約 3,015,411 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/71167.html
ヴィンダールヴ ヴィンダールヴルの別名。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/61103.html
ヴィンダールヴル 北欧神話に登場する小人。 ドゥリンが土から作りだした。 その名は「風の妖精」の意。 別名: ヴィンダールヴ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1266.html
意外! 神の右手ヴィンダールヴ 人気の無い森の中までやって来た承太郎は、タバコに火を点けた。 「おめーも吸うか?」 「いや、俺は遠慮します」 とりあえず適当な岩に承太郎は腰掛け、仗助は木の根の上に座り込んだ。 「さて……何から話すべきっスかね~……」 「まずてめーが何者なのか教えてもらおうか」 「はあ……その前に一個確認させてください。今年は西暦何年でしたっけ?」 「……1989年だ、俺がこの世界に召喚されたのはな」 「そ~っスか……俺もです。参ったな、どう説明すればいいのか……」 難しそうに頭を抱える仗助。 どうやら『いきなりハルケギニアに召喚された』という訳ではないらしい。 破壊の杖の持ち主や、シエスタの祖父のように、偶然この世界に紛れ込んだのか? 「だったら答えやすいよう質問する。お前はどうやってこの世界に来た?」 「サモン・サーヴァントです。ロマリアの……えー、とある人に召喚されました」 なぜか自分の召喚者を隠す理由を承太郎は推測してみる。 「まさか……虚無の担い手か? お前を召喚したのは」 「さすが承太郎さん、話が早いっス。 そういう訳で誰が俺を召喚したかは訊かないでください、虚無の担い手って知られると俺の主の人も色々迷惑すると思うんで……」 「となると、てめーは虚無の使い魔……という訳か」 仗助は右手の手袋を外して、使い魔のルーンが刻まれた手の甲を見せた。 「神の右手ヴィンダールヴ……能力はあらゆる獣を操る事。 そして俺のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの能力は、触れた物を『直す』……人だろうが物だろうがお構いなく」 そう言いながらスタンドを出現させた仗助は、地面に落ちていた石を拾うと、クレイジー・Dの拳で粉砕する。 しかし粉々になった石は、時間が逆回りするかのように元通りの形に戻った。 「……手の内をそう簡単にバラしていいのか? 仗助」 「別に構わないっスよ~。承太郎さんの能力もバレバレですから」 「……何ッ?」 「時間を数秒間止め、止まった時の中を動く……。知ってる人は知ってます」 まるで自分以外にも知っている人間がいるというような物言いに、承太郎は警戒心を強めた。自分の能力を知る何者かが情報をばらまいているのか? ワルドと、操られたウェールズの事を思い出したが、二人とも時間が止まった事は理解していないようだった。 他に時間停止を見せた相手はキュルケとタバサくらいのもの。 いったいどこから情報が漏れたのか? それは、自分の事を知っているような態度を取るこの東方仗助からではないか? 果たして仗助は敵か? 味方か? 「知っているなら話が早い……。てめーが怪しい素振りをした瞬間、時間を止めてスタープラチナを叩き込む」 「ちょっ、待ってくださいよ~ッ。俺は別に承太郎さんと敵対する気はね~んスから。 むしろ味方です! 日本に帰るために協力し合いたいと思ってんでスよ?」 「だったらてめーが何者なのか正直に喋ってもらおう。 虚無の使い魔だという事は解った。だがそれだけじゃあねーだろう?」 頬杖をついて仗助は溜め息を吐いた。 「信じてもらえるか自信無いけど……ぶっちゃけると俺は承太郎さんの叔父です」 「叔父……だと……?」 「ジョセフ・ジョースターが日本人女性と浮気して産まれたのが俺です。 いわゆる隠し子。この件はジョースター家は『まだ』知りません」 仗助の言葉を信じるなら、祖父ジョセフは承太郎がホリィから生まれた頃に、他の日本人女性に子供を生ませていた事になる。 ほぼ同い年の叔父という存在は実に奇妙なものだった。それが真実ならだ。 「……確かにじじいの面影はあるが……信じると思うか? そんな話……」 「そうなんスよね~……それが俺も疑問なんです。どうすれば信じてもらえるか。 という訳で俺の生い立ちとか色々話したいんですけど、いいですか?」 「……話してみな」 仗助はS市杜王町に住んでいて、そこにはスタンド使いが大勢いると話した。 その原因はスタンド能力を発現させる『弓と矢』の存在。 かつて『DIO』がそれを使い部下を増やしていたらしい。 その『弓と矢』は日本にも存在し、杜王町に様々な事件を起こした。 アンジェロに殺された祖父。虹村兄弟と父親。矢に貫かれた広瀬康一。 弓と矢を強奪したレッド・ホット・チリ・ペッパーの音石明。 スタンド能力に目覚めた二匹のネズミをハンティングに行った事。 漫画家の岸辺露伴に、幽霊の杉本鈴美。 重ちーという友人の死と、シンデレラの能力。 そして吉良吉影という殺人鬼と、写真の親父が持つふたつ目の弓と矢。 「……話が見えねーな。『弓と矢』の話は興味深いが、 てめーの武勇伝を自慢したいなら後にしてくれ」 「まーまー、これが結構重要なんです。 それにスタンド使いの情報は知っておいて損は無いっスからね」 承太郎の異論を軽く流して仗助は話を続けた。 吉良吉影のスタンド能力、川尻浩作の顔や指紋を得ての逃亡。 新たに弓と矢に貫かれた刺客達と、成長した吉良吉影との決着。 「とまあ色々あった訳ですが、この時杜王町には頼もしい助っ人がいたんです。 その助っ人のおかげで命を救われたっつーか勝つ事ができたって感じっス。 助っ人の名前は……空条承太郎。一連の事件は1999年の夏の出来事です」 突然話がぶっ飛んだ。 スタンド使いの話をしていたかと思ったら、なぜか未来の話になっている。 さすがの承太郎も困惑し、仗助の頭がおかしいのではとまで思った。 「さっき……話しましたよね、吉良吉影のバイツァ・ダスト。 1999年の秋、あれと似たようなスタンドに出会った俺は、承太郎さんがDIOを倒すために旅をしていた時代に飛ばされました。 そこで過去の自分を救い……1999年までどうすごすか考えていたら、このハルケギニアに召喚されちまった……これで全部です」 「……本気で言っているのか?」 「本気です。歴史を変えるなんてグレートな問題、承太郎さんがどう考えるか解んなかったもんですから先に話させてもらいました。 これで……日本に帰る事ができたら、1999年の夏の出来事を変えられる。 虹村形兆や重ちーだけじゃなく、多くの人が死なずにすむんです。 知っちまったからには……見過ごせませんよね? 少なくとも弓と矢は二本も回収しね~とかなりヤバイ事になります」 承太郎は無言で、しかし拳を握りしめ仗助を睨みつけていた。 最初から正直に話していれば、確かに未来の話なんて聞かなかったかもしれない。 しかし1999年の未来を案じ真剣に聞いたかもしれない。 重要なのは、仗助が騙まし討ちのように真実を最後に明かした事だ。 「騙すような真似してすみません。でも……ダチを死なせたくないんスよ」 だが仗助のこの言葉が承太郎にIFを想像させる。 もし自分がエジプトへの旅へ行く前に戻る事ができたなら、どうする? 敵のスタンド能力や攻略法まで知り時を止める事が可能な自分なら、花京院、アヴドゥル、イギーを死なせずにDIOを倒せるのではないか? 死んでしまった命は決して戻らない……しかし、戻って欲しいと思ってしまうものだ。 「やれやれ……作り話にしては出来すぎだ。正直信じ難いが……証拠はあるのか?」 「えっ、証拠っスか?」 「てめーがじじいの隠し子だとか、1999年から来たという証拠だ」 仗助は慌てて学ランのポケットを探り、財布や学生証を取り出した。 「学生証……レシートもあります。1999年って書いてある……けど」 「こんなもん偽造しようと思えば簡単だが、まあ無いよりはマシか。 それと仗助、てめーはじじいの息子だと証明する方法を知らないのか?」 学生証とレシートを確認しながら、仗助の観察を怠らずに承太郎は問う。 「DNA検査とか戸籍とか……日本に帰らないとちょっと無理っスね」 「……首の背中の付け根を見せてみな」 「首の……? はあ、解りました」 何の事だか解らないといった表情をしながら、仗助は素直に学ランを半分脱いで首の背中の後ろを見せた。 「これでいーんスか?」 「……なるほど。じじいの息子かどうかはともかく、ジョースターの血統なのは間違いないらしい」 「へ?」 仗助の首の付け根にあったのは星型の痣。 ジョセフ、ホリィ、承太郎、そしてDIOが奪ったジョナサンの肉体にもあった物だ。 それを説明してやると仗助はかなり驚いていた。本当に知らなかったらしい。 ついでにジョースターの不思議な血の波長でお互いの位置が漠然と解る事も話すと、仗助はさらに驚いて、その感覚を認識してみようと目をつむって念じたりした。 「だがまだいくつか疑問がある。話を聞く限り……おめーは俺の味方。そうだな?」 「もちろんっスよ。承太郎さんの判断力も、無敵のスタープラチナも頼りにしてます」 「だったらなぜ……俺の能力が仗助以外の奴も知っているような言い方をした? まさかてめーが言いふらしたんじゃねーだろうな」 「え? ああ、そうか。虚無に関してはあんまり情報持ってないんでしたっけ」 仗助はちょっとした優越感を持ってニヤニヤと笑った。 尊敬している承太郎より何かが秀でているというのは、何気に嬉しいものである。 「これはこの世界で虚無に関わる以上、非常に重要な問題です。 確かに承太郎さんの能力は俺が召喚者に説明しました……。 でも、承太郎さんの能力に『その人が気づいたから』から説明したんです」 「どういう意味だ?」 「虚無の担い手は、虚無の使い魔の持つスタンド能力の干渉を受けない」 仗助は真剣な表情になって言い、承太郎は目を見張る。 時の止まった世界を認識して動いていたルイズだが、認識とか動くとかいう問題ではなく、ルイズの時間は止められなかったとしたら。 「承太郎さん、こっちの世界に来て何度か時間を止めてますよね? 俺の召喚者はそのたび、時間の止まった世界の中を動いています。 最初は戸惑っていたようですけど、その事を俺に相談してきて……すぐ解りました。 承太郎さんがハルケギニアに召喚されて時間を止めた……と。 ちなみにクレイジー・Dの『直す』能力も、俺の主には効果がありません。 そして……もちろん時間を止める能力は、もう一人の虚無にも知られています」 「もう一人の虚無だと?」 「ガリア王ジョゼフ。名前が俺達の身内と似ていてアレですけど、うちの召喚者はガリア王が虚無の担い手だと睨んでます。 この事も黙ってろって言われてるんで、くれぐれも秘密にしてください。 一応俺は主と結構友好な関係を築けてるんで……」 「……やれやれ、今度は虚無について聞く必要があるようだな」 「とはいえ、喋りっぱなしでちょっと疲れましたね。一度戻って何か飲まないっスか? ルイズさんにも虚無の話はしといた方がいいだろうし……」 「……そうだな」 承太郎はタバコを消すと、仗助と一緒に天幕へと戻ろうとした。 が、その前にもうひとつ、ルイズのいない今聞いておきたい事を思い出す。 「虚無の使い魔は……虚無の担い手にとって都合のいい行動を取るようにできてるのか? 本能的に虚無の担い手を守ろうとしたり、そいつの力になってやろうとしたり」 「さぁ……どうでしょうかね~? 俺は特にそういうのは感じませんけど。 最初は勝手に召喚されてムカついたものの、元の世界に帰れるよう手を尽くしてくれてるし……こっちもそれに協力しねーと」 「……そうか」 「何か気になる事でもあるんスか?」 虚無の詠唱を聞いて高揚感や安堵を感じる自分。 この世界にいる理由を見出した途端、迷わずそれを選んだ自分。 ルイズを守り戦ってきた自分。 どこからどこまでが自分の意思だったのか……。 「いや、別に……」 「はあ。まあ後でまたじっくり情報交換すりゃ~いいか」 二人が天幕に戻ると、生還した竜騎士隊が酒盛りして大暴れしていた。 「ちょっと、こいつ等どうにかしなさい!」 完全にプッツンしたルイズに渋々従い、承太郎と仗助は結構しんどい目に遭うのだった。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/71177.html
ガンダールヴ ガンダールヴルの別名。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/61102.html
ガンダールヴル 北欧神話に登場する小人。 ドゥリンが土から作りだした。 その名は「魔法の心得のある妖精」の意。 別名: ガンダールヴ ガンダルフ(2)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2829.html
召喚された直後契約しようとしたルイズが左手を見たらすでにルーンがしてあった 決闘場に立つだけでギーシュが泣いて謝った、心臓発作を起こす学長も 攻撃を受けたワルキューレと、それを受け止めようとした他6体のワルキューレともども壁に激突させた グッとガッツポーズしただけで辺りの女性の心を奪った 超重量のウエイトを着けながら戦闘していたため戦闘後脱いだ服を机に投げたら机が真っ二つになった アルビオン内戦が始まったきっかけはガンダールヴの投げた石によるレコン・キスタ本拠の破壊 ガンダールヴにとってのデルフリンガーは市販バットの代用品 ガンダールヴは宝物庫の破壊の杖を物欲しそうにしているフーケにグローブを作ってあげたことがある ゴーレム撃破しても納得いかなければフーケを捕まえないで帰ってきてた メイジを一睨みしただけで杖が手から滑り落ちる 眼がよすぎるせいか魔法の成分まで見える 街でガンダールヴが歩くだけで物価が上がる ガンダールヴが寄る店は繁盛する ガンダールヴは本気を出した事がない まともな動きをすると周囲に怪我人が発生するので力をセーブしてた ガンダールヴの動きに竜族の感覚が反応してしまうので常に警戒されていた じつは剣にぎってるのは小指だけ ガンダールヴに杖を盗られたことにまだ気づいていないメイジも多い ガンダールヴに一度攻撃を当てればその決闘は相手の勝ちというルールはもはや伝説 気絶させられれば即相手に全面降伏決定という破格のルールも達成できた人物はなし ハンデとして目を瞑って戦闘に入るルールも導入されたが全然ハンデにならなかった 走って半日でラ・ロシェールまで行けた 岩のゴーレムも余裕で撃破 軽く投げた石で、飛行中に出没した空賊の船を轟沈した 部屋の深い位置からウェールズを狙った魔法も処理してた 一回の素振りでデルフリンガーが三本に見え、偏在を消し去った 素振りでハリケーンが起きたことは有名 戦争開始時は学園の中から投石をしていた やめた理由はガンダールヴの球が敵を通り越したから 2騎連続撃墜は「今日はヨシェナヴェが食べたい」という暗号 砲弾キャッチ後のレーザービームでレキシントン号撃沈したのはあまりにも有名 ガンダールヴには「虚無」が見えていたらしい ガンダールヴが召喚された時点で虚無魔法全部使えていいだろ 敵のレコン・キスタ軍の罵声に流暢なアルビオン語で反論しながら倒す 7万人差、味方軍全員撤退の状況から1人で逆転 ガンダールヴがケガしたら国の仕事中断 ガンダールヴが行動すると固定化が弱まる 病気のタバサママに内野安打を約束 先住魔法を打ち返してエルフにぶつけた(虚無魔法でも問題ないとのこと) あまり戦いすぎるとこの星が傷付くから戦いたくないという名言 「聖地」というのはガンダールヴが護っている場所の通称 その気になれば、ガリアのジョセフ王にもホームランボールをぶつけることができる 二つの月のひとつはガンダールヴの打った玉 普段1cmほど浮いているらしい ガンダールヴはテンションがあがると分身する 唯一、神と精霊、始祖すらを遥かに凌駕し超越した人類 あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part83 - 186
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8897.html
前ページゼロの使い魔BW 「君が軽率に香水の瓶なんかを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」 「も、申し訳ありません!」 優しいシエスタが震えながら平伏して謝っている。 頬に紅葉を貼り付け、頭からワインを被った金髪の少年――ギーシュが、それを睨みつけていた。 なにがどうしてこうなった。目の前で繰り広げられる光景を見て、帽子の少年はそう思った。 発端は、シエスタがギーシュのポケットから落ちた香水の瓶に気づいたことだった。 「ミスタ・グラモン。ポケットから瓶が落ちましたよ」 最初、シエスタはギーシュにそう声をかけた。それを彼が無視したので、シエスタはそっと瓶を拾い上げると、近くのテーブルに置いた。 瓶を見たギーシュの友人たちが、その製作者から彼の現在の恋人を推測してはやし立てた。 すると、あれよあれよと言う間に二股が発覚して、ギーシュは二人の少女から三行半を叩きつけられることとなったのだ。 そして今、彼はその責任をシエスタに求めている。つまるところは――。 「……ああ、なんだ。二股をかけてたのが原因か」 余りにストレートで無粋な言葉に、ギーシュの視線がトレイを持った少年へと向いた。 少年は何処吹く風で、「そうか、これが二股とその末路なんだな」などと一人納得している。 ギーシュの友人たちがどっと笑った。 「その通りだギーシュ! お前が悪い!」 ギーシュの頬に、さっと赤みがさした。怒りを込めた視線が、少年へ突き刺さる。 「なんだね、君は?」 なんだね、と訊かれても困る。未だに彼がなんなのかははっきりしていないのだから。 ああでも、今のところは、と答えようとしたところで、ギーシュの友人の一人がぽんと手を叩いた。 「ルイズの平民だよ、こいつ」 「ああ、成程。あのゼロのルイズが呼びだした平民か。落ちこぼれの彼女の使い魔なら、貴族の恋愛の機微など分からなくても仕方はないな」 ギーシュは鼻を鳴らして、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。 気障ったらしく笑う彼に、少年が真顔で首を傾げる。 「二股かけてそれがばれて、頬を張られた上でワインを被るのが貴族の恋愛の機微なの?」 再び、爆笑の渦がギーシュの友人たちを飲みこんだ。太った少年などは、椅子から落ちそうになるほどに笑い転げている。 ギーシュのこめかみに青筋が走った。 「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」 「……ミスタ・グラモン! 彼は記憶を失くしているんです! どうかご容赦を!」 平伏していたシエスタが、すがりつくようにしてギーシュに言う。 「なら、なおのことだ。二度とこんな口をきかないよう、僕が彼に礼儀というものを教えてやろう」 ギーシュはシエスタの懇願を一蹴すると、高らかに叫んだ。 「決闘だ!」 「決闘だ!」 そんなギーシュの声が聞こえてきたとき、ルイズは「ギーシュが馬鹿やってる」程度にしか思わなかった。 あのツェルプストー並みに色惚けな彼のことだ。また、女の子がらみで騒いでいるに違いない。 だが、その相手が誰かを聞いた途端、思わず椅子を蹴って立ち上がってしまった。 食堂をぐるりと見渡す。遠くで、少年が立ち去るギーシュをぼんやりと見送っていた。慌てて駆け寄って、その肩を掴んだ。 「あんた、なにやってんのよ!」 「わ、私の、せいなんです……」 近くで震えていた黒髪のメイドが、そんなルイズを見て口を開く。 彼女から顛末を聞けば、ギーシュが悪いのは明らかだった。馬鹿が馬鹿をやって馬鹿を見ただけである。 だが、ルイズは使い魔の目をしかと覗き込むと、強く言った。 「謝っちゃいなさい」 「……なにを?」 「貴族に対して暴言を吐いたことをよ! 今なら許してもらえるかもしれないわ」 聞き分けの良いこの使い魔のことだ。頷いてくれるとルイズは思った。 だが、彼はその期待をあっさりと裏切った。 「それは、できない」 「なんでよ」 「彼は、善意から瓶を拾ってくれたシエスタに二股の責任をなすりつけた。 それだけじゃなく、無関係なはずのゴシュジンサマまで馬鹿にした。そんな奴に謝る言葉を、俺は持ってない」 その言葉で、ルイズは気づいた。 この使い魔は、わたしやこのメイドに個人的な恩があるから、それを貶めたギーシュに対して怒っている。 そこに、貴族や平民なんてものは関係していない。 貴族などなんとも思っていない、ということではない。 自分にない力を持つ相手は敬うし、糧を与えてくれる相手には感謝もする。 ただそれが、相手の所業を全て受け入れることには繋がらない、というだけだ。 だけど……いや、だからこそルイズは言った。 「聞いて? 平民は貴族には絶対に勝てないの。あんたは怪我をする。 いや、怪我で済めば運が良いわ。下手をすれば、殺されちゃうかもしれない」 「……それでも」 「それでも、なによ」 「勝負を挑まれたからには、逃げられない、背を向けられない……なんとなく、そう思う」 ルイズが、「なんとなく」で自分の言葉を蹴り飛ばされたことに衝撃を受けている間に、少年はギーシュの友人に問いかける。 「彼が言っていた、ヴェストリの広場って?」 「こっちだ。平民」 ギーシュの友人について、少年は歩き始めた。 ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある。 西側にある広場なので、日中も陽がささずに薄暗い。決闘にはうってつけの場所である。 だが普段は閑散としているそこは、噂を聞きつけた生徒たちにより溢れかえっていた。 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げると、集まった生徒たちから歓声が巻き起こった。 「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」 取り巻きの生徒が、号外を叫ぶ新聞売りのように声を張り上げる。 それに少年はなるほど、と頷いた。確かに、今のところはそれが唯一の彼の身分である。 ギーシュは腕を振って、歓声に応えている。そして、今気づいたという風に少年を見やると、気障ったらしくポーズをつけながら言った。 「とりあえず、逃げなかったことについては誉めてやろうじゃないか」 「……一度勝負を挑まれたからには、『相手に背中を見せられない』んだ」 広場の中央に立ったギーシュが、不思議そうな顔をして少年を見つめた。 「平民のくせに妙なことを言うね。……だがまぁ、その考えは嫌いではないよ。 決闘のルールは、相手に『参った』と言わせるか、もしくは杖を落とせば勝ちだ。 もっとも、君は平民だから杖はない。――死にたくなければ、さっさと降参したまえよ?」 黙ったまま、彼はギーシュを見返す。 「さて、始めようか。ところで、僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 少年が頷くと、ギーシュは造花の薔薇を振った。 花びらが一枚落ちる。それが地面に触れた途端に、青光りする金属の女戦士と化した。 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。したがって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 淡い陽光に輝く青銅の肌を見て、少年の表情が引き締まる。 青銅のギーシュ が 勝負をしかけてきた! ギーシュが薔薇の造花を振り下ろすとともに、青銅の女戦士が弾丸のように飛び出した。 金属で出来ているとは思えない速度でワルキューレは少年へと迫る。その手は空だが、作った拳は青銅だ。 一拍遅れて反応した少年は、すんでのところでその拳を避けた。 脇腹を掠めた拳は見た目通りの重さがあるようで、少年の背筋をひやりとさせる。 続けざまにぐるんと反転しつつ振り抜かれた裏拳は、浅く肩に当たった。 これもまた直撃は免れたが、青銅製の一撃だ。痛みに、帽子の下の顔がゆがんだ。 更に三、四、五と連続して拳が繰り出されるが、彼は危うい動きながらもなんとか直撃を避けてゆく。 ただ、避け切れてはいない。至るところに青痣を作り、荒い息をつきながら、少年はギーシュを睨みつけた。 「彼の動き、なんかヘンね」 少年の動きを観察していたキュルケが、隣の小柄な少女に呟いた。 青い髪の彼女――タバサは、本から目を上げて少年をちらりと見ると、短く言う。 「判断と動きが噛み合っていない」 「判断と動き?」 詳しく聞きたげなキュルケに対し、タバサは本へ視線を落としたまま答えた。 「ゴーレムの動きは十分に見えている。それへの対処法も分かっている。 攻撃するべき隙も見定めている。だけど、その判断に身体がついて行っていない」 「成程ね。……でも、それってどういうことなのかしら」 「自分で戦うことのない立場――戦闘指揮官のようなものだったのではないか、と予想する」 タバサの冷静な声に、キュルケはふうんと納得すると、再び決闘に目を戻した。 視線の先には、直撃は免れながらも、じわじわと体力を削られている少年の姿がある。 「でもあれじゃ、駄目ね。彼のダメージが蓄積する一方で、どうにもならないわ」 「その通り」 そのうちダメージと疲労によって動きが止まり、とどめが刺されるだろう。 ギーシュに傷一つ負わせることも出来ず、敗北する。平民対メイジとしては、当前の結果だ。 「なんか、つまらないわね」 「そう言った」 タバサがキュルケをじっと見つめる。 つまらないと言ったのに、無理やり引っ張ってきたのは貴女だ、とその瞳は語っていた。 「……あーもう悪かったわよ! 今度なにかおごるから、それで勘弁して頂戴!」 こくんと頷いて、タバサは読書に戻った。 本へと思考が沈んでいく中で、彼女はぽつりと思う。 彼の動きは、なにか決定的なものが欠けているが故の不自然さのようにも見える。 極端に高い観察力や判断力に対し、皆無に近い戦闘能力。 もし、前者の高さに見合う戦闘能力があるとするなら、それは一体どれだけのものになるだろうか? 体中が悲鳴を上げている。 青銅の拳が掠めるたびに、それを避けるたびに、動きが鈍くなっていくのが分かる。 少年の理性は、「参った」と言ってしまえと、逃げてしまえと囁きかけてくる。 だが、奥底に眠るなにかは「勝負の最中に、相手に背を向けるわけにはいかない!」と叫んでいた。 「ッ!」 渾身の力で地面を蹴り、振り抜かれた拳を転げるようにして避ける。 今の自分は間違っている。そんなことは、彼にだって分かっている。これは自分の戦い方ではない。 腰元のボールが、怒りに耐えかねるように震えている。これはなんだったか。あと一歩が繋がらない。 「……驚いた。ただの平民が、『ワルキューレ』の攻撃をここまで避けるとはね」 相対する金髪の少年が、感嘆したように声を上げる。 そして、杖を振った。花びらが落ちるとともに、青銅のゴーレムがもう一体現れる。 「だが、それもこれまでだ」 二体目のワルキューレが迫ってくる。咄嗟に、横に跳んで避けた。 次の瞬間、湿った音と共に身体が浮いた。一体目の拳が腹にめり込んでいる。 吹き飛ばされて、仰向けにぶっ倒れた。 息が吸えない。吐き気がする。体中が、鈍痛と共に熱を持っている。 疲労も激しい。無尽蔵の体力を持つ青銅の戦士に対して、少年の体力は有限だ。 倒れている彼の頭を、ワルキューレが踏みつけた。額が切れて、視界が赤く染まる。 次いで、左腕に蹴りが入った。鈍い音と共に激痛が走る。そのまま、5メイルほど吹っ飛んだ。 そのタイミングで、人垣をかき分けてルイズが現れた。 「ギーシュ!」 「おおルイズ! 悪いな。君の使い魔をちょっとお借りしているよ!」 地面に倒れ、血を流している少年を見やって、ルイズは青ざめつつも憤然とまくしたてる。 「いい加減にして! 大体ねえ、決闘は禁止じゃない!」 「禁止されているのは貴族同士の決闘だけだ。平民と貴族での決闘なんか、誰も禁止していない」 ルイズは言葉に詰まった。 「そ、それは、そんなこと今までなかったから……」 「それと、やめて欲しければ彼に言いたまえ。『参った』と言って謝れば、矛を収める用意が僕にはある」 もっとも――とそこで言葉を切って、ギーシュがルイズの背後を指さした。 「彼はまだ、続けるつもりのようだけどね」 どうしてこの使い魔は諦めないのだろう。 何処からどう見ても満身創痍だ。土埃にまみれ服は破れ、額は割れて血が溢れている。 左腕はあらぬ方向に曲がっていて、折れていることが見て明らかだった。 もうやめて、と言おうとして、声が出なかった。 燃え上るような闘志を秘めながらも湖面のように静かな眼が、ルイズの喉を詰まらせた。 力が入らないのであろう四肢を動かして、どうにかして立とうともがいている。 勝ち目など全くないのに、この使い魔は一体なにを考えているのだろうか。 痛そうで可哀そうで、泣けてくる。もうやめて欲しい。でも、それが口に出せない。 誰よりも、使い魔がそれを拒んでいる。 言葉で駄目なら――。ルイズはぎゅっと唇を噛むと、使い魔とゴーレムの間に立ちふさがった。 「……それで、始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行きついた、というわけじゃね」 コルベールの話を一通り聞いたオスマン氏は、彼の取ったスケッチを眺めながら確認した。 「そうです! あの少年の右手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』に刻まれていたものと全く同じであります!」 「で、君の結論は?」 「彼は『ヴィンダールヴ』です! これが大事でなくて、なんなんですか! オールド・オスマン!」 そう叫ぶコルベールを前に、立派な髭をしごきながらオスマン氏が頷く。 「ふむ、確かに、ルーンが同じじゃ。ルーンが同じということは、ただの平民だったその少年は、 『ヴィンダールヴ』になったということになるんじゃろうな。しかし……」 そこまで言ったところで、不意に扉がノックされた。 「誰じゃ?」 「私です、オールド・オスマン」 ミス・ロングビルの声だ。 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒が居るようです。大騒ぎになっています。 止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」 「まったく、暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れとるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン」 「あの、グラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者だったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。 大方、女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」 「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」 オスマン氏とコルベールの目が鋭く光った。 「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用を求めています」 「馬鹿馬鹿しい。たかが子供の喧嘩を止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルの足音が遠ざかる。 「オールド・オスマン」 「うむ」 緊張した面持ちで促したコルベールに重く頷くと、オスマン氏は壁にかかっている鏡に向けて杖を振った。 ヴェストリの広場の光景が、そこに映し出された。 震えながらも彼の前に立った少女の背中が、過去に見た『誰か』の背中に重なった。 髪の色も、顔の作りも、体型も、服装も、状況も、何もかも違う。いや、『足蹴にされて吹っ飛んだ』辺りは少し似ているか。 だが何にせよ、弱者が虐げられているのに耐えきれず立ち上がった、というのは同じだ。 それが誰かということに思い至ると同時に、これまでのことが走馬灯のように思い返される。 心優しい少女に、生真面目な青年。同じ街の、二人の幼馴染。 自分にポケモンと図鑑を預けてくれた博士。 リーグへの道のりと、その道中で戦ってきたジムリーダーたち。 ポケモン解放を謳った彼と、その理想を大義名分として、ポケモンの独占を企んだ悪の組織。 ――ああ、なにをしていたんだろうか、自分は。 わずかな自嘲の笑みを浮かべつつ、懐かしさをこめて腰元の『モンスターボール』を撫でると、それが今度は歓喜に震えた。 少年が、ゆらりと立ち上がった。 彼は、目の前で自分をかばうルイズの肩をそっと押しやると、ギーシュを見やる。 視線を向けられて、ギーシュはたらりと冷や汗を流した。なにかがおかしい。 今までは感じなかった妙な圧力を、目の前の平民から感じる。 「はじめまして」 「へ?」 いきなりの挨拶に、ギーシュが間抜けな声を上げた。 「『ルイズの平民』にして、『ポケモントレーナー』のトウヤです。よろしく」 ぶわりと圧力が膨れ上がった。 名乗った平民――トウヤは、腰元のボールに手をかける。右手のルーンが光った。 同時に悪寒がいや増して、思わずギーシュは叫んでいた。 「ワルキュゥゥゥレェェェェッ!」 いつにない速度で、青銅のゴーレムが動き出す。 だが、迫るゴーレムに焦ることなく、トウヤは冷静に『なにか』に向かって命令を下した。 「いけ、ドリュウズ。――『ドリルライナー』だ」 カチリという音と共に、ボールから光が溢れる。そこから、銀と茶の旋風が巻き起こった。 その高速で回転する『なにか』は、続けざまに二体のゴーレムの胴にぶち当たると、大穴を穿って、それらを完膚なきまでに破壊する。 二体のゴーレムが一瞬で粉々になった光景に、トウヤを除く全ての人間が息を飲んだ。 ばらばらになったゴーレムの欠片の上に、それは居た。 見た目は、ギーシュもよく知る『ジャイアントモール』によく似ている。 ただ、鋭い眼光と異常に発達した爪、そして銀色に光る鋭角の頭部が、それに言い知れぬ凄みを与えていた。 ギーシュが呆然と問いかける。 「それは、君の使い魔かい?」 「……違うよ。こいつは俺の『ポケモン』だ」 トウヤは恐ろしげな幻獣の頭を撫でて見せる。 「そうか。……いや、そうだね。メイジでもない君が、使い魔を持っているはずがない」 ぶんぶんと頭を振って、ギーシュは薔薇の造花を構え直す。 呪文を唱えつつ、それを振り下ろした。花びらが舞って、新たなゴーレムが五体現れる。 全部で七体のゴーレムが、ギーシュの武器だ。平民相手など二体でも十分過ぎると思っていたが、こうなってはそうも言っていられない。 「どうやら、君は結構な牙を持っていたようだ。こちらも遠慮なく行かせてもらうよ!」 薔薇の指揮に従って、ワルキューレがトウヤとドリュウズに殺到する。 一、二体は倒せても、残りが彼らを揉み潰す――傍からはそう見えた。ギーシュもそう確信していた。 だが、トウヤは全てのワルキューレを視界に収めつつ、その場で垂直に跳躍して短く命令する。 「ドリュウズ、『じしん』」 腹の底に響く重たい音と共に、周囲の空気がびりびりと震えた。 ワルキューレたちの動きが止まる。 そして、その青銅の肌に微細なヒビが入った。 何故と思う間もなく、脆くなったワルキューレたちは自重に耐えきれずに砕け、崩れ落ちる。 「なあっ……!?」 余りの光景に腰が抜けて、ギーシュはペタンと地面に座り込んだ。 砕け散ったワルキューレの残骸の上を、トウヤとドリュウズがゆっくりと歩いてくる。 「まだ続ける?」 静かな声だった。ギーシュは首を振る。戦意などとうに失せている。杖を置き、諸手を上げた。 「参った。……僕の負けだ」 決闘を覗いていたコルベールが、汗をぬぐって口を開いた。 「……あの少年、勝ってしまいましたな」 「そうじゃの」 「あの幻獣は一体なんなのでしょう。 ギーシュは一番レベルの低い『ドット』メイジですが、それでも、ああも容易くあしらわれるのは予想外です」 「さあのう。……ただ少なくとも、彼があれを使役したのは間違いない。 もっと言えば、彼は同じような幻獣を少なくとも後五体は持っておるはずじゃ」 立派なあごひげを整えながら、オールド・オスマンは言った。 「その理由は?」 「彼は腰元につけた玉からあの幻獣を呼び出しておったじゃろ? 彼のベルトにはあれを含めて計六つの玉がくっついておった。なら、幻獣も六体おると考えるのが自然じゃろうよ」 禿げあがった頭を、コルベールはつるりと撫で上げた。 「そんな幻獣たちを操る彼は、やはり『ヴィンダールヴ』なのでしょうか。なら、王室に報告して指示を仰がないことには……」 「その必要はあるまい」 オスマン氏は重々しく首を振った。コルベールが目をむいて問いただす。 「何故ですか? これは世紀の発見ですよ! 現代によみがえった『ヴィンダールヴ』!」 「ミスタ・コルベール。『ヴィンダールヴ』はただの使い魔ではない」 「その通りです。始祖ブリミルの用いた『ヴィンダールヴ』。 その姿形は記述がありませんが、あらゆる獣を自在に操り、主人をいかなる場所へも運んだと伝え聞きます」 更に能書きを続けようとしたコルベールを、オスマン氏が制した。 「で、ミスタ・コルベール」 「はい」 「その少年は、本当にただの平民だったのかね?」 「はい。彼の所有物には不可思議なものが多数ありましたが、彼自身は正真正銘、ただの平民の少年でした。 ミス・ヴァリエールが呼びだした際、念のために『ディテクト・マジック』で確かめましたが、反応は全くありませんでした」 「その少年を、現代の『ヴィンダールヴ』にしたのは誰なんじゃね?」 「ミス・ヴァリエールですが……」 「彼女は、優秀なメイジなのかね?」 「いえ、というか、むしろ無能というか……」 「さて、その二つが謎じゃ」 「ですね」 「無能なメイジに召喚された平民の少年が、何故『ヴィンダールヴ』になったのか。全く謎じゃ。理由が見えん」 オスマン氏はしばし考え込んでいたが、ふと頭を振ると、嘆息しつつ続けた。 「なんにせよ、王宮のボンクラ共に『ヴィンダールヴ』とその主を渡すわけにはゆくまいて。 そんなオモチャを与えてしまっては、またぞろ戦でも起こしかねん。宮廷で暇を持て余している連中はまったく、戦が好きじゃからな」 「ははあ。学院長の深謀には全く恐れ入ります」 「この件は私が預かる。他言は無用じゃ、ミスタ・コルベール」 「は、はい! かしこまりました!」 杖を握って窓際に向かったオスマン氏は、過去に思いをはせた。 「伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』か……。一体、どのような姿をしていたんじゃろうなぁ」 コルベールが夢見るように呟いた。 「『ヴィンダールヴ』はあらゆる獣を使役し、主を助けたとありますから……」 「うむ」 「少なくとも、命令を下すための口はあったんでしょうなあ」 前ページゼロの使い魔BW
https://w.atwiki.jp/gods/pages/32008.html
ヴィンダルヴ 北欧神話に登場する小人。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/944.html
「た、たたた、大変です!オールド・オスマン!!」 ついさっきまで図書館に篭り、調べものをしていたコルベールが慌てて学院長室に駆け込んできた。 「なんじゃね、騒々しい」 ミス・ロングビルがいないので暇をもてあそんでいたオスマンが、重々しくうるさい乱入者を迎え入れる。 そんな態度などお構いなしに、コルベールは持ってきた本をオスマンに見せ付ける。 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。こんな古い文献を持ち出して来おって。一体なんの騒ぎじゃ?ミスタ・・・なんだっけ?」 オスマンは首をかしげる。 「コルベールです!お忘れですか!!」 「そうそう、そんな名前じゃったな。それで、なにがそんなに大変なのじゃ? まさかその本にラクガキでもされてたとかいう、くだらないことではあるまいな?」 本にラクガキがされることが、まるで学院では当たり前のことのような茶化しを入れつつもジロリとコルベールを眺める。 「いえ、そんなことではありません。まずはこれを見てください」 コルベールはシャオの右手に刻まれたルーンのスケッチを手渡した。 それを見た瞬間、オスマンの飄々とした表情が『真剣』という文字を表したかのような表情に変わる。 「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」 「まず、先日の『春の使い魔召喚』でミス・ヴァリエールが月の精霊を召喚しました。」 雰囲気を豹変させたオスマンに、多少の落ち着きを取り戻したコルベールが説明を始める。 「うむ、その話は聞いておるよ。長い歴史を持つこの学院でも精霊が召喚されたのは始めてのことじゃからな」 「次に先ほど見せたスケッチですが、あれはその月の精霊の右手に現れたルーンです。 わたしはこの見たことのないルーンが気になり、先ほどまで調べておりましたらこの本のページにたどり着きました」 まるで世紀の大発見をした学者のように、再びコルベールの呼吸が荒くさせ、スケッチと同じルーンの描かれたページを開く。 「なるほど。始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行き着いた、というわけじゃな?」 オスマンはスケッチと本の二つに書かれた同じ模様のルーンをじっと見つめた。 『ヴィンダールヴ』 偉大なる始祖ブリミルの使い魔で、ありとあらゆる幻獣を操る『神の右手』とも伝えられている伝説の使い魔。 それがシャオの右手に現れたルーンなのである。 「そうです!あの少女の右手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』に刻まれていたものとまったく同じであります!」 コルベールは、汗で光るあまりにも広すぎるデコをハンカチで拭きながらまくし立てる。 オスマンはその事実をかみ締めながら、どこか苦々しい口調で言う。 「う~む。しかし、これだけで判断するのは早計かもしれんな」 「と、言いますと?」 オスマンの感想に疑問を抱くコルベール。 「判断するには材料が少なすぎるのじゃよ。早すぎる判断は時として取り返しのつかないことになりかねん」 オスマンの回答に、コルベールはハッとした表情になる。 かつて自分が少ない情報だけで判断し、とある村で取り返しのつかないことを思い出したからだ。 二人が黙り込んでいると、コンコンとドアをノックする音が響いた。 「失礼します」 ミス・ロングビルが入ってくる。 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいて大騒ぎになっています。 止めに入ろうとした教師もいるのですが、生徒たちに邪魔されて止められないそうなので『眠りの鐘』の使用許可を求めています」 ミス・ロングビルの通達にオスマンは呆れた様子で言う。 「まったく、ヒマをもてあました貴族ほどたちの悪いもんはいないわい。で、誰が暴れているのだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモンなのですが、もう一人はメイジではありません」 「なんじゃ?そうなるとグラモンとこのバカ息子は平民と決闘をしているのか?」 オスマンはさらに呆れる。 貴族が平民相手に決闘など、恥さらしにも程があるからだ。 ちなみに、ギーシュの決闘相手だが本編では平民と言えば平民なのだが、このSSではちょっと違う。 ミス・ロングビルは少し戸惑いながら言う。 「いえ、それが・・・、先日ミス・ヴァリエールの召喚した月の精霊とです」 「なんと!こうしちゃおられんの」 オスマンはそう言うと杖を振り、大鏡にヴェストリの広場を映し出す。 大鏡に映し出された光景。 それは青銅のゴーレム『ワルキューレ』のヘッドバットを喰らうルイズの姿であった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6161.html
前ページ次ページ虚無のパズル 「ごめん。やめて。もうしない、ほんとに」 学院長室では、白く威厳のある髭を蓄えた老賢人オスマン氏が、情けなくも床に這いつくばり、秘書のミス・ロングビルに無言で蹴り回されていた。 お尻を撫でる、使い魔のネズミ、モートソグニルを使って下着を覗き見るなど、オスマン氏の度重なるセクハラにキレたミス・ロングビルが実力行使に出たのであった。 ちなみにこのような光景は珍しいものではなく、学院長室の日常風景と言っていい。 「オールド・オスマン!たたた、大変です!」 学院長室のドアを乱暴に開け放って、コルベールが転がり込んできた。 「なんじゃね」 ミス・ロングビルは何事もなかったかのように机に座っていた。 オスマン氏は腕を後ろに組んで、重々しく闖入者を迎え入れた。早業であった。 「ここ、これを見てください!」 コルベールは、オスマン氏に先ほど呼んでいた書物を手渡した。 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。まーたこのような古くさい文献など漁りおって」 「そんなことよりも、オールド・オスマン!これを見てください!」 コルベールはアクアの右手に宿ったルーンのスケッチを手渡した。 それを見た瞬間、オスマン氏の表情が厳しいものに変わる。 「ミス・ロングビル。席を外しなさい」 ミス・ロングビルが部屋を出て行くと、それを見届けたオスマン氏は口を開いた。 「さて、ミスタ・コルベール。詳しく聞かせてくれたまえ」 コルベールは、堰を切ったようにしゃべりはじめた。 春の使い魔召喚の際に、ルイズが平民の女の子を召喚してしまったこと。 その子の右手に刻まれた、契約の証であるルーン文字が気になったこと。 そして、それを調べるうちに…… 「始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行き着いた、というわけじゃね?」 「そうです!あの少女の手に刻まれたルーンは、まさしく伝説の使い魔『ヴィンダールヴ』と同じもの!あの少女は『ヴィンダールヴ』です!これは一大事ですぞ、オールド・オスマン!」 「ふむ…」 オスマン氏は長いひげをなで付けながら、コルベールの推論を考慮する。 ドアがノックされた。先ほど退出を命じた、ミス・ロングビルであった。 「ヴェストリの広場で、決闘まがいの騒ぎが起こっているようです。大騒ぎになっています。」 オスマン氏は、やれやれとかぶりを振る。 「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 「あの、グラモンとこのバカ息子か。おおかたまた女の子に絡んだ騒ぎじゃろう。相手は誰じゃ?」 「……それが、ミス・ヴァリエールの使い魔の女の子のようです」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にあるヴェストリの広場は、噂を聞きつけた生徒たちで溢れ帰っていた。 人の生垣に囲まれて、金髪の美男子ギーシュと、生意気そうなアクアが向かい合っていた。 「諸君!これは決闘ではない!」 ギーシュが薔薇の造花を振り上げ、観衆に宣言する。 「貴族社会への反逆の芽を摘む!これは粛正であり、教育なのである」 ざわざわと、喧噪が広がる。 「おい、あれはルイズの平民だ!」 「ほんの子供じゃないか!ミスタ・グラモンは何を考えてるんだ?」 「いや、あれは主人のヴァリエールに似て、ひどいはねっ返りだよ!ギーシュを怒らせるのも無理はないさ!」 戸惑いと好奇の目で、広場は異様な熱気に包まれていた。 ドットクラスとは言えメイジのギーシュと、年端も行かない女の子。これはもはや公開処刑である。 人をナメきったアクアの言動の数々を知らないものの中には、ギーシュへの軽蔑を隠そうともしないものもいるが、しかし平時の世の中、退屈した貴族に取ってこれ以上のショウはない。 アクアは幼いとは言え、整った顔立ちをしており、美少女であると言えた。 ああ、その吊り気味の、気の強そうな目が、苦痛と恐怖に歪むさまはどんなものだろうか?そんな凶暴な期待に身を震わせるものも少なくない。 熱気に当てられ、不安になったルイズは小さく震える肩を抱く。 「さてと、では始めるか」 観衆に向けパフォーマンスを繰り広げていたギーシュは、アクアの方に向き直り、そう言った。 ギーシュが手にした薔薇の造花を振ると、花びらが一枚、宙に舞った。 するとそれはみるみるうちに、甲冑を着た女戦士の形をしたゴーレムになった。 それを見て、わー、とアクアが感嘆の声を上げる。 「僕の二つ名は『青銅』、青銅のギーシュだ。青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手つかまつる」 ギーシュは格好を付けて、右手の薔薇をアクアに突きつける。 「ふうん、それがあんたの『魔法のステッキ』ってわけだ」 アクアはローブのポケットをごそごそとやって、取り出したものを同じようにギーシュに向けて突きつけた。 棒付きのアメ玉であった。 ギーシュが何事かと見守っていると、アクアは棒付きアメをふりふり振りながら、言った。 「あたしのは、これ。あたしの『魔法のステッキ』だよ」 アクアの言葉に、一瞬広場は静かになる。 それから、どっと笑いが巻き起こった。 「はっは!そ、そ、それが『杖』だって?」 「ず、ず、ずいぶんかわいらしいメイジだなあ、おい!」 「おいギーシュ!あんまり子供をいじめるんじゃないぞ!」 大笑いする観客から野次が飛ぶ。 ルイズは頭を抱えていた。 ギーシュは、ため息をついてかぶりを振る。どうやら僕は、子供相手にムキになりすぎていたようだ。 しかし一度口に出した言葉は、簡単には曲げられない。ギーシュはアクアをさんざんに脅しつけて、早々と降参させるつもりであった。 ギーシュが薔薇を振ると、ワルキューレがアクアに向かって突進した。芝生をえぐりながら、アクアの目の前で急停止する。 ワルキューレはアクアを見下ろすように立っており、2メートルを超す青銅の女騎士は、小さなアクアに大変なプレッシャーを与えていることだろう。 さあ、恐怖に震えながら、許しを請いたまえ。ワルキューレの槍をアクアの喉元に突きつける。 しかしアクアは落ち着いた様子で、棒付きアメを振って、ワルキューレの槍に当てた。かいん、と子気味よい音があたりに響く。 次の瞬間、強烈な破裂音とともに、槍の先端が爆発した。 「え?」 長さが半分ほどになった槍を見て、ギーシュは思わず声を上げた。一体、何が起こったと言うのか? アクアは返す手で、ワルキューレの腹に棒付きアメを当てる。 「マテリアル・パズル……」 またも強烈な破裂音とともに、ワルキューレは粉々に吹っ飛んだ。破片が、パラパラと広場に降り注ぐ。 観客もギーシュも呆然となっていると、アクアはローブのポケットからアメ玉を取り出し、口に放り込んで、コロコロと舐めた。 そして観客の中のルイズに向けて、ちょいちょいと棒付きアメを振る。 「ルイズう、見てた?これがあたしの魔法だよ。『壊す』のが、あたしの魔法」 そしてギーシュに向き直り、ギロリと睨むと、ずんずんとギーシュの元へ歩き出した。 ひ、とギーシュの喉から空気が漏れた。 やばい。よく分からないけど、とにかくやばい。 子供だなんて、とんでもない!いま僕の目の前にいるものは、恐るべき力を持っている! ギーシュは、あわてて薔薇を振る。たちまち花びらが舞い、6体の青銅のゴーレムが現れた。ギーシュがいま扱える全ての兵力である。 6体のワルキューレの出現にもアクアは動じず、ギーシュに詰め寄る。舐めていたアメ玉を手のひらにぺっと吐き出す。 カチャカチャと、何かを組み立てるような音をさせながら、アメ玉が強く光り出した。 怯えたギーシュは、ワルキューレを三体ずつ二列に並べ、自分の身を守らせるよう配置した。 錬金の魔法で作り上げた、鈍く輝く盾を構え、まさに鉄壁の防御である。しかし。 「薄い!」 破壊のエネルギーが込められたアメ玉が、ワルキューレに叩き込まれた。 大爆発が起こり、6体のワルキューレは消し飛んだ。 ギーシュははるか後方の『火の塔』までぶっ飛び、壁にしたたか打ち付けられ、気絶した。 薔薇の杖は彼の手を離れ、遠くに吹き飛ばされていた。これでは、目を覚ましても魔法を使うことはできないだろう。 アクアは、自分の勝利を確認すると、ふふん、と得意げになり、アメ玉を噛んだ。 「我が勝利、魂と共に……」 そんなアクアを、ルイズはぽかんとした顔で見つめていた。 観客たちも、皆同じようにぽかんとしていた。 名家の子息たるギーシュの敗北。相手は子供のメイジ。しかも貴族ではなく、ルイズ・ヴァリエールの使い魔である。 あまりの出来事に、ヴェストリの広場は静まり返ったが、やがて、誰かがぽつりとこぼした。 「『その者にもっともふさわしい使い魔が呼び出される』って、あれ、ほんとだったんだな」 「魔法を爆発させてばかりいる『ゼロのルイズ』!爆発の魔法を使うメイジを呼び出しやがった!」 オスマン氏とコルベールは、一部始終を『遠見の鏡』で見届けると、また顔を見合わせた。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あの子供、勝ってしまいましたな」 「うむ」 「『ヴィンダールヴ』はあらゆる幻獣を乗りこなし、主をあらゆることろへ運んだとありますが……」 コルベールは頭を振る。 「魔法の撃ち合いで、勝ってしまいましたな」 「ううむ。ミスタ・コルベール。これではあの子が『ヴィンダールヴ』であると言う確証は得られんの」 オスマン氏が、コルベールの言葉を引き取った。 コルベールは落胆したが、気を取り直し『教師』としての意見を申し出た。 「しかしオールド・オスマン。まさか彼女がこれほど強力なメイジだったとは思いませんでしたな。あの破壊力はトライアングル、いえ、下手をすればスクウェアスペルほどかもしれません。 春の使い魔召喚では「平民を呼び出してしまった」などと腐っておりましたが、ミス・ヴァリエールも誇らしく思うことでしょう」 嬉しそうに言うコルベール。しかしオスマン氏は難しい顔を崩さない。 「コルベール君、きみ、あの子の使った魔法が分かるかね?」 「いえ。しかしあれほどの爆発を起こしたのです。彼女は間違いなく『火』系統のメイジでしょう」 オスマン氏は首を振る。 「それではおかしいんじゃよ。見たまえ、あのゴーレムの破片を。まんべんなくバラバラじゃ。おまけに焦げ付きや煤がまったくない。普通の爆発ではありえんことじゃ」 コルベールは困惑した。 「オールド・オスマン。一体どういうことなのでしょうか?」 「これは推測でしかないのじゃがの。あの子が伝説の『ヴィンダールヴ』であると言うのなら、その彼女が使う魔法もまた、われわれの系統魔法とはまったく違うものなのかもしれん」 「オールド・オスマン。それは」 コルベールは興奮し、ゴクリと音を立てて唾を飲み込む。 「『虚無』と。そういうことなのでしょうか」 前ページ次ページ虚無のパズル