやかにしろくかがやくしんじゅのようなはさんがああああああああああ!!?」 言うまでもないが、まりさの歯は白くない。 ゆっくりの歯は砂糖で出来ており、歯磨きなどしたら簡単に歯が削れてしまうのだ。 故に、飼いゆっくり以外のゆっくりの歯はすべからく薄汚れているのが常識である。 「お前の歯が真珠だってんなら、豚にくれてやっても惜しくないなあ… それはさておき、大丈夫か?」 「ゆぐぐ…! まりざのひっさつわざをよけたことはほめてあげるよ! でも、まぐれはなんかいもつづかないよ! こんどこそしねええええええええええええええええええええええええ!!(ぴょーん)」 「ほいっと」 「ゆばぁっ!?(バキィ!) ……ばっ…! ばりざのあらゆるまだむをみりょうするはりうっどはいゆうのようなはさんがああああああああああ!!?」 「そんな俳優はそもそもオーディションで落とされると思うなあ… もう5、6本は歯が抜けちまったぞ?」 「ゆふうっ…… ゆふふうっ……」 そんなやりとりが数回続き、まりさの口の中で無事な歯が2本以上続けて並んでいる場所が無くなってしまったころ、 ようやくまりさは人間に攻撃が当たらないことを理解したようだった。 「ど……! どぼじであだらないのおおおおおおおお!!? どぼじでええええええええええええええええええええ!!!?」 「そりゃあ、あんなに遅い攻撃じゃあな どんなにトロい人間でも、命中させるのは難しいと思うぞ」 「ゆううううううううううううううううううううううう!!?」 ちなみに一般的なまりさ種であれば、歯が1本折れた時点で負け惜しみと共に「もうおうちかえる」と叫び出すところだが、 このまりさはゆっくりにしては驚異的な忍耐力で痛みに耐え、攻撃をし続けた。 群れ一番の勇者の呼び名は、伊達ではないのだ(笑) 「あだればしぬんだああああああああああああああ!! よげるなあああああああああああああああああああああ!! よげないであだれええええええええええええええええええええええ!!」 先程の動きをぐねぐね再現しながら泣きわめくゆっくり。 凄まじく醜い。 「じゃあ、まりさ お前は他のゆっくりと喧嘩をするとき、相手の攻撃を避けないで当たってやるのか?」 「ゆ゛っ…!?」 キモい動きと漫画のような滝状の涙を止め、ちょっと考え込むまりさ。 農夫の一言で、自分の発言がかなりアホだったことを理解したのだ。 これはゆっくりにしては驚異的な理解力である。 群れの賢者に教えを請うた時間は、伊達ではないのだ(笑) 「…まあいいか ほら、次は当たってやるからもう一度攻撃してきな」 「ゆゆ!?」 調子に乗って余裕を見せてくる人間に、まりさは不敵な(と自分では思っている)笑みを浮かべた。 ゆぐふふふ… にんげんさんはばかだね! にんげんさんのぶきはその"ちぇん"とおなじくらいのすぴーどさん! そのすぴーどさんでこうげきをよけることのできるのがつよみなのに、 それをぽーいぽーいしてじぶんからあたりにきてくれるなんてね! こうっかいっするじかんはあたえないよ! せいぜいちょうしさんにのりすぎたことをこうっかいっしていってね! どうしろと言うのだろうか。 まりさはところどころ…いや、大多数が欠けてしまった歯で、再び木の棒を咥えた。 「くらえええええええええええええええええええええええええ!!」 ぴょーんぴょーん 間抜けな音とは裏腹に、憤怒の表情で迫ってくるキモ饅頭。 あの気持ち悪い顔が触るのはちょっとやだなあ、と農夫は若干後悔したが、約束は約束なのでぶつかるまで待ってやる。 「こんどこそほんとうにしねええええええええええええええええええええええ!!(ぴょーん)」 ザクゥッ!! まりさの咥えた木の枝は、かなり危険な長さまで一気に突き刺さった! お分かりだろうが、当然まりさ自身にである。 「…………………… ………あ…… あがああああああああああああああああああああああ!!? いだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 地面に落ちてから数秒後、びったんびったん飛び跳ねながら、まりさは大口を開けて泣き始めた。 正しく言葉を操れているところを見ると、幸い木の枝は中枢餡に届いていないのだろう。 「どっでええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったん) ごれどっでええええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったんびったん)」 いましがた自分が攻撃した人間に情けない顔で懇願する汚饅頭。 はっはっは、と朗らかに笑いながら、農夫は木の枝を抜いてやった。 「ゆ゛ひっ… ゆ゛ひぃっ… …………………… ……………どっ… どぼじでばりざにざざるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!? どぼじでええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」 餡子の比重はそれなりに高い。 中身が全部餡子のれいむ種やまりさ種、それも成体ゆっくりとなればかなりの重量を誇る。 たとえ勢いの皆無なぴょーんぴょーん攻撃と言えども、全体重を木の枝に乗せてぶつかれば人間も大怪我は免れない。 が、それは木の枝とゆっくりがガッチリ固定されている場合に限る。 一般的に、人間が物を噛む力の最大値は体重と同程度と言われる。 しかしゆっくりの場合、自分の体重と同じくらいの力が砂糖の歯に加われば、即座に歯が砕け散ってしまうのだ。 故にゆっくりの咬筋力は他の生物と比較して、驚くほどの弱さを誇る。 健康的な成体まりさが全力で噛んで歯ぎしりした結果、十分に濡れたコピー用紙にギリギリ穴が開いたと加工所から発表されている。 そんな力で雑多な食事をすることができるのは、ゆっくり特有の思い込みの力によるものだとか。 そういった意味のことをまりさでも理解できるように、農夫は簡単な言葉で懇切丁寧に教えてあげた。 噛む力が弱ければ、武器を持ったとしてもダメージは与えられない。 ならばと体当たりをすれば、ゆっくり程度の跳躍力では中身入り2Lペットボトルをどうにか倒すのが関の山だ。 ゆっくりが人間にも有効な攻撃をするのは、非常に非常に非常に難しい問題なのである。 「……………う…… うぞだああああああああああああああああああああああ!!! ばりざはむれいちっばんっのゆうしゃなんだあああああああああ!!! にんげんにもまげないんだあああああああああああああああああああああ!!!」 再び凄まじい表情で何度も飛び跳ねるまりさ。 確かにこの顔の醜さ、情けなさなら人間のそれにも負けることはないだろう。 「ゆがあああああああああああああああああああああああ!!!(びったんびったん) ばりざはよわぐないいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(びったんびったん) ばりざはよわぐないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(びったんびったん) よわぐないっでいえええええええええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったん)」 「おう? いや、お前が弱いとは言ってないよ」 「ゆがあああああああああああああああああああああああああああ!!(びったんびったん) ゆががああああああああああああああああああああああああああ……(びったんびったん) …………………(びったんびったん…) …………ゆっ?」 やはり数テンポ遅れて言葉の意味を理解したまりさは農夫を見る。 その顔には、侮蔑や冷笑の類は浮かんでいなかった。 「ま゛っ… まりざ、よわぐないの? まりざ、にんげんざんよりよわぐないの?」 「ああ 人間はゆっくりのことを"弱い"なんて思っちゃいないよ」 体の下半分に涙の痕を帯状に残したまりさの顔に、希望の光が差し込んできた。 「まりさ、お前はお花さんや虫さんを食べたりするよな」 「だ、だべるよっ! まりざ、おはなざんもむしざんもいっぱいだべるよっ! まりざはむれでいちっばんっかりが……」 「まりさはそのお花さんや虫さんを"弱い"とは言わないだろ?」 「………………ゆ?」 「そこらに転がってる石や草、空に浮かんだ雲、近くを流れてる川 別に、そういった"物"に強い弱いとか無いだろ?」 伊達ではないまりさには、農夫の言っている言葉の意味がおぼろげにだが理解できてきた。 漠然とした不安を抱え、ゆ? ゆ? と何度も聞き返す。 「だからな、まりさ "強い"とか"弱い"っていうのは、自分と少しはやりあえる生き物を表す言葉なんだ 人間にとってお前らゆっくりは路傍の石コロと大差無い 強さを測る以前に……」 不安はじわじわと大きくなる。 もはやまりさは自分でも理由が分からずに泣きそうな顔だ。 「……"敵"じゃないんだ "物"なんだよ まりさを含め、ゆっくりってのはさ」 群れの老賢者、とても賢いぱちゅりーの元できょうっいくっを受けたまりさは、やはり伊達では無かった。 とてもとても驚くべきことに、"価値観の違い"、"相手が自分をどう扱っているのか"をゆっくりながらに理解できてしまったのだ。 まりさはついに泣きだした。 「…ぢっ! ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ばりざはものじゃないよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 群れの勇者まりさ。 文武両道のまりさ。 強く賢く、みんなの憧れまりさは、群れの赤ゆっくりと同等以上の情けない顔で泣きわめく。 「ばりっ! ばりざっ! ばりざば! にんげんざんをごらじめにぎだんだよおおおおおおおお!! にんげんざんのでぎなんだよおおおおおおおおおおおお!!」 「はっはっはっは まりさ、敵っていうのは攻撃をしてくるものなんだぞ? お前くらい人間に無害な"物"は無いさ」 「ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! まぢがっでるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ぼらっ!(ぽいーん) ぼらぁっ!(ぽいーん) ばりざっ! ごうげぎじでるでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 ぽいーん、ぽいーん、と農夫に向かって飛び跳ねるまりさ。 しかし日々の農作業で鍛えこまれた足腰を持った農夫はビクともせず、ぶつかっては跳ね飛ばされるまりさを笑いながら見ていた。 「はっはっはっはっは そこの石コロが風で転がって足にぶつかってるのと変わらないなあ いや! それよりも痛くないかもしれないなあッ! はっはっはっはっはっは!!」 「ぢがうっ! ぢがうううううううううううううううう!! ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ぢがうでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ごうげぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「はっはっはっはっはっは!! あっはっはっはっはっはっは!! あっはっはっはゴホッ!ゲフぅっ! はひっ、はひーっ! むせたっ! あーっはっはっはっはっはっは!!」 「ぼらああああああああああああああああああ!!!(ぽいーん) ぼらあああああああああああああああああああああああああああ!!!(ぽいーん) ごうげぎだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!(ぽいーん) ごうげぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?(ぽいーん) ごうげぎじでるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?(ぽいーん)」 あっはっはっはっは……… ぽいーん、ぽいーん……… 十数分後。 周囲に響く間抜けな音と笑い声がやんで静かになった畑の一角には、ひとりの人間と、ひとかたまりの"物"があった。 少しずつ少しずつ黒ずんでいくその"物"は、しばらくの間微弱な痙攣を繰り返していたが、 笑い過ぎで腹筋を痛めた人間に通行の邪魔にならないよう道の端に放り投げられてから1分後、完全に動きを止めた。 野原に咲いた花は弱くない。 道端に転がっている石は弱くない。 ゆっくりも決して、弱くないのだ。 他に書いたSSさん ・anko2094 体感時間は黄金色
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『弱くないまりさ』 26KB いじめ いたづら 自業自得 日常模様 お家宣言 野良ゆ 自然界 現代 独自設定 ありがちネタ ありがちなネタな気がするから被ってる可能性がとっても高いよ! それを考えるとすっごい怖いよ! しかもそんなネタですら上手く料理できてないよ! ネタ被ってたらごめんね! つまんなかったらごめんね! 許してね! 許したらあまあまもってきてね 注意事項 ・俺設定注意 ・善良(?)ゆっくり死亡注意 ・虐待殆ど無し注意 それではどうぞ 実のところ、ゆっくりという生物(ナマモノ)は決して弱くないのだ。 『弱くないまりさ』 まりさは群れで一番強いのだ。 自分でそう思っているし、森の中に住んでいる群れのみんなもそう考えている。 その若ゆっくりのまりさは、群れでもダントツに素早いちぇんにかけっこで勝つことができた。 また、木の枝を巧みに操るようむにちゃんばらで勝つことだってできた。 長である年老いたぱちゅりーのきょうっいくっにもまりさ種とは思えない理解力を示し、 とかいはなありす達に並ぶほど物作り(笑)の技術もある。 は? れいむ? ゆっくりプレイスに襲来した胴無し子れみりゃを死闘(笑)の末に打ち倒した頃には、 文武両道を地で行くまりさは群れの勇者(笑)として尊敬と羨望の眼差しを一身に受ける存在になっていた。 普通であればここで驕り高ぶり、ゆっくり特有のゲス気質を発揮して群れを壊滅させたりするものだが、 まりさは鍛練や実績からくるプライドを持ちつつも他ゆんを見くびることをしないゆっくりに育った。 殊更に美ゆっくりとして生まれたわけではないが、おぼうしの形も悪くない。 いや、どちらかと言うのならば、むしろ整った方である。 誰にでも分け隔てなく爽やかな笑顔を向けるまりさと会話をして、頬を赤らめずにいられる未婚ゆっくりはいなかった。 力が強く、技を持ち、頭も悪くなく、そして善良。 野生ゆっくりの群れの中では数十世代に一匹生まれるか生まれないか、 まりさはそんな優れたゆっくりである。 ―――――――――――――――――――― 「ゆっ! それじゃあ、まりさはかりにいってくるよ! おやさいさんをたくっさんっとってくるからゆっくりきたいしててね! かってにはえるおやさいさんをひとりじめするにんげんさんたちをこらしめてくるからね!」 「「「ゆぅーっ! まりさ、ゆっくりがんばってね!」」」 これである。 いかに優秀とは言え、そこは野生ゆっくりの限界。 "勝手に生えてくるお野菜さんを人間さんは独り占めしている" "人間さんは強いけど、まりさ程の勇者なら懲らしめることだって不可能ではない" 残念だが、このような幻想から逃れることはできなかったようだ。 狩り(笑) …群れを離れて数日、辛く険しいまりさの長旅の終着点には素晴らしい景色が広がっていた。 見渡す限りの広大な空き地に、数え切れないくらいのお野菜さん。 群れのみんながここで暮らせば、一体どれほどのしあわせーを享受することができるのだろうか。 ぱちゅりーのおはなしできいてはいたけど、まさかここまでのゆっくりぷれいすだったとはっ…! 幼馴染である"はやぶさのちぇん"や"えんげつさっぽうのようむ"と共に幾多の冒険を繰り広げ、 野生ゆっくりでは考えられないほど多種多様な経験を積んだ"ゆうしゃまりさ"ではあるがしかし、 想像を絶するほど豊かなプレイスを前にして、うれしーしーとおそろ(畏ろ)しーしーを止めることなどできなかった。 胸(?)をぐるぐると駆け巡る感動、そして畏れ。 筆舌に尽くしがたい感情(笑)の渦に身を震わせていたまりさの中に、一つの言葉が浮かんでくる。 は…… た…… け…… それは自分の両親から聞いた言葉ではなく、尊敬する老賢者の長から教わった単語でもない。 まりさの体の内側よりじわじわと滲み出てきた温かい気持ち。 ゆっくりである自分の中に代々受け継がれてきた、本能が伝えてくる言葉であった。 は…た…け…? はたけ…。 ゆっ、そうなんだね このゆっくりぷれいすは"はたけ"さんっていうんだね! 不思議な感覚であったが、まりさはそれを素直に受け止める。 恐るべき咆哮で大地を揺らす獰猛な魔獣(子イヌ) 剣を弾く鎧のような鱗を纏った死を司るドラゴン(子ヘビ) 旅の途中、それまで培った知恵と勇気が通用しない死地において、常に自分を救ってくれたのはこの"本能"だったのだ。 毎日へとへとになるまで繰り返した肉体の鍛練。 ゆっくりと時間をかけて育ててきた知恵と知識。 そしてどんなときでも心の片隅に置いていた全てのゆっくりのしあわせー。 それら全てを駆使して辿りついた場所は、もはやこの世のものとは思えない桃源郷であった。 まりさは理由も分からずぼやける視界を戻すように、一度だけ時間をかけてまばたきをした。 ほんの少し顔を上げ、いまだ止まらない体と心の震えに全てを委ね、その顔はキリッとしたドヤ顔を形作る。 深く深く息を吸い込んで、自然に生まれた笑顔が大きく口を開き…… 「このはたけさんを、まりさたちのゆっくりぷれいすにするよっ!!」 万感の想いと共に、輝かしい"おうちせんげん"が飛び出した。 ―――――――――――――――――――― 「またか…」 思わず溜息をついてしまった。 諦めに似た気分で四、五メートルほど離れた場所で騒ぐ不思議饅頭に目を向ける。 手に持っていたクワを傍に置き、少しずれた麦わら帽子の位置を戻して、 農夫は黒い帽子のゆっくりに近づいて行った。 確か"まりえ"…… いや、前にテレビで聞いたのは"まりあ"だったか? そのゆっくりの名前は覚えていないが、まあそんなことはどうでもいい。 大切なのは、森に近い場所に作ってしまったこの畑の野菜を、時々現れる饅頭が狙っているということだ。 「おい、そこのゆっくり」 「…ゆ?」 なんだかぷるぷると震えていたゆっくりが、こっちを向いた。 声をかけられると思っていなかったのか、不思議そうな表情をしている。 小汚い。 人間の帽子を真似たような形の物体を頭に乗せているが、途中からぐちゃっと折れ曲がっている。 体には土がついているのか、ところどころ茶色い染みが出来ていた。 食品である普通の饅頭と同じ材質、成分だとは知られてるが、 あんな薄汚れた物が地面に転がっていて、食べる人間なんているのだろうか 肌にこびりついている茶色い染み。 土ならばまだ水で流せばいいが、自然の野原を転げまわっている野生ゆっくりのことだ。 それが野生動物の糞などでないという保証はどこにもない。 衛生的に問題無いよう加工するとは言え、肥料として家畜の排泄物を畑にまくことは現在でもある。 この野菜も糞尿にまみれて育ったと考えられないことはないが…。 いやいや、それでもアレは無いな(笑) というか野菜と一緒に考えるのは極端すぎたか 「…………? …………? …………! ………ゆっ!?」 ぽかんとした間抜けな顔が、短い鳴き声と共に驚愕の表情っぽいものに変化した。 他の生物と比べたゆっくりの無能ぶりを舐めてかかってはいけない。 こちらを向いてたっぷり1分は使ったが、ようやく目の前の自分に気がついたのだろう。 これが噂の餡子脳だ。 いつもなら即潰して捨てるだけのゆっくりだが、そろそろキリのいい時間帯である。 休憩がてら野生の饅頭にちょっかいを出してみるのも悪くはない。 このゆっくりはどういう反応をするのだろうか。 気分がのっている今なら、意味も無く潰したりすることもしない。 素直だったり運のいいゆっくりなら生き延びることはできるだろうが、さて。 ―――――――――――――――――――― 突如現れた巨大な影に、まりさは素早く警戒を強めた。 大地に突き刺さる、巨木を思わせる二本の柱。 更に見上げれば、その上に用途の分からぬ謎の塊。 両側からはれいむのおさげさんと同等の働きをする二つの触手。 そして遥か頂上に見える、ゆっくりのお顔を模した体。 ぱちゅりーに聞いている。 その性質は野蛮で残忍。 餡子もクリームも(人間で言うところの「血も涙も」)無い卑劣な手段を好んで使う。 軽々と振るう力は大のゆっくり数ゆん分。(笑) かけっこ自慢のちぇん種に負けずとも劣らぬ速度で大地を移動し、(笑) その無尽蔵の体力と言ったら、狩りの得意なまりさ種を僅かに凌ぐほど。(笑) そして悪知恵だけならぱちゅりー種をも超えるという。(笑) 主にお野菜の勝手に生えてくるゆっくりプレイスに生息する、最凶最悪の巨大生命体…!(笑) その名も"にんげん"さん!! 人間さんには十分注意しろ、と老賢者は眉間にしわを寄せて何度も言っていた。 群れの誰もが遭遇したことは無いが、その恐ろしさだけなら誰でも知っている。 人間さんの中にも道理を理解し、穏やかな気質でゆっくりに従う種族がいると伝わっているが、 それも他の種族と比べたらほんの少ししか生息していないという。 少なくとも、目の前の一匹がマトモな方だと考えるのは早計に過ぎる。 お野菜さんのことを習って人間さんの存在を知った日から、 たとえ相手がその恐るべき悪魔であろうと勝利を勝ち取るため訓練を積んできたという自負を持つまりさ。 しかし、それでも戦闘になれば苦戦を強いられることは間違いない。 いや、下手をすれば負けてしまう可能性だって考えられないことではないのだという。 目の前の人間さんは知性を持った"めで"種族か、それとも強大な力を無闇に振るう"ぎゃくたい"種族なのか。 判別法をぱちゅりーに教わったことを思い出したまりさは、勇気を振り絞って巨大な生き物に問うた。 「ゆっ… にんげんさん! ゆっくりしていってね!?」 「はいはいゆっくりゆっくり」 なんと、彼方の空より響いてきたのはちゃんとした挨拶ではなかった…! ゆぅ、ゆっくりしてないごあいさつだよ これは"めで"じゃないにんげんさんなんだね… まりさは人間さんに気付かれぬよう、警戒の度合いを少し強める。 だが、お野菜さんの生えるプレイスを人間さんが徘徊しているだろうことは百も承知。 その個体が"めで"ではないという可能性だって、もちろん考慮していた。 そう、この次に待っているのはカスタードをチョコレートで(人間で言うところの「血を血で」)洗う死闘なのだ…! しかし如何に理知に欠け、ゆっくりしていない種族とはいえども、無闇に傷つけることをまりさはよしとしない。 全てにおいて完全であるように思えるまりさ。 その唯一の欠点は、獰猛な獣に対しても優しさとゆっくりを与えてしまうという"甘さ"であった。 「にんげんさん! このゆっくりぷれいすはまりさがおうちせんげんしたんだよ! にんげんさんはでていってね! でも、すこしくらいならゆっくりしてもいいからね! ゆっくりしていってね!」 まりさは人間さんを理性で説き伏せることはできないと知ってはいたが、 それでも、温かい慈悲を見せれば心を入れ替えることもあるのではないかと少しだけ期待をかけていた。 ほんの短い間とはいえ、自分のゆっくりプレイスでゆっくりすることを許す。 まりさは人間さんが怯えることの無いよう、優しく穏やかな笑顔を浮かべて伝える。 「……………………」 しかし人間さんは答えない。 彼方を向いて、ああ…そうそう"まりさ"だった…、などと呟いているが、まりさに喋っているのではないのだろう。 もしや、言葉が通じないのか…? 致命的に問題をややこしくさせる可能性にも頭がいったまりさだったが、 一応、言語を扱うことはできると長が教えてくれたのを思い出し、落ち着きを取り戻すまりさ。 そう言えば、先ほども"ゆっくり"という言葉を使っていた。 カタコトではあるが、聞いたり喋ったりする程度の知恵はあるのだろう。 そう思ったまりさは、人間さんの返答をゆっくり待つことにした。 「ふむ、まりさよ お前がおうちせんげんした時、俺は少し向こうにいたよな? だからこのエリア…… いや、ここらへんのプレイスは俺がいないと思ったんだろう」 雲を突き抜ける高みから、人間さんのものと思われる声がようやく届いてきた。 「だがな、お前が今立っているプレイスも俺がさっきいたプレイスも、 実は一つに繋がっているんだ つまり、お前は俺がいたゆっくりプレイスでおうちせんげんしてしまったんだよ」 な…、何を言っているのだこいつは? まりさは愕然とした。 自分達の"おうちせんげん"には、たった一つだけ欠点が存在している。 それは「誰かがいることに気付かず、おうちせんげんしてしまうこと」である。 おうちせんげんは、そのプレイスが自分のものであるという唯一にして確実な証拠。 しかし、先住ゆんの存在に気付かずに行ってしまえば、そのプレイスは誰のものになってしまうのか? この複雑怪奇な問題に対し、ゆっくり達は正しい答えを持っている。 即ち、先に住んでいるゆっくりが後から来たゆっくりのおうちせんげんを邪魔すればいい、ということだ。 そうすれば、先住ゆんに気付かずにおうちせんげんをしかけたゆっくりも、誰かが先にいた事実を理解する。 丁寧に問題点を洗い出され、緻密に組み立てられた"おうちせんげん"システムは完全無欠の法となった。 これは自分達の群れだけではなく、他の群れでも同様に行われているようだ。 まりさが子供の頃にこのお話を聞いたとき、餡子に衝撃を受けたことを覚えている。 自分達の群れだけではない、この広い世界全てのゆっくりが使っている完璧な"おうちせんげん"。 それはつまり、住んでいる土地や文化に関わらず、ゆっくりなら誰でも"おうちせんげん"を思いつき得るということ。 "ゆっくり"という生命に眠る知恵のポテンシャル。 その高さに、まりさは大きな感動を覚えたのだった。 ……だと言うのに! この人間さんは意味の分からない理論を展開し、自分を正当化しようとしてくる! 先にゆっくりプレイスに住んでいる場合、他ゆんのおうちせんげんには途中で声をかける。 生後一週間を過ぎれば赤ゆっくりでも知っているこの方法を、人間さんは行わなかったのだ。 それどころか、恥知らずな人間さんは勝手に都合よくシステムを作りかえ、ゆっくりプレイスの所有権を主張してきた。 それは即ちルール違反! ゆっくりしていないゆっくりとして、即座におうちから叩き出されても仕方ないのだ! 心優しいまりさとて、流石にこれには怒りを覚える。 正義感の強い父に育てられたまりさは、卑劣な行為をなによりも憎んでいるのだ。 「にんげんさん! おうちせんげんがふふくなときは、おうちせんげんのとちゅうにおうちせんげんをするんだよ! そんなこともしらないの!? ばかなの!? かってなことをいわないでね!! まりさおこるよ!!」 それでもまりさは怒りに耐える。 人間さんは卑怯なのではなく物を知らないだけなのだと考え、丁寧に説明をしてあげる。 普通なら「ばかなの? しぬの?」と続けるところを「ばかなの?」で止めてあげることさえした。 それに対する返答は…… 「ほう、なるほどなるほど だがなあ、お前らゆっくりは知らないかもわからんが、 人間さんは元々"おうちせんげん"というのを使わないんだ」 「…………ゆ?」 一瞬、その生物の言っている言葉の内容が理解できず、まりさは硬直した。 その隙をついて、人間さんは更に話を続ける。 「そのルールだと、お家を留守にしている場合 他のゆっくりのおうちせんげんの途中に邪魔できないだろう? だから人間はおうちせんげんの代わりに"ここは自分のお家です"って文字で伝えることにしてるんだ」 めろすは激怒した。 失礼。 まりさは激怒した。 おうちを留守にするとおうちせんげんが邪魔できない? だからみんな、苦労をしておうちに"けっかい!"を張るのだ!! そう言えば、けっかい!が張れないなどと文句を付けるのか? だったらおちびちゃんにお留守番をしてもらえばいいだろう!! ああ言えばこう言い、こう言えばああ言う。 揚げ足取りにすらなっていない屁理屈を繰り返す人間さんの態度に、まりさは目の前が真っ白になったように錯覚した。 それは無論、生まれてこの方感じたことのないような怒りによるものである。 「ふっざけたことをいわないでねええええええええええええ!!? いまどき、おちびちゃんだってもっとまともないいわけをするよおおおおおおおおおおお!!!」 わなわなと怒りに震えるまりさ、ついに堪忍袋の緒が切れてしまった。 にんげんさんがこんなにもわからずやだったとはおもわなかったよ! まりさはもうおこったよ! ぷくー!じゃあすまされないよっ!! そしてまりさは話し合いで解決する意思を放棄する。 もちろん、まりさの知らない事実であるが、それは同時に"まりさの生存する可能性"を捨てることでもあった。 ―――――――――――――――――――― 「いいかげんにしろおおおおおおおおおおおおお!! おんっこうっなまりさもどたまにきたよおおおおおおおおおおおお!!!」 ぶるぶる痙攣していたと思ったら、そのゆっくりは突如ヨダレを撒き散らしながら怒りだしたようだった。 「う、うわっ…… これはキモい……」 歯をむき出しにして作られた表情は、はっきり言って通常の人間では直視に堪えないほど醜い。 ぐねぐねと軟体生物っぽく暴れまわるその動きは、地面と垂直に円を描いているようにも見える。 農夫は少し前のニュースで見た、急に人数が倍増した音楽ユニットのパフォーマンスを思い出した。 本題には関係ないが、先程まりさの主張した"おうちせんげん"。 これは通常「この○○○を、○○○のゆっくりぷれいすにするよ!」という言葉で行われる。 その言葉が開始してから終了するまでの間に先住ゆっくりがおうちせんげん返しをすることのできる可能性は、 普通種、希少種、胴付き、あらゆるゆっくりで調べた結果、0%だと加工所から発表されている。 ゆっくりはただでさえ頭が鈍く餡(脳)の回転が遅い生物(ナマモノ)であり、言葉を理解するだけでワンクッション、 自分にとってショックな内容の言葉だとさらにツークッションを必要としている。 他ゆんのおうちせんげんを言葉が完了してから理解するまでにかかる時間は、普通種で大体1分45秒とのことだ。 このまりさの群れでも、先住ゆんに気付かずにおうちせんげんが為されることは多い。 そうした場合は当然の如くゆっくり同士の殺し合いになるのだが、それを原因として一週間に平均5匹のゆっくりが死亡している事実は、 まりさは当然、長のぱちゅりー以下全てのゆっくりが知らないことである。 よくそれで群れとしてやっていけているものだ。 「ゆっうううううううううううううう!! もうがまんのげんっかいっだよ!! にんげんさんはすこし、いたいめにあったほうがいいよ!! まりさがこらしめてあげるよっ!!」 ひとしきり激昂してから動きを止めたまりさは、へたったおぼうしから木の棒を取り出して口に咥える。 「えいえんにゆっくりはさせないからあんしんしてね! ゆっくりしねええええええええええええええええええええええええ!!!」 とんでもなく矛盾したことを口走りつつ、こちらに向かってぴょんぴょん飛び跳ねてくるまりさ。 その鬼気迫る表情から、恐らく突進をしかけているつもりではないかと予測できる。 ゆっくり如きに人間を怪我させられる道理もないが、それでも尖った木の棒は危険だ。 ズボン越しとはいえ、スネにあたったらかなり痛いだろう。 もしかしたら絆創膏を貼らなければならない事態に陥る可能性もある。 「ふぁーんふぁーんうぃーひっざ……おっと」 当然だが、農夫はまりさが到達する前に軽く足をあげた。 するとこれまた当然、まりさは地面に顔から突っ伏すことになる。 口に木の棒を咥えていたために地面さんと熱いちゅっちゅをかますことにはならなかったが、 激突の瞬間にした"ベキィ!"なる音から、砂糖細工の歯が何本か折れたことが分かる。 「ゆべっ!? ……ばっ…! ばりざのさわやかにしろくかがやくしんじゅのようなはさんがああああああああああ!!?」 言うまでもないが、まりさの歯は白くない。 ゆっくりの歯は砂糖で出来ており、歯磨きなどしたら簡単に歯が削れてしまうのだ。 故に、飼いゆっくり以外のゆっくりの歯はすべからく薄汚れているのが常識である。 「お前の歯が真珠だってんなら、豚にくれてやっても惜しくないなあ… それはさておき、大丈夫か?」 「ゆぐぐ…! まりざのひっさつわざをよけたことはほめてあげるよ! でも、まぐれはなんかいもつづかないよ! こんどこそしねええええええええええええええええええええええええ!!(ぴょーん)」 「ほいっと」 「ゆばぁっ!?(バキィ!) ……ばっ…! ばりざのあらゆるまだむをみりょうするはりうっどはいゆうのようなはさんがああああああああああ!!?」 「そんな俳優はそもそもオーディションで落とされると思うなあ… もう5、6本は歯が抜けちまったぞ?」 「ゆふうっ…… ゆふふうっ……」 そんなやりとりが数回続き、まりさの口の中で無事な歯が2本以上続けて並んでいる場所が無くなってしまったころ、 ようやくまりさは人間に攻撃が当たらないことを理解したようだった。 「ど……! どぼじであだらないのおおおおおおおお!!? どぼじでええええええええええええええええええええ!!!?」 「そりゃあ、あんなに遅い攻撃じゃあな どんなにトロい人間でも、命中させるのは難しいと思うぞ」 「ゆううううううううううううううううううううううう!!?」 ちなみに一般的なまりさ種であれば、歯が1本折れた時点で負け惜しみと共に「もうおうちかえる」と叫び出すところだが、 このまりさはゆっくりにしては驚異的な忍耐力で痛みに耐え、攻撃をし続けた。 群れ一番の勇者の呼び名は、伊達ではないのだ(笑) 「あだればしぬんだああああああああああああああ!! よげるなあああああああああああああああああああああ!! よげないであだれええええええええええええええええええええええ!!」 先程の動きをぐねぐね再現しながら泣きわめくゆっくり。 凄まじく醜い。 「じゃあ、まりさ お前は他のゆっくりと喧嘩をするとき、相手の攻撃を避けないで当たってやるのか?」 「ゆ゛っ…!?」 キモい動きと漫画のような滝状の涙を止め、ちょっと考え込むまりさ。 農夫の一言で、自分の発言がかなりアホだったことを理解したのだ。 これはゆっくりにしては驚異的な理解力である。 群れの賢者に教えを請うた時間は、伊達ではないのだ(笑) 「…まあいいか ほら、次は当たってやるからもう一度攻撃してきな」 「ゆゆ!?」 調子に乗って余裕を見せてくる人間に、まりさは不敵な(と自分では思っている)笑みを浮かべた。 ゆぐふふふ… にんげんさんはばかだね! にんげんさんのぶきはその"ちぇん"とおなじくらいのすぴーどさん! そのすぴーどさんでこうげきをよけることのできるのがつよみなのに、 それをぽーいぽーいしてじぶんからあたりにきてくれるなんてね! こうっかいっするじかんはあたえないよ! せいぜいちょうしさんにのりすぎたことをこうっかいっしていってね! どうしろと言うのだろうか。 まりさはところどころ…いや、大多数が欠けてしまった歯で、再び木の棒を咥えた。 「くらえええええええええええええええええええええええええ!!」 ぴょーんぴょーん 間抜けな音とは裏腹に、憤怒の表情で迫ってくるキモ饅頭。 あの気持ち悪い顔が触るのはちょっとやだなあ、と農夫は若干後悔したが、約束は約束なのでぶつかるまで待ってやる。 「こんどこそほんとうにしねええええええええええええええええええええええ!!(ぴょーん)」 ザクゥッ!! まりさの咥えた木の枝は、かなり危険な長さまで一気に突き刺さった! お分かりだろうが、当然まりさ自身にである。 「…………………… ………あ…… あがああああああああああああああああああああああ!!? いだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 地面に落ちてから数秒後、びったんびったん飛び跳ねながら、まりさは大口を開けて泣き始めた。 正しく言葉を操れているところを見ると、幸い木の枝は中枢餡に届いていないのだろう。 「どっでええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったん) ごれどっでええええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったんびったん)」 いましがた自分が攻撃した人間に情けない顔で懇願する汚饅頭。 はっはっは、と朗らかに笑いながら、農夫は木の枝を抜いてやった。 「ゆ゛ひっ… ゆ゛ひぃっ… …………………… ……………どっ… どぼじでばりざにざざるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!? どぼじでええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」 餡子の比重はそれなりに高い。 中身が全部餡子のれいむ種やまりさ種、それも成体ゆっくりとなればかなりの重量を誇る。 たとえ勢いの皆無なぴょーんぴょーん攻撃と言えども、全体重を木の枝に乗せてぶつかれば人間も大怪我は免れない。 が、それは木の枝とゆっくりがガッチリ固定されている場合に限る。 一般的に、人間が物を噛む力の最大値は体重と同程度と言われる。 しかしゆっくりの場合、自分の体重と同じくらいの力が砂糖の歯に加われば、即座に歯が砕け散ってしまうのだ。 故にゆっくりの咬筋力は他の生物と比較して、驚くほどの弱さを誇る。 健康的な成体まりさが全力で噛んで歯ぎしりした結果、十分に濡れたコピー用紙にギリギリ穴が開いたと加工所から発表されている。 そんな力で雑多な食事をすることができるのは、ゆっくり特有の思い込みの力によるものだとか。 そういった意味のことをまりさでも理解できるように、農夫は簡単な言葉で懇切丁寧に教えてあげた。 噛む力が弱ければ、武器を持ったとしてもダメージは与えられない。 ならばと体当たりをすれば、ゆっくり程度の跳躍力では中身入り2Lペットボトルをどうにか倒すのが関の山だ。 ゆっくりが人間にも有効な攻撃をするのは、非常に非常に非常に難しい問題なのである。 「……………う…… うぞだああああああああああああああああああああああ!!! ばりざはむれいちっばんっのゆうしゃなんだあああああああああ!!! にんげんにもまげないんだあああああああああああああああああああああ!!!」 再び凄まじい表情で何度も飛び跳ねるまりさ。 確かにこの顔の醜さ、情けなさなら人間のそれにも負けることはないだろう。 「ゆがあああああああああああああああああああああああ!!!(びったんびったん) ばりざはよわぐないいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(びったんびったん) ばりざはよわぐないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!(びったんびったん) よわぐないっでいえええええええええええええええええええええええええええええ!!!(びったんびったん)」 「おう? いや、お前が弱いとは言ってないよ」 「ゆがあああああああああああああああああああああああああああ!!(びったんびったん) ゆががああああああああああああああああああああああああああ……(びったんびったん) …………………(びったんびったん…) …………ゆっ?」 やはり数テンポ遅れて言葉の意味を理解したまりさは農夫を見る。 その顔には、侮蔑や冷笑の類は浮かんでいなかった。 「ま゛っ… まりざ、よわぐないの? まりざ、にんげんざんよりよわぐないの?」 「ああ 人間はゆっくりのことを"弱い"なんて思っちゃいないよ」 体の下半分に涙の痕を帯状に残したまりさの顔に、希望の光が差し込んできた。 「まりさ、お前はお花さんや虫さんを食べたりするよな」 「だ、だべるよっ! まりざ、おはなざんもむしざんもいっぱいだべるよっ! まりざはむれでいちっばんっかりが……」 「まりさはそのお花さんや虫さんを"弱い"とは言わないだろ?」 「………………ゆ?」 「そこらに転がってる石や草、空に浮かんだ雲、近くを流れてる川 別に、そういった"物"に強い弱いとか無いだろ?」 伊達ではないまりさには、農夫の言っている言葉の意味がおぼろげにだが理解できてきた。 漠然とした不安を抱え、ゆ? ゆ? と何度も聞き返す。 「だからな、まりさ "強い"とか"弱い"っていうのは、自分と少しはやりあえる生き物を表す言葉なんだ 人間にとってお前らゆっくりは路傍の石コロと大差無い 強さを測る以前に……」 不安はじわじわと大きくなる。 もはやまりさは自分でも理由が分からずに泣きそうな顔だ。 「……"敵"じゃないんだ "物"なんだよ まりさを含め、ゆっくりってのはさ」 群れの老賢者、とても賢いぱちゅりーの元できょうっいくっを受けたまりさは、やはり伊達では無かった。 とてもとても驚くべきことに、"価値観の違い"、"相手が自分をどう扱っているのか"をゆっくりながらに理解できてしまったのだ。 まりさはついに泣きだした。 「…ぢっ! ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ばりざはものじゃないよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 群れの勇者まりさ。 文武両道のまりさ。 強く賢く、みんなの憧れまりさは、群れの赤ゆっくりと同等以上の情けない顔で泣きわめく。 「ばりっ! ばりざっ! ばりざば! にんげんざんをごらじめにぎだんだよおおおおおおおお!! にんげんざんのでぎなんだよおおおおおおおおおおおお!!」 「はっはっはっは まりさ、敵っていうのは攻撃をしてくるものなんだぞ? お前くらい人間に無害な"物"は無いさ」 「ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! まぢがっでるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ぼらっ!(ぽいーん) ぼらぁっ!(ぽいーん) ばりざっ! ごうげぎじでるでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 ぽいーん、ぽいーん、と農夫に向かって飛び跳ねるまりさ。 しかし日々の農作業で鍛えこまれた足腰を持った農夫はビクともせず、ぶつかっては跳ね飛ばされるまりさを笑いながら見ていた。 「はっはっはっはっは そこの石コロが風で転がって足にぶつかってるのと変わらないなあ いや! それよりも痛くないかもしれないなあッ! はっはっはっはっはっは!!」 「ぢがうっ! ぢがうううううううううううううううう!! ぢがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ぢがうでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ごうげぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「はっはっはっはっはっは!! あっはっはっはっはっはっは!! あっはっはっはゴホッ!ゲフぅっ! はひっ、はひーっ! むせたっ! あーっはっはっはっはっはっは!!」 「ぼらああああああああああああああああああ!!!(ぽいーん) ぼらあああああああああああああああああああああああああああ!!!(ぽいーん) ごうげぎだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!(ぽいーん) ごうげぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?(ぽいーん) ごうげぎじでるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?(ぽいーん)」 あっはっはっはっは……… ぽいーん、ぽいーん……… 十数分後。 周囲に響く間抜けな音と笑い声がやんで静かになった畑の一角には、ひとりの人間と、ひとかたまりの"物"があった。 少しずつ少しずつ黒ずんでいくその"物"は、しばらくの間微弱な痙攣を繰り返していたが、 笑い過ぎで腹筋を痛めた人間に通行の邪魔にならないよう道の端に放り投げられてから1分後、完全に動きを止めた。 野原に咲いた花は弱くない。 道端に転がっている石は弱くない。 ゆっくりも決して、弱くないのだ。 他に書いたSSさん ・anko2094 体感時間は黄金色
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『おかんのゆっくり駆除再び』 8KB 小ネタ 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 都会 以前書いたネタを、もう少し読んでみたいと言う感想があったので… 「うわぁぁぁ?!ゆっくりだ!ゆっくりが出たぁぁぁー!!」 家の中から、男の悲鳴が聞える。 その声を聞いた一人の女性が、「やれやれ」と呟くと、重い腰を上げて、押入れから古新聞を取り出す。 「おかん!早く来てくれ!早くこいつら何とかしてくれよー!」 彼女が新聞紙を持って、悲鳴の聞えてきた部屋に入ると、そこには情けない表情を浮かべる一人の青年がいた。 部屋の中央の絨毯の上には、得意そうに踏ん反り返って、ニヤニヤと笑う一匹の子ゆっくり。 「ゆぷぷのぷー!まりちゃがこわいのじぇ?!おぉ、あわりぇ!あわりぇ!しょんなにこわがらなくっちぇも、ころしゃないでやるから、あんしんしゅるのじぇ!」 青年の怯えっぷりに自信を持ったのか、調子に乗った薄汚い子まりさは、青年に底部を向けると、ぷすっと屁をこいた。 それを見た青年は、思わず部屋の隅に行ってしまう。 そんな青年の姿と、調子に乗っている子まりさを見比べて、ため息を一つつく彼女。 「まったく…こんな便所饅頭、一匹湧いたくらいで情けない…鬼山さんとこのとし君は、平気で処理するわよ?」 「だって、ゆっくりって気持ち悪いし…素手で触れる奴の気が知れないよ…」 「ゆゆ?なにいっちぇえるのじぇ?さいきょーのまりちゃに、いのちごいしちぇるのじぇ?!よわいやつは、かわいそーなのじぇ!ゆっぷっぷ!」 彼女は自分の息子にそう言うと、新聞紙の束から一枚抜き取った。 そしてその新聞紙で、子まりさを覆うように捕らえると、もう一枚新聞紙を抜き取り、上から被せる様に包んだ。 「ゆゆ?!なんなのじぇ?まっくらなのじぇ!なにしちぇるのじぇ!まりちゃがおこらにゃいうちに、ここか 『グチャ!』 びゃ!」 彼女は丁寧に子まりさを新聞で梱包すると、両手を合わせる形で子まりさを押しつぶした。 汚らしい音と同時に、呻き声を上げて絶命する子まりさ。 だが、厳重に新聞紙でくるまれていた為、餡子で手や絨毯を汚す事はなかった。 長年害饅頭と向かい合ってきた、主婦ならではの知恵と技である。 「ほら、後はあんたで、絨毯綺麗にしておいてね。そのくらいは出来るでしょ?」 彼女は息子にそう言うと、クシャクシャになった新聞紙を丸めてゴミ箱に捨てた。 「ゆわぁぁぁぁぁ!!ここはひろいにぇ!ゆっくちできるにぇ!」 「ゆわーい!あたらしい、おうちなのじぇ!ゆっくちー!…それじゃあ、れーみゅ、いっしぇーのーじぇ…」 『ここを、れーみゅ(まりちゃ)たちの、おうちにしゅるよ!(のじぇ!)』 居間に上がり込んで、得意そうに宣言する赤ゆっくり達。 ここ最近、子ゆっくりや赤ゆっくりが「おうちせんげん」をする事が増えている。 人間の家を見つけて、住処にしようとする野良のゆっくりは、いくら駆除しても湧いて出てくる。 一時期は、成体のゆっくりが窓ガラスを割って、建造物内に進入し、「おうちせんげん」といったスタイルが主流だった。 だが最近の住宅事情により、「おうちせんげん」のスタイルも変わってきた。 対ゆっくり用に、ガラスが強化されている事が多くなった為、従来の方法では建造物内に進入出来なくなったのである。 そこで野良ゆっくり達は、まず始めに子ゆっくりや赤ゆっくりを建造物内に進入させて、「おうちせんげん」させる事にしたのだ。 赤ゆっくりや、子ゆっくりならば、小さな隙間や、窓やドアが開いた隙に容易に進入させる事が出来る。 子供が「おうちせんげん」を済ませた所で、堂々と自分達も中に入れると考えているようなのだが、当然そんな安っぽい作戦が成功した例はない。 玄関等が開くのを待ち構えている成体の野良ゆっくりは、その場で駆除か、業者が回収に来て終りである。 ところが、家等に侵入してきた赤、子ゆっくりは意外と厄介で、勝手に食べ物を食い散らかしたり、部屋を汚したりで一定の被害をもたらしている。 この青年のように、野良ゆっくりを触るのが嫌な者にとっては迷惑極まりないのだ。 居間に上がりこんで来た、この赤ゆっくり達も、この家の住人が洗濯物を干してる際の隙をついて、開いた窓から入ってきたのだ。 無事「おうちせんげん」を済ませて、我が物顔で居間を徘徊している赤ゆっくり達。 「ゆーん?あまあましゃんは、どこにありゅの?かくれてにゃいで、れーみゅにたべられちぇね!」 「ゆゆ?あまあましゃん?どこなのじぇ?!まりちゃが、むーちゃ、むーちゃ、してあげるのじぇ!ゆっくちー!」 ガラガラガラガラ… 突然窓が大きく開かれる。 「ゆ?…ゆぴいぃぃぃぃぃ!」 「ゆん?…ゆびゃぁぁぁぁん!」 それに気がついた二匹は外を見るが、その瞬間、何物かに突き飛ばされて、勢い良く庭に吹っ飛ばされる。 二匹は芝生の上に着地した為、大したダメージは受けなかったが、大きな声を張り上げてゆんゆんと泣き出した。 そんな様子を、二匹を外に放り出した彼女は、ため息を一つついて汚れた床の掃除をする。 「ゆびゃぁぁぁぁぁん!いちゃいよぉぉぉ!どぼじで、かわいいれーみゅが、こんなめにあうにょぉぉぉぉ!」 「ゆえぇぇぇぇ!おとーしゃぁぁぁ!おかーしゃぁぁぁぁ!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!」 掃除を終えた彼女はスプレー缶を手にすると、芝生の上で大騒ぎしている赤ゆっくりの元に向かう。 「五月蝿いわね…まったく迷惑な、便所饅頭だわ!」 彼女は二匹に向かって、スプレーを吹き付ける。 スプレーを浴びた二匹は、しばらく何が起こったか解らずに、不思議そうな顔をして固まる。 「ゆぅぅ…にゃに…?………ゆ?…ゆゆ?…ゆっぴぃぃぃぃ!ゆぎぎ!ゆごごっ!ねぎ!ねぎ!ねぎねぎねぎねぎ、ねぎぃぃぃぃ!!」 「ゆがぼごごご!ゆびゃびゃぁぁぁ!ねぎ!ねぎ!ねぎぃぃぃぃぃぃ!!」 突然狂ったように叫び始める二匹。 体に付着したスプレーの成分のせいで、皮のあちこちが赤く腫れ上がっていく。 やがて、両目が飛び出さんばかりに見開かれ、徐々に真っ赤に変色していく。 大きく開いた口からは、ただれた舌がだらしなく垂れ、涙腺が壊れたかの様に涙を流し始める。 「はー?…何これ…五月蝿いだけで、なかなか死なないわね。これなら、潰した方が早いわ。使えない殺ゆ剤ね」 そう言うと彼女は、腐った柿か、トマトの様な姿になった二匹の赤ゆっくりをサンダルで踏みつけ、そのまますり潰す様に踏みにじった。 「ゆふふーん!そろそろ、おちびちゃんたちが、おうちせんげんを、すませているころなのぜ!まったく、たよりがいのある、おちびなのぜ!」 「ゆふふ!とーぜんだよ!ゆうしゅうなまりさと、えりーとなれいむの、かわいい、おちびちゃんだからね!」 そこに、ニヤニヤと笑みをこぼしながら、二匹の野良ゆっくりの成体が現れる。 彼女は二匹に気がつくと、スプレーを片手に近づいていった。 「やっぱり、親も居たのね。まったく…まあいいわ、丁度良かった。せっかくだから、使い切らないと勿体無いしね」 『ゆゆ?』 彼女はそう言うと、スプレーのノズルを野良ゆっくりの口に突っ込んで、一気に噴出させた。 「ねねねねね!ねっぎぃぃぃぃぃぃ!!」 「ねぇぇぐいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 翌日。 二匹の死骸はゴミ袋に詰められて、生ゴミとして出される事になった。 結局二匹は、スプレーが空になるまで、殺ゆ剤を浴びせられた。 そのせいで全身が赤くただれて、髪の毛は抜け落ち、帽子やリボンが無ければゆっくりだったとは解らない程の醜い姿になっていた。 彼女がゴミ袋を持って、地域のゴミ回収場に向かうと、ゴミの上に掛けられたネットを、必死に動かそうとしている者がいた。 薄汚れた金髪に、ヨレヨレの黒い帽子をかぶった子ゆっくり。 どうやらネットが思うように動かせないのか、ネットに噛み付いたり、飛び跳ねたりと悪戦苦闘していた。 「ゆーん!ゆーん!あみあみしゃん、いじわるしにゃいでね!そこに、まりちゃのおとーしゃんが、いるんだじぇ!まりちゃがたすけるんだじぇ!だから、ゆっくちどくんだじぇ!」 子まりさがネットを外そうとしている先には、一つの大きなゴミ袋。 その袋の一番下には、両目を見開いて歯を食いしばりながら絶命している、一匹のまりさ種と思われるゆっくりが入っていた。 「まっててね、おとーしゃん!まりちゃが、じぇーったい、たすけてあげるのじぇ!そしたら、いっしょに、ゆっくちしゅるのじぇ!」 親まりさが死んでいる事に気がついていないのか、気づかない振りをしているのかは知らないが、子まりさはゴミ袋の中の親まりさを助け出す為、ネットを退かそうとしている。 彼女はそんな子まりさに、無言で近づいて行く。 「ゆゆぅ?なんなのじぇ?!まりちゃは、いまいそがしーのじぇ!じゃましちゃだめなのじぇ!!あっちいくのじぇー!」 子まりさは彼女の存在に気がつくと、ぷくーっと膨れ上がって威嚇をする。 そして、彼女が何もしないのを確認すると、再びネットに噛み付き始めた。 「ゆんちょ!ゆんちょ!ゆーん!ゆーん!ゆー 『ドカッ!』 ゆっぴゃいぃ!!」 彼女はそんな子まりさを蹴飛ばすと、ネットを持ち上げて中にゴミ袋を入れる。 そして子まりさが体勢を立て直す前に、ネットを再び被せた。 「ゆびゃぁぁぁん!なにするのじぇぇぇぇ!おかおがいたいのじぇぇぇぇぇ!!ゆっぴゃぁぁぁぁん!ひどいのじぇぇぇぇぇ!!」 道路の隅の側溝まで蹴り飛ばされた子まりさは、何とか体勢を立て直すとその場でゆんゆんと泣き始める。 彼女は子まりさをさらに蹴り飛ばすと、側溝のクレーチングのある場所まで転がした。 「ゆっぴゃぁぁぁ?!…ゆひっ…ゆひっ…どぼじで…まりちゃ…なんにもわるいこちょし 『グチャ!』 びゃ!!」 彼女は、クレーチングの上でガタガタと震えて泣いていた子まりさを、躊躇することなく踏み潰した。 子まりさはクレーチングの格子に、体を分割して押し込まれた形で息絶えた。 「余分な袋持ってなかったし、でもここなら、雨が降れば流れるわよね?…まったく、迷惑な便所饅頭ね」 彼女はそう呟くと、ゴミ回収場を後にした。 完 クレーチングは、側溝にはまっている金属製の格子状の蓋です。 徒然あき
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ゆっくり虐待小説 「勝手なおうち宣言」 この世界では数十年前に「ゆっくり」と言う生物(なまもの)が発見された。 一時期はペットや愛玩用に人気が出たゆっくりであったが、次第に人気は落ちていき、今では野良による被害が後を絶たない為今やゆっくりは喋る糞饅頭として多くの人から嫌われ者となっていた。 そしてここにもゆっくりによる被害を被った人間がいた。 「ここをれいむたちのゆっくりぷれいすにするよ!」 「そうなんだぜ!げすなにんげんはまりさたちのどれいさんにしてやってもいいのぜ!」 どうしたもんか…… 男はそう言って頭を抱えた 男は虐待鬼意惨では無いが、愛で派でもなかった。 「取り敢えずここは俺の家だから出ていけ」 そう言ったが、効果がないのはわかり切っていた 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだからくそじじいはゆっくりしんでね!はやくしないとまりさがせいっさい!するよ!」 れいむとまりさの番に赤ゆが二匹ずつか…ありがちな家族(笑)だが大方あまあまとやらが無くなったんだろう 「わかったならくそどれいははやくあまあまいっぱいたくさんちょうだいね!すぐでいいよ!」 「そうなんだじぇ!じじいはまりちゃのどれいなのじぇ!」 「だが断る」 「「「「「「どぼじでぞんなごどいうの!!」」」」」」 お決まりのセリフを受け流し、言葉で反撃しようとしたその時思いもよらない言葉を班出て吐かれた 「!!まりさはわかったんだぜ!くそじじいはあたまがかわいそうだからおうちせんげんをしらないのぜ!」 「くじょじじいはばかなんだね!おおあわれあわれ」 「は?」 ブチッ 男の中の何かが音を立てて切れた 「そんなあたまがかわいそうなくそじじいもかんだいなれいむはどれいにしてあげるんだよ!ゆぷぷかんしゃしてね」 「くっしょどっれい!くっしょどっれい!」 思えばこいつらは所詮饅頭、殺してもいいんだ…… 取り敢えず近くで俺を罵っている赤れいむを掴む 「ゆゆっ!おそらをギャピッ」 握っただけでれいむはもはや餡子になっていた れいむたちのおちびちゃんに何が起きたのか、考えるも所詮餡子脳、そして当時に叫んだ 「「ゆんやー!おちびちゃんがー!どぼじでごんなごどずるのー!」」 「くそ饅頭だからね、仕方ないね」 「まりちゃはゆっくりにげ……」 グチャッ! 「お、おねえ…」 ベチャッ 「ふふん まりさはつよいからみのがしたのじぇ、ゆっくりにげるよ!そろーりそろーり」 グサッ! 「もっと…「それ以上言わせん」」 「ゆ、が、」まりちゃは息絶えた 「え?え?どうして?れいむたちは何もしてないよ?」 二匹の成ゆっくりを捕まえて水槽に入れる 「ゆっくり虐待って楽しいな」 「それはゆっくりできないんだぜ」 男は……いや鬼意惨はハエたたきを取り出した 「いや、僕はゆっくり出来るよ」 「「ゆんやー!」」 その後二ゆは叩かれ死にそうになればオレンジジュースで回復させられ、死ぬことが出来なくなった。更に無理矢理すっきりーさせられできてしまった子供を目の前で殺されたりなどと虐待は続いた そしてその男はゆ虐界の生ける伝説となるのであった。END 拙い文章で申し訳 ゆ虐初めてなんで サイナラ!spell
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『人間とゆっくり』 15KB 小ネタ 群れ 自然界 独自設定 こんなゆっくりがいてもいいよね ・虐待及び制裁描写無し ・愛でとも違うと思われ ・独自解釈 ・内容は浮き沈みほぼ無し ・分を弁えられるまりさ ・期待せずどうぞ 一匹の老まりさがいた。 聡明でよく気が利き、様々な困難を乗り越えてきた歴戦のゆっくり。 そんなまりさは、長く生きて経験をしたおかげで人間や他の動物などの事をよく理解していた。 「……なんでみんなりかいしてくれないんだろう」 そう呟くまりさの表情は悲しげだった。 まりさも最初は人間を誤解していたが、自分自身でそれが間違いだと気付いた。 事はまりさが若輩者だった頃に遡る。 「みんな、きいてほしいよ! まりさはこれからにんげんさんを『ちょうさ』してくるよ!」 まりさは群れの中心で高々に宣言した。 「ちょうさ?」 皆疑問に思った。人間を調査して何か言い事があるのかと。 ゆっくりしていない人間を調査しても、こっちがゆっくり出来ないだけではないかと。 「そうだよ! てきをしるためにはじょうほうがひつようなんだよ! だから、にんげんさんが『ぐうのね』もでないほどのしょうこをみつけて、つきつけてやるんだよ! そうすれば、おろかなにんげんさんも、まりさたちにまけをみとめるんだよ!」 群れのゆっくり達は湧いた。 まりさの素晴らしい計画に。 まりさは次の夏まで調査をすると言う。 長すぎるという者もいたが、完膚無きまでに敗北させるというまりさの決意に最終的に折れる。 「ゆっくりちょうさするよ!」 まりさは人間の住んでいる場所が良く見渡せる高台に居を構え、人間を観察し始めた。 無論、自分の狩りもしっかりやる。それくらいできずして群れ一番とは呼ばれない。 まりさは何度も人間を観察した。 昔はまりさも人間はゆっくりしていないとか、食べ物を占拠している、とか思ってたものだった。 だが、慎重だった性格が、人間を観察してみるという他のゆっくりには無い行動をさせた。 まりさは約一年、本当にゆっくりと人間を観察した。 敵を知るのは大事である、と考えたからだ。 そしてまりさは知った。 人間はゆっくりしている事を。 人間は食べ物を独占しているのではなく、作っている事を。 人間も狩りを行っている事を。 人間には人間の『おうちせんげん』がある事を。 その他数え切れないほどの誤解があった事を。 人間がゆっくりしていない、のではなく『ゆっくりせずにしていた』だけ。 ゆっくりは人間が家の中に入った後を見た事が無い。 当然だ。仕事をしている姿だけを見て『ゆっくりしていない』と決め付けたのだから。 人間は『ゆっくりせずに』仕事をしている。人間は『ゆっくりするために』仕事をしている。 そして夕刻に迫ると皆家の中に入ってゆっくりしている。 この時間帯はまりさたちゆっくりは野外活動を自粛し始める時間なので、見た事がなかったのだ。 人間は食べ物を独占しているわけではなかった。 まりさは見た。何も無い状態の畑をせっせと耕し、種を蒔き、そして収穫を待つ姿を。 最初は何をやってるか意味もわからなかったが、次第に理解できた。 人間はどうやっているかはよくわからないが、野菜が生えるようにしていると。 そしてこれが人間の仕事である事を。まりさたちで言う狩りだと。 人間も狩りを行っている。 人間はゆっくりが恐れる犬を従えて、他の動物たちを飼っている。 所謂家畜なのだが、まりさにはさすがにそれはわからなかった。 人間は他の動物を狩っているという印象をまりさは持った。 人間は強者である犬たちを従える、大きな強さを持った存在だと思い知らされた。 人間にもおうちせんげんはあった。 それはまりさたちとは違うものだった。 まりさたちはその場で宣言すればそれでいい。しかし人間は違った。 人間は自分の住居とした場所の近隣の家に何かを持って行っていた。 近くに行って聞いてみると、「最近ここにやってきた」「あの家に住む」など、ちゃんと宣言していたのだ。 ゆっくりは誰かにおうちせんげんを聞かれる必要はない。言った者勝ち。 それ故に、家を放置すると他の誰かに取られてしまう。 だから群れを作って自分の住居は他者に知られるようにする。 人間もそれを行っていたのだ。 ゆっくりがおうちせんげんすると人間は怒ると言う。 そうだ、自分たちも不法占拠されれば怒るだろう。自明の理だ。 まりさは人間のおうちせんげんを理解した。 まりさは一年の間に人間の『ゆっくりしている』部分をたくさん見た。 そして群れのみんなに報告する事にした。 「みんな、ちょうさけっかをはっぴょうするよ」 あまり元気は無い。しかし他のゆっくりは気にしない。一年ぶりに帰ってきたまりさがどんな話を聞かせてくれるか楽しみだった。 「にんげんさんは、とってもゆっくりしてたよ」 群れにどよめきが起こる。 人間がゆっくりしている。そんな言葉がいきなり出るとは思っていなかった。 「まりさ、なにをいってるの。にんげんがゆっくりしていないのはだれだってしってるじじつよ」 ぱちゅりーが言う。他の者も頷く。 人間と言うのはゆっくりする事が出来ない生物。これがゆっくり界の定説であり、長年言い伝えられて脳に刻まれている事だ。 「まりさはずっとかんさつしてわかったよ。ぜんぶごかいだったんだよ。 まりさたちがみていたのは『ゆっくりしていないとき』のにんげんさんで、にんげんさんはまりさたちがねちゃうころにゆっくりしはじめてるんだよ」 まりさは他にも調査結果を発表し、群れはその度にどよめく。 「そんなのうそなんだぜ!!」 若いまりさが叫ぶ。 「にんげんはまりさたちがてにいれるべきゆっくりぷれいすをうばったごくあくにんなんだぜ! なんでにんげんをかばうみたいなことをいうんだぜ! ゆっくりできないゆっくりはせいっさいしちゃうんだぜ!!」 自分たちの理解を超えた事を許容できない、ゆっくりの大半が持つ特性をそのまま表した言葉だった。 さすがに、一年もの間苦労して調査したまりさを制裁するとまではいかなかったが。 「じゃあ、みんなもまりさみたいにちょうさするといいよ。 そうすればよくわかるよ。にんげんさんがどれだけのくろうをしていきているのかわかるよ」 そう言われて調査をする者もちらほらいたが、結局自分たちの活動時間帯部分しか見ない上に、自分の事で手一杯でまったく人間を理解できないままだった。 「やっぱりにんげんさんはゆっくりしてないよ! あのまりさはうそつきだよ!」 「あのまりさ、もしかしてにんげんさんとつうじてるんじゃないんだろうかだぜ?」 「むきゅ、そうよ、あんなうそをつくなんてふつうじゃありえないはなしよ」 そんないい加減な調査では考えが改まる事はなく、結局まりさは嘘つきどころか人間の放ったスパイというレッテルを貼られる事になる。 さすがにこのままではいつか制裁と言う名のリンチにあうと理解していたまりさは、皆が起き出さない明け方に、夜逃げを慣行した。 それから、まりさは様々な群れに行っては人間に対する誤解を説いて回ったが、誰も信じなかった。 いや、信じている者もいたが、それを表立って認めては、大多数の否定派に粛清される事を恐れて何も言えなかった。 結局まりさは放浪する身となった。 しかし、そんなまりさにも賛同者は少なからずいた。 会った事も無い人間に対して持つ思想に言葉にならない疑問を持っていた一部のゆっくりが共に旅する仲間となってくれた。 ゆっくりできない愚かなやつら、として粛清されかけた事もある。 まりさは、すでにゆっくりという存在の中に自分たちの居場所が無いのだろうと考えた。 人間を理解してしまった以上、人間に誤解を持つ者たちと一緒にいても、ストレスにしかならない事は放浪している間に良くわかった。 自分で確かめたわけでも無いのに勝手な想像で物事を決め付けてはならない。これがまりさが身を持って知った事。 行き場を完全に失ったまりさたちは、いつしか人里に下りていた。 「まりさ、にんげんさんのむれにきちゃったよ。あぶないよ」 いくら人間を理解したと言っても、自分たちはゆっくり。人間からすれば敵である。 人間を理解したからこそ、余計に人間との距離をとっていた一行は、おどおどとしはじめる。 しかし、まりさは決意の目で人間の家に入っていった。 「ま、ま、まりさなにやってるの! ころさてしまうわよ!!」 仲間のありすが小さい声で叫ぶが、まりさは聞かなかった。 そして仕事中の人間に声をかけた。 「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」 「なんだ、またゆっくりか……処理するのも面倒なんだよな」 「まってね! はなしをきいてね! まりさたちはにんげんさんのものにてをだすつもりはないんだよ! だからすこしだけおはなしをきいてね!」 農夫は潰そうとした行動を止める。 このまりさのゆっくりらしからぬ言葉に、少し興味が湧いた。 「お前は人間がゆっくりしてないとか、ここは自分たちのものだとは言わないのか」 「まりさたちはにんげんさんがおしごとをしてるっていうのはりかいしてるよ。 いまだってどうやったかしらないけどおやさいさんがはえてくるようにしてるんでしょ」 農夫は驚いた。 こんな事を言うゆっくりは初めてだった。今まで見たのは全部人間を見下したやつらだったが、少なくともこのまりさは人間を見下していない。 「にんげんさんにもちゃんとした『おきて』があるのもりかいしてるよ。 にんげんさんとまりさたちは『おきて』が違うのもわかってるよ。 だから、だから、まりさのおねがいをきくだけきいてほしいよ! だめならあきらめるから、きいてほしいんだよ!」 「わかった。そこまで言うなら聞こう。言ってみな」 必死なまりさの熱意が通じたのか、農夫は腰を下ろして聞く体勢をとる。 「ゆっくりありがとう! きいてほしいことはひとつだけなんだよ。 まりさたちにおしごとをあたえてほしいんだよ」 「それはあれか、人間と共存したいというのか」 「もうまりさたちはゆっくりのむれではいきていけないんだよ。 もういくばしょがないんだよ。 だったら、もうにんげんさんのばしょくらいしかいくところがないんだよ。 おねがいします! まりさたちはおやさいさんにかってにてをだしたりしません! だから、だからおしごとをください!」 農夫は少しの間熟考する。 その間は、まりさたちにっとっては生きた心地のしない時間だった。 人間の強さはよくわかっている。ここで否と言われれば、自分たちはただでは済むまい。 「よしわかった。少し周りのやつらと相談してこよう。 ちなみに、受け入れられた場合、こっちと決めた『おきて』を破ったら即『えいえんにゆっくり』させられるぞ。いいな」 「みんな、それでいい?」 まりさは後ろで震えている仲間に確認する。 仲間たちは多少戸惑いはあったが、皆頷いた。 こんなゆっくりもいるんだな、と感心する農夫。 次の日、相談の結果まりさたちはいくつかのグループにわかれて複数の農家に仕事をさせてもらうことなった。 まりさたちはしっかり仕事をこなしていった。 カカシの代わりとなって畑を荒す動物を追い払ったり、手に負えない場合は大声で誰かを呼んだり、虫を食ったりと、畑の被害を確実に減らしていった。 ある時、まりさの仕事をする畑にゆっくりがやってきた。 いやらしい笑みを浮かべて、見るからにこの場を乗っ取ろうとしている顔だ。 案の定、そのゆっくりたちは畑に入ってきておうちせんげんをしようとした。 「ここをれいむたちの――」 「そこまでだよ!」 「――ゆっ?!」 おうちせんげんを寸でのところで阻止する。カカシではこれはできない。 れいむとまりさを親とした一家であろう一団は、まりさに食って掛かる。 しかし、まりさがすでにおうちせんげんをした、他にも仲間がいる、などと言って、ゆっくり界のルールで説明するとある程度はあきらめて帰っていった。 「そんなことしらないよ! ここはれいむたちがみつけたんだから、どろぎたないまりさはさっさとどっかにいってね!」 中にはこのように暴論を吐いて掛かる者もいたが、最終的には畑仕事などで鍛えられたまりさにこてんぱんにされ、逃げ帰るか人間に処分される。 まりさは決して同族を殺しはしないが、人間が殺そうとするのを止める事はしない。 人間が殺すと判断したなら仕方が無い。自分たちにそんな事を意見するだけの資格も無い。 それに人間が殺そうと判断したと言うのなら、それだけその同族が愚かであったのだろう、と思っている。 まりさは同族の事を多少見下し始めていた。自分たちの勝手に生きて、偏見と我欲の塊である者に限るが。 少なくとも、人間と自分たちのルールを同一に見ている者は自分たち未満だと思っている。 他の群れには他の群れのルールがあるという事がわかっているのに、何故人間にはそれがあると思わないのか。 そんな愚かしい同族が嫌いになっていた。 そんな風に思っている時点で自分も見たようなもの、とは感じていた。 それから何年かが経過した。 まりさたちは最初は少数だったが、その中で伴侶を決め、子供を作り、育て、人間の手伝いという仕事をさせる。 こうしてまりさは代替わりしても人間との関係が壊れないように尽力した。 いつしか人里に限りなく近い場所で、まりさを長としたゆっくりの集落が出来ていた。 数も一帯の畑全てに働きにいけるだけには増えた。 この集落に住むゆっくりは、皆人間を理解し、畏怖し、尊敬をしている。 真にゆっくりするためには一時のゆっくりを捨てなければならない。それがわかった。 自身が関わった野菜などの収穫の際の喜びを知った。 人間はこの群れを使い勝手のいい道具のように思う事は無い。 最初こそはそう思っていたが、慣れてくるとこれが中々良い関係だと気付く。 ゆっくりというものは元々純粋で、言いたい事は割りとはっきり言ってくる。 おかげで腹を割って話したり、仕事以外の時間でも一緒に過ごす事が多くなった。 喜びを分かち、悲しみを共有する、それが出来る彼らを道具などとして見れるわけが無い。 群れが野生動物に襲われた際は率先して救援に向かい、間に合わなかった者たちを丁重に葬ったりもした。 すでに両者は切っても切れない信頼関係が形成されていたのだ。 最初に厳格で多種のルールを決めていたはずだったが、今では注意事項程度になるほどだ。 そして現在。まりさは仕事を引退し、群れで次代を担う子供たちを教育している。 「いいかいおちびちゃんたち。まりさたちゆっくりは、にんげんさんときょうぞんしてるわけじゃないんだよ。 にんげんさんがいるから、ちょうろうたちはおしごとがもらえて、こうしてゆっくりしているんだよ」 「どうしちぇここいがいにょゆっくちたちはにんげんしゃんにおしごちょをもらいにこにゃいの?」 「ほかのむれのみんなは、にんげんさんがゆっくりできないそんざいだとおもっているんだよ」 「どうしちぇ?」 「それはちょうろうもよくわからないよ。 だけどなぜだかうまれたときからにんげんさんはゆっくりしてない、っておもってるんだよ」 「れいみゅたちはしょうおもってにゃいよ」 「そうだね。おちびちゃんたちはとってもかしこいからね」 この群れの子供たちは皆人間への偏見が無い。 親から受け継がれた記憶が、人間への負の感情を追いやったと思われる。 いつしか、この群れのゆっくりはこの群れ以外のゆっくりの方こそゆっくり出来ていないと思うようになる。 五世代も経た頃には、人間の領域をわかっていて侵そうとするゆっくりに対しては同族を相手するという気持ちすら無くなっていた。 これも悲しい事かもしれない。長老となったまりさは思う。 しかし、これが一番いい形であるとも思っている。 この群れは人間がこの地にいる限りは存続できるだろう。そうでなくても、この群れの平均的な戦闘能力は他の群れの比較では無い。 毎日の労働、人間の知恵、その他様々な事を知ったこの群れは、生半可な事で全滅する事は無い。 別に支配に興味は無い。群れのルールは平和第一、である。 昔、人間のいる場所までやってきたゆっくりたちは人間に淘汰された。 それを繰り返していくうちに、人間はゆっくりできない存在という記憶が受け継がれ、その中で紆余曲折し、最終的には自分たち未満の存在として認識するようになる。 それは仕方の無いことで、なるべくしてなった事だった。 長老まりさはそれを打ち破った。長く積み重なった負の記憶を拭い去って人間と共に生きる道を見つけた。 これはゆっくりとしては外道かもしれない。しかし、生命としては最善だろう。 この群れは幾度か他のゆっくりの群れに襲撃された。これも仕方ない事だ。下等な人間に従属していると思われている以上、そうなる事もある。 暫く後、第一世代最後の生き残りであった長老まりさは永い眠りについた。 その事実を知った人間たちは、長い付き合いだった事もあって、群れとともにその死を悼んだ。 その中でも、初めて長老まりさが話しかけたあの農夫は、友と呼ぶほど仲が良い長老まりさの死を悲しむ。 思い起こすのは長老まりさが若かった頃。 ちょっとした言い争いをしたあの頃。酒を飲ませすぎてうっかり死なせかけたあの頃。野犬やゆっくりの群れに襲われた長老まりさを助けたあの頃。 それは人間の友を想う気持ちと何も変わらない、種族を超えた信頼と友情が確かにあった。 人間とゆっくりは分かり合える。 それを実証した長老まりさ。 長老の意思は次代がしっかりと引き継ぐ。そしてまた次代へと繋いでいくだろう。 長老まりさの死に顔は、万人が見てもゆっくりとしていて、この上なく安らかであったという。 おわり anko1241 ゆっくり教材Vol.1『野良に憧れるれいむ』 anko1257 ゆっくり教材Vol.2『大人になれないまりさ』 anko1272 ゆっくり教材Vol.3『ゆっくりありすの注意点』 anko2390 ゆっくり教材Vol.4『ゆっくりぱちゅりーの弱さ』 anko4106 ゆっくり教材Vol.5『ペットとちぇんと野良と飼い主』 anko1246 特集『ゆっくりに脅かされる農家』 anko2426 ゆっくり研究所 anko2430 ああ、無情。 anko2433 ゆっくりは繰り返す anko2439 ゆっくりがいる日常。 anko2421 生きてるのは知ってるけどそれが何か? anko4103 ゆっくりと人間は違う anko4107 れいむ anko4110 れいむは、今日もゆっくりしていた。 anko4112 まりさは、今日もお仕置きされている。